[#著:浅野和三郎]
『神霊界』新に世に出づ、蓋し時の力なり、神の力なり、而して又人の力なり、吾人は神人両界に亙りて多事なりし大正五年を送り、爰に生気萌え、希望萌え、新緑亦萌えなん六の歳の新春を迎へ読者と共に新たに霊の叫びを交さんとす。赤誠は吾人の本領、厳粛は吾人の主張、的確に神霊の世界の秘奥を探りて、而かも堅実に地歩を現界に踏まへ、邪を斥け、正を樹て、一方に於て、海の如き雅懐を以ていかなる罪悪の児をも容れ、煩悶の声にも耳を傾け、又いかなる疑議、抗言にも紙面を割きて、以て本紙を広く天下の研究場、告白所たらしむると同時に、他方に於ては、かの愚劣なる軟文学、かの不健全なる悪自然主義、かの亡国的、殺霊的、破壊的、遊戯的、但しは煽動的なるあらゆる異端、邪説、妄論、魔行、の撲滅を以て任じ、以て真理の宣伝、皇道の発耀に努力せんとす、由来大声は俚耳に入らず、真人は屡々迫害の厄を嘗む。思ふに本誌の前途は決して平々坦々なる能はじ。されど千百の犠牲も迫害も、誤解も、困難も、一たび、吾等同人の責任の重大にして、且其影響の甚深なるに想到せば、固より歯牙に掛くるに足らざるを覚ゆ。本誌の改題、刷新の議は歳末多事の際に起り、百忙一時に迫りて、内容、外観意に充たざるもの多けれど、軈て号を重ぬるに及びて、漸次面目を改め、希くは読者の期待に添ふことを得む、発刊に際し一言蕪言を陳す。