霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 露(つゆ)の宿(やど)〔四七四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第11巻 霊主体従 戌の巻 篇:第1篇 長駆進撃 よみ(新仮名遣い):ちょうくしんげき
章:第7章 露の宿 よみ(新仮名遣い):つゆのやど 通し章番号:474
口述日:1922(大正11)年02月28日(旧02月02日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年9月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
一行は新玉原を湖に向かって進んでいった。日も暮れてきたので、森の中で一夜の宿を取ることになった。
一行は神言を奏上し、宣伝歌を歌って眠りについた。そこへ付近の村人がやってきて、宣伝使たちの様子を伺っている。三五教の宣伝使を見つけたら捕えようと、待ち構えていたのであった。
男たちがどうやって捕えようか相談をしているときに、梅ケ香姫は目を覚まし、幽霊の振りをして男たちを追い払った。梅ケ香姫を一同を起こした。
すると向こうのほうから数十の松明がやってくるのが見える。群集は遠巻きに恐々と宣伝使たちの方にやってきた。群衆の中から、酒に酔った風の男が一人、宣伝使の前に現れた。
この男、鴨公は最初は威勢のいいことを言っていたが、やがて恐れをなして腰が抜けてへたってしまった。群集の中からさらに、鉄棒を携えた男が現れ、高彦、東彦に打ってかかった。
高彦、東彦は鉄棒をよけながら霊をかけると、鉄棒は葱のようにやわらかくなってしまった。逃げようとする男・勝公に対して、東彦の宣伝使は霊縛をかけた。村人たちは驚いて、てんでに逃げてしまった。
宣伝使たちはゆうゆうと西へ進んでいった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-08-11 19:37:38 文字数:5003 OBC :rm1107
愛善世界社版:60頁 八幡書店版:第2輯 535頁 修補版: 校定版:60頁 普及版:25頁 初版: ページ備考:
001 東彦(あづまひこの)神(かみ)[※石凝姥神の旧名]、002高彦(たかひこの)神(かみ)の宣伝使(せんでんし)は、003梅ケ香姫(うめがかひめ)、004月(つき)、005雪(ゆき)、006花(はな)の宣伝使(せんでんし)と共(とも)に一行(いつかう)六(ろく)人(にん)新玉原(あらたまはら)の枯野(かれの)を分(わ)けつつ宣伝歌(せんでんか)を口々(くちぐち)に歌(うた)つて、007明志(あかし)の湖(うみ)の方面(はうめん)指(さ)して進(すす)み行(ゆ)く。
008 日(ひ)は漸(やうや)く西(にし)に舂(うすづ)いて夕暮(ゆふぐれ)告(つ)ぐる鐘(かね)の音(ね)は仄(ほの)かに響(ひび)いて来(き)た。
009東彦(あづまひこ)『ヤア久(ひさ)し振(ぶ)りで鐘(かね)の音(ね)を聞(き)きました。010最早(もはや)人里(ひとざと)間近(まぢか)くなつたと見(み)えます。011併(しか)し乍(なが)ら日(ひ)も漸(やうや)く暮(くれ)かかりましたから、012幸(さいは)ひ彼方(むかう)に見(み)える森蔭(もりかげ)で一夜(いちや)を明(あか)しませうか』
013一同(いちどう)『さう致(いた)しませう』
014と森(もり)を目当(めあて)に疲(つか)れた脚(あし)を速(はや)めて進(すす)み行(ゆ)く。015千年(ちとせ)の老樹(らうじゆ)、016梢(こずゑ)の先(さき)まで苔(こけ)蒸(む)して昼(ひる)尚(なほ)暗(くら)き、017こんもりとした森蔭(もりかげ)である。
018東彦(あづまひこ)『ヤア月影(つきかげ)も、019星影(ほしかげ)も見(み)えぬ天然(てんねん)の家(いへ)の中(うち)、020今宵(こよひ)は久(ひさ)し振(ぶ)りで悠乎(ゆつくり)と休(やす)みませう』
