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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第35巻(戌の巻)
序文
総説歌
第1篇 向日山嵐
第1章 言の架橋
第2章 出陣
第3章 進隊詩
第4章 村の入口
第5章 案外
第6章 歌の徳
第7章 乱舞
第8章 心の綱
第9章 分担
第2篇 ナイルの水源
第10章 夢の誡
第11章 野宿
第12章 自称神司
第13章 山颪
第14章 空気焔
第15章 救の玉
第16章 浮島の花
第3篇 火の国都
第17章 霧の海
第18章 山下り
第19章 狐の出産
第20章 疑心暗狐
第21章 暗闘
第22章 当違
第23章 清交
第24章 歓喜の涙
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霊界物語
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海洋万里(第25~36巻)
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第35巻(戌の巻)
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<<< 山下り
(B)
(N)
疑心暗狐 >>>
第一九章
狐
(
きつね
)
の
出産
(
しゆつさん
)
〔九八三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻
篇:
第3篇 火の国都
よみ(新仮名遣い):
ひのくにみやこ
章:
第19章 狐の出産
よみ(新仮名遣い):
きつねのしゅっさん
通し章番号:
983
口述日:
1922(大正11)年09月17日(旧07月26日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年12月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一行はやや坂道が緩くなった場所にさしかかり、生き返ったような気分となった。おりしも、道の傍らにこんこんと清水が湧き出ているのを見つけ、三人は天の与えとかわるがわる手にすくって渇きを潤した。
三人が清水とその飲み具合をお互いに批評しあって掛け合いをしていると、一人の男が前にやってきた。男は、自分は夫婦で火の国から熊襲の国へ参拝に行く途中、妻がにわかに産気づいて動けなくなってしまったと告げた。
そして、三人に妻の出産を手伝ってほしいと頼み込んだ。徳公ははしゃぎ、久公は押し黙っている。黒姫は快く、この常助と名乗る男の妻の出産に立ち会い、取り上げ婆の役割をなすことを引き受けた。
黒姫は案内された場所に着くと、早速天津祝詞を上げた。常助の妻は次々に子供を出産し、黒姫は四人もの赤子を取り上げ、無事に出産を終えた。黒姫が産後の注意を常助夫婦に与えると、常助は黒姫に感謝の辞を述べ、夫婦親子どもども大きな白狐の姿となると、どこかへ消えてしまった。
徳公と久公は黒姫をからかうが、黒姫は最初から狐の変化だと見破っていたと答えた。そして、たとえ虎でも狼でも、頼まれたら赤子を取り上げてやるのが神様の道だと二人に諭した。
一行は荒井峠を越えて先へと進んで行く。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-09-30 12:24:55
OBC :
rm3519
愛善世界社版:
223頁
八幡書店版:
第6輯 550頁
修補版:
校定版:
236頁
普及版:
86頁
初版:
ページ備考:
001
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
稍
(
やや
)
緩勾配
(
くわんこうばい
)
の
坂道
(
さかみち
)
にかかり、
002
甦
(
い
)
き
返
(
かへ
)
つた
様
(
やう
)
な
気分
(
きぶん
)
になつて、
003
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
004
道
(
みち
)
の
傍
(
かたはら
)
に
滾々
(
こんこん
)
として
清水
(
しみづ
)
が
湧
(
わ
)
き
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
る。
005
天
(
てん
)
の
与
(
あた
)
へと
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
飛
(
と
)
びつく
様
(
やう
)
にして
交
(
かは
)
る
交
(
がは
)
る
手
(
て
)
に
掬
(
すく
)
ひつつ
喉
(
のど
)
を
霑
(
うるほ
)
す。
006
徳公
(
とくこう
)
『
旅人
(
たびびと
)
の
生命
(
いのち
)
養
(
やしな
)
ふ
清水
(
しみづ
)
かな。
007
滾々
(
こんこん
)
と
水
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
湧
(
わ
)
き
出
(
い
)
でにけり。
008
あゝうまいうまいと
掬
(
むす
)
ぶ
清水
(
しみづ
)
哉
(
かな
)
。
009
汗
(
あせ
)
までが
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
す
清水
(
しみづ
)
かな。
010
喉笛
(
のどぶゑ
)
の
調子
(
てうし
)
を
直
(
なほ
)
す
清水
(
しみづ
)
かな。
011
岩清水
(
いはしみづ
)
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みなり。
012
有難
(
ありがた
)
し
尊
(
たふと
)
し
何
(
なに
)
も
岩清水
(
いはしみづ
)
』
013
久公
(
きうこう
)
『おい、
014
徳
(
とく
)
、
015
随分
(
ずゐぶん
)
水々
(
みづみづ
)
とよく
囀
(
さへづ
)
るぢやないか。
016
それほど
貴様
(
きさま
)
水
(
みづ
)
が
有難
(
ありがた
)
いか。
017
此
(
この
)
坂
(
さか
)
を
降
(
くだ
)
つて
少
(
すこ
)
しく
左
(
ひだり
)
へとれば
竜
(
たつ
)
の
湖
(
みづうみ
)
があるから、
018
そこへ
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
むで
死
(
し
)
ぬ
迄
(
まで
)
飲
(
の
)
むといいわ、
019
一杯
(
いつぱい
)
々々
(
いつぱい
)
手
(
て
)
に
掬
(
すく
)
うて
飲
(
の
)
んで
居
(
ゐ
)
るより
埒
(
らち
)
が
好
(
い
)
いからな。
020
俺
(
おれ
)
も
一
(
ひと
)
つ
此
(
この
)
清水
(
しみづ
)
で
駄句
(
だく
)
つてみようか』
021
徳公
(
とくこう
)
『
風流
(
ふうりう
)
を
知
(
し
)
らぬ
貴様
(
きさま
)
に
如何
(
どう
)
して
俳句
(
はいく
)
が
出来
(
でき
)
るものかい』
022
久公
(
きうこう
)
『
何
(
なに
)
、
023
俺
(
おれ
)
の
名句
(
めいく
)
をよく
聞
(
き
)
け!
