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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第13巻(子の巻)
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総説
第1篇 勝利光栄
第1章 言霊開
第2章 波斯の海
第3章 波の音
第4章 夢の幕
第5章 同志打
第6章 逆転
第2篇 洗礼旅行
第7章 布留野原
第8章 醜の窟
第9章 火の鼠
第3篇 探険奇聞
第10章 巌窟
第11章 怪しの女
第12章 陥穽
第13章 上天丸
第4篇 奇窟怪巌
第14章 蛙船
第15章 蓮花開
第16章 玉遊
第17章 臥竜姫
第18章 石門開
第19章 馳走の幕
第20章 宣替
第21章 本霊
第5篇 膝栗毛
第22章 高加索詣
第23章 和解
第24章 大活躍
信天翁(三)
余白歌
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<<< 火の鼠
(B)
(N)
怪しの女 >>>
第一〇章
巌窟
(
がんくつ
)
〔五三六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻
篇:
第3篇 探険奇聞
よみ(新仮名遣い):
たんけんきぶん
章:
第10章 巌窟
よみ(新仮名遣い):
がんくつ
通し章番号:
536
口述日:
1922(大正11)年03月17日(旧02月19日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年10月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一同は矢を探して原野に出たが、広い野原に萱の矢一本を探すことに文句を言うものもあった。鷹彦は戒めていたが、火が燃え広がってくるのが見えた。一同は邪神の計略にかかったかと疑った。
近づいてくる火に、一同はひとところに固まって地団駄を踏んでいる。すると一同の足元が抜けて、土中に陥った。火はその上を咆哮しながら燃え進んでいってしまった。
岩彦は、赤い鼠とは原野に放たれた火のことだ、と悟った。九分九厘かなわぬというところで、神様が助けてくれる実地を身をもって知ったのであった。
すると、鼠が鳴く声が聞こえてくるので、一同は声の方に向かっていくと、緋色の毛をした鼠が、萱の矢をくわえて現れ、そして姿を消した。一同は足踏みをするとたんに、さらに深い穴に落ち込んだ。見ると、六個の岩窟が開いていた。
六人はめいめい、一個ずつの岩窟に進み入っていった。しかし進んで行くと、六個の穴の先は広い場所で一同はまたひとところに集まった。そこは大きな岩戸が行方を閉ざしていた。
亀彦が岩戸を思い切り押すと、暖簾に腕押しで、勢い余って向こう側に落ち込んだ。そして、落とし穴の井戸に落ち込んでしまった。亀彦は助けを求めている。
一同は亀彦を助けるかどうか会議をする、といってじらし、おかしな問答をして亀彦をなぶっている。しかし井戸にも石段が刻んであって、亀彦は苦もなく井戸から上がってくる。
馬鹿な一幕に一同は笑い合っていると、突然異声怪音が耳を打ち、一行の体は麻痺してきた。これはたいへんだと、皆声を揃えて天津祝詞を奏上する。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-12-04 12:39:30
OBC :
rm1310
愛善世界社版:
121頁
八幡書店版:
第3輯 75頁
修補版:
校定版:
121頁
普及版:
51頁
初版:
ページ備考:
001
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
射放
(
いはな
)
ちたる
矢
(
や
)
を
拾
(
ひろ
)
ふべく、
002
鷹彦
(
たかひこ
)
、
003
岩彦
(
いはひこ
)
一行
(
いつかう
)
は、
004
先
(
さき
)
を
争
(
あらそ
)
うて
我一
(
われいち
)
に
功名
(
こうみやう
)
せむと、
005
萱野
(
かやの
)
を
分
(
わ
)
けて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
006
岩彦
(
いはひこ
)
『この
萱野原
(
かやのはら
)
へ
萱製
(
かやせい
)
の
矢
(
や
)
をたつた
一本
(
いつぽん
)
位
(
ぐらゐ
)
射放
(
いはな
)
つて、
007
それを
拾
(
ひろ
)
つて
来
(
こ
)
いと
云
(
い
)
うたつて、
008
天然坊
(
てんねんばう
)
の
星
(
ほし
)
あたり、
009
何
(
どれ
)
だけ
探
(
さが
)
しても
無
(
な
)
ければもう
駄目
(
だめ
)
だ。
010
失望
(
しつばう
)
落胆
(
らくたん
)
の
淵
(