021と云(い)ひ乍(なが)ら、022例(れい)の如(ごと)く神言(かみごと)を奏上(そうじやう)し、023宣伝歌(せんでんか)を謡(うた)ひ始(はじ)めた。
024東彦『神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
025善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわ)ける
026此(この)世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
027心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
028唯(ただ)何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
029直日(なほひ)に見直(みなほ)せ聞直(ききなほ)せ
030身(み)の過(あやまち)は詔(の)り直(なほ)せ
031日(ひ)の出神(でのかみ)や木(こ)の花(はな)の
032神(かみ)の依(よ)さしの宣伝使(せんでんし)
033クス野ケ原(のがはら)を行(ゆ)き過(す)ぎて
034漸(やうや)う此処(ここ)にきたの森(もり)
035神(かみ)の稜威(みいづ)も高彦(たかひこ)や
036梅ケ香(うめがか)匂(にほ)ふ神(かみ)の道(みち)
037空(そら)に輝(かがや)く秋月(あきづき)の
038心(こころ)も清(きよ)く照(て)り渡(わた)る
039五六七(みろく)の御代(みよ)を深雪姫(みゆきひめ)
040神(かみ)の教(をしへ)を開(ひら)かむと
041天教山(てんけうざん)の橘(たちばな)の
042姫(ひめ)の命(みこと)や東彦(あづまひこ)
043世(よ)は常闇(とこやみ)となるとても
044神(かみ)の守(まも)りは明(あきら)けく
045空(そら)照(て)り渡(わた)る東彦(あづまひこ)
046東(あづま)の空(そら)を彩(いろ)どりて
047豊栄(とよさか)昇(のぼ)る朝日子(あさひこ)の
048神(かみ)の教(をしへ)をまつぶさに
049明志(あかし)の湖(うみ)の底(そこ)深(ふか)く
050コーカス山(ざん)の峰(みね)高(たか)く
051しこのかうべを照(てら)しつつ
052功(いさを)は高(たか)きアーメニヤ
053荒振(あらぶ)る醜(しこ)のウラル彦(ひこ)
054ウラルの姫(ひめ)の荒魂(あらみたま)
055三五教(あななひけう)の言霊(ことたま)に
056言向(ことむ)け和(やは)す和魂(にぎみたま)
057神(かみ)の教(をしへ)も幸魂(さちみたま)
058悟(さとり)の道(みち)の奇魂(くしみたま)
059曲(まが)を直日(なほひ)の神魂(かむみたま)
060直日(なほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し
061醜(しこ)の叫(さけ)びを宣(の)り直(なほ)し
062空(そら)に輝(かがや)く月照(つきてる)の
063彦(ひこ)の命(みこと)の治(しら)す世(よ)に
064大足彦(おほだるひこ)や真澄姫(ますみひめ)
065恵(めぐみ)は四方(よも)に弘子(ひろやす)の
066神(かみ)の力(ちから)の現(あら)はれて
067この世(よ)に曲(まが)は少名彦(すくなひこ)
068かたき教(をしへ)も竜世姫(たつよひめ)
069空(そら)照(て)り渡(わた)る言霊(ことたま)の
070姫(ひめ)の命(みこと)の御恵(みめぐみ)に
071百(もも)の民草(たみくさ)純世姫(すみよひめ)
072豊国姫(とよくにひめ)の幸(さちは)ひて
073一度(いちど)に開(ひら)く木(こ)の花(はな)の
074姫(ひめ)の命(みこと)の奇魂(くしみたま)
075日(ひ)の出神(でのかみ)と現(あら)はれて
076浦安国(うらやすくに)と治(をさ)め行(ゆ)く
077ウラルの山(やま)の曲神(まがかみ)の
078八十(やそ)の曲津(まがつ)も悉(ことごと)く
