霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二三章 清交(せいこう)〔九八七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻 篇:第3篇 火の国都 よみ(新仮名遣い):ひのくにみやこ
章:第23章 清交 よみ(新仮名遣い):せいこう 通し章番号:987
口述日:1922(大正11)年09月17日(旧07月26日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
火の国館の門前に、宣伝歌を歌いながらやってきたのは、玉治別であった。玉治別は、黒姫が探していた筑紫の島の高山彦は、別人であることを知っていたようであった。
火の国館の門番・軽公と受付の玉公は、玉治別宣伝使がやってきたと知り、歓迎してさっそく奥殿の愛子姫に合わせるべく、館の重鎮・津軽命に引き合わせた。津軽命は玉治別を導き、愛子姫も玉治別の訪問と聞いて支度を整えている。
玉治別と愛子姫は打ち解けて語り合った。愛子姫の夫・高国別は禊のために桂の滝に出かけており、留守をしていた。玉治別も、自転倒島に流れ着いた愛子姫の妹たちの活躍を、愛子姫に語って聞かせた。
玉治別は自分が孤児の身の上であったことを明かしつつ、火の国館にやってきた目的は、黒姫が主人の高国別を自分の夫の高山別と勘違いしているので、その騒動を収めて黒姫を高山別のいる聖地へ連れて帰るためだと告げた。
そこへ門番の玉公が、黒姫が共を引き連れて門前にやってきたと注進した。津軽命は黒姫を、愛子姫の居間に通すようにと命じた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-10-02 12:25:02 文字数:3290 OBC :rm3523
愛善世界社版:270頁 八幡書店版:第6輯 567頁 修補版: 校定版:285頁 普及版:105頁 初版: ページ備考:
001 火(ひ)の国館(くにやかた)の門前(もんぜん)近(ちか)く、002宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひ乍(なが)ら入(い)り来(きた)る一人(ひとり)の宣伝使(せんでんし)は玉治別(たまはるわけの)命(みこと)なり。
003玉治別『神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
004善神(ぜんしん)邪神(じやしん)を立別(たてわ)ける
005恋(こひ)に迷(まよ)うた黒姫(くろひめ)が
006自転倒(おのころ)島(じま)の聖場(せいぢやう)に
007朝(あさ)な夕(ゆふ)なにまめやかに
008仕(つか)へつとむるハズバンド
009高山彦(たかやまひこ)の神司(かむづかさ)
010筑紫(つくし)の島(しま)に渡(わた)りしと
011心(こころ)一(ひと)つに思(おも)ひつめ
012百(もも)の悩(なや)みに堪(た)へ乍(なが)ら
013三五教(あななひけう)の宣伝(せんでん)を
014兼(か)ねつつ来(きた)る浪(なみ)の上(うへ)
015筑紫(つくし)ケ岳(だけ)をふみ越(こ)えて
016岩(いは)の根(ね)木(き)の根(ね)よけ乍(なが)ら
017人跡(じんせき)稀(まれ)なる谷(たに)の路(みち)
018向日峠(むかふたうげ)や屋方村(やかたむら)
019後(あと)に眺(なが)めて荒井岳(あらゐだけ)
020二人(ふたり)の御(お)供(とも)を伴(ともな)ひて
021火(ひ)の国(くに)一(いち)の急坂(きふはん)を
022登(のぼ)りつ下(くだ)りつ進(すす)み来(く)る
023あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
024黒姫司(くろひめつかさ)が今(いま)ここに
025現(あら)はれ来(きた)ることあらば
026さぞや驚(おどろ)き給(たま)ふべし
027吾(わが)背(せ)の君(きみ)と只管(ひたすら)に