ふち
)
に
沈
(
しづ
)
むとは、
011
コンナことを
云
(
い
)
ふのだらうかい』
012
亀彦
(
かめひこ
)
『
際限
(
さいげん
)
もなきこの
萱野原
(
かやのはら
)
を、
013
僅
(
わづか
)
に
一本
(
いつぽん
)
の
萱製
(
かやせい
)
の
矢
(
や
)
を
探
(
さが
)
すと
云
(
い
)
つたつて、
014
到底
(
たうてい
)
不可能
(
ふかのう
)
的
(
てき
)
大事業
(
だいじげふ
)
だ、
015
竿竹
(
さをだけ
)
をもつて
空
(
そら
)
の
星
(
ほし
)
をがらつよりも
頼
(
たよ
)
りない
話
(
はなし
)
ぢやないか』
016
鷹彦
(
たかひこ
)
『また
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
きよる。
017
これが
身魂
(
みたま
)
の
審
(
あらた
)
めだ。
018
何
(
なん
)
でも
構
(
かま
)
はない、
019
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
のおつしやる
通
(
とほ
)
り、
020
唯々
(
ゐゐ
)
諾々
(
だくだく
)
として
遵奉
(
じゆんぽう
)
するのだよ』
021
駒彦
(
こまひこ
)
『あまり
無理
(
むり
)
ぢやないか』
022
鷹彦
(
たかひこ
)
『
親
(
おや
)
と
主人
(
しゆじん
)
と
師匠
(
ししやう
)
は
無理
(
むり
)
を
云
(
い
)
ふものだと
思
(
おも
)
うて
居
(
を
)
れば
好
(
よ
)
いのだ。
023
滅多
(
めつた
)
に
吾々
(
われわれ
)
を
親
(
おや
)
や
師匠
(
ししやう
)
が
窮地
(
きうち
)
に
陥没
(
かんぼつ
)
さして、
024
痛快
(
つうくわい
)
を
叫
(
さけ
)
ぶと
云
(
い
)
ふやうな
事
(
こと
)
はなさる
気遣
(
きづか
)
ひがない。
025
何処
(
どこ
)
までも
徹頭
(
てつとう
)
徹尾
(
てつび
)
命
(
めい
)
のまにまに
矢探
(
やさが
)
しをするのだよ』
026
駒彦
(
こまひこ
)
『ヤヤコシイ、
027
矢探
(
やさが
)
しだナ。
028
矢
(
や
)
矢
(
や
)
暫
(
しばら
)
く
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れにけりの
為体
(
ていたらく
)
だ。
029
オイオイ
大変
(
たいへん
)
だ、
030
火
(
ひ
)
が
燃
(
も
)
えて
来
(
く
)
るぞ。
031
これだけ
生
(
は
)
へ
茂
(
しげ
)
つた
野原
(
のはら
)
に
火
(
ひ
)
をつけられ、
032
吾々
(
われわれ
)
は
耐
(
たま
)
つたものぢやないワ、
033
本当
(
ほんたう
)
に
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
無茶
(
むちや
)
ぢやないか、
034
矢張
(
やつぱ
)
り
彼奴
(
あいつ
)
は
怪
(
あや
)
しいと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たよ』
035
鷹彦
(
たかひこ
)
『
吾々
(
われわれ
)
を
奈落
(
ならく
)
の
底
(
そこ
)
に
陥穽
(
かんせい
)
すると
云
(
い
)
ふ
悪神
(
あくがみ
)
の
企
(
たく
)
みに
乗
(
の
)
つたのだ。
036
エヽもう
自棄糞
(
やけくそ
)
だ、
037
焼
(
や
)
け
死
(
じに
)
する
処
(
ところ
)
まで
荒
(
あ
)
れて、
038
荒
(
あ
)
れて、
039
暴
(
あば
)
れ
廻
(
まは
)
してやらうかい』
040
斯
(
か
)
くいふ
折
(
をり
)
しも、
041
火
(
ひ
)
は
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
より
燃
(
も
)
え
猛
(
たけ
)
り、
042
黒煙
(
こくえん
)
濛々
(
もうもう
)
として
一同
(
いちどう
)
を
包
(
つつ
)
んで
了
(
しま
)
つた。
043
梅公
(
うめこう
)
、
044
音公
(
おとこう
)
両人
(
りやうにん
)
は、
045
梅彦、音彦
『
暑
(
あつ
)
いワイ、
046
煙
(
けむ
)
たいワイ、
047
苦
(
くる
)
しい。
048
如何
(
どう
)
しよう』
049
鷹彦
(
たかひこ
)
『また
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
くな、
050
心頭
(
しんとう
)
を
滅