079神(かみ)の息吹(いぶ)きに吹祓(ふきはら)ひ
080祓(はら)ひ清(きよ)むる神(かみ)の道(みち)
081朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
082月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
083たとへ大地(だいち)は沈(しづ)むとも
084ウラルの彦(ひこ)の曲業(まがわざ)を
085矯直(ためなほ)さずに置(お)くべきや
086詔(の)り直(なほ)させで置(お)くべきや
087奥(おく)のわからぬ神(かみ)の道(みち)
088底(そこ)ひも知(し)れぬ神(かみ)の恩(おん)
089底(そこ)ひも知(し)れぬ神(かみ)の恩(おん)
090天地(てんち)に響(ひび)く琵琶(びは)の湖(うみ)
091琵琶(びは)の言霊(ことたま)勇(いさ)ましく
092進(すす)む吾(われ)こそ尊(たふと)けれ
093神(かみ)の柱(はしら)ぞ尊(たふと)けれ』
094と異口(いく)同音(どうおん)に歌(うた)ひ終(をは)つて、095蓑(みの)を敷(し)き二男(になん)四女(しぢよ)の宣伝使(せんでんし)は、096やすやすと眠(ねむり)に就(つ)きぬ。
097 森蔭(もりかげ)より現(あら)はれた四五(しご)人(にん)の男(をとこ)、098差足(さしあし)抜足(ぬきあし)宣伝使(せんでんし)の前(まへ)に近寄(ちかよ)り来(きた)り、099寝息(ねいき)を考(かんが)へ、
100甲(かふ)『オイ、101何奴(どいつ)も此奴(こいつ)も、102よく草臥(くたびれ)果(は)てて潰(つぶ)れたやうになつてゐやがるワイ。103どうぢや今(いま)の間(うち)にソツと頸首(くびたま)に綱(つな)をかけて引張(ひつぱ)つて酋長(しうちやう)さんの所(ところ)へ連(つ)れて行(い)つたら何(ど)うだ』
104乙(おつ)『待(ま)て待(ま)て、105若(も)し慌(あわて)てウラル教(けう)の宣伝使(せんでんし)だつたら、106ドテライ御(お)目玉(めだま)を喰(くら)はにやならぬ、107それより気(き)を落(おち)つけて調(しら)べた上(うへ)の事(こと)にしようかい』
108甲(かふ)『それでも最前(さいぜん)宣伝歌(せんでんか)が聞(きこ)えて居(を)つたが、109何(ど)うやら節(ふし)廻(まは)しが三五教(あななひけう)らしかつたぞ。110月(つき)が照(て)るとか、111曇(くも)るとか云(い)つてゐたぢやないか』
112丙(へい)『定(きま)つたことだ。113今夜(こんや)の月(つき)を見(み)い。114照(て)つたり曇(くも)つたりしてゐるぢやないか。115三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)でなくても、116俺(おれ)等(ら)も月(つき)を見(み)たら、117照(て)るとか、118曇(くも)る位(くらゐ)は知(し)つとるワイ、119貴様(きさま)そんなことで三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)なぞと思(おも)つて下手(へた)をやつたら詰(つま)らぬぞ』
120丁(てい)『マア、121八釜敷(やかまし)う言(い)ふことはない。122先方(むかふ)は六(ろく)人(にん)だ。123此方(こつち)は五(ご)人(にん)、124一人(ひとり)宛(づつ)掴(つか)み合(あ)ひしてもモー一人(ひとり)残(のこ)つて居(を)る。125ようマア考(かんが)へて見(み)よ。126衆寡(しうくわ)敵(てき)せずと云(い)ふことがある』
127甲(かふ)『何(なに)を吐(ぬか)すんだい。128此方(こちら)は荒男(あらをとこ)五(ご)人(にん)、129先方(むかふ)は男(をとこ)が二人(ふたり)に女(をんな)が四(よ)人(にん)だ。130俺(おれ)一人(ひとり)でも女(をんな)だけは………』