028思(おも)ひし高山彦(たかやまひこ)神(がみ)は
029真(まこと)の夫(をつと)に非(あら)ずして
030思(おも)ひもよらぬ人(ひと)の夫(つま)
031天照(あまてら)します大神(おほかみ)の
032御手(みて)の手巻(たまき)にまかせたる
033五百津(いほつ)美須麻琉(みすまる)々々々々(みすまる)の
034玉(たま)の精気(せいき)にあれましし
035活津彦根(いくつひこね)の神司(かむづかさ)
036高国別(たかくにわけ)と聞(き)くならば
037さすがに気丈(きぢやう)の黒姫(くろひめ)も
038さぞや驚(おどろ)き玉(たま)ふらむ
039思(おも)へば思(おも)へばいぢらしい
040一日(ひとひ)も早(はや)く片時(かたとき)も
041黒姫(くろひめ)さまの迷(まよ)ひをば
042晴(は)らし助(たす)けて自転倒(おのころ)の
043神(かみ)の集(あつ)まる珍(うづ)の島(しま)
044綾(あや)の高天(たかま)につれ帰(かへ)り
045高山彦(たかやまひこ)と諸共(もろとも)に
046睦(むつ)び親(した)しみ皇神(すめかみ)の
047誠(まこと)の道(みち)に仕(つか)へまし
048麻邇(まに)の宝珠(ほつしゆ)の神業(しんげふ)に
049清(きよ)くも仕(つか)へさせ玉(たま)へ
050あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
051神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)の
052御言(みこと)を畏(かしこ)みフサの国(くに)
053ウブスナ山(やま)の山頂(さんちやう)に
054大宮柱(おほみやばしら)太(ふと)しりて
055そそり立(た)ちたる斎苑(いそ)館(やかた)
056聖地(せいち)を後(あと)にはるばると
057エデンの河(かは)を船(ふね)に乗(の)り
058フサの海原(うなばら)横断(わうだん)し
059筑紫(つくし)の島(しま)の熊襲国(くまそくに)
060建日(たけひ)の港(みなと)に上陸(じやうりく)し
061黒姫(くろひめ)さまを助(たす)けむと
062ここ迄(まで)進(すす)み来(きた)りけり
063あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
064御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ』
065と歌(うた)ひ乍(なが)ら、066門前(もんぜん)近(ちか)く現(あら)はれける。
067 門番(もんばん)の軽公(かるこう)は此(この)宣伝歌(せんでんか)に勇(いさ)み立(た)ち、068威儀(ゐぎ)を正(ただ)して門(もん)を開(ひら)き、
069軽公『玉治別(たまはるわけ)神(かみ)の命(みこと)の出(い)でましと
070知(し)るより心(こころ)勇(いさ)みけるかも。
071高山彦(たかやまひこ)の神(かみ)の命(みこと)の後(あと)追(お)うて
072黒姫司(くろひめつかさ)出(い)でますと聞(き)く。
073黒姫(くろひめ)の御供(みとも)の人(ひと)が今(いま)二人(ふたり)
074力(ちから)なくなく帰(かへ)りましけり。
075高国別(たかくにわけ)神(かみ)の命(みこと)の神司(かむづかさ)
076桂(かつら)の滝(たき)に出(い)でましにけり。
077玉治別(たまはるわけ)神(かみ)の命(みこと)よ速(すみや)かに
078鉄門(かなど)をくぐり奥(おく)に入(い)りませ。
079惟神(かむながら)神(かみ)の恵(めぐみ)の深(ふか)くして
080今日(けふ)は尊(たふと)き神(かみ)に会(あ)ふ哉(かな)。
081有難(ありがた)や玉治別(たまはるわけ)の出(い)でましに
082御空(みそら)も清(きよ)く晴(は)れ渡(わた)りけり。
083大空(おほぞら)の星(ほし)にも擬(まが)ふ玉治別(たまはるわけ)の
084神(かみ)の身魂(みたま)の美(うるは)しき哉(かな)』