(
めつ
)
すれば
火
(
ひ
)
もまた
涼
(
すず
)
しと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるわ。
051
斯
(
か
)
ういふ
時
(
とき
)
に、
052
火
(
ひ
)
に
対
(
たい
)
する
水
(
みづ
)
だ。
053
乾
(
かわ
)
く
事
(
こと
)
なく
尽
(
つく
)
る
事
(
こと
)
なき
神
(
かみ
)
の
尊
(
たふと
)
き
水
(
みづ
)
をもつて、
054
猛火
(
まうくわ
)
を
消
(
け
)
すのだ。
055
これが
吾々
(
われわれ
)
の
身魂
(
みたま
)
の
試錬
(
しれん
)
だよ』
056
かく
言
(
い
)
ふ
折
(
をり
)
しも
火
(
ひ
)
は
足許
(
あしもと
)
へ
燃
(
も
)
えて
来
(
き
)
た。
057
進退
(
しんたい
)
谷
(
きは
)
まつた
一同
(
いちどう
)
は
一処
(
ひとところ
)
に
集
(
あつ
)
まり
互
(
たがひ
)
に
抱
(
だ
)
きついて
地団駄
(
ぢだんだ
)
踏
(
ふ
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
058
忽
(
たちま
)
ち
地
(
ち
)
は
バサリ
と
陥落
(
かんらく
)
し、
059
土中
(
どちう
)
に
一行
(
いつかう
)
は
陥
(
おちい
)
つた。
060
火
(
ひ
)
はその
上
(
うへ
)
を
何
(
なに
)
の
容赦
(
ようしや
)
もなく
咆哮
(
ほうこう
)
しながら
燃
(
も
)
え
過
(
す
)
ぎにけり。
061
岩彦
(
いはひこ
)
『アヽこれで
分
(
わか
)
つた。
062
九分
(
くぶ
)
九厘
(
くりん
)
叶
(
かな
)
はぬと
云
(
い
)
ふ
処
(
ところ
)
で
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
助
(
たす
)
けてやると
仰有
(
おつしや
)
るのは
茲
(
ここ
)
の
事
(
こと
)
だ。
063
火鼠
(
ひねずみ
)
を
現
(
あら
)
はして
教
(
をし
)
へてやるなぞと、
064
本当
(
ほんたう
)
の
赤
(
あか
)
い
鼠
(
ねずみ
)
が
出
(
で
)
るのかと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たれば
途方
(
とはう
)
途徹
(
とてつ
)
もない
大
(
おほ
)
きな
火鼠
(
ひねずみ
)
だつた。
065
火
(
ひ
)
の
通
(
とほ
)
つた
跡
(
あと
)
は
焼
(
や
)
け
殻
(
がら
)
が
皆
(
みな
)
黒
(
くろ
)
くなつて、
066
炭
(
すみ
)
になりよる。
067
それで
火鼠
(
ひねずみ
)
と
仰有
(
おつしや
)
つたのだな』
068
鷹彦
(
たかひこ
)
『ホー
中々
(
なかなか
)
貴様
(
きさま
)
は
悟
(
さと
)
りがよいワイ。
069
何
(
なん
)
だ
未
(
ま
)
だブクブクするぢやないか。
070
地獄
(
ぢごく
)
の
底
(
そこ
)
まで
陥没
(
かんぼつ
)
しても
困
(
こま
)
る、
071
好加減
(
いいかげん
)
に
止
(
や
)
めて
貰
(
もら
)
はぬと、
072
過
(
す
)
ぎたるは
猶
(
なほ
)
及
(
およ
)
ばざるが
如
(
ごと
)
しだ』
073
何処
(
いづく
)
ともなく、
074
『ククヽヽヽ』
075
一同
(
いちどう
)
『ヤア、
076
あれは
鼠
(
ねずみ
)
の
鳴
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
ぢやないか。
077
彼方
(
あつち
)
の
方
(
はう
)
に
往
(
い
)
つて
見
(
み
)
ようぢやないか』
078
と
声
(
こゑ
)
を
尋
(
たづ
)
ねて
一同
(
いちどう
)
は
進
(
すす
)
んで
行
(
ゆ
)
く。
079
果
(
はた
)
して
毛
(
け
)
の
緋色
(
ひいろ
)
を
帯
(
お
)
びた
古鼠
(
ふるねずみ
)
が
萱
(
かや
)
の
矢
(
や
)
を
喰
(
く
)
はへてこの
処
(
ところ
)
に
現
(
あら
)
はれ、
080
古鼠
『
内
(
うち
)
はホラホラ、
081
外
(
と
)
はスブスブ』
082
と
鳴
(
な
)
いたきり
姿
(
すがた
)
を
消
(
け
)
して
了
(
しま
)
つた。
083
一同
(
いちどう
)
は
ドン
と
足踏
(
あしふみ
)
する
途端
(
とたん
)
、
084
ズドンと
音
(
おと
)
がして
深
(
ふか
)
い
穴
(
あな
)
に
