第五章 言幸比古の神〔一八三六〕
001 速言男の神は紫微宮圏の世界の万神を指揮し修理固成し、002永遠無窮に天の世界の経綸に全力を尽し給ひ、003茲に造化三神を初め四柱の神の宮殿を造りて、004至忠至孝の大道を顕彰し給へり。005天の世界の造化三神とは、006天極紫微宮に坐す天之峯火夫の神、007宇迦須美の神、008天津日鉾の神に坐まし、009左守と仕へ給ふは大津瑞穂の神、010天津瑞穂の神の二神なり。011又右守の神と仕へ給ふは高鉾の神、012神鉾の神なり。013速言男の神は一二三即ち霊力体の三大元を以て大宮に要する霊の御柱を造り給ひ、014此の柱を四方に建て並べて霊の屋根を以て空を覆ひ、015光輝燦然たる紫微の大宮を造営し給ひぬ。016抑も此の宮は天極紫微宮と称へ奉り、017造化三神を初め左守右守の四柱神を永遠に祭祀し給はむが為めなり。
018 此の時霊力体の三元スの言霊の玄機妙用によりて、019紫微宮の世界に大太陽を顕現し給ひ、020大虚空中に最初の宇宙を生り出で給ひたるなり。021紫微宮天界の諸神は幾億万里の果よりも集り来りて、022大宮造営完成の祝歌を謡ひ給ふ。023速言男の神は紫微台上に昇りて声も厳かに、
024『一二三四五六七八九十百千万』
025と繰返し繰返し謡ひ給へば、026百雷の一時に轟く如き大音響四方に起りて、027紫微宮天界は為に震動し、028紫の光は四辺を包み、029太陽の光は次第々々に光彩を増し、030現今の我宇宙界にある太陽の光に増すこと約七倍の強さとなれり。031速言男の神は以上の天の数歌を唱へ終りて紫微台の高御座に端坐し、032両眼を閉ぢて天界の完成を祈り給ふ。
033 茲に速言男の神の左守神として仕へ給ふ言幸比古の神は、034言霊の発動に生れる紫微宮の荘厳を祝して、
050と神声朗らかに宣り上げ給へば、051天界は益々清く明けく澄切り澄渡りつつウアの神霊元子大活躍を始め、052一瞬にして千万里を照走する態電気よりも速かなりき。053茲に右守の神言幸比女の神は左守の神の後をうけ給ひて、
059と七十五声の真言を横に謳ひ給へば、060八百万の神々は之に和して謹み敬ひ言霊を奏上し、061タカタカと拍手をなして喜び歓ぎ給ひける。062此の宮の祭りに仕へ給へる日高見の神は、063声厳かに祝し給はく、
064『久方の天に生る生る主の神霊
065澄みきり澄みきり澄み徹らひつ
066アとウの水火を合せ給ひて
067紫微の天界を創め給ふ
068其の功績を喜び勇み
069主の神の神霊に生りし
070八百万千万の神は
071此の斎場に集ひ奉り
072神祝言宣り奉る
073一二三四五六七八九十
074布留辺由良布留辺由良由良
075生言霊の大幣を振り翳し
076天津真言の劔を御前に翳し
078主の大御神又の御名は
079大国常立神言の
080甚じき功績に報い奉るとして
081紫微の宮居の清庭に
082生言霊を宣り奉る
083嗚呼惟神々々
084主の大神の神御霊
085高天原に満ち足らひ
087鳴り鳴り鳴りて鳴りあまり
088生き生き生きて生き栄え
089神の依さしの神業に
090仕へ奉らむ真心の
091真言の鏡曇りなく
092真言の剣研ぎ澄まし
094生言霊の璽の水火
096永久の世の果までも
097主の大神の神力を
098開かせ照させ給へかし
099宮司日高見の神が
100誠をこめて祝ぎ奉る祝ぎ奉る』
101(昭和八・一〇・六 旧八・一七 於天恩郷千歳庵 森良仁謹録)