024
岩清水
(
いはしみづ
)
徳公
(
とくこう
)
の
餓鬼
(
がき
)
の
生命
(
いのち
)
かな。
025
餓鬼
(
がき
)
達
(
たち
)
が
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
る
清水
(
しみづ
)
かな』
026
徳公
(
とくこう
)
『アハヽヽヽ、
027
もつと
云
(
い
)
はないか。
028
もうそれで
種切
(
たねぎれ
)
だなア』
029
久公
(
きうこう
)
『
滾々
(
こんこん
)
と
湧
(
わ
)
き
出
(
だ
)
す
命
(
いのち
)
や
岩清水
(
いはしみづ
)
。
030
云
(
い
)
ふよりも
云
(
い
)
はぬがましと
口
(
くち
)
を
詰
(
つ
)
め。
031
柚
(
ゆう
)
よりも
味
(
あぢ
)
の
良
(
よ
)
くない
清水
(
しみづ
)
かな。
032
湧
(
わ
)
き
返
(
かへ
)
る
胸板
(
むないた
)
冷
(
ひや
)
す
清水
(
しみづ
)
かな。
033
岩清水
(
いはしみづ
)
徳公
(
とくこう
)
の
腹
(
はら
)
に
虫
(
むし
)
がわき』
034
徳公
(
とくこう
)
『
馬鹿
(
ばか
)
にするない。
035
水臭
(
みづくさ
)
い
事
(
こと
)
ばかり
柚
(
ゆう
)
ぢやないか』
036
久公
(
きうこう
)
『きまつた
事
(
こと
)
よ。
037
水
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
ふる
宣伝使
(
せんでんし
)
のお
供
(
とも
)
だもの』
038
黒姫
(
くろひめ
)
『
掬
(
すく
)
ふ
手
(
て
)
に
恵
(
めぐみ
)
の
露
(
つゆ
)
や
岩清水
(
いはしみづ
)
。
039
滾々
(
こんこん
)
と
尽
(
つ
)
きぬ
生命
(
いのち
)
の
清水
(
しみづ
)
かな。
040
何時
(
いつ
)
までも
涸
(
か
)
るる
事
(
こと
)
なし
岩清水
(
いはしみづ
)
。
041
高山
(
たかやま
)
の
胸
(
むね
)
より
湧
(
わ
)
きし
清水
(
しみづ
)
かな。
042
高山
(
たかやま
)
を
通
(
とほ
)
れば
楽
(
たの
)
し
岩清水
(
いはしみづ
)
。
043
此
(
この
)
水
(
みづ
)
や
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
生命水
(
いのちみづ
)
。
044
岩清水
(
いはしみづ
)
三五
(
さんご
)
の
月
(
つき
)
の
光
(
ひか
)
りあり。
045
徳
(
とく
)
久
(
きう
)
が
水掛論
(
みづかけろん
)
の
比沼
(
ひぬ
)
真奈井
(
まなゐ
)
。
046
高山
(
たかやま
)
の
清水
(
しみづ
)
や
殊
(
こと
)
に
味
(
あぢ
)
の
良
(
よ
)
き。
047
岩清水
(
いはしみづ
)
吾
(
わが
)
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
に
飲
(
の
)
ませたし。
048
湧
(
わ
)
き
出
(
い
)
づる
清水
(
しみづ
)
も
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
かな。
049
水々
(
みづみづ
)
し
若
(
わか
)
い
男
(
をとこ
)
の
水喧嘩
(
みづげんくわ
)
。
050
水
(
みづ
)
にさへ
根
(
ね
)
もなき
喧嘩
(
けんくわ
)
の
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
き。
051
水晶
(
すゐしやう
)
の
霊
(
みたま
)
の
雫
(
しづく
)
か
岩清水
(
いはしみづ
)
。
052
真清水
(
ましみづ
)
や
生命
(
いのち
)
の
親
(
おや
)
と
伏
(
ふ
)
し
拝
(
をが
)
み。
053
水
(
みづ
)
入
(
い
)
らぬ
二人
(
ふたり
)
の
仲
(
なか
)
に
水喧嘩
(
みづげんくわ
)
。
054
水臭
(
みづくさ
)
い
心
(
こころ
)
を
嫌
(
きら
)
ふ
瑞御霊
(
みづみたま
)
。
055
此
(
この
)
水
(
みづ
)
や
末
(
すゑ
)
には
広
(
ひろ
)
き
海
(
うみ
)
に
入
(
い
)
り。
056
高山
(
たかやま
)
の
水
(
みづ
)
の
甘
(
うま
)
さは
誰
(
たれ
)
も
知
(
し
)
らず。
057
黒姫
(
くろひめ
)
の
心
(
こころ
)
を
洗
(
あら
)
ふ
清水
(
しみづ
)
かな。
058
坂道
(
さかみち
)
の
疲
(
つか
)
れ
養
(
やしな
)
ふ
清水
(
しみづ
)
かな。
059
又
(
また
)
汗
(
あせ
)
の
種
(
たね
)
ともならむ
岩清水
(
いはしみづ
)
。
060
真清水
(
ましみづ
)
を
掬
(
むす
)
ぶ
手先
(
てさき
)
や
霧
(
きり
)
の
立
(
た
)
ち』
061
斯
(
か
)
く
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
道
(
みち
)
の
傍
(
かたはら
)
に
腰
(
こし
)
うち
下
(
おろ
)
