霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第五章 同志打(どうしうち)〔五三一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻 篇:第1篇 勝利光栄 よみ(新仮名遣い):しょうりこうえい
章:第5章 同志打 よみ(新仮名遣い):どうしうち 通し章番号:531
口述日:1922(大正11)年03月16日(旧02月18日) 口述場所: 筆録者:谷村真友 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年10月30日
概要: 舞台:シヅの森 あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
どうも奇妙なことが続くので、岩彦を中心にウラル教の宣伝使たちは会議を開いた。そして、すぐ側に寝ている日の出別宣伝使をチャンスとばかりに襲おうとする。
しかし鷹彦は反対し、三五教に降参するべきだ、と異論を唱える。一同は、先ほどみなが同じ夢を見て、その中に三五教の回し者が一人潜伏していると出ていた、と口々に怪しみ出す。
鷹彦は自ら、自分がその宣伝使だとほのめかす。一同は鷹彦に詰め寄るが、鷹彦は今まで気がつかなかった仲間たちを笑っている。
ウラル教の宣伝使たちは鷹彦に殴りかかるが、鷹彦はひらりと身をかわし、同士討ちになってしまう。いきり立ったウラル教徒たちは、暗闇の中でますます同士討ちをしたり、木にぶつかったりしている。
鷹彦は姿を現して、自分の背中に羽が生えているのを見せ、羽ばたきして見せた。ウラル教の宣伝使たちは恐れおののいて、ついに三五教への降伏と改心を誓うに至った。
このとき闇の中より、傍らの茂みのなかから涼しい声で宣伝歌が聞こえてくる。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-11-26 16:50:25 文字数:3161 OBC :rm1305
愛善世界社版:66頁 八幡書店版:第3輯 56頁 修補版: 校定版:67頁 普及版:28頁 初版: ページ備考:
001 天(あま)の戸(と)押(お)し開(ひら)いて半(はん)円(ゑん)の月(つき)は稍(やや)西天(せいてん)にかすかに輝(かがや)き初(はじ)めた。002一同(いちどう)の顔(かほ)は誰彼(たれかれ)の区別(くべつ)のつくまで判明(はつきり)して来(き)た。
003岩彦(いはひこ)『オー、004久(ひさ)し振(ぶ)りでお月様(つきさま)のお顔(かほ)を拝観(はいくわん)することが出来(でき)た。005是(こ)れだから時節(じせつ)は待(ま)たねばならぬものだと何時(いつ)も云(い)ふのだよ』
006梅彦(うめひこ)『今日(けふ)は妙(めう)な日(ひ)だ、007鶴山丸(つるやままる)で日(ひ)の出別(でわけ)の宣伝使(せんでんし)に逢(あ)ふ。008今晩(こんばん)はまた月(つき)の顔(かほ)を久(ひさ)しぶりで見(み)る。009竜宮(りうぐう)の一(ひと)つ島(じま)に渡(わた)つてから、010日月(ひつき)揃(そろ)うて見(み)たのは珍(めづ)らしいことだ』
011岩彦(いはひこ)『オイ、012何(なん)だか俺(おれ)は胸騒(むなさわ)ぎがする様(やう)だ。013皆(みな)起(お)きて坐(すわ)らぬかい。014一(ひと)つ臨時(りんじ)議会(ぎくわい)を開会(かいくわい)するから』
015音彦(おとひこ)『ナニ、016岩彦(いはひこ)議長(ぎちやう)の提案(ていあん)は一体(いつたい)何(なん)だい。017吾々(われわれ)はあまり長(なが)い間(あひだ)海(うみ)に浮(うか)んで居(ゐ)た揚句(あげく)、018大陸(たいりく)を強行(きやうかう)的(てき)にテクツて来(き)たものだから、019足(あし)は棒(ぼう)の如(やう)になつてしまつた。020横(よこ)になつたまま開会(かいくわい)をしてもらへないかな』
