第七章 太祓(おほはらひ)〔一八三八〕

001 天之(あめの)高火男(たかひを)(かみ)002天之(あめの)高地火(たかちほ)(かみ)二神(にしん)は、003紫微圏(しびけん)(かい)国土(こくど)経営(けいえい)せむとして、004国土(こくど)(いへど)霊的(れいてき)国土(こくど)にして、005現在(げんざい)地球(ちきう)(ごと)きものに(あら)ずと()るべし。006以下(いか)(すべ)(これ)(じゆん)ず)()味鋤(あぢすき)(かみ)をして紫天界(してんかい)(つか)はし(たま)ひぬ。007紫天界(してんかい)紫微宮(しびきう)(かい)中央(ちうあう)(くらゐ)し、008至厳(しげん)009至美(しび)010至粋(しすゐ)011至純(しじゆん)透明国(とうめいこく)なり。012()紫天界(してんかい)()()へて、013(つぎ)蒼天界(さうてんかい)形成(けいせい)され、014(つぎ)紅天界(こうてんかい)015(つぎ)白天界(はくてんかい)016(つぎ)黄天界(くわうてんかい)017次々(つぎつぎ)にかたちづくられたり。018本章(ほんしやう)(おい)ては()づ、019紫微圏(しびけん)(かい)()ける()第一位(だいいちゐ)たる紫天界(してんかい)修理(しうり)固成(こせい)につき()大略(たいりやく)()(あか)すなり。
020 ウの言霊(ことたま)御稜威(みいづ)によりて天之(あめの)道立(みちたつ)(かみ)は、021()神力(しんりき)発揮(はつき)(たま)ひ、022日照男(ほてりを)(かみ)023夜守(よるもり)(かみ)024玉守(たまもり)(かみ)025戸隠(とがくし)(かみ)四柱(よはしら)をして(ひる)(よる)とを(わか)(まも)らせ(たま)ひぬ。026玉守(たまもり)(かみ)(あさ)(まも)り、027日照男(ほてりを)(かみ)日中(につちう)(まも)り、028戸隠(とがくし)(かみ)(ゆふ)(まも)り、029夜守(よるもり)(かみ)(よる)(まも)(たま)ひて、030天界(てんかい)経綸(けいりん)(おこな)(たま)ふ。031(しか)しながら紫微圏(しびけん)(かい)にては、032夜半(やはん)(いへど)()地球(ちきう)真昼(まひる)よりも(あか)るく、033(ただ)意志(いし)想念(さうねん)(うへ)(おい)(よる)(いた)るを(かん)ずる程度(ていど)のものなり。034(あさ)(あさ)想念(さうねん)(おこ)り、035(ひる)(ひる)036(ゆふ)(ゆふ)意志(いし)想念(さうねん)(かん)ずる程度(ていど)なり。037()地球(ちきう)(ごと)明暗(めいあん)さだかならざるも、038霊的(れいてき)天界(てんかい)なるが(ゆゑ)なり。
039 天之(あめの)道立(みちたつ)(かみ)諸神(しよしん)(したが)へて、040紫微圏(しびけん)(かい)()ける数千(すうせん)億万(おくまん)()霊界(れいかい)非常(ひじやう)速力(そくりよく)をもつて経繞(へめぐ)り、041神業(みわざ)活躍(くわつやく)(たま)へり。042至美(しび)043至明(しめい)044至尊(しそん)045至厳(しげん)霊国(れいごく)も、046()ゆる()(ほのほ)(すゑ)より()づる黒煙(こくえん)(ごと)く、047鈍濁(どんだく)()()(かた)まりて、048美醜(びしう)善悪(ぜんあく)次第(しだい)区別(くべつ)(しやう)じ、049最初(さいしよ)(かみ)意志(いし)(ごと)永久(とこしへ)至善(しぜん)050至美(しび)051至尊(しそん)052至厳(しげん)なる(こと)053全体(ぜんたい)(おい)(あた)はざるに(いた)れるも、054霊的(れいてき)自然(しぜん)結果(けつくわ)にして、055如何(いか)造化(ざうくわ)神徳(しんとく)(いへど)も、056()醜悪(しうあく)絶滅(ぜつめつ)する余地(よち)なかりしなり。