し
駄句
(
だく
)
りつつある
処
(
ところ
)
へ、
062
慌
(
あわただ
)
しくやつて
来
(
き
)
た
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
がある。
063
男
(
をとこ
)
は
腰
(
こし
)
を
屈
(
かが
)
め
乍
(
なが
)
ら、
064
男(常助)
『もしもし
旅
(
たび
)
の
御
(
お
)
方
(
かた
)
様
(
さま
)
、
065
一
(
ひと
)
つお
願
(
ねがひ
)
が
御座
(
ござ
)
います。
066
何卒
(
どうぞ
)
聞
(
き
)
いては
下
(
くだ
)
さいますまいか』
067
黒姫
『
何事
(
なにごと
)
か
存
(
ぞん
)
じませぬが、
068
妾
(
わたし
)
達
(
たち
)
の
力
(
ちから
)
に
叶
(
かな
)
ふ
事
(
こと
)
ならば
承
(
うけたま
)
はりませう』
069
男
(
をとこ
)
(常助)
『
早速
(
さつそく
)
の
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
070
私
(
わたし
)
は
火
(
ひ
)
の
国
(
くに
)
の
者
(
もの
)
で
常助
(
つねすけ
)
と
申
(
まを
)
す
百姓
(
ひやくしやう
)
男
(
をとこ
)
で
御座
(
ござ
)
いますが
熊襲
(
くまそ
)
の
国
(
くに
)
の
建日
(
たけひ
)
の
館
(
やかた
)
へ
参拝
(
さんぱい
)
せむと、
071
女房
(
にようばう
)
のお
常
(
つね
)
を
伴
(
ともな
)
ひ
此
(
この
)
坂
(
さか
)
をエチエチと
登
(
のぼ
)
つて
参
(
まゐ
)
りました
処
(
ところ
)
、
072
まだ
七月
(
ななつき
)
よりならない
女房
(
にようばう
)
が
俄
(
にはか
)
に
陣痛
(
しきり
)
が
来
(
く
)
ると
申
(
まを
)
しだし、
073
路傍
(
みちばた
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
腹
(
はら
)
を
痛
(
いた
)
めて
七転
(
しちてん
)
八倒
(
ばつたう
)
苦悶
(
くもん
)
をつづけて
居
(
を
)
ります。
074
何卒
(
どうぞ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
によつて
安産
(
あんざん
)
をさせてやつて
下
(
くだ
)
さいませ』
075
黒姫
『それは
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
076
及
(
およ
)
ばぬ
乍
(
なが
)
ら
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
をさして
頂
(
いただ
)
きます……これこれ
二人
(
ふたり
)
の
若
(
わか
)
い
衆
(
しう
)
、
077
水筒
(
すゐとう
)
に
水
(
みづ
)
を
一杯
(
いつぱい
)
盛
(
も
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
078
お
産
(
さん
)
の
時
(
とき
)
に
使
(
つか
)
はねばなりませぬから……』
079
徳公
『ハイ、
080
徳
(
とく
)
と
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
081
スウヰートハートの
結果
(
けつくわ
)
赤坊
(
あかんぼ
)
を
腹
(
はら
)
に
仕入
(
しこ
)
んで、
082
到頭
(
たうとう
)
水筒
(
すゐとう
)
の
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
に
預
(
あづか
)
ると
云
(
い
)
ふ
妙
(
めう
)
な
因縁
(
いんねん
)
ですなア。
083
私
(
わたし
)
も
未
(
ま
)
だ
嬶
(
かか
)
アを
貰
(
もら
)
つてから
間
(
ま
)
がないので、
084
出産
(
しゆつさん
)
の
状況
(
じやうきやう
)
を
目撃
(
もくげき
)
した
事
(
こと
)
がない。
085
こりやまア、
086
都合
(
つがふ
)
の
好
(
よ
)
い
事
(
こと
)
だ。
087
一
(
ひと
)
つ
見物
(
けんぶつ
)
さして
貰
(
もら
)
ひませうかい。
088
なあ
久公
(
きうこう
)
、
089
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
人間
(
にんげん
)
が
一匹
(
いつぴき
)
小
(
ちひ
)
さい○○から
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
すのだから、
090
随分
(
ずゐぶん
)
六
(
むつ
)
かしい
芸当
(
げいたう
)
だらう。
091
屹度
(
きつと
)
見
(
み
)
る
丈
(
だ
)
けの
価値
(
かち
)
はあるよ』
092
久公
(
きうこう
)
は
黙
(
もく
)
して
答
(
こた
)
へず。
093
黒姫
『これ
徳公
(
とくこう
)
さま、
094
出産
(
しゆつさん
)
と
云
(
い
)
ふものは
大切
(