021岩彦(いはひこ)『横(よこ)でもかまはないが、022然(しか)し是(こ)れには一寸(ちよつと)曰(いは)く因縁(いんねん)があるのだ。023まさかの時(とき)になつたら、024貴様(きさま)の不利益(ふりえき)だらう。025只今(ただいま)より愈(いよいよ)月(つき)の出(で)たのを幸(さいは)い、026マラソン競走(きやうそう)の選手(せんしゆ)となつて、027フサの都(みやこ)まで速力(そくりよく)倍加(ばいか)で突貫(とつくわん)するのだよ』
028亀彦(かめひこ)『ソラ何(なん)だ、029余(あま)りの緊急(きんきふ)動議(どうぎ)ぢやないか』
030岩彦(いはひこ)『大(おほ)きな声(こゑ)で云(い)ふない、031その向(むか)ふの木(き)の株(かぶ)をそつと覗(のぞ)いて見(み)よ。032居(ゐ)るぞ居(ゐ)るぞ。033大(おほ)きな声(こゑ)で咆哮(ほうこう)すると覚醒(かくせい)状態(じやうたい)になられては大変(たいへん)だ。034それ今(いま)そこに居(ゐ)る奴(やつ)は船(ふね)の中(なか)で見(み)た日(ひ)の出別(でわけ)の宣伝使(せんでんし)だ。035此奴(こいつ)が目(め)を覚(さ)まさぬ間(うち)に尻(しり)に帆(ほ)をかけて、036急速力(きふそくりよく)で進行(しんかう)するか、037但(ただ)しは停船(ていせん)のまま四方(しはう)八方(はつぱう)より包囲(はうゐ)攻撃(こうげき)をやるか、038二(ふた)つに一(ひと)つの議案(ぎあん)だ。039サア即決(そくけつ)だ』
040鷹彦(たかひこ)『マア、041ソンナ事(こと)は即時(そくじ)否決(ひけつ)だ。042否決(ひけつ)の序(ついで)に本当(ほんたう)の敵(てき)に対(たい)する秘訣(ひけつ)を吾輩(わがはい)が提出(ていしゆつ)するから、043汝(なんぢ)等(ら)夫(そ)れ審議(しんぎ)を鄭重(ていちよう)にするのだ。044とても吾々(われわれ)半(はん)ダースの人間(にんげん)が一斉(いつせい)射撃(しやげき)をやつた処(ところ)で、045クルップ砲(はう)に火縄銃(ひなはづつ)を以(もつ)て対(むか)ふ様(やう)なものだ。046勝敗(しようはい)の数(すう)既(すで)に決(けつ)す、047寧(むし)ろ白旗(はくき)を掲(かか)げて降伏(かうふく)と出掛(でか)ける方(はう)が安全(あんぜん)で好(よ)からう。048くだらぬ事(こと)に貴重(きちよう)な生命(せいめい)を落(おと)すのは馬鹿(ばか)の骨頂(こつちやう)だ。049誰(たれ)も夫(そ)れ丈(だ)け戦(たたか)つた所(ところ)で彼奴(あいつ)は職務(しよくむ)に忠実(ちうじつ)な奴(やつ)感心(かんしん)だと云(い)うて共鳴(きようめい)するものは、050この暗(くら)がりの時節(じせつ)に一人(ひとり)も半人(はんにん)もあるものぢやない。051共鳴(きようめい)するのは墓(はか)の団子(だんご)でも泥棒(どろばう)しようと思(おも)つて烏(からす)が鳴(な)く位(くらゐ)だ。052それも哀悼(あいたう)の意味(いみ)でなくて自分(じぶん)の食料(しよくれう)を得(え)た嬉(うれ)し鳴(な)きだから、053ホントウにつまらないぢやないか』
054岩彦(いはひこ)『不相変(あひかはらず)弱音(よわね)を吹(ふ)く奴(やつ)だなア。055人間(にんげん)と云(い)ふものは神(かみ)様(さま)の模型(もけい)ぢやないか、056神(かみ)様(さま)はソンナ決(けつ)して弱音(よわね)を吹(ふ)くものぢやないよ』
057鷹彦(たかひこ)『又(また)もや月(つき)が隠(かく)れたぢやないか。058遁(にげ)ようと言(い)つたつて此(この)曇天(どんてん)に足許(あしもと)の泥溝(どぶ)もはつきりと判(わか)らず、059丁度(ちやうど)灰色(はいいろ)の茅(かや)の中(なか)を道中(だうちう)するやうな有様(ありさま)だから、060何時(いつ)足(あし)をさらはれるか分(わか)つたものぢやない。061思(おも)ひ切(き)りの悪(わる)い奴(やつ)だナア。062アーメニヤヘ一体(いつたい)帰(かへ)つた所(ところ)で、063盤古(ばんこ)神王(しんわう)のウラル彦(ひこ)が居(を)られるか居(を)られぬか心許(こころもと)ないではないか』