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んだ。
085
見
(
み
)
れば
其処
(
そこ
)
には
六個
(
ろくこ
)
の
巌窟
(
がんくつ
)
が
開
(
あ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
086
鷹彦
(
たかひこ
)
『ヤア
此処
(
ここ
)
だ
此処
(
ここ
)
だ、
087
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけの
)
命
(
みこと
)
もなかなか
偉
(
えら
)
いワイ、
088
矢
(
や
)
の
落
(
お
)
ちた
処
(
ところ
)
が
矢張
(
やつぱり
)
この
巌窟
(
いはや
)
の
入
(
い
)
り
口
(
ぐち
)
だつた。
089
悪魔
(
あくま
)
と
云
(
い
)
ふものは、
090
本当
(
ほんたう
)
に
注意
(
ちうい
)
周到
(
しうたう
)
なものだ、
091
コンナ
処
(
ところ
)
に
入口
(
いりぐち
)
を
拵
(
こしら
)
へておけば
誰
(
たれ
)
も
気
(
き
)
の
付
(
つ
)
く
筈
(
はず
)
はない、
092
至
(
いた
)
れり
尽
(
つく
)
せりだ。
093
サアこれから
約束
(
やくそく
)
の
通
(
とほ
)
り
各自
(
めいめい
)
分担
(
ぶんたん
)
して
探険
(
たんけん
)
に
出
(
で
)
かけるのだ』
094
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
は
各
(
おのおの
)
一個
(
いつこ
)
の
穴
(
あな
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
095
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
高
(
たか
)
く
横巾
(
よこはば
)
の
広
(
ひろ
)
い
巌穴
(
いはあな
)
である。
096
どうしたものかこの
巌窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
は
地中
(
ちちう
)
にも
拘
(
かか
)
はらず
非常
(
ひじやう
)
に
明
(
あかる
)
い。
097
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
は
各
(
おのおの
)
一
(
ひと
)
つの
穴
(
あな
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
098
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
火鼠
(
ひねずみ
)
荒野
(
あらの
)
に
現
(
あら
)
はれて
迷
(
まよ
)
へる
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
を
照
(
てら
)
せり
099
時々
(
ときどき
)
穴
(
あな
)
と
穴
(
あな
)
との
巌壁
(
がんぺき
)
に
風通
(
かざとほ
)
しが
開
(
あ
)
けてある。
100
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
は
六個
(
ろくこ
)
の
穴
(
あな
)
を
二三町
(
にさんちやう
)
進
(
すす
)
むと
其処
(
そこ
)
に
非常
(
ひじやう
)
に
広
(
ひろ
)
い
場所
(
ばしよ
)
がある。
101
之
(
これ
)
より
先
(
さき
)
は
堅固
(
けんご
)
なる
巌
(
いは
)
の
戸
(
と
)
が
鎖
(
とざ
)
されて
進
(
すす
)
む
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ない。
102
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
は
期
(
き
)
せずして
一処
(
ひとところ
)
に
集
(
あつ
)
まり、
103
鷹彦
(
たかひこ
)
『ヤア
皆
(
みな
)
の
連中
(
れんちう
)
、
104
如何
(
どう
)
だつた。
105
別
(
べつ
)
に
変
(
かは
)
つた
事
(
こと
)
は
無
(
な
)
かつたか』
106
亀彦
(
かめひこ
)
『あつた、
107
あつた、
108
大
(
おほい
)
にあつた』
109
鷹彦
(
たかひこ
)
『
何
(
なに
)
があつたのだ』
110
亀彦
(
かめひこ
)
『
巌壁
(
がんぺき
)
の
両方
(
りやうはう
)
に
覗
(
のぞ
)
き
穴
(