たいせつ
)
なものだから、
095
静
(
しづ
)
かにせないと
産婦
(
さんぷ
)
が
逆上
(
ぎやくじやう
)
すると
大変
(
たいへん
)
だから、
096
暫
(
しばら
)
く
沈黙
(
ちんもく
)
して
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さいや』
097
徳公
『
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
098
これ
常助
(
つねすけ
)
どん、
099
お
前
(
まへ
)
の
奥
(
おく
)
さまは
何処
(
どこ
)
で
呻
(
うな
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
100
早
(
はや
)
く
案内
(
あんない
)
しなさい。
101
万一
(
まんいち
)
、
102
赤坊
(
あかんぼ
)
が
出
(
で
)
にくがつて
居
(
を
)
つたら、
103
俺
(
おれ
)
が
後
(
うしろ
)
に
廻
(
まは
)
つて
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
腰
(
こし
)
なり、
104
尻
(
しり
)
なりを
徳
(
とく
)
とブン
殴
(
なぐ
)
つて
叩
(
たた
)
きだしてやるから
安心
(
あんしん
)
しなさい』
105
常助
『そんな
無茶
(
むちや
)
をしたつて
子
(
こ
)
は
生
(
うま
)
れるものぢや
御座
(
ござ
)
いませぬ。
106
却
(
かへつ
)
て
産婦
(
さんぷ
)
が
気
(
き
)
をとり
失
(
うしな
)
ひ
難産
(
なんざん
)
を
致
(
いた
)
しますから、
107
何卒
(
どうぞ
)
手荒
(
てあら
)
い
事
(
こと
)
はせぬ
様
(
やう
)
に
頼
(
たの
)
みます』
108
黒姫
『
常
(
つね
)
さま、
109
安心
(
あんしん
)
なさいませ。
110
此
(
この
)
黒姫
(
くろひめ
)
が
何
(
なに
)
もかも
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
んでゐますから
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
です。
111
さあ
早
(
はや
)
く
参
(
まゐ
)
りませう』
112
常助
『ハイ、
113
有難
(
ありがた
)
う、
114
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
します。
115
斯
(
か
)
うお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
116
と
路傍
(
みちばた
)
の
草道
(
くさみち
)
を
二三十
(
にさんじつ
)
間
(
けん
)
ばかり
踏
(
ふ
)
み
分
(
わ
)
け
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
117
黒姫
(
くろひめ
)
も
一歩
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
気
(
き
)
をつけ
乍
(
なが
)
ら
雑草
(
ざつさう
)
の
中
(
なか
)
を
探
(
さぐ
)
りつつ
常助
(
つねすけ
)
に
従
(
したが
)
ひ
行
(
ゆ
)
く。
118
徳公
『
何
(
なん
)
とマアえらい
叢
(
くさむら
)
ぢやないか。
119
こんな
処
(
ところ
)
でお
産
(
さん
)
をする
奴
(
やつ
)
ア
碌
(
ろく
)
な
奴
(
やつ
)
ぢやあるまい。
120
河原
(
かはら
)
乞食
(
こじき
)
か、
121
山乞食
(
やまこじき
)
ぢやなくちや
宿
(
やど
)
なし
坊
(
ばう
)
か、
122
一体
(
いつたい
)
合点
(
がてん
)
のゆかぬ
代物
(
しろもの
)
ぢやないか』
123
黒姫
『これ、
124
徳公
(
とくこう
)
さま、
125
お
黙
(
だま
)
りなさい。
126
産婦
(
さんぷ
)
に
障
(
さは
)
りますよ』
127
徳公
『ハイ、
128
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました、
129
出産
(
しゆつさん
)
が
済
(
す
)
むまで
徳山
(
とくやま
)
砲台
(
はうだい
)
も
沈黙
(
ちんもく
)
致
(
いた
)
します』
130
黒姫
『ホヽヽヽヽ』
131
常助
『この
樹
(
き
)
の
根
(
ね
)
に
女房
(
にようばう
)
が
居
(
を
)
ります。
132
何卒
(
どうぞ
)
宜
(
よろ
)
しうお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
133
黒姫
『ほんにほんに
綺麗
(
きれい
)
な
女房
(
にようばう
)
だな。
134
これお
常
(
つね
)
さまとやら、
135
妾
(
わたし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
宣伝使
(
せんでんし
)
だ。
136
これから
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