064亀彦(かめひこ)『ウン、065俺(おれ)もソンナ夢(ゆめ)を見(み)たよ、066心配(しんぱい)だ。067然(しか)し岩彦(いはひこ)の宣伝使(せんでんし)長(ちやう)は、068お化物(ばけ)の舌(した)の上(うへ)に乗(の)せられて居(を)つて、069噛(か)んだり、070吐(は)いたり、071イヤもう目茶(めちや)苦茶(くちや)な目(め)に逢(あ)はされて居(ゐ)よつた。072夢(ゆめ)にも色々(いろいろ)あつて神夢(しんむ)、073霊夢(れいむ)、074正夢(せいむ)、075凶夢(きようむ)、076雑夢(ざつむ)と云(い)ふ事(こと)があるから当(あて)にはならないが、077どうせ頑固(ぐわんこ)一片(いつぺん)の男(をとこ)だからあの夢(ゆめ)が霊夢(れいむ)になるかも知(し)れぬ。078気(き)の毒(どく)なものだワイ』
079一同(いちどう)『ウン俺(おれ)達(たち)もその夢(ゆめ)を見(み)たのだ。080斯(か)うして四(よ)人(にん)が同(おな)じ夢(ゆめ)を一度(いちど)に見(み)ると云(い)ふのは、081屹度(きつと)霊夢(れいむ)だよ。082オイオイ愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して居(ゐ)ると内裏(うちうら)に敵(てき)が侵入(しんにふ)潜伏(せんぷく)して居(を)るかも知(し)れないぞ』
083岩彦(いはひこ)『吾々(われわれ)一行(いつかう)六(ろく)人(にん)の中(なか)に三五教(あななひけう)の奴(やつ)が交(まじ)つて居(ゐ)ると云(い)ふのか。084ソンナ馬鹿(ばか)な事(こと)があるものかい』
085音彦(おとひこ)『ヤー何(なん)とも言(い)はれぬよ』
086鷹彦(たかひこ)『オツト高(たか)い声(こゑ)では言(い)はれぬが、087ナンデも羽(はね)が生(は)えて宙(ちう)を飛(と)ぶ様(やう)な名(な)の男(をとこ)が、088三五教(あななひけう)の間諜(まはしもの)で俺(おれ)達(たち)の仲間(なかま)に這入(はい)つて居(ゐ)ると云(い)ふ事(こと)だよ。089現(げん)に夢(ゆめ)の中(なか)に「俺(おれ)はかうして貴様(きさま)と一緒(いつしよ)にウラル教(けう)に入(はい)つて、090その実(じつ)は三五教(あななひけう)だ。091一(ひと)つ島(じま)の宣伝(せんでん)が不成功(ふせいこう)に終(をは)つたのも飯依彦(いひよりひこ)と気脈(きみやく)を通(つう)じて遣(や)つたからだ」と、092夢(ゆめ)の中(なか)に自白(じはく)し居(を)つた奴(やつ)があるのだもの』
093三人『俺(おれ)等(たち)も夢(ゆめ)でその通(とほ)り聞(き)いて居(ゐ)る。094サア行掛(ゆきがけ)の駄賃(だちん)に此奴(こいつ)をやつつけておいて、095それからマラソン競走(きやうそう)だ』
096音彦(おとひこ)『コラ鷹公(たかこう)、097白々(しらじら)しい、098貴様(きさま)は何(なん)だ。099悪(あく)の企(たくみ)の露顕(あらは)れ口(くち)、100のつ引(ぴき)ならぬ夢(ゆめ)の告(つげ)、101どうぢや白状(はくじやう)致(いた)して降参(かうさん)するか、102逃(に)げようと言(い)つたつて、103もう駄目(だめ)だぞ。104吾々(われわれ)五(ご)人(にん)の閉塞隊(へいそくたい)が港口(こうこう)を固(かた)く封鎖(ふうさ)した以上(いじやう)は、105潜水隊(せんすゐたい)だつて無事(ぶじ)に脱出(だつしゆつ)する事(こと)は出来(でき)やしないぞ。106サア白状(はくじやう)せないか』
107鷹彦(たかひこ)『アハヽヽヽ、108オホヽヽヽ、109エヘヽヽヽ』
110一同(いちどう)『何(なん)だ、111夢(ゆめ)の中(なか)の化物(ばけもの)の如(や)うな声(こゑ)を出(だ)しよつて』
