第一章 宇宙(うちう)太元(たいげん)〔二五一〕

001 大宇宙(だいうちう)元始(げんし)(あた)つて、002湯気(ゆげ)とも(けむり)とも(なん)とも形容(けいよう)仕難(しがた)一種(いつしゆ)異様(いやう)微妙(びめう)のものが(ただよ)()たり。003この(もの)(ほとん)十億(じふおく)年間(ねんかん)歳月(さいげつ)()て、004一種(いつしゆ)無形(むけい)005無声(むせい)006無色(むしよく)霊物(れいぶつ)となりたり。007(これ)宇宙(うちう)大元霊(だいげんれい)()ふ。008()神典(しんてん)にては、009天御中主(あめのみなかぬしの)(かみ)(とな)(また)天之(あまの)峰火男(みねひを)(かみ)(しよう)し、010仏典(ぶつてん)にては阿弥陀(あみだ)如来(によらい)(しよう)し、011キリスト(けう)にては、012ゴツド(また)はゼウスと()ひ、013易学(えきがく)にては太極(たいきよく)()ひ、014支那(しな)にては天主(てんしゆ)015天帝(てんてい)016(また)(たん)(てん)()をもつて(しめ)され()るなり。017(くに)によつては造物主(ざうぶつしゆ)018(また)世界(せかい)創造者(さうざうしや)とも()ふあり。019この天御中主(あめのみなかぬしの)(かみ)霊徳(れいとく)は、020漸次(ぜんじ)宇宙(うちう)瀰漫(びまん)し、021氤氳(いんうん)化醇(くわじゆん)して(つひ)(れい)022(りよく)023(たい)完成(くわんせい)し、024無始(むし)無終(むしう)無限(むげん)絶対(ぜつたい)大宇宙(だいうちう)森羅(しんら)万象(ばんしやう)完成(くわんせい)したる(かみ)(しよう)して大国治立(おほくにはるたちの)(みこと)一名(いちめい)天常立(あめのとこたちの)(みこと))と()ひ、025ミロクの大神(おほかみ)とも()ふなり。
026 宇宙(うちう)大原因(だいげんいん)たる、027一種(いつしゆ)微妙(びめう)霊物(れいぶつ)028天御中主(あめのみなかぬしの)(かみ)無色(むしよく)無形(むけい)無声(むせい)純霊(じゆんれい)(つひ)霊力(れいりよく)産出(さんしゆつ)するに(いた)れり。029これを霊系(れいけい)祖神(そしん)高皇(たかみ)産霊(むすびの)(かみ)()ふ。030(つぎ)元子(げんし)031所謂(いはゆる)水素(すゐそ)(また元素(げんそ)といふ)を醸成(じやうせい)した、032(これ)体系(たいけい)祖神(そしん)神皇(かむみ)産霊(むすびの)(かみ)といふ。033(れい)陽主(やうしゆ)陰従(いんじゆう)にして、034(たい)陰主(いんしゆ)陽従(やうじゆう)なり。035かくして(この)二神(にしん)(れい)(たい)とより一種(いつしゆ)異様(いやう)力徳(りきとく)(しやう)じたり。036(これ)霊体(ちから)といふ。037ほとんど三十億(さんじふおく)(ねん)歳月(さいげつ)(えう)して、038霊力体(れいりよくたい)のやや完全(くわんぜん)()することを()たるなりき。039皇典(くわうてん)(おい)ては、040(これ)造化(ざうくわ)三神(さんしん)といふ。041(ここ)完全(くわんぜん)なる水素(すゐそ)産出(さんしゆつ)した。042水素(すゐそ)漸次(ぜんじ)集合(しふがふ)して現今(げんこん)()むごとき清水(せいすゐ)となりぬ。043この清水(せいすゐ)には高皇(たかみ)産霊(むすびの)(かみ)火霊(くわれい)宿(やど)し、044よく流動(りうどう)する(ちから)(そな)はりぬ。045(みづ)(うご)かすものは()にして、046()(はたら)かすものは(みづ)なることは第四(だいよん)(くわん)()べたるがごとし。047この(みづ)流体(りうたい)を、048神典(しんてん)にては葦芽(あしがひ)彦遅(ひこぢの)(かみ)といふ。