願
(
ねが
)
つて、
137
安
(
やす
)
く
身二
(
みふた
)
つにして
上
(
あ
)
げますから
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ』
138
徳公
『もしもし
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
139
そんな
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
をしちやいけませんぞ。
140
二
(
ふた
)
つにして
上
(
あ
)
げるなんてそんな
無茶
(
むちや
)
な
事
(
こと
)
がありますか……
殺
(
ころ
)
す
勿
(
なか
)
れ……と
云
(
い
)
ふ
律法
(
りつぱう
)
をお
前様
(
まへさま
)
は
蹂躙
(
じうりん
)
する
積
(
つも
)
りですか』
141
黒姫
『ホヽヽヽヽ、
142
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
男
(
をとこ
)
だこと、
143
二
(
ふた
)
つにして
上
(
あ
)
げると
云
(
い
)
ふのは、
144
親切
(
しんせつ
)
にとりあげて
親
(
おや
)
と
子
(
こ
)
と
分
(
わ
)
けて
上
(
あ
)
げると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ。
145
つまり
子
(
こ
)
を
生
(
うま
)
れさす
事
(
こと
)
だよ』
146
徳公
『やアそれで
安心
(
あんしん
)
した。
147
何卒
(
どうぞ
)
早
(
はや
)
く
二
(
ふた
)
つなつと
三
(
み
)
つなつとしてやつて
下
(
くだ
)
さい』
148
黒姫
『ヒヨツとしたら
五
(
いつ
)
つになるかも
知
(
し
)
れませぬから、
149
吃驚
(
びつくり
)
せぬ
様
(
やう
)
にして
下
(
くだ
)
さい。
150
……これこれお
常
(
つね
)
さま、
151
大分
(
だいぶん
)
息苦
(
いきぐる
)
しさうだ。
152
今
(
いま
)
楽
(
らく
)
にして
上
(
あ
)
げますから、
153
チツとばかり
辛抱
(
しんばう
)
しなさいや』
154
お常
『ハイ
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います、
155
とんだ
厄介
(
やくかい
)
をかけまして
申訳
(
まをしわけ
)
が
御座
(
ござ
)
いませぬ』
156
黒姫
(
くろひめ
)
は、
157
黒姫
『そんな
心配
(
しんぱい
)
なされますな』
158
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
らお
常
(
つね
)
の
前
(
まへ
)
に
端坐
(
たんざ
)
し、
159
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
160
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
謳
(
うた
)
ひ
上
(
あ
)
げ、
161
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
祈願
(
きぐわん
)
を
凝
(
こ
)
らしてゐる。
162
お
常
(
つね
)
は「ウン」とばかり
苦悶
(
くもん
)
の
声
(
こゑ
)
と
共
(
とも
)
に「ホギヤー」と
一声
(
ひとこゑ
)
、
163
飛
(
と
)
びだしたのはクリクリとした
男
(
をとこ
)
の
児
(
こ
)
……。
164
黒姫
『ヤアお
目出度
(
めでた
)
いお
目出度
(
めでた
)
い……これこれ
常助
(
つねすけ
)
さま、
165
徳
(
とく
)
さま、
166
久
(
きう
)
さま、
167
早
(
はや
)
く
用意
(
ようい
)
をなされ、
168
お
水
(
みづ
)
の……
私
(
わたし
)
はまだ
手
(
て
)
がぬけませぬから……さアお
常
(
つね
)
さま、
169
も
一気張
(
ひときば
)
りだよ』
170
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
171
又
(
また
)
もや
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
謳
(
うた
)
ひ
上
(
あ
)
げると、
172
「ホギアー」と
一声
(
ひとこゑ
)
、
173
飛
(
と
)
んで
出
(
で
)
た
赤坊
(
あかんぼ
)
は
女
(
をんな
)
である。
174
「ウン」と
一声
(
ひとこゑ
)
、
175
又
(
また
)
もや
男
(
をとこ
)
の
赤坊
(
あかんぼ
)
が
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
す。
176
黒姫
『さアも
一気張
(
ひときば
)
りだ』
177
とお
常
(
つね
)
の
腰
(
こし
)
をグツと
抱
(
かか
)
へ「ウーン」と
息
(
いき
)
を
掛
(
か
)
ける、
178
「ホギヤー」
又
(
また
)
飛出
(
とびだ
)
したのは
女
(
をんな
)