112鷹彦(たかひこ)『盲(めくら)の宣伝使(せんでんし)、113馬鹿(ばか)と云(い)つても貴様(きさま)等(ら)の様(やう)な奴(やつ)は珍(めづら)しい。114天下(てんか)一品(いつぴん)、115秀逸(しういつ)の馬鹿(ばか)だ。116俺(おれ)は貴様(きさま)の云(い)ふごとく実(じつ)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)だ。117瀬戸(せと)の海(うみ)の一(ひと)つ島(じま)に永(なが)らく居(を)つたものだが、118手段(てだて)を以(もつ)て貴様(きさま)等(ら)の仲間(なかま)に藻繰込(もぐりこ)み、119総(すべ)ての計画(けいくわく)を熟知(じゆくち)し居(を)るこの方(はう)、120俺(おれ)位(くらゐ)のものが看破(かんぱ)出来(でき)ぬ様(やう)なものではウラル教(けう)も駄目(だめ)だ。121アハヽヽヽ、122オホヽヽヽ、123イヒヽヽヽ、124イヽ面(つら)の皮(かは)だ、125いぢらしいものだナア』
126岩彦(いはひこ)『言(い)はして置(お)けば悪言(あくげん)暴語(ばうご)の乱射(らんしや)、127もう此(この)上(うへ)は不言(ふげん)実行(じつかう)だ。128オイ皆(みな)の奴(やつ)、129打(う)ちのめせ、130大将軍(たいしやうぐん)の命令(めいれい)だ』
131一同『ヨシ』
132と答(こた)へて一同(いちどう)は拳(こぶし)を固(かた)め鷹彦(たかひこ)の面上(めんじやう)目(め)がけて力限(ちからかぎ)りに打下(うちおろ)せば、133鷹彦(たかひこ)はヒラリと体(たい)をかはした。
134梅彦(うめひこ)『アイタタ アイタタ、135コラコラ鷹彦(たかひこ)、136おれをどうするのだ。137此奴(こいつ)中々(なかなか)ひどい事(こと)をしよるぞ。138アイタタ アイタタ』
139 暗(くら)がりまぎれに鉄拳(てつけん)の雨(あめ)を降(ふ)らして居(ゐ)る。140鷹彦(たかひこ)は二三間(にさんげん)はなれた所(ところ)より、
141鷹彦(たかひこ)『アハヽヽヽ、142盲(めくら)同志(どうし)の同志(どうし)打(う)ち、143ドシドシと喧嘩(けんくわ)をやれ、144この方(はう)は高処(たかみ)で見物(けんぶつ)だ』
145梅彦(うめひこ)『オイオイ皆(みな)の奴(やつ)、146俺(おれ)の頭(あたま)を惨(ひど)い目(め)になぐりよつて、147チツト心得(こころえ)ぬかい。148味方(みかた)を打(う)つと云(い)ふ事(こと)があるものかい』
149音彦(おとひこ)『千騎(せんき)一騎(いつき)の戦場(せんぢやう)に向(むか)つて鎬(しのぎ)を削(けづ)るに、150誰彼(たれかれ)の用捨(ようしや)があらうか。151当(あた)るを幸(さいは)ひ、152なぐり、153張倒(はりたふ)し、154勝鬨(かちどき)あぐるは瞬(またた)く間(うち)』
155鷹彦(たかひこ)『アハヽヽヽ、156面白(おもしろ)い面白(おもしろ)い、157悪神(あくがみ)のする事(こと)は皆(みな)ソンナものだよ。158もつとやれもつとやれ』
159音彦(おとひこ)『エーかもふない、160今(いま)に仇(かたき)を打(う)つてやる。161オイ皆(みな)の者(もの)、162何(なん)でも後(うしろ)の方(はう)に声(こゑ)がしたぞ。163突喊(とつかん)々々(とつかん)』
164 ワーツと鬨(とき)を作(つく)つて声(こゑ)する方(はう)に進撃(しんげき)する。165茂(しげ)みの森(もり)の木(き)の幹(みき)に前額部(ぜんがくぶ)を衝突(しようとつ)させパチン、
166音彦『アイタタ、167イヽヽイータイ、168ヤー鷹彦(たかひこ)の奴(やつ)、169中々(なかなか)固(かた)い体(からだ)をしてゐよる。170何だ此奴(こいつ)は木(き)の幹(みき)だ、171大木(たいぼく)だ』
172 鷹彦(たかひこ)は体(からだ)をすくめながら、173暗(やみ)にすかして五(ご)人(にん)の蠢動(しゆんどう)するのを見済(みす)まし杖(つゑ)を以(もつ)て頭(あたま)と思(おも)ふ処(ところ)を目(め)がけてそつと叩(たた)く。