131丁(てい)『貴様(きさま)の力(ちから)はそんなものだ。132併(しか)し乍(なが)ら貴様(きさま)の家(うち)のお福(ふく)のやうな女(をんな)だと思(おも)つたら、133的(あて)が外(はづ)れるぞ。134男(をとこ)の一人(ひとり)や二人(ふたり)は抓(つま)んで放(ほか)すやうな力(ちから)がなくて、135どうして天下(てんか)を廻(まは)ることが出来(でき)やうぞ。136たとへ一人(ひとり)対(たい)一人(ひとり)で組(く)み合(あ)うて見(み)た所(ところ)で、137先方(むかう)には一人(ひとり)空手(あきて)があるのだ。138其奴(そいつ)が一人(ひとり)残(のこ)りやがつて組(く)み合(あ)うとる俺(おれ)等(ら)の頭(あたま)をコンコンとやりやがつたら、139それこそ犬(いぬ)に噛(か)まれた様(やう)なものだ。140それだから多勢(たぜい)に無勢(ぶぜい)、141衆寡(しうくわ)敵(てき)せずと云(い)ふのだ』
142甲(かふ)『アヽ衆(しう)か』
143丁(てい)『莫迦(ばか)にすない。144愚図(ぐづ)々々(ぐづ)云(い)うて居(を)ると、145目(め)をさましやがつたら大変(たいへん)だ。146今(いま)の間(うち)に杢兵衛(もくべゑ)も八公(やつこう)も吉公(きちこう)も源公(げんこう)も、147村中(むらぢう)の脛腰(すねこし)の立(た)つ奴(やつ)は、148皆(みな)寄(よ)つて来(き)て遠捲(とほまき)に取捲(とりま)いて無理(むり)往生(わうじやう)に往生(わうじやう)さしてやらう』
149一同(いちどう)『さうだ、150それもよからう。151オイ八公(やつこう)、152貴様(きさま)一人(ひとり)ここに見張(みは)りをするのだ。153俺(おれ)等(ら)四(よ)人(にん)は手分(てわけ)をして皆(みんな)の奴(やつ)を非常(ひじやう)召集(せうしふ)だ』
154丁(てい)『オイ待(ま)て待(ま)て、155俺(おれ)も一緒(いつしよ)に連(つ)れて行(ゆ)かぬかい。156五(ご)人(にん)でさへも危(あぶな)いのに、157一人(ひとり)居(を)つて、158万一(もし)中途(ちうと)に目(め)でもさましやがつたら、159何(ど)うするか』
160甲(かふ)『何(ど)うするも、161斯(こ)うするも、162そんな事(こと)は知(し)らぬワイ。163八公(やつこう)が八裂(やつざ)きに会(あ)ふ迄(まで)のことだ』
164 斯(か)く囁(ささや)く声(こゑ)に、165梅ケ香姫(うめがかひめ)はフツト目(め)をさまし、166むくむくと起上(おきあ)がり、
167梅ケ香姫(うめがかひめ)『アヽ、168何(いづ)れの方(かた)か知(し)りませぬが、169水(みづ)がありましたら一杯(いつぱい)与(あた)えて頂戴(ちやうだい)な』
170甲(かふ)『ナニツ、171水(みづ)くれつて。172みずしらずの俺(おれ)に向(むか)つて水(みづ)一杯(いつぱい)頂戴(ちやうだい)なぞと、173幽霊(いうれい)か、174餓鬼(がき)のやうに此奴(こいつ)は一寸(ちよつと)可笑(をか)しいぞ。175ヤイコラ、176幽々(いういう)霊々(れいれい)奴(め)が』
177梅ケ香姫(うめがかひめ)『イーエ、178湯(ゆ)でなくても、179水(みづ)で結構(けつこう)でございます。180れいは後(あと)で』
181乙(おつ)『オイオイ、182矢張(やつぱ)り幽(いう)と霊(れい)とぢや、183水(みづ)くれと吐(ぬ)かす筈(はず)ぢや。184逃(に)げろ逃(に)げろ。185キヤアー』
186 バラバラと足音(あしおと)をさせ乍(なが)ら、187転(こ)けつ輾(まろ)びつ逃(に)げて行(ゆ)く。
188梅ケ香姫(うめがかひめ)『モシモシ、189皆(みな)さま、190折角(せつかく)御(お)寝(やす)みになつてる所(ところ)を御(お)目(め)をさまして済(す)みませぬが、191妙(めう)なものが参(まゐ)りまして、192何(なん)だか吾々(われわれ)の首(くび)に縄(なは)をかけて引張(ひつぱ)るとか、193下(さげ)るとか云(い)うてゐました。194チツト気(き)をつけねばなりませぬ』