の
赤坊
(
あかんぼ
)
である。
179
黒姫
『さア
常助
(
つねすけ
)
さま、
180
お
常
(
つね
)
さま、
181
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませや。
182
腹帯
(
はらおび
)
を
締
(
し
)
めて
上
(
あ
)
げませう。
183
産前
(
さんぜん
)
よりも
産後
(
さんご
)
が
大切
(
たいせつ
)
ですから
後
(
あと
)
を
気
(
き
)
をつけなさいよ』
184
お常
『はい
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
185
お
蔭
(
かげ
)
で
安産
(
あんざん
)
さして
頂
(
いただ
)
きました。
186
此
(
この
)
御恩
(
ごおん
)
は
決
(
けつ
)
して
忘
(
わす
)
れませぬ』
187
徳公
『
何
(
なん
)
だ、
188
家
(
うち
)
の
隣
(
となり
)
のお
磯
(
いそ
)
が
双子
(
ふたご
)
を
生
(
う
)
みよつて
珍
(
めづ
)
らしいと
云
(
い
)
つて
村中
(
むらぢう
)
の
評判
(
ひやうばん
)
だつたが、
189
此奴
(
こいつ
)
ア
又
(
また
)
豪気
(
がうき
)
だ。
190
赤坊
(
あかんぼ
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
が
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
したぢやないか……なあ
久公
(
きうこう
)
、
191
なんでもこりや
前
(
さき
)
の
世
(
よ
)
で
如何
(
どう
)
しても……お
前
(
まへ
)
と
添
(
そ
)
はれねば
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
つて
死出
(
しで
)
三途
(
さんづ
)
、
192
蓮
(
はす
)
の
台
(
うてな
)
で
一蓮
(
いちれん
)
托生
(
たくしやう
)
、
193
南無
(
なむ
)
妙法蓮
(
めうほふれん
)
陀仏
(
だぶつ
)
……と
洒落
(
しやれ
)
て
淵川
(
ふちがは
)
へ
身
(
み
)
を
投
(
な
)
げた
心中者
(
しんぢうもの
)
の
生
(
うま
)
れ
変
(
かは
)
りだらうよ。
194
何
(
なん
)
とまア
仲
(
なか
)
のいい
者
(
もの
)
だな。
195
死
(
し
)
ぬ
時
(
とき
)
も
一緒
(
いつしよ
)
に
死
(
し
)
に、
196
生
(
うま
)
れる
時
(
とき
)
にも
一緒
(
いつしよ
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
く
)
るのだから、
197
ホントに
巧妙
(
かうめう
)
な
奴
(
やつ
)
もあつたものだ。
198
アハヽヽヽ……
俺
(
おれ
)
も
嬶
(
かか
)
アの
死
(
し
)
ぬ
時
(
とき
)
や
一緒
(
いつしよ
)
に
死
(
し
)
んでやつて、
199
又
(
また
)
此
(
この
)
赤坊
(
あかんぼ
)
の
様
(
やう
)
に、
200
同
(
おな
)
じ
母親
(
ははおや
)
の
腹
(
はら
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
てやらう。
201
こりや、
202
うまい
事
(
こと
)
を
考
(
かんが
)
へた。
203
オホヽヽヽ』
204
黒姫
『これこれ
八釜
(
やかま
)
しい。
205
下
(
くだ
)
らぬ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふぢやありませぬよ、
206
後
(
あと
)
の
身体
(
からだ
)
に
障
(
さは
)
つたら
如何
(
どう
)
しますか』
207
徳公
『それだと
云
(
い
)
つて、
208
犬
(
いぬ
)
か
猫
(
ねこ
)
か
狐
(
きつね
)
か
狸
(
たぬき
)
の
様
(
やう
)
に、
209
人間
(
にんげん
)
が
一遍
(
いつぺん
)
に
四
(
よ
)
人
(
にん
)
も
赤坊
(
あかんぼ
)
を
生
(
う
)
むのだもの、
210
これが
黙
(
だま
)
つて
居
(
を
)
られるものか。
211
生
(
うま
)
れてから
初
(
はじ
)
めて
見
(
み
)
たのだから、
212
珍
(
めづら
)
しくつて
面白
(
おもしろ
)
くつて
仕方
(
しかた
)
がありませぬワイ。
213
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
の
身魂
(
みたま
)
か
何
(
なに
)
か
知
(
し
)
らねども
214
一度
(
いちど
)
に
四
(
よ
)
つの
子
(
こ
)
を
生
(
う
)
みにけり。
215
常助
(
つねすけ
)
とお
常
(
つね
)
さまとのそのなかに
216
狐
(
きつね
)
のやうな
子
(
こ
)
は
生
(
うま
)
れけり。
217
お
常
(
つね
)
さん
腹帯
(
はらおび
)
シツカリ
締
(
し
)
めなされ
218
後
(
あと
)
の
肥立
(
ひだ
)
ちが
肝腎
(
かんじん
)
だから。
219
