妻も子も綾部にのこして新年の朝を迎へし愛染坂の家に
博覧会
第五回帝国勧業博覧会天王寺附近に開かれにけり
博覧会めづらしみつつ幾度となく吾観覧に通ひたりけり
畏くも明治天皇馬車に召して臨場ありしを地に伏し拝みぬ
馬上ゆたかに笑ませ給へる御臨場の御姿拝せば涙こぼれし
百日間の会期を吾は四十五回通ひて文明の知識を拾へり
帰綾
綾部より幾度となく訪ね来てまた邪魔せられ手も足も出でず
止むを得ず心を決してはるばると綾部に帰り大槻家に入る
鹿造の館に帰りて安らへば竹村仲造かぎつけ来れり
大本へ洋服着ては帰らさぬと外套靴まで引きむしりたり
洋服遭難
止むを得ず和服に着替て大本に帰れば服を便所に捨てあり
インバネス、コートもシヤツも外套も靴ものこらず雪隠に浮けり
糞壷に西洋の着物捨てたりとしたり顔なる竹村仲造
竹村のあまりの好意にあきれ果て吾笑ふより外なかりけり
日露戦争予言
来年は日露戦争始まると吾が宣言をあごしやくり笑ふ
日露戦争の用意をせよとすすむれど役員一人も聞く者はなし
今年の八月九月が真つ盛り戦争があると頑張る竹村
神様がちやんと用憲をしてござる筆先読んでをればよいと言ふ
会長さん今に吠面かはくなと竹村ひとり豪然たりけり
竹村『目も鼻も開かぬ大変来ますぞや改心なされ変性女子様』
悪口宣伝
世の中の悪の鏡の会長が言葉を聞くなとふれ歩く竹村
竹村は山家以久田や丹後まで吾を悪しざまにふれ歩きたり
何も知らぬ信者はこれを真にうけて吾が通る後に塩まき散らせり
大阪で失敗致し悄悄と綾部に帰つてくすんでゐるとほざく
御開祖の命令そむき会長は乞食の如くになりしとふれ歩く
無学者と迷信家ほど恐ろしき者世にあらずとつくづく思へり