195東彦(あづまひこ)『ナニツ、196首(くび)に縄(なは)をかける。197莫迦(ばか)にして居(ゐ)る。198我々(われわれ)を徳利(とつくり)と間違(まちが)へやがるな』
199高彦(たかひこ)『アハヽヽヽ、200とつくりと見(み)ないから間違(まちが)ふのだ。201そんなことは何(ど)うでもよい。202大分(だいぶ)に疲(つか)れた。203吾々(われわれ)も今晩(こんばん)は、204とつくりと寝(ね)ようかい』
205梅ケ香姫(うめがかひめ)『それでも怪(あや)しいことを云(い)つてゐました。206何(なん)でも酋長(しうちやう)にいふとか、207れいを貰(もら)はうとか云(い)うてゐましたぜ』
208東彦(あづまひこ)『そら大変(たいへん)だ。209彼奴(あいつ)はウラル彦(ひこ)の目付(めつけ)かも知(し)れぬ。210油断(ゆだん)は大敵(たいてき)だ。211サア、212月(つき)、213雪(ゆき)、214花(はな)の三(さん)人(にん)さまも起(おき)なさい起(おき)なさい。215是(これ)から戦闘(せんとう)準備(じゆんび)だ』
216 一同(いちどう)は眠(ねむ)りをさまし、217身仕度(みじたく)を為(な)し、218幽(かす)かに宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)つてゐる。219前方(ぜんぱう)を見(み)れば、220ワイワイと人声(ひとごゑ)が聞(きこ)えて来(き)た。221数十(すうじふ)の松明(たいまつ)は朧夜(おぼろよ)を照(てら)して皎々(かうかう)と輝(かがや)き乍(なが)ら此方(こちら)に向(むか)つて走(はし)つて来(く)る。
222東彦(あづまひこ)『ヤア、223捕手(とりて)だ。224皆(みな)さま、225一人(ひとり)々々(ひとり)は面倒(めんだう)だ。226出(で)て来(く)る奴(やつ)を残(のこ)らず言向(ことむ)け和(やは)さう。227宣伝使(せんでんし)は一人旅(ひとりたび)と定(きま)つてゐるのに、228妙(めう)な拍子(ひやうし)に六人(ろくにん)連(づ)れになつて、229神(かみ)様(さま)に御(お)叱(しか)りを受(う)けねばよいがと心配(しんぱい)して居(ゐ)た所(ところ)だ。230これ丈(だけ)沢山(たくさん)やつて来(く)れば、231六人前(ろくにんまへ)の仕事(しごと)には沢山(たくさん)だ。232代(かは)る代(がは)る言向(ことむ)け和(やは)すことにしませうかねー。233併(しか)し乍(なが)ら何(なに)を持(も)つて居(を)るか分(わか)らぬから、234気(き)をつけねばなりませぬ。235女(をんな)の方(かた)の宣伝使(せんでんし)さまは、236吾々(われわれ)の後(うしろ)の方(はう)に屈(かが)んで宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひなさい。237二人(ふたり)は力(ちから)一杯(いつぱい)大声(おほごゑ)で呶鳴(どな)つてやりませう』
238 群衆(ぐんしう)はチクチクと怖(こは)さうに松明(たいまつ)を振(ふ)り翳(かざ)して、239森(もり)を目蒐(めが)けて進(すす)んで来(き)た。240群衆(ぐんしう)の中(なか)より一人(ひとり)の男(をとこ)、241片肌(かたはだ)を脱(ぬ)ぎ、242稍(やや)酒気(しゆき)を帯(お)び乍(なが)ら彼方(あちら)へヒヨロヒヨロ、243此方(こちら)へヒヨロヒヨロ、244千鳥足(ちどりあし)危(あやふ)く杖(つゑ)をつき乍(なが)ら、245つかつかと宣伝使(せんでんし)の前(まへ)に現(あら)はれた。
246男(をとこ)(鴨公)『ヤイ貴様(きさま)は何処(どこ)の奴(やつ)だい。247セヽヽ宣伝使(せんでんし)だろ。248ここはウラル彦(ひこ)の神(かみ)様(さま)の御(ご)領分(りやうぶん)だぞ。249三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)とか云(い)ひやがつて、250生命(いのち)知(し)らず奴(め)が』