あな
)
が
沢山
(
たくさん
)
あつたのだ』
111
鷹彦
(
たかひこ
)
『
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふのだ、
112
大層
(
たいそう
)
らしい。
113
どの
窟
(
あな
)
にも
共通
(
きようつう
)
的
(
てき
)
に
空気穴
(
くうきあな
)
が
開
(
あ
)
いて
居
(
ゐ
)
るのだよ』
114
岩彦
(
いはひこ
)
『
之
(
これ
)
では
約
(
つま
)
らぬぢやないか、
115
相手
(
あひて
)
なしの
戦
(
たたか
)
ひは
出来
(
でき
)
やしない。
116
何
(
なん
)
だ、
117
醜
(
しこ
)
の
厳窟
(
いはや
)
に
化物
(
ばけもの
)
が
居
(
を
)
るナンテ
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にして
居
(
ゐ
)
る。
118
それだから
世間
(
せけん
)
の
噂
(
うはさ
)
は
当
(
あて
)
にならぬといふのだ』
119
鷹彦
(
たかひこ
)
『イヤ、
120
これからが
正念場
(
しやうねんば
)
だよ。
121
ここはホンの
序幕
(
じよまく
)
だ。
122
何十
(
なんじふ
)
里
(
り
)
とも
知
(
し
)
れぬ
程
(
ほど
)
あると
云
(
い
)
ふぢやないか、
123
どこぞこの
岩壁
(
がんぺき
)
を
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
押
(
お
)
して
見
(
み
)
ようか。
124
何
(
なん
)
でも
沢山
(
たくさん
)
の
戸
(
と
)
があると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だから、
125
アヽさうだ、
126
一
(
ひと
)
つ
押
(
お
)
してやらう。
127
オイ
皆
(
みな
)
一度
(
いちど
)
に
総攻撃
(
そうこうげき
)
だ』
128
と。
129
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
ウン
と
押
(
お
)
した。
130
亀公
(
かめこう
)
の
押
(
お
)
した
岩
(
いは
)
は、
131
暖簾
(
のれん
)
を
押
(
お
)
すやうに
手
(
て
)
もなく
開
(
あ
)
いて、
132
亀
(
かめ
)
の
勢
(
いきほひ
)
あまつて
巌穴
(
いはあな
)
の
中
(
なか
)
へ
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んだ
途端
(
とたん
)
に
幾丈
(
いくぢやう
)
とも
知
(
し
)
れぬ
陥穽
(
おとしあな
)
にザブンと
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
てて
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んだ。
133
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤヤ
大変
(
たいへん
)
だ。
134
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
俺
(
おれ
)
を
助
(
たす
)
けて
呉
(
く
)
れぬかい』
135
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
穴
(
あな
)
の
傍
(
かたはら
)
を
一足
(
ひとあし
)
、
136
一足
(
ひとあし
)
、
137
指
(
ゆび
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れながらソツと
向
(
むか
)
ふに
渡
(
わた
)
り、
138
一同
『アヽ、
139
思
(
おも
)
はぬ
不覚
(
ふかく
)
を
取
(
と
)
つた。
140
これだから
気許
(
きゆる
)
しは
一寸
(
ちよつと
)
も
出来
(
でき
)
ないと
云
(
い
)
ふのだ』
141
鷹彦
(
たかひこ
)
『
何
(
なん
)
とかして
亀
(
かめ
)
サンを
救
(
すく
)
うて
上
(
あ
)
げて
遣
(
や
)
らねばなるまい』
142
亀
(
かめ
)
、
143
井戸
(
ゐど
)
の
底
(
そこ
)
より、
144
亀彦
『オイ、
145
オイ、
146
何
(
なん
)
とかして
呉
(
く
)
れないか』
147
音彦
(
おとひこ
)
『お
前
(
まへ
)
は
名
(
な
)
から
亀
(
かめ
)
サン、
148
水
(
みづ
)
の
中
(
なか