085と口(くち)を極(きは)めて讃美(さんび)し、086歓迎(くわんげい)してゐる。
087玉治別『美(うるは)しき火(ひ)の国都(くにみやこ)の鉄門(かなど)守(も)る
088軽(かる)の君(きみ)こそ雄々(をを)しき男(を)の子(こ)よ。
089われこそは玉治別(たまはるわけ)の神司(かむづかさ)
090館(やかた)の君(きみ)に会(あ)はまくぞ思(おも)ふ。
091高国別(たかくにわけ)神(かみ)の命(みこと)は雄々(をを)しくも
092桂(かつら)の滝(たき)に出(い)でますと聞(き)く。
093さり乍(なが)ら愛子(あいこ)の姫(ひめ)はおはすらむ
094われは代(かは)りて言問(ことと)ひたくぞ思(おも)ふ』
095 門番(もんばん)の軽公(かるこう)は、
096軽公『神館(かむやかた)主(あるじ)の君(きみ)はいまさねど
097愛子(あいこ)の姫(ひめ)に会(あ)はせまつらむ。
098玉治別(たまはるわけ)神(かみ)の命(みこと)よわれは今(いま)
099君(きみ)の御為(みため)に導(みちび)きまつらむ』
100 玉治別(たまはるわけ)は、
101玉治別『今(いま)こそは人(ひと)の情(なさけ)の知(し)られけり
102鉄門(かなど)を守(まも)る人(ひと)の言葉(ことば)に。
103黒姫(くろひめ)はやがては此処(ここ)に来(き)ますらむ
104易(やす)く通(とほ)せよ鉄門(かなど)守(も)る人(ひと)』
105軽公『黒姫(くろひめ)を易(やす)く通(とほ)さむ術(すべ)なけど
106君(きみ)のことばに詮術(せんすべ)もなし。
107君(きみ)ならで誰(たれ)に開(ひら)かむ此(この)鉄門(かなど)
108主(あるじ)の君(きみ)の許(ゆる)しなくして』
109 玉治別(たまはるわけ)は、
110玉治別『いざさらば珍(うづ)の館(やかた)へ進(すす)み申(まを)さむ
111心(こころ)も足(あし)も軽公(かるこう)の恵(めぐみ)に』
112 かく応答(おうたふ)し乍(なが)ら、113いつの間(ま)にか玄関口(げんくわんぐち)につけり。114軽公(かるこう)は受付(うけつけ)の玉公(たまこう)に向(むか)ひ歌(うた)を詠(よ)む。
115軽公『玉公(たまこう)よ今(いま)より表(おもて)の鉄門(かなど)守(も)れ
116わはこれより受付(うけつけ)とならむ』
117玉公『いざさらば表(おもて)に立(た)ちていかめしく
118みことのままに鉄門(かなど)守(まも)らむ』
119と、120つツと立(た)つて元(もと)の門番(もんばん)をなすべく表(おもて)に出(で)て行(ゆ)く。
121 この軽公(かるこう)は、122津軽(つがるの)命(みこと)といふ館(やかた)の主(あるじ)の股肱(ここう)と頼(たの)む宣伝使(せんでんし)である。123津軽(つがるの)命(みこと)は玉治別(たまはるわけの)命(みこと)に向(むか)ひ又(また)詠(うた)ふ。
124津軽命『いざ早(はや)く奥(おく)の一間(ひとま)に通(とほ)りませ
125愛子(あいこ)の姫(ひめ)は汝(なれ)を待(ま)ちます』
126玉治別『神館(かむやかた)主(あるじ)の神(かみ)はまさねども
127いろとの君(きみ)にものや申(まを)さむ』
128と、129津軽(つがるの)命(みこと)に導(みちび)かれ、130奥(おく)の間(ま)さして進(すす)み入(い)る。131愛子姫(あいこひめ)は玉治別(たまはるわけの)命(みこと)の入来(にふらい)と聞(き)き、132あわただしく衣紋(えもん)をつくろひ髪(かみ)をなで上(あ)げ、133しづしづとして此方(こなた)に向(むか)つて歩(あゆ)み来(きた)る。134長(なが)き廊下(らうか)に差(さし)かかる折(をり)、135玉治別(たまはるわけ)にパツタリ出会(であ)ひ、
136愛子姫『世(よ)の人(ひと)を導(みちび)き救(すく)ふ愛子姫(あいこひめ)
137汝(なれ)迎(むか)へむと此処(ここ)に来(きた)れり。
138汝(な)が命(みこと)これの館(やかた)に来(き)ますぞと
