東山三十六峰みどりして花のみやこに初夏はきたれり
綾部より京都に帰りし南部氏は知己をたづねて大本を説く
金光の教に飽きし信徒は南部のやかたをさして寄り来る
大本ゆ京都に帰りし南部使は雄弁ふるひて信徒を集めり
河原町姉ケ小路の松原のやかたに南部は神のみち説く
野崎宗長松江元利はじめとし時田金太郎らあつまり来れり
松原の家にあつまるひとびとは金光教の人ばかりなり
蛸薬師八百屋の主の善吉は松原自由子の弟なりけり
金光の旧信者たちつぎつぎに家狭きまであつまり来る
松原は大工の職をいとなみて金光信者を集めゐたりき
孫三郎性懲もなく又しても女の色に目をひからせり
十七ケ所の金光教会開きたる彼は女にしくじりたる人
筆紙には尽しえざれど松原の家を南部は乱さむとせり
松原の高子と親しく交はれる梅田信之氏きたりて遊べり
松原の家のみだれを憤慨し高子ともなひ出でゆく梅田氏
京都市の信者の急報もだしがたくわれただ一人綾部をたち出づ
京極の喜劇の小屋の大寅座に松原が家の看板かけをり
明日よりは松原一家の喜劇ありとわれ聞きにつつ驚きにけり
こんなこと喜劇にされては大本の名をけがさむと案じたりけり
京都祇園の侠客山田重太郎の家をたづねて仲裁たのめり
祇園町侠客山田はすぐさまに馬鹿八座主にかけあひにけり
看板料五十余円を投げ出し松原家事件中止せしめぬ
山田氏らは仲裁たのみしが縁となり綾部大本の信徒となれり
南部氏の乱行やまず日をかさね信徒あきれて来らずなりぬ
その中に田中善吉野崎松井時田西村信仰やめず
折角に開けかけたる京都市の宣伝つひにゼロとなりけり
京都市の宣伝南部の失敗にまた役員は吾を譏れり