049一切(いつさい)動物(どうぶつ)根元(こんげん)をなし、050(これ)霊系(れいけい)(すなは)()(れい)宿(やど)して一種(いつしゆ)力徳(りきとく)発生(はつせい)し、051動物(どうぶつ)本質(ほんしつ)となる。052神祇官(しんぎくわん)所祭(しよさい)生魂(いくむすび)これなり。053(つぎ)火水(ひみづ)抱合(はうがふ)して一種(いつしゆ)固形(こけい)物体(ぶつたい)発生(はつせい)し、054宇宙(うちう)一切(いつさい)修理(しうり)固成(こせい)するの根元力(こんげんりよく)となる。055(これ)常立(とこたちの)(かみ)といひ、056剛体素(がうたいそ)といふ。057神祇官(しんぎくわん)所祭(しよさい)玉留魂(たまつめむすび)これなり。058(きん)059(ぎん)060(どう)061(てつ)062(りん)063(すな)064(いし)(とう)はこの玉留魂(たまつめむすび)(もつと)多量(たりやう)包含(はうがん)し、065万有(ばんいう)一切(いつさい)(ほね)となり()るなり。066この剛体素(がうたいそ)067玉留魂(たまつめむすび)完成(くわんせい)するまでに太初(たいしよ)より(ほとん)五十億(ごじふおく)(ねん)(つひや)しゐるなり。068(ここ)海月(くらげ)なす(ただよ)へる宇宙(うちう)(やうや)固体(こたい)(そな)ふるに(いた)りぬ。069この(みづ)胞衣(えな)となして創造(さうざう)されたる宇宙(うちう)一切(いつさい)円形(ゑんけい)なるは、070(みづ)微粒子(びりうし)円形(ゑんけい)なるに(もとづ)くものなり。071剛体(がうたい)玉留魂(たまつめむすび)072(すなは)常立(とこたち)(みこと)神威(しんゐ)発動(はつどう)()つて、073日地(ひつち)月星(つきほし)(やうや)形成(けいせい)されたり。074されど第一(だいいつ)(くわん)()ぶるがごとく、075大宇宙(だいうちう)(いち)小部分(せうぶぶん)たる()宇宙(うちう)大地(だいち)は、076あたかも炮烙(はうらく)()せたるが(ごと)(やま)と、077剛流(がうりう)混淆(こんかう)したる泥海(どろうみ)なりしなり。
078 (ここ)絶対(ぜつたい)無限力(むげんりよく)玉留魂(たまつめむすび)(かみ)弥々(いよいよ)その神徳(しんとく)発揮(はつき)して大地(だいち)海陸(かいりく)区別(くべつ)し、079清軽(せいけい)なるものは(たなび)きて大空(たいくう)となり、080重濁(ぢうだく)なるものは淹滞(えんたい)して(した)(とど)まり、081大地(だいち)形成(けいせい)したり。082されど(この)(とき)宇宙(うちう)天地(てんち)生物(せいぶつ)(かげ)(いま)()かりけり。083ここに流剛(りうがう)すなはち生魂(いくむすび)玉留魂(たまつめむすび)との水火(いき)(がつ)して不完全(ふくわんぜん)なる呼吸(こきふ)(いとな)み、084(その)(うち)より植物(しよくぶつ)本質(ほんしつ)たる柔体(じうたい)足魂(たるむすび)完成(くわんせい)したり。085(これ)神典(しんてん)にては豊雲淳(とよくもぬの)(みこと)といふなり。086いよいよ宇宙(うちう)(れい)087(りよく)088(たい)元子(げんし)なる、089剛柔流(がうじうりう)本質(ほんしつ)完成(くわんせい)されたのである。090されど宇宙(うちう)(いま)だその活動(くわつどう)開始(かいし)するに(いた)らなかつた。091これらの元子(げんし)元因(げんいん)とは(たがひ)生成(せいせい)化育(くわいく)し、092(ちから)はますます発達(はつたつ)して、093(どう)094(せい)095(かい)096(ぎよう)097(いん)098()099(ぶん)100(がふ)八力(はちりき)産出(さんしゆつ)した。