第一九章 祓戸四柱〔二六九〕
001日の神国を知食す 002神伊弉諾の大神は 003撞の御柱大御神 004神伊弉冊の大神と 005天と地との中空の 006黄金の橋に現はれて 008高皇産霊大御神 009神皇産霊大神の 010神勅畏み泥海を 011許袁呂許袁呂と掻き鳴して 013淤能碁呂島を胞衣となし 014神国を造り固めむと 015二仁の妻に手を曳かれ 016黄金の橋を渡会の 017天教山に下り立ちて 018木の花姫と語らひつ 019常磐堅磐の松の世を 020千代万代に築かむと 021月の世界を知食す 022神伊弉冊の大御神 023日の神国の主宰なる 024撞の御神と諸共に 025雪より清き玉柱 026見立て玉ひて目出度くも 027月雪花の神祭り 028一度に開く木の花の 029三十三相に身を変じ 030五十六億七千万 031長き月日を松の世の 033まづ淡島を生み玉ひ 034伊予の二名や筑紫島 035豊葦原の中津国 036雄島雌島や壱岐対馬 037佐渡や淡路の島々に 039山川木草の守り神 040各自各自に任け玉ひ 041治まる御代を三柱の 042撞の御柱大御神 043天の御柱大御神 044国の御柱大御神 046国祖の神の宣り玉ふ 047天に坐します御三柱 048実にも尊き有難き 049古き神代の物語 050聞くぞ目出度き今日の春 051百の草木に魁て 052匂ひ出でたる白梅の 053雪より清き其の香り 054一度に開く常磐木の 055常磐の松の茂りたる 056実にも尊き神の国 057須弥仙山に腰をかけ 058守り玉ひし野立彦 059野立の姫の二柱 060顕幽二界修理固成し 061根底の国を固めむと 062天教山の噴火口 063神の出口や入口と 064定めて茲に火の御国 065岩より固き真心は 066猛火の中も何のその 068溺れぬ身魂は鳴戸灘 069根底の国に到りまし 070浮瀬に落ちて苦しめる 071数多の身魂を救はむと 073我身一つに引き受けて 074三千年の昔より 075耐へ耐へし溜め涙 076晴れて嬉しき神の世の 078神の出口の物語 079鬼の来るてふ節分や 080四方の陽気も立つ春の 081撒く煎豆に咲く花の 082来る時節ぞ尊けれ。
083 天地の大変動により、084大地は南西に傾斜し、085其のため大空の大気に変動を起し、086数多の神人が、087唯一の武器として使用したる天磐樟船、088鳥船も、089宇宙の震動のため何の効力もなさざりき。090その時もつとも役立ちしは神示の方舟のみにして、091金銀銅の三橋より垂下する救ひの綱と、092琴平別が亀と化して、093泥海を泳ぎ、094正しき神人を高山に運びて救助したるのみなりける。
095 天上よりこの光景を眺めたる、096大国治立命の左守神なる高皇産霊神、097右守神なる神皇産霊神は、098我が精霊たる撞の大御神、099神伊弉諾の大神、100神伊弉冊の大神に天の瓊矛を授け黄金橋なる天の浮橋に立たしめ玉ひて、101海月の如く漂ひ騒ぐ滄溟を、102潮許袁呂許袁呂に掻き鳴し玉ひ、103日の大神の気吹によりて、104宇宙に清鮮の息を起し、105地上一切を乾燥し玉ひ、106総ての汚穢塵埃を払ひ退けしめ玉ひぬ。107この息よりなりませる神を伊吹戸主神と云ふ。
108 而して地上一面に泥に塗れたる草木の衣を脱がしめむため風を起し、109風に雨を添へて清めたまひぬ。110この水火より現はれたまへる神を速秋津比売神と云ふ。111再び山々の間に河川を通じ、112一切の汚物を神退ひに退ひ給ふ。113この御息を瀬織津比売神と云ふ。114瀬織津比売神は、115地上の各地より大海原に、116総ての汚れを持ち去り、117之を地底の国に持佐須良比失ふ、118この御息を速佐須良比売神と云ふ。119以上四柱の神を祓戸神と称し、120宇宙一切の新陳代謝の神界の大機関となしたまふ。121この機関によつて、122太陽、123大地、124太陰、125列星、126及び人類動植物に至るまで完全に呼吸し、127且つ新陳代謝の機能全く完備して、128各其の生活を完全ならしめ給へり。129この神業を九山八海の火燃輝のアオウエイの、130緒所（臍）の青木原に御禊祓ひたまふと云ふなり。
131 因に九山八海の火燃輝のアオウエイの御禊の神事については、132言霊学上甚深微妙の意味あれども、133これは後日閑を得て詳説する事となすべし。
134（大正一一・一・二〇 旧大正一〇・一二・二三 加藤明子録）