)
は
得意
(
とくい
)
だらう、
149
マア
悠乎
(
ゆつくり
)
と
水
(
みづ
)
でも
呑
(
の
)
んで
寛
(
くつろ
)
ぎたまへ。
150
突差
(
とつさ
)
の
場合
(
ばあひ
)
よい
智慧
(
ちゑ
)
も
出
(
で
)
ないから
此
(
この
)
井戸
(
ゐど
)
の
傍
(
はた
)
で
山
(
やま
)
の
神
(
かみ
)
ぢやないが、
151
井戸端
(
ゐどばた
)
会議
(
くわいぎ
)
を
開会
(
かいくわい
)
してお
前
(
まへ
)
を
助
(
たす
)
けるか、
152
助
(
たす
)
けないかといふ
決議
(
けつぎ
)
をやるのだ。
153
マアマア、
154
閉会
(
へいくわい
)
になる
迄
(
まで
)
辛抱
(
しんばう
)
して
呉
(
く
)
れ』
155
亀彦
(
かめひこ
)
『ソンナ
気楽
(
きらく
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
うて
居
(
を
)
れるかい、
156
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げて
呉
(
く
)
れ』
157
岩彦
(
いはひこ
)
『エヽ、
158
矢釜敷
(
やかまし
)
い
云
(
い
)
うな、
159
手
(
て
)
の
付
(
つ
)
けやうが
無
(
な
)
いぢやないか』
160
亀彦
(
かめひこ
)
『
手
(
て
)
の
つけ
やうどころか、
161
足
(
あし
)
も
頭
(
あたま
)
も
体中
(
からだぢう
)
、
162
浸
(
つ
)
け
て
居
(
ゐ
)
るぢやないか』
163
鷹彦
(
たかひこ
)
『サアサア、
164
臨時
(
りんじ
)
議会
(
ぎくわい
)
の
開会
(
かいくわい
)
だ、
165
これから
議長
(
ぎちやう
)
の
選挙
(
せんきよ
)
だ。
166
院内
(
いんない
)
総務
(
そうむ
)
は
誰
(
たれ
)
にしようかな』
167
亀彦
(
かめひこ
)
『アヽ
辛気
(
しんき
)
臭
(
くさ
)
い、
168
洒落
(
しやれ
)
どころぢやないわ、
169
冷
(
つめ
)
たくなつて
仕方
(
しかた
)
がない、
170
体
(
からだ
)
も
何
(
なに
)
も
氷結
(
ひようけつ
)
して
了
(
しま
)
ふわ』
171
岩彦
(
いはひこ
)
『
氷結
(
ひようけつ
)
したつて
仕方
(
しかた
)
がない、
172
此方
(
こちら
)
は
多数決
(
たすうけつ
)
だ。
173
五
(
ご
)
人
(
にん
)
を
両派
(
りやうは
)
に
分
(
わ
)
けて、
174
三
(
さん
)
人
(
にん
)
と
二人
(
ふたり
)
だ。
175
鷹
(
たか
)
サンは
議長
(
ぎちやう
)
といふ
格
(
かく
)
だ』
176
鷹彦
(
たかひこ
)
『エヽ
諸君
(
しよくん
)
、
177
遠路
(
ゑんろ
)
の
処
(
ところ
)
よく
出席
(
しゆつせき
)
下
(
くだ
)
さいました。
178
今回
(
こんくわい
)
臨時
(
りんじ
)
議会
(
ぎくわい
)
を
開会
(
かいくわい
)
いたしましたに
就
(
つい
)
ては、
179
最
(
もつと
)
も
急
(
きふ
)
を
要
(
えう
)
する
事件
(
じけん
)
で
御座
(
ござ
)
いまして、
180
国家
(
こくか
)
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
の
場合
(
ばあひ
)
、
181
何卒
(
なにとぞ
)
諸君
(
しよくん
)
の
慎重
(
しんちよう
)
なる
御
(
ご
)
審議
(
しんぎ
)
を
願
(
ねが
)
ひ
度
(
た
)
いのです。
182
抑々
(
そもそも
)
今回
(
こんくわい
)
の
議案
(
ぎあん
)
提出
(
ていしゆつ
)
の
要件
(
えうけん
)
は、
183
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り、
184
元
(
もと
)
ウラル
教
(
けう
)
のヘボ
宣伝使
(
せんでんし
)
、
185
亀公
(
かめこう
)
と
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
、
186
醜
(
しこ
)
の
巌窟
(
いはや
)
の
探険
(
たんけん
)
に
出
(
で
)
かけ、
187
実
(
じつ
)
に
短見
(
たんけん
)
浅慮
(
せんりよ
)
にも
思
(
おも
)
はぬ
不覚
(
ふかく
)
を
取
(
と
)
り、
188
深
(
ふか
)
く
井中
(
ゐちう
)
に
陥没
(
かんぼつ
)
致
(
いた
)
し、
189
生命
(
いのち
)
旦夕