肝腎
(
かんじん
)
の
常助
(
つねすけ
)
さまはウロウロと
220
呆気面
(
はうけづら
)
して
何
(
なに
)
を
周章
(
あわて
)
る。
221
常
(
つね
)
さまよ
子
(
こ
)
は
三界
(
さんがい
)
の
首枷
(
くびかせ
)
ぢや
222
うかうかせずに
働
(
はたら
)
け
是
(
これ
)
から。
223
今
(
いま
)
までは
二人
(
ふたり
)
暮
(
ぐら
)
しの
常
(
つね
)
さまも
224
これからチツと
荷
(
に
)
が
重
(
おも
)
うなる』
225
黒姫
『これこれ
徳
(
とく
)
さま、
226
又
(
また
)
八釜
(
やかま
)
しい、
227
チツと
黙
(
だま
)
つて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さい』
228
徳公
『
黒姫
(
くろひめ
)
が
何程
(
なにほど
)
黙
(
だま
)
れと
云
(
い
)
つたとて
229
こんな
事
(
こと
)
見
(
み
)
て
黙
(
だま
)
つて
居
(
を
)
らりよか。
230
千早
(
ちはや
)
振
(
ふ
)
る
神代
(
かみよ
)
もきかず
四人
(
よつたり
)
の
231
子
(
こ
)
が
一時
(
いちどき
)
に
生
(
うま
)
れ
出
(
で
)
るとは。
232
狐
(
きつね
)
ならば
知
(
し
)
らず
人間
(
にんげん
)
の
身体
(
からだ
)
より
233
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
ドツコイ
四
(
よ
)
つ
身
(
み
)
飛
(
と
)
び
出
(
で
)
る。
234
あゝ
惟神
(
かむながら
)
如何
(
いか
)
なる
神
(
かみ
)
の
悪戯
(
いたづら
)
か
235
古今
(
ここん
)
独歩
(
どくぽ
)
の
今日
(
けふ
)
の
誕生
(
たんじやう
)
。
236
珍無類
(
ちんむるゐ
)
例
(
ため
)
しもあらぬお
常
(
つね
)
さまが
237
一度
(
いちど
)
に
四
(
よ
)
人
(
にん
)
フウフ(
夫婦
(
ふうふ
)
)と
生
(
う
)
む』
238
黒姫
『さあ、
239
常助
(
つねすけ
)
さま、
240
お
常
(
つね
)
さま、
241
もう
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
です。
242
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ』
243
お常
『とんでもない
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
になりました。
244
決
(
けつ
)
して
此
(
この
)
御恩
(
ごおん
)
は
忘
(
わす
)
れませぬ』
245
黒姫
『
随分
(
ずゐぶん
)
身体
(
からだ
)
を
大切
(
たいせつ
)
になさいませ。
246
冷
(
つめ
)
たい
水
(
みづ
)
を
飲
(
の
)
んだり
無理
(
むり
)
をせぬ
様
(
やう
)
に、
247
七十五
(
しちじふご
)
日
(
にち
)
の
間
(
あひだ
)
は
御
(
ご
)
保養
(
ほやう
)
あらむ
事
(
こと
)
を、
248
こんこんと
懇望
(
こんまう
)
して
置
(
お
)
きます』
249
常助、お常
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
250
左様
(
さやう
)
なればこれでお
別
(
わか
)
れ
致
(
いた
)
します』
251
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
252
常助
(
つねすけ
)
、
253
お
常
(
つね
)
は
真白
(
まつしろ
)
けの
大狐
(
おほぎつね
)
となり、
254
真白
(
まつしろ
)
の
尾
(
を
)
を
垂
(
た
)
れて
四匹
(
しひき
)
の
子供
(
こども
)
を
連
(
つ
)
れ、
255
ノソリノソリと
森林
(
しんりん
)
深
(
ふか
)
く
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
したり。
256
徳公
『アハヽヽヽヽ、
257
何
(
なん
)
だ。
258
初
(
はじ
)
めからチツと
怪
(
あや
)
しいと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たが、
259
狐
(
きつね
)
の
産婆
(
とりあげばあ
)
さまを
黒姫
(
くろひめ
)
さまが
為
(
な
)
さつたのだな。
260
何
(
なん
)
と
偉
(
えら
)
いものだ。
261
一遍
(
いつぺん
)
に
四
(
よ
)
人
(
にん
)
も
子
(
こ
)
を
産
(
う
)
むのが
変
(
へん
)
だと
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
つた。
262
如何
(
どう
)
やらまだ
狐
(
きつね
)
に
騙
(
だま
)
されて
居
(
ゐ
)
る
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
がするぞ……おい