101神典(しんてん)にては、102宇宙(うちう)動力(どうりよく)大戸地(おほとのぢの)(かみ)といひ、103静力(せいりよく)大戸辺(おほとのべの)(かみ)といひ、104解力(かいりよく)宇比地根(うひぢねの)(かみ)といひ、105凝力(ぎようりよく)須比地根(すひぢねの)(かみ)といひ、106また引力(いんりよく)生杙(いくぐひの)(かみ)といひ、107弛力(ちりよく)角杙(つぬぐひの)(かみ)「生杙神」「角杙神」の「くひ」の字は、御校正本(p12)・校定版(p14)では「枠」、愛世版(p12)では「杙」。古事記では「杙」である。「枠」は「くい」ではなく「わく」であり、誤字だろうから、霊界物語ネットでは「杙」を使う。といひ、108合力(がふりよく)面足(おもたるの)(かみ)といひ、109分力(ぶんりよく)惶根(かしこねの)(かみ)といふ。110この八力(はちりき)完成(くわんせい)して(はじ)めて宇宙(うちう)組織(そしき)成就(じやうじゆ)し、111大空(たいくう)(かか)れる太陽(たいやう)は、112無数(むすう)星晨(せいしん)相互(さうご)(どう)113(せい)114(かい)115(ぎよう)116(いん)117()118(ぶん)119(がふ)八力(はちりき)各自(かくじ)活動(くわつどう)によつて、120その地位(ちゐ)(たも)大地(だいち)(また)この八力(はちりき)によつて、121その地位(ちゐ)保持(ほぢ)する(こと)となりしなり。122かくして大宇宙(だいうちう)完成(くわんせい)(いた)るまで(ほとん)五十六(ごじふろく)億万(おくまん)(ねん)(つひや)した。
123 (ここ)宇宙(うちう)主宰神(しゆさいしん)顕現(けんげん)(たま)無限(むげん)絶対(ぜつたい)(ちから)を、124大国治立(おほくにはるたちの)(みこと)(しよう)(たてまつ)る。125国治立(くにはるたちの)(みこと)は、126豊雲淳(とよくもぬの)(みこと)(また)御名(みな)豊国姫(とよくにひめの)(みこと))と剛柔(がうじう)相対(あひたい)して地上(ちじやう)動植物(どうしよくぶつ)生成(せいせい)化育(くわいく)し、127二神(にしん)水火(いき)より諾冊(なぎなみ)二尊(にそん)()み、128日月(じつげつ)(つく)りてその主宰神(しゆさいしん)たらしめたまひける。
129 かくて大宇宙(だいうちう)大原因(だいげんいん)(れい)たる天御中主(あめのみなかぬしの)(かみ)五十六(ごじふろく)億万(おくまん)(ねん)()宇宙(うちう)一切(いつさい)創造(さうざう)し、130(ここ)大国治立(おほくにはるたちの)(みこと)顕現(けんげん)し、131その霊魂(れいこん)分派(ぶんぱ)して()宇宙(うちう)(くだ)したまへり。132(すなは)国治立(くにはるたちの)(みこと)これなり。133国治立(くにはるたちの)(みこと)仁慈(じんじ)無限(むげん)神政(しんせい)も、134(ほし)(うつ)(とし)(かさ)なるに()れて妖邪(えうじや)()135宇宙(うちう)瀰漫(びまん)し、136(つひ)にその邪気(じやき)のために(いち)()独神而(ひとりがみに)して隠身(かくりみ)なり』の必然(ひつぜん)(てき)経綸(けいりん)(おこな)はせたまふ(こと)とはなりける。137(しかし)霊界(れいかい)物語(ものがたり)第一(だいいつ)(くわん)より本巻(ほんくわん)(わた)口述(こうじゆつ)するところは、138大宇宙(だいうちう)完成(くわんせい)するまでに五十六(ごじふろく)億万(おくまん)(ねん)(えう)したる(とき)より以後(いご)(こと)()べたものなり。139これより以前(いぜん)(こと)は、140神々(かみがみ)として完全(くわんぜん)花々(はなばな)しき()活動(くわつどう)はなく、141(とき)(ちから)によりて氤氳(いんうん)化醇(くわじゆん)結果(けつくわ)142宇宙(うちう)形成(けいせい)するを()たれたるなり。
143大正一一・一・一六 旧大正一〇・一二・一九 加藤明子録)
144(序歌~第一章 昭和一〇・一・二七 於筑紫別院 王仁校正)