(
たんせき
)
に
迫
(
せま
)
る、
190
と
云
(
い
)
ふ
場合
(
ばあひ
)
でございます。
191
何卒
(
どうぞ
)
諸君
(
しよくん
)
の
箱入
(
はこいり
)
の
知識
(
ちしき
)
を
絞
(
しぼ
)
り
出
(
だ
)
されて、
192
彼
(
かれ
)
が
救済
(
きうさい
)
の
策
(
さく
)
を
講
(
かう
)
じ
最善
(
さいぜん
)
の
努力
(
どりよく
)
を
尽
(
つく
)
されむ
事
(
こと
)
を
希望
(
きばう
)
いたします』
193
四人
『ヤア
賛成
(
さんせい
)
々々
(
さんせい
)
』
194
と、
195
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
一度
(
いちど
)
に
拍手
(
はくしゆ
)
をもつて
迎
(
むか
)
へる。
196
亀公
(
かめこう
)
は
井戸
(
ゐど
)
の
底
(
そこ
)
より、
197
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤーイ、
198
早
(
はや
)
く
助
(
たす
)
けぬかい。
199
死
(
し
)
んでからなら
助
(
たす
)
けても
役
(
やく
)
に
立
(
た
)
たぬぞ』
200
鷹彦
(
たかひこ
)
『
何
(
なん
)
だ。
201
井戸
(
ゐど
)
の
底
(
そこ
)
から
矢釜敷
(
やかましう
)
云
(
い
)
ふな、
202
議会
(
ぎくわい
)
の
神聖
(
しんせい
)
を
汚
(
けが
)
すでないか。
203
如何
(
どう
)
でせう、
204
諸君
(
しよくん
)
、
205
先決
(
せんけつ
)
問題
(
もんだい
)
として
亀公
(
かめこう
)
を
救済
(
きうさい
)
すべきものなりや、
206
将又
(
はたまた
)
このままに
見殺
(
みごろし
)
にすべきものなりや、
207
起立
(
きりつ
)
をもつてお
示
(
しめ
)
し
下
(
くだ
)
さい』
208
音彦
(
おとひこ
)
『
皆
(
みな
)
すでに
起立
(
きりつ
)
して
居
(
ゐ
)
るぢやありませぬか』
209
鷹彦
(
たかひこ
)
『ヤア、
210
これは
間違
(
まちが
)
つた。
211
議員
(
ぎゐん
)
一同
(
いちどう
)
そこにお
坐
(
すわ
)
り
下
(
くだ
)
さい。
212
賛成者
(
さんせいしや
)
は
起立
(
きりつ
)
を
願
(
ねが
)
ひます。
213
亀彦
(
かめひこ
)
を
助
(
たす
)
けると
云
(
い
)
ふお
心
(
こころ
)
の
方
(
かた
)
は
起立
(
きりつ
)
して
下
(
くだ
)
さい、
214
救
(
すく
)
はないと
云
(
い
)
ふ
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
の
方
(
かた
)
はそのまま
坐
(
すわ
)
つて
居
(
ゐ
)
てもらひませう。
215
一
(
いち
)
二
(
に
)
三
(
さん
)
』
216
鷹彦
(
たかひこ
)
『ヤア
起立
(
きりつ
)
される
方
(
かた
)
は
駒
(
こま
)
サン
一人
(
ひとり
)
ですか、
217
これは
怪
(
け
)
しからぬ。
218
然
(
しか
)
らば
議長
(
ぎちやう
)
が
起立
(
きりつ
)
いたしませう』
219
岩彦
(
いはひこ
)
『
議長
(
ぎちやう
)
横暴
(
わうばう
)
だ。
220
多数決
(
たすうけつ
)
多数決
(
たすうけつ
)
。
221
可
(
か
)
とする
者
(
もの
)
二人
(
ふたり
)
、
222
否
(
ひ
)
とする
者
(
もの
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
』
223
鷹彦
(
たかひこ
)
『
多数党
(
たすうたう
)
横暴
(
わうばう
)
極
(
きは
)
まる。
224
議会
(
ぎくわい
)
の
解散
(
かいさん
)
を
命
(
めい
)
じませうか』
225
亀
(
かめ
)
、
226
井戸
(
ゐど
)
の
底
(
そこ
)
より
泣
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
227
亀彦
『ヤイ、
228
馬鹿
(
ばか
)
にするない、
229
洒落
(
しやれ
)
どころかい。
230
早
(
はや
)
く
助
(
たす
)
けて
呉
(
く
)
れないか』
231
岩彦
(
いはひこ
)
『この
井戸
(
ゐど
)
の
周囲
(
まはり
)
は
皆
(
みな
)
この
岩
(
いは
)
サンで
固
(
かた
)
めてあるのだ。
232
岩
(
いは
)
に
手
(
て
)
をかけ
足
(
あし