久公
(
きうこう
)
、
263
俺
(
おれ
)
の
頬
(
ほほ
)
を
抓
(
つめ
)
つて
見
(
み
)
て
呉
(
く
)
れ、
264
黒姫
(
くろひめ
)
さま
迄
(
まで
)
がソロソロ
狐
(
きつね
)
の
親分
(
おやぶん
)
の
様
(
やう
)
に
見
(
み
)
え
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
たワイ』
265
黒姫
『ホヽヽヽヽ、
266
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
道
(
みち
)
には
別
(
わ
)
け
隔
(
へだ
)
てはありませぬ。
267
人民
(
じんみん
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばす、
268
鳥
(
とり
)
獣
(
けだもの
)
虫族
(
むしけら
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
助
(
たす
)
けて
行
(
ゆ
)
くのが、
269
三五教
(
あななひけう
)
の
御教
(
みをしへ
)
だからなア』
270
徳公
『
黒姫
(
くろひめ
)
さまお
前
(
まへ
)
さまも
呆
(
あき
)
れたでせう。
271
初
(
はじ
)
めは
矢張
(
やはり
)
人間
(
にんげん
)
だと
思
(
おも
)
うて
居
(
ゐ
)
たのでせう』
272
黒姫
『そんな
事
(
こと
)
の
分
(
わか
)
らぬ
妾
(
わたし
)
ですかい。
273
初
(
はじ
)
めから
常助
(
つねすけ
)
だとか、
274
お
常
(
つね
)
だとか
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
つたぢやありませぬか。
275
あゝして
人間
(
にんげん
)
に
化
(
ば
)
けて
居
(
を
)
つたけれども、
276
太
(
ふと
)
い
尻尾
(
しつぽ
)
が
股
(
また
)
の
間
(
あひだ
)
から
一寸
(
ちよつと
)
見
(
み
)
えて
居
(
ゐ
)
たのだ。
277
お
前
(
まへ
)
はそれが
気
(
き
)
がつかなかつたのだな』
278
徳公
『
初
(
はじ
)
めから
狐
(
きつね
)
だと
思
(
おも
)
つたら、
279
アタ
嫌
(
いや
)
らしい、
280
誰
(
たれ
)
が
相手
(
あひて
)
になるものか。
281
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
ブン
殴
(
なぐ
)
つてやるのだつた。
282
なあ
久公
(
きうこう
)
、
283
さつぱりコンと
訳
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
らぬ
様
(
やう
)
になつて
来
(
き
)
たぢやないか』
284
久公
『いや、
285
もうあんまりの
事
(
こと
)
で
久
(
きう
)
には
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないわ』
286
黒姫
『さア、
287
も
一息
(
ひといき
)
だ。
288
そろそろ
参
(
まゐ
)
りませうか』
289
と
黒姫
(
くろひめ
)
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つ。
290
徳公
(
とくこう
)
は、
291
徳公
『ハイ、
292
参
(
まゐ
)
りませう。
293
もう
此
(
この
)
先
(
さき
)
に
出産
(
しゆつさん
)
して
居
(
を
)
つても、
294
狐
(
きつね
)
の
取上
(
とりあ
)
げだけは
断
(
ことわ
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
295
黒姫
『
狐
(
きつね
)
ばかりか、
296
虎
(
とら
)
でも
狼
(
おほかみ
)
でも
獅子
(
しし
)
でも、
297
熊
(
くま
)
でも
大蛇
(
をろち
)
でも
鬼
(
おに
)
でも
構
(
かま
)
はぬ、
298
頼
(
たの
)
まれたら
産婆
(
とりあげばあ
)
をしてやりますよ。
299
それが
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
道
(
みち
)
に
仕
(
つか
)
ふるものの
尽
(
つく
)
すべき
道
(
みち
)
だからなア』
300
徳公
(
とくこう
)
『
何
(
なん
)
と、
301
恐
(
おそ
)
ろしい
宣伝使
(
せんでんし
)
だなア。
302
徳
(
とく
)
と
考
(
かんが
)
へねばなるまい、
303
さア
行
(
ゆ
)
かう』
304
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
ち、
305
荒井峠
(
あらゐたうげ
)
を
西
(
にし
)
へ
西
(
にし
)
へと
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
306
(
大正一一・九・一七
旧七・二六
北村隆光
録)
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