251東彦(あづまひこ)『ヤア貴方(あなた)は此(この)里(さと)の御(お)方(かた)と見(み)えますが、252我々(われわれ)は御(ご)推量(すゐりやう)の通(とほ)り三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)です』
253男(をとこ)(鴨公)『コラ、254俺(おれ)は斯(こ)う見(み)えても年寄(としよ)りぢやないぞ。255貴様(きさま)のやうな強(つよ)さうな面(つら)をしよつても、256いつかないつかな驚(おどろ)くやうな爺(ぢい)さまドツコイ兄(にい)さまだないわ。257サア、258れいか、259幽(いう)か、260正体(しやうまつ)か白状(はくじやう)せい』
261東彦(あづまひこ)『吾々(われわれ)は現界(げんかい)、262神界(しんかい)、263幽界(いうかい)の霊(れい)に対(たい)して』
264男(をとこ)(鴨公)『ナニツ、265幽界(いうかい)の、266霊(れい)のつて矢張(やつぱ)り怪体(けたい)な奴(やつ)だ。267オイオイ皆(みな)の奴(やつ)、268幽界(いうかい)だ霊界(れいかい)だ。269何(なに)を怖(こは)さうにしてやがるのだい。270早(はや)う松明(たいまつ)を持(も)つて来(こ)んかい。271化物(ばけもの)は火(ひ)をつき出(だ)したら消(き)えると云(い)ふことだ』
272 群衆(ぐんしう)の中(なか)より二三(にさん)人(にん)の男(をとこ)、273松明(たいまつ)を持(も)つた儘(まま)、274バタバタと男(をとこ)の前(まへ)に現(あら)はれ来(きた)り、
275二三人の男『オイ、276鴨(かも)、277何(なに)を愚図(ぐづ)々々(ぐづ)云(い)つてゐやがるのだ。278幽霊(いうれい)でも何(なん)でもないわ。279擬(まが)ふ方(かた)なき三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)だ。280貴様(きさま)日頃(ひごろ)の業託(ごふたく)に似(に)ず、281其(そ)の腰付(こしつき)は何(なん)だ。282逃(に)げ腰(ごし)になりやがつて尻(しり)を一町(いつちやう)程(ほど)も、283後方(こうはう)へ突出(つきだ)しやがつて、284其(そ)のざまつたら、285ないぢやないか。286ヤアヤア三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)、287何人(なんにん)居(を)るか知(し)らねども、288どうせ六(ろく)人(にん)な奴(やつ)ぢやあるまい。289尋常(じんじやう)に手(て)を廻(まは)せ』
290 四(よ)人(にん)の宣伝使(せんでんし)一度(いちど)に、
291四人『ホヽヽ、292可笑(をか)しいわ』
293鴨公(かもこう)『ヤアツ、294ソヽヽそれ見(み)い。295ホヽヽほうぢや。296オイオイ貴様(きさま)等(ら)ばかり逃(に)げて年寄(としより)を一人(ひとり)ほつとくのか』
297三(さん)人(にん)の男(をとこ)『エイ八釜敷(やかまし)いワイ。298貴様(きさま)の事(こと)どころか、299捨(す)てとけ、300放(ほつ)とけだ』
301鴨公(かもこう)『ヤイ、302待(ま)たぬか待(ま)たぬか』
303 六(ろく)人(にん)の宣伝使(せんでんし)は悠々(いういう)として鴨公(かもこう)の前(まへ)に現(あら)はれた。
304鴨公(かもこう)『コヽヽこら幽霊(いうれい)のバヽ化物(ばけもの)奴(め)が、305俺(おれ)をかもうと思(おも)つても、306さうは行(ゆ)かぬぞ。307俺(おれ)の名(な)は鴨(かも)さまだ。308かもうてくれるな。309ソヽヽそれより噛(か)みたければ、310彼方(あつち)に甘(うま)い奴(やつ)が、311何程(なんぼ)でも居(を)るワイ』