057 (すべ)宇宙(うちう)一切(いつさい)のものには霊的(れいてき)にも、058体的(たいてき)にも表裏(へうり)あり、059善悪(ぜんあく)美醜(びしう)(こん)(まじ)はりて、060(しか)して(のち)確乎(かくこ)不動(ふどう)霊物(れいぶつ)創造(さうざう)さるるものなり。061(かみ)至善(しぜん)至美(しび)至愛(しあい)にましませども、062年処(ねんしよ)()るに(したが)つて醜悪(しうあく)分子(ぶんし)湧出(ゆうしゆつ)するは、063(あたか)清水(せいすゐ)(なが)一所(ひとところ)(とど)まれば、064次第(しだい)混濁(こんだく)して腐敗(ふはい)し、065昆虫(こんちう)発生(はつせい)するが(ごと)し。
066 天之(あめの)道立(みちたつ)(かみ)は、067()(かみ)至善(しぜん)068至美(しび)069至愛(しあい)霊性(れいせい)摂受(せつじゆ)(たま)ひて、070紫天界(してんかい)円満(ゑんまん)清朗(せいらう)()幸福(かうふく)諸神(しよしん)安住(あんぢう)せしめむと、071昼夜(ちうや)(まも)りの四神(ししん)をして神事(しんじ)()(おこな)(たま)へど、072惟神(かむながら)自然(しぜん)真理(しんり)如何(いかん)ともするに(よし)なく、073さしもの紫天界(してんかい)にも、074彼方(かなた)075此方(こなた)隅々(すみずみ)妖邪(えうじや)()発生(はつせい)し、076やうやく紫天界(してんかい)擾乱(ぜうらん)国土(こくど)(くわ)せむとせり。077(ここ)天之(あめの)道立(みちたつ)(かみ)は、078()形勢(けいせい)(ふか)憂慮(いうりよ)(たま)ひて、079天極(てんきよく)紫微宮(しびきう)朝夕(てうせき)(まう)で、080(あま)数歌(かずうた)奏上(そうじやう)し、081かつ三十一(みそひと)文字(もじ)をもつて、082妖邪(えうじや)()剿滅(さうめつ)せむと(はか)(たま)ふぞ(かしこ)けれ。
083 天之(あめの)道立(みちたつ)(かみ)黄金(わうごん)(はだ)(うるは)しく、084裸体(らたい)にて神前(しんぜん)神嘉言(かむよごと)奏上(そうじやう)(たま)ふ。085紫微圏(しびけん)(かい)最奥(さいおう)天界(てんかい)にして、086此所(ここ)(ぢう)する神々(かみがみ)(すべ)裸体(らたい)にましませり。087(しか)りと(いへど)身心(しんしん)(とも)清浄(せいじやう)無垢(むく)にましませば、088現在(げんざい)地球人(ちきうじん)(ごと)醜態(しうたい)(かん)ずることなく、089裸体(らたい)そのものが、090(かへ)つて(うるは)しく、091かつ荘厳(さうごん)(かがや)(たま)ふなり。092()つて最奥(さいおう)天界(てんかい)093第一(だいいち)天界(てんかい)神人(しんじん)はいづれも裸体(らたい)()(こと)は、094今日迄(こんにちまで)霊界(れいかい)物語(ものがたり)(おい)説明(せつめい)したる(ごと)し)
095掛巻(かけまく)(あや)(かしこ)きむらむらさきの、096極微点(こごこ)(かがや)き、097(うるは)しき宮居(みやゐ)にます()大神(おほかみ)大御前(おほみまへ)斎司(いはひつかさ)098天之(あめの)道立(みちたつ)(かみ)099(つつし)(ゐやま)(かしこ)(かしこ)()ぎまつる。