139きくより日々(にちにち)に待(ま)ちあぐみたるよ。
140うるはしき玉治別(たまはるわけ)の神司(かむづかさ)
141高(たか)き御名(みな)こそ世(よ)に響(ひび)きけり。
142あゝ清(きよ)き神(かみ)の姿(すがた)を目(ま)のあたり
143拝(をろが)み仰(あふ)ぐ今日(けふ)ぞ嬉(うれ)しき』
144 玉治別(たまはるわけ)はこれに答(こた)へて、
145玉治別『名(な)は高(たか)き火(ひ)の国都(くにみやこ)の神司(かむづかさ)
146汝(なれ)はいろとにおはすか天晴(あは)れ。
147素盞嗚(すさのを)の神(かみ)の尊(みこと)の愛娘(まなむすめ)
148姫(ひめ)の命(みこと)を慕(した)ひ来(き)にけり。
149うるはしき其(その)御心(みこころ)の現(あら)はれて
150御姿(みすがた)さへも輝(かがや)き玉(たま)へる。
151照(て)りわたる天津(あまつ)御空(みそら)の月(つき)の如(ごと)
152清(きよ)き御姿(みすがた)今(いま)拝(をが)むかな』
153と詠(うた)ひ乍(なが)ら、154愛子姫(あいこひめ)、155津軽(つがるの)命(みこと)に前後(ぜんご)を守(まも)られ、156一間(ひとま)の内(うち)に悠々(いういう)として進(すす)み入(い)る。157奥(おく)の一間(ひとま)に三(さん)人(にん)は鼎座(ていざ)して、158互(たがひ)に打(うち)とけ嬉(うれ)しげに語(かた)り合(あ)ふ。
159愛子姫『玉治別(たまはるわけ)の宣伝使(せんでんし)様(さま)、160ようマアはるばると訪(たづ)ねて来(き)て下(くだ)さいました。161夫(をつと)高国別(たかくにわけ)は折悪(をりあ)しく、162今朝(こんてう)桂(かつら)の滝(たき)へ御禊(みそぎ)の為(ため)に、163百(ひやく)日(にち)の心願(しんぐわん)をこめて参(まゐ)りました不在中(ふざいちゆう)で、164誠(まこと)に不都合(ふつがふ)なれども、165ゆるゆる御(ご)休息(きうそく)の上(うへ)、166国々(くにぐに)の御(お)珍(めづ)らしいお話(はなし)を聞(き)かせて下(くだ)さいませ』
167玉治別『ハイ有難(ありがた)う御座(ござ)います』
168と、169愛子姫(あいこひめ)が妹(いもうと)の所在(ありか)を一々(いちいち)物語(ものがた)り、170且(かつ)又(また)其(その)活動振(くわつどうぶり)を詳細(しやうさい)に伝(つた)へけるに、171愛子姫(あいこひめ)はえも云(い)はれぬ愉快(ゆくわい)なる面色(おももち)にて、
172愛子姫『玉治別(たまはるわけ)さま、173随分(ずゐぶん)あなたも御(ご)苦労(くらう)なさいましたなア。174神(かみ)様(さま)の為(ため)世人(よびと)の為(ため)、175どうぞ御(ご)壮健(さうけん)にて御(ご)神務(しんむ)にお仕(つか)へ下(くだ)さいますやう祈(いの)ります』
176玉治別『ハイ有難(ありがた)う御座(ござ)います。177私(わたくし)も不運(ふうん)な身(み)の上(うへ)、178父母(ふぼ)に捨(す)てられ、179ホンの独身者(どくしんもの)で御座(ござ)いますが、180三五教(あななひけう)に帰順(きじゆん)いたしましてより、181国依別(くによりわけ)さまの妹(いもうと)を女房(にようばう)に貰(もら)ひうけ、182今(いま)は夫婦(ふうふ)が力(ちから)を協(あは)せて、183神(かみ)様(さま)の御用(ごよう)を一心(いつしん)に致(いた)して居(を)ります。184イヤもう苦労(くらう)といつても、185神(かみ)さまと道伴(みちづ)れの苦労(くらう)で御座(ござ)いますから、186何処(どこ)の国(くに)へ参(まゐ)りましても、187真(まこと)に愉快(ゆくわい)でたまりませぬ』
188愛子姫『あゝ左様(さやう)で御座(ござ)いますか。189妾(わらは)も何(なん)とかして妹(いもうと)の様(やう)に世界(せかい)各国(かくこく)を巡教(じゆんけう)いたしたく存(ぞん)じまするが、190何(なに)を云(