第二章 高天原〔一八三三〕
001 ここに宇迦須美の神は⦿の神の神言もちて、002大虚空中に活動し給ひ、003遂にオの言霊を神格化して大津瑞穂の神を生み給ひ、004高く昇りて天津瑞穂の神を生ませ給ひぬ。005大津瑞穂の神は、006天津瑞穂の神に御逢ひてタの言霊、007高鉾の神、008カの言霊、009神鉾の神を生ませ給ひぬ。010高鉾の神は太虚中に活動を始め給ひ、011東に西に南に北に、012乾坤巽艮上下の区別なくターターターター、013タラリタラリ、014トータラリ、015タラリヤリリ、016トータラリとかけ廻り、017神鉾の神は、018比古神と共にカーカーカーカーと言霊の光かがやき給ひ、019茲にいよいよタカの言霊の活動始まり、020高鉾の神は左旋運動を開始し、021神鉾の神は右旋運動を開始して円満清朗なる宇宙を構造し給へり。022茲に於て両神の活動は無限大の円形を造り給へり。023この円形の活動をマの言霊と言ふ、024天津真言の大根元はこのマの言霊より始まれり。
025 高鉾の神、026神鉾の神、027宇宙に現れ給ひし形をタカアと言ひ、028円満に宇宙を形成し給ひし活動をマと言ひ、029このタカアマの言霊、030際限なく虚空に拡がりて果てなし、031この言霊をハと言ひ速言男の神と言ふ。032両神は速言男の神に言依さし給ひて、033大宇宙完成の神業を命じ給ふ。034速言男の神は右に左に廻り廻り鳴り鳴りて螺線形をなし、035ラの言霊を生み給ふ。036この状態を称してタカアマハラと言ふなり。037高天原の六言霊の活動によりて無限絶対の大宇宙は形成され、038億兆無数の小宇宙は次で形成さるるに至れり。039清軽なるもの、040霊子の根元をなし、041重濁なるものは物質の根元をなし、042茲にいよいよ天地の基礎は成るに至れり。
043 未だ速言男の神以前の世は宇宙なるもの無く、044日月星辰の如き霊的物質形をとめず、045虚空はただ霊界のみ創造され、046物質的分子は微塵だもなかりけるが、047この六言霊の活用によりて、048天界の物質は作られたるなり。049これより天地剖判に至るまで数十代の神あり、050之を天の世と称し奉る。
051 天の世は霊界のみにして現界は形だにもなく、052実に寂然たる時代なりき。053この高天原六言霊の鳴り鳴りて鳴り止まざる活用によりて、054大虚空に紫微圏なるものあらはれ、055次第々々に水火を発生して虚空に光を放ち、056其光一所に凝結して無数の霊線を発射し、057大虚空をして紫色に輝く紫微圏層の世を創造し給ひぬ。058紫微圏層についで蒼明圏層現れ、059次に照明圏層、060次に水明圏層現れ、061最後に成生圏層といふ大虚空に断層発生したり。062この高さ広さ到底算ふべき限りにあらず、063無限絶対無始無終と称するより語るべき言葉なし。064嗚呼惟神霊幸倍坐世。
065(昭和八・一〇・四 旧八・一五 於天恩郷千歳庵 加藤明子謹録)