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入蒙記 > 第1篇 日本より奉天まで > 第1章 水火訓
第一章 水火訓
001神の稜威も高熊山の
003神徳四方に三葉彦 004神の精霊を相宿し
005黄金世界を開かむと
007告ぐる夕の月の空 008干支に因みし十二の日
009小判千両掘出して 010神の御国に献り
011三千世界の蒼生を
013天国浄土に救はむと 014一二三四五つ六つ
015七つの春の弥生空 016富士の高根に仕へたる
017松岡神使が現はれて 018朝な夕なに身魂をば
019守らせ玉ひ二十まり 020八つの御年も如月の
026不二の神山に参まうで
028心の色も丹波の
029再び郷里に立返り 030西や東や北南
033明治は三十一年の 034文月下旬となりければ
035神の御言を畏みて
037西の御空を眺むれば
040東に愛宕の霊峰は
041城丹両国睥睨し 042南に妙見聳え立ち
043北に帝釈大悲山
046北へ北へと歩を運ぶ
048心も高砂池の辺を
049辿りて数多の信徒を 050救ひやらむと只一人
052送られ乍ら進み行く
053小林小河鷹林
056並木の松の片ほとり
059渇を医せむと門の戸を
061此家の妻と思はしき 062一人の婦人が現はれて
063かけた茶碗を揺る様に 064ガチヤガチヤガチヤと喋り出す
067船井の都会八木の町 068道の広瀬や鳥羽の里
069風さへ暑き室河原 070小山松原乗越えて
071花の園部に安着し
073観音坂や須知町
075歩みも一二三の宮 076神歌を歌ひ声さへも
078大原神社を伏拝み
079台頭須知山乗こえて 080風吹きわたる小雲川
082水無月神社を右に見て
086神の使命の重くして
087二十五年の其間 088艱難辛苦を堪へ忍び
089時節来りて神業の
093名田彦守高両人を
095渡り蒙古の大原野 096神政成就の先駆と
099時節来りて説きそむる 100大国常立大御神
101神素盞嗚の大御神
104述べさせ玉へと願ぎ奉る。
105 国照姫は国祖大神の勅を受け、106水を以て所在天下の蒼生にバプテスマを施さむと、107明治の二十五年より、108神定の霊地綾部の里に於て、109人間界の誤れる行為を矯正し、110地上天国を建設すべく、111其先駆として昼夜間断なく、112営々孜々として、113神教を伝達された。114水を以て洗礼を施すといふは、115決して朝夕清水を頭上よりあびる計りを云ふのではない。116自然界は凡て形体の世界であり、117生物は凡て水に仍つて発育を遂げてゐる。118水は動植物にとつて欠く可からざる資料であり、119生活の必要品である。120現代は仁義道徳廃頽し、121五倫五常の道は盛に叫ばるると雖も、122其実行を企てたる者は絶えてない。123神界に於ては先づ天界の基礎たる現実界に向つて、124改造の叫びをあげられたのである。125国常立尊の大神霊は精霊界にまします稚姫君命の精霊に御霊を充たし、126予言者国照姫の肉体に来らしめ、127所謂大神は間接内流の法式に依つて、128過去現在未来の有様を概括的に伝達せしめ玉ふたのが、129一万巻の筆先となつて現はれたのである。130此神諭は自然界に対し、131先づ第一人間の言語動作を改めしめ、132而して後深遠微妙なる真理を万民に伝へむが為の準備をなさしめられたのである。133凡て現世界の肉体人を教へ導き、134安逸なる生活を送らしめ、135風水火の災も饑病戦の憂もなき様、136所謂黄金世界を建造せむとするの神業を称して水洗礼といふのである。
137 国照姫の肉体は其肉体の智慧証覚の度合によつて、138救世主出現の基礎を造るべく、139且其先駆者として、140神命のまにまに地上に出現されたのである。141国照姫の命のみならず、142今日迄世の中に現はれたる救世主又は予言者などは、143何れも自然界を主となし、144霊界を従として、145地上の人間に天界の教の一部を伝達してゐたのである。146釈迦、147キリスト、148マホメツト、149孔子、150孟子其他世界の所在先哲も、151皆神界の命をうけて地上に現はれた者であるが、152霊界の真相は何時も説いてゐない。153釈迦の如きは稍霊界の消息を綿密に説いてゐるようではあるが、154何れも比喩や偶言、155謎等にて茫漠たるものである。156其実、157未だ釈迦と雖、158天界の真相を説くことを許されてゐなかつたのである。159キリストは、160吾弟子共より天国の状態は如何に……と尋ねられた時『地上にあつて地上のことさへも知らない人間に対し、161天国をといたとて、162どうして天国のことが受入れられうぞ』と答へてゐる。163神は時代相応、164必要に仍つて、165教を伝達されるのであるから、166未だキリストに対して、167天国の真相を伝へられなかつたのである。168又其必要を認めなかつたのである。169然るに今日は人智漸く進み、170物質的科学は殆ど終点に達し、171人心益々不安に陥り、172宇宙の神霊を認めない者、173又は神霊の有無を疑ふ者、174及無神論さへも称ふる様になつて来た。175かかる精神界の混乱時代に対し、176水洗礼たる今迄の予言者や救世主の教理を以ては、177到底成神成仏の域に達し、178安心立命を心から得ることが出来なくなつたのである。179故に神は現幽相応の理に仍つて、180火の洗礼たる霊界の消息を最も適確に如実に顕彰して、181世界人類を覚醒せしむる必要に迫られたので、182言霊別の精霊を地上の予言者の体に降されたのである。
183 曾てヨハネはヨルダン川に於て、184水を以て下民に洗礼を施してゐた時、185今後来るべき者は我よりも大なる者である。186そして我は水を以て洗礼を施し、187彼は火を以て洗礼を施すと予言してゐた。188それは所謂キリストを指したのである。189併し乍らキリストはヨハネより水の洗礼を受け、190之より進んで天下に向つて火の洗礼を施すべく準備してゐた時、191天意に依つて、192火の洗礼を施すに至らず、193遂に十字架上の露と消えて了つたのである。194彼は死後弟子共の前に姿を現はし、195山上の遺訓なるものを遺したといふ。196併し此遺訓は何れも現界人を信仰に導く為の神諭であつて、197決して火の洗礼ではない。198故に彼は再び地上に再臨して火の洗礼を施すべく誓つて昇天したのである。199火の洗礼と云つても東京の大震災、200大火災の如きものを云ふのではない。201大火災は物質界の洗礼であるから、202之は矢張り水の洗礼といふべきものである。203火の洗礼は霊主体従的神業であつて、204霊界を主となし、205現界を従となしたる教理であり、206水の洗礼は体主霊従といつて、207現界人の行為を主とし、208死後の霊界を従となして説き初めた教である。209故に水洗礼に偏するも正鵠を得たものでないと共に、210火洗礼の教に偏するも亦正鵠を得たものでない。211要するに霊が主となるか、212体が主となるかの差異があるのみである。
213 茲にいよいよ火の洗礼を施すべき源日出雄の肉体は言霊別の精霊を宿し、214真澄別は治国別の精霊を其肉体に充たし、215神業完成の為に、216野蛮未開の地より神教の種子を植付けむと、217神命に仍つて活動したのである。218あゝ惟神霊幸はへませ。