174音彦(おとひこ)『ヤア居(を)る居(を)るオイ、175此処(ここ)だ此処(ここ)だ』
176一同『ヤアさうか』
177と四(よ)人(にん)は声(こゑ)する方(はう)を目(め)あてに鉄拳(てつけん)を乱下(らんか)した。178音公(おとこう)は四(よ)人(にん)の荒男(あらをとこ)に身体(からだ)一面(いちめん)乱打(らんだ)されて、
179音彦『アイタタアイタタ、180アヤマツタ、181待(ま)て待(ま)て、182違(ちが)ふぞ違(ちが)ふぞ』
183一同(いちどう)『違(ちが)ふも糞(くそ)もあつたものか。184この期(ご)に及(およ)んで卑怯(ひけふ)未練(みれん)な逃(に)げ口上(こうじやう)、185放(はな)すな皆(みな)の奴(やつ)、186のばせのばせ』
187音彦(おとひこ)『音(おと)ぢや音(おと)ぢや』
188一同(いちどう)『音(おと)がする程(ほど)叩(たた)けとぬかすのか、189ヨシ御(ご)註文(ちゆうもん)通(どほ)りなぐつてやらう』
190 鉄拳(てつけん)の音(おと)は一層(いつそう)激烈(げきれつ)となつて来(き)た。191鷹彦(たかひこ)は二三間(にさんげん)傍(そば)にヌツと立(た)つて、
192鷹彦(たかひこ)『アハヽヽ、193オホヽヽ、194イヒヽヽ、195鷹(たか)チヤンは此処(ここ)だよ。196同志打(どうしう)ちの先生(せんせい)、197盲(めくら)先生(せんせい)、198今(いま)の世(よ)の中(なか)は丁度(ちやうど)ソンナものだよ。199互(たがひ)に味方(みかた)同士(どうし)、200兄弟(きやうだい)同士(どうし)、201親類(しんるゐ)同士(どうし)、202同士打(どうしう)ちをやつて居(を)る。203貴様(きさま)等(ら)もウラル教(けう)の精神(せいしん)を遺憾(ゐかん)なく発揮(はつき)して満足(まんぞく)だらう。204昔(むかし)の常世(とこよ)会議(くわいぎ)で武装(ぶさう)制限(せいげん)が行(おこな)はれて、205羽翼(うよく)を取(と)られて退化(たいくわ)した人間(にんげん)が、206アベコベに羽翼(うよく)が無(な)くなつて不自由(ふじゆう)の身体(からだ)になつて、207それを進化(しんくわ)したと云(い)つて喜(よろこ)ぶやうな代物(しろもの)だから不便(ふべん)なものだ。208オイこの鷹(たか)チヤンはその名(な)の如(ごと)く羽翼(うよく)が在(あ)つて鷹(たか)の通(とほ)り空中(くうちう)は自由(じいう)自在(じざい)だ。209一(ひと)つ飛(と)んで見(み)せて遣(や)らうかい』
210と云(い)ひながら、211一丈(いちぢやう)もある翼(つばさ)を拡(ひろ)げてバタバタと羽(は)ばたきをして見(み)せる。
212一同(いちどう)『ヤア此奴(こいつ)は天狗(てんぐ)の化物(ばけもの)だ。213モシモシ天狗(てんぐ)様(さま)、214偉(えら)い見損(みそこな)ひを致(いた)しましたが、215天狗(てんぐ)様(さま)、216どうぞ生命(いのち)計(ばか)りはお助(たす)け下(くだ)さいませ』
217鷹彦(たかひこ)『三五教(あななひけう)の宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ふか』
218一同(いちどう)『ハイハイ、219教(をし)へて下(くだ)されば歌(うた)ひます』
220鷹彦(たかひこ)『ウラル教(けう)は止(や)めるか』
221一同(いちどう)『やめますやめます』
222 この時(とき)暗中(あんちう)より何人(なにびと)とも知(し)れず、223涼(すず)しき宣伝歌(せんでんか)が暗(やみ)を縫(ぬ)うて、224傍(かたはら)の木(き)の茂(しげ)みより聞(きこ)え来(き)たりけり。
225(大正一一・三・一六 旧二・一八 谷村真友録)
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