312高彦(たかひこ)『ヤア鴨(かも)さまとやら、313御(ご)心配(しんぱい)下(くだ)さるな。314我々(われわれ)は化物(ばけもの)でも、315何(なん)でもない。316三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)だ。317皆(みな)の方(かた)を此処(ここ)へ呼(よ)んで来(き)て下(くだ)さい。318我々(われわれ)たちが結構(けつこう)な話(はなし)を聴(き)かして上(あ)げよう、319盲(めくら)は目(め)が開(あ)き、320聾(つんぼ)は耳(みみ)が聞(きこ)え、321腰(こし)の抜(ぬ)けた者(もの)は腰(こし)が立(た)ち、322躄(ゐざり)は歩(ある)く、323それはそれは結構(けつこう)な教(をしへ)だ』
324鴨公(かもこう)『ヤイヤイ皆(みな)の奴(やつ)、325此奴(こいつ)はヤヽヽ矢張(やつぱ)り化物(ばけもの)だ。326盲(めくら)が目(め)が開(あ)くといひ、327躄(ゐざり)が立(た)つと云(い)ひくさる。328躄(ゐざり)が立(た)つても俺(おれ)の腰(こし)は立(た)たぬ。329ヤイヤイ噛(か)まれぬうちに助(たす)けぬかい助(たす)けぬかい』
330宣伝使(せんでんし)一同(いちどう)『アハヽヽヽ、331オホヽヽヽ』
332 又(また)もや群衆(ぐんしう)の中(なか)より頑丈(ぐわんぢやう)な一人(ひとり)の男(をとこ)、333鉄棒(かなぼう)を携(たづさ)へ現(あら)はれ来(き)たり、
334男(をとこ)(勝公)『何(なん)だ、335宣伝使(せんでんし)とやら、336アヽヽホヽヽと笑(わら)ひやがつて貴様(きさま)こそ余程(よつぽど)好(い)い阿呆(あほう)だ。337飛(と)んで火(ひ)に入(い)る夏(なつ)の虫(むし)、338これ程(ほど)ウラル彦(ひこ)の目付(めつけ)が沢山(たくさん)居(を)る所(ところ)へ、339ウカウカと出(で)て来(き)やがつて、340何(なに)を偉(えら)さうに云(い)ふのだ。341これでも喰(くら)へ』
342と云(い)ふより早(はや)く、343高彦(たかひこ)の肩先(かたさき)目(め)がけてウンと打(う)つた。344高彦(たかひこ)はひらりと体(たい)を躱(かは)した。345又(また)もや鉄棒(かなぼう)を前後(ぜんご)左右(さいう)に水車(みづぐるま)の如(ごと)く振(ふ)り廻(まは)してやつて来(く)る。
346 東彦(あづまひこ)、347高彦(たかひこ)は右(みぎ)に左(ひだり)に鉄棒(かなぼう)を避(よ)け乍(なが)ら、348ウンと一声(いつせい)霊(れい)をかけた。349忽(たちま)ち鉄棒(かなぼう)は葱(ねぎ)の如(ごと)くになつた。350其(そ)の男(をとこ)は無我(むが)夢中(むちう)になつて、351和(やはら)かになつた鉄棒(かなぼう)を振(ふ)り廻(まは)してゐる。352高彦(たかひこ)は地上(ちじやう)に安坐(あんざ)した。353男(をとこ)は一生(いつしやう)懸命(けんめい)頭上(づじやう)より打(う)ち下(おろ)す。
354男(をとこ)(勝公)『ヤア、355俺(おれ)はこの界隈(かいわい)に名(な)の響(ひび)いた勝(かつ)さまだ。356何時(いつ)でも負(まけ)たことの無(な)い、357勝(か)つ計(ばか)りだから勝(かつ)さまと云(い)はれてゐるのだ。358それに此奴(こいつ)はこの鉄棒(かなぼう)をこれだけ喰(くら)はしても素知(そし)らぬ顔(かほ)をしてゐやがる。359矢張(やつぱ)りバの字(じ)にケの字(じ)だ。360何(なん)ぢや鉄棒(かなぼう)が葱(ねぎ)のやうになりやがつた』
361と云(い)ひながら一目散(いちもくさん)に駆(か)け出(だ)さうとする。362東彦(あづまひこ)はウンと霊縛(れいばく)を施(ほどこ)した。363勝公(かつこう)は足(あし)を踏張(ふんば)つた限(ぎ)り化石(くわせき)のやうになつて了(しま)つた。
364東彦(あづまひこ)『オイ勝(かつ)さまとやら、365マア一時(ひととき)ほど懲(こら)して縛(しば)つて置(お)かう、366御(ご)苦労(くらう)だが此処(ここ)にさうして居(を)つて下(くだ)さい。367我々(われわれ)はこんな八釜敷(やかまし)い所(ところ)に安眠(あんみん)は出来(でき)ないから、368宿換(やどがへ)をする。369お前(まへ)が来(く)ると面倒(めんだう)だから硬(かた)めて置(お)く。370マア御(ご)ゆるりと、371左様(さやう)なら』