100(そもそも)この紫微圏(しびけん)(かい)は、101()大神(おほかみ)とます天之(あまの)峯火夫(みねひを)(かみ)102宇迦須美(うがすみ)(かみ)103天津(あまつ)日鉾(ひほこ)(かみ)三柱(みはしら)(ひろ)(ふか)雄々(をを)しき御稜威(みいづ)により、104(ひと)(ふた)()(ちから)もて𪫧怜(うまら)委曲(つばら)(つく)(かた)(たま)ひけるを、105()(かさ)ね、106(つき)(けみ)し、107(とし)()るままに御世(みよ)はややややに(にご)(くも)らひ、108いとも(うるは)しく、109(おごそ)かなるべき紫天界(してんかい)(いた)るところに(こころ)(きたな)神々(かみがみ)(あらは)(きた)りて、110()大神(おほかみ)大御心(おほみこころ)(そむ)きまつり、111神国(みくに)(みだ)しまつる(こと)のいとも(かしこ)く、112いみじくあれば、113()(まも)り、114()(まも)りと四柱(よはしら)(かみ)四方(よも)にくまりて(をし)(さと)(まも)りまつれど、115あまりに(ひろ)(くに)にしあれば、116如何(いか)(また)きを(のぞ)()む。117さはあれ(われ)()(かみ)大宮(おほみや)(つか)へまつる()にしあれば、118天津誠(あまつまこと)大道(おほみち)𪫧怜(うまら)委曲(つばら)()(あか)し、119もろもろの(あら)ぶる(かみ)(たち)言向(ことむ)()はし、120大御神(おほみかみ)御稜威(みいづ)をかかぶりて紫天界(してんかい)(かみ)(つく)らしし(むかし)にかへり、121(くも)りなく(にご)りなく、122(まが)()だに(とど)めじと、123(いの)(まこと)(きこ)()し、124(われ)(ちから)(あた)(たま)へ。125惟神(かむながら)(かみ)大前(おほまへ)(ひと)(ふた)()()(いつ)(むゆ)(なな)()(ここの)(たり)(もも)()(よろづ)布留辺由良(ふるべゆら)126布留辺(ふるべ)由良(ゆら)由良(ゆら)(ぬさ)()()り、127比礼(ひれ)()(なび)け、128大御(おほみ)神楽(かぐら)(かな)でつつ、129左手(ゆんで)御鈴(みすゞ)()ちふり、130右手(めて)(ぬさ)ふりかざし、131七十五(しちじふご)(せい)言霊(ことたま)𪫧怜(うまら)委曲(つばら)()りまつる。132(この)有様(ありさま)(たひら)けく(やす)らけく(きこ)()相諾(あひうづな)(たま)へと、133(かしこ)(かしこ)みも()ぎまつる』
134 ()太祝詞(ふとのりと)()(たま)へば、135紫微宮(しびきう)紫金(しこん)(とびら)はキーキー、136ギーギーと御音(みおと)(すが)しく左右(さいう)にあけ(はな)たれ、137(ここ)にキの言霊(ことたま)()()で、138(つぎ)にギの言霊(ことたま)()()でましぬ。139(これ)より四方(よも)曲津(まがつ)()(はら)ひ、140(きよ)()まし、141(てん)(きよ)く、142(かみ)(きよ)く、143(みち)(また)(きよ)く、144百神(ももがみ)(にご)れる(こころ)(きよ)まりて紫微(しび)天界(てんかい)次第(しだい)々々(しだい)妖邪(えうじや)()()()せにける。145さりながら大前(おほまへ)神嘉言(かむよごと)一日(ひとひ)だも(をこた)(とき)(ふたた)妖邪(えうじや)()()()でて()(くも)らせ、146諸神(しよしん)(あら)(みだ)るるに(いた)るこそ是非(ぜひ)なけれ。
147 (ここ)天之(あめの)道立(みちたつ)(かみ)は、148朝夕(あさゆふ)のわかちなく、149(かみ)(まつ)り、150言霊(ことたま)()り、151妖邪(えうじや)()(はら)はむとして(はら)ひ、152言葉(ことば)(いさを)いやちこなることを(さと)り、153(はじ)めて太祓(おほはら)ひの(みち)(ひら)(たま)ひしこそ(かしこ)けれ。154再拝(さいはい)
155昭和八・一〇・九 旧八・二〇 於天恩郷高天閣 加藤明子・森良仁謹録)