)
をかけ
登
(
のぼ
)
つて
来
(
く
)
ればよいのだよ』
233
亀彦
(
かめひこ
)
『
登
(
のぼ
)
れと
云
(
い
)
つたつて、
234
手
(
て
)
も
足
(
あし
)
も
引
(
ひ
)
つかかる
処
(
ところ
)
がないのだよ』
235
岩彦
(
いはひこ
)
『さうだらう、
236
手足
(
てあし
)
が
短
(
みじか
)
くて
背
(
せ
)
の
甲羅
(
かふら
)
がつかへて
登
(
のぼ
)
れぬのだらう。
237
モシモシ
亀
(
かめ
)
よ
亀
(
かめ
)
サンよ、
238
世界
(
せかい
)
の
中
(
うち
)
にお
前
(
まへ
)
ほど、
239
体
(
からだ
)
の
不自由
(
ふじゆう
)
なものは
無
(
な
)
い、
240
アハヽヽ』
241
亀彦
(
かめひこ
)
『
何
(
なん
)
とおつしやる
兎
(
うさぎ
)
サン』
242
鷹彦
(
たかひこ
)
『
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
の
場合
(
ばあひ
)
、
243
命
(
いのち
)
の
瀬戸際
(
せとぎは
)
になつて、
244
洒落
(
しやれ
)
るだけの
余裕
(
よゆう
)
があるものなら、
245
サツサと
登
(
のぼ
)
つて
来
(
こ
)
い』
246
亀彦
(
かめひこ
)
『
皆
(
みな
)
サン
大
(
おほ
)
きに
憚
(
はばか
)
りさま。
247
上
(
うへ
)
から
暗
(
くら
)
くて
見
(
み
)
よまいが、
248
立派
(
りつぱ
)
な
段梯子
(
だんばしご
)
が
刻
(
きざ
)
んであるわ、
249
アハヽヽヽ』
250
と
笑
(
わら
)
ひながら
悠々
(
いういう
)
として
井戸
(
ゐど
)
から
登
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
た。
251
岩彦
(
いはひこ
)
『こいつ
一杯
(
いつぱい
)
喰
(
くは
)
された。
252
イヤ
此方
(
こちら
)
が
臨時
(
りんじ
)
議会
(
ぎくわい
)
まで
開
(
ひら
)
いて
大騒動
(
おほさうどう
)
をやつて、
253
沢山
(
たくさん
)
の
機密費
(
きみつひ
)
を
使
(
つか
)
つたのは、
254
吾々
(
われわれ
)
の
方
(
はう
)
が
陥穽
(
おとしあな
)
に
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
まれたやうなものだ。
255
有
(
あり
)
もせぬ
脳味噌
(
なうみそ
)
から
機密費
(
きみつひ
)
を
絞
(
しぼ
)
り
出
(
だ
)
して
馬鹿
(
ばか
)
らしい。
256
この
度
(
たび
)
の
議会
(
ぎくわい
)
は
歳費
(
さいひ
)
五割増
(
ごわりまし
)
だ。
257
アハヽヽヽ』
258
斯
(
か
)
く
笑
(
わら
)
ひ
さざめく
折
(
をり
)
しも、
259
前方
(
ぜんぱう
)
に
当
(
あた
)
つて
何
(
なん
)
とも
形容
(
けいよう
)
の
出来
(
でき
)
ないやうな
異声
(
いせい
)
怪音
(
くわいおん
)
頻
(
しき
)
りに
一同
(
いちどう
)
の
耳朶
(
じだ
)
を
打
(
う
)
つ。
260
不思議
(
ふしぎ
)
や
一行
(
いつかう
)
の
身体
(
からだ
)
はその
響
(
ひびき
)
と
共
(
とも
)
に、
261
電気
(
でんき
)
にでも
感
(
かん
)
じたやうに、
262
身体
(
からだ
)
の
各部
(
かくぶ
)
に
震動
(
しんどう
)
を
感
(
かん
)
じ、
263
やや
痳痺
(
まひ
)
気味
(
ぎみ
)
になつて
来
(
き
)
た。
264
鷹彦
(
たかひこ
)
『ヤア、
265
此奴
(
こいつ
)
は
大変
(
たいへん
)
だぞ、
266
オイオイ
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
、
267
緊褌
(
きんこん
)
一番
(
いちばん
)
、
268
大
(
おほい
)
に
活動
(
くわつどう
)
すべき
時期
(
じき
)
が
切迫
(
せつぱく
)
した。
269
何
(
なに
)
はともあれ、
270
神言
(
かみごと
)
だ
神言
(
かみごと
)
だ』
271
一同
(
いちどう
)
は
声
(
こゑ
)
をそろへて、
272
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
する。
273
(
大正一一・三・一七
旧二・一九
加藤明子
録)
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