372と云(い)ひ乍(なが)ら、373一行(いつかう)六(ろく)人(にん)は宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひつつ又(また)もや西(にし)へ西(にし)へと進(すす)み行(ゆ)く。374数多(あまた)の村人(むらびと)は勝公(かつこう)の霊縛(れいばく)されしに驚(おどろ)いて、375各自(てんで)に逃(に)げ失(う)せ固(かた)く戸(と)を鎖(とざ)し家々(いへいへ)の火(ひ)を消(け)し小(ちひ)さくなつて慄(ふる)ひゐたり。
376六人『北(きた)の森(もり)にと馳(か)けついて
377一行(いつかう)ここに眠(ねむ)る時(とき)
378ひそびそ聞(きこ)ゆる人声(ひとごゑ)に
379梅ケ香姫(うめがかひめ)は目(め)をさまし
380水(みづ)をくれよとおとなへば
381怖(おぢ)けきつたる里人(さとびと)は
382幽(いう)ぢや霊(れい)ぢやと口々(くちぐち)に
383走(はし)つて何処(どこ)へか身(み)を匿(かく)す
384暫(しばら)くありて人(ひと)の声(こゑ)
385眼(まなこ)をあげて眺(なが)むれば
386提燈(ちやうちん)松明(たいまつ)ここ彼処(かしこ)
387腰(こし)の曲(まが)つた老爺(おやぢ)さま
388酒(さけ)の機嫌(きげん)で我(わが)前(まへ)に
389現(あら)はれ来(きた)り泡(あわ)を吹(ふ)く
390又(また)もや一人(ひとり)の荒男(あらをとこ)
391負(ま)けぬ嫌(きら)ひの勝(かつ)さまが
392鉄棒(かなぼう)打振(うちふ)り迫(せま)り来(く)る
393鎮魂(みたましづめ)の神術(かむわざ)を
394行(おこな)ひ見(み)れば鉄棒(かなぼう)は
395葱(ねぎ)の如(ごと)くに柔(やはら)かく
396打(う)てど打(う)てども応(こた)へぬに
397肝(きも)を潰(つぶ)して吾々(われわれ)を
398魔性(ましやう)の者(もの)と見誤(みあやま)り
399恐(おそ)れて逃(に)げむとする時(とき)に
400一寸(ちよつと)霊(れい)をばかけてやる
401忽(たちま)ち化石(くわせき)のやうになり
402脚(あし)をまたげたその儘(まま)に
403立(た)つて二(ふた)つの目(め)の玉(たま)を
404きよろきよろ見廻(みまは)す面白(おもしろ)さ
405あゝ勝(かつ)さまよ勝(かつ)さまよ
406月日(つきひ)の如(ごと)き明(あきら)かな
407神(かみ)の教(をしへ)に目(め)をさませ
408固(かた)き心(こころ)を打解(うちと)けて
409心(こころ)を和(やはら)げ気(き)を和(なご)め
410世人(よびと)に清(きよ)く交(まじ)はれよ
411汝(なんぢ)の心(こころ)柔(やはら)がば
412体(からだ)も共(とも)に元(もと)の如(ごと)
413自由(じいう)自在(じざい)にかへるらむ
414あゝ勝(かつ)さまよ勝(かつ)さまよ
415三五教(あななひけう)の神(かみ)の道(みち)
416夢(ゆめ)にも忘(わす)れ給(たま)ふまじ
417吾(われ)は是(これ)より海山(うみやま)を
418越(こ)えて闇夜(やみよ)を明志湖(あかしうみ)
419明(あか)し暗(くら)しを立別(たてわ)ける
420此(この)世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
421心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)』
422と歌(うた)ひ乍(なが)ら、423悠々(いういう)として此(この)場(ば)を立(た)ち去(さ)りにける。
424(大正一一・二・二八 旧二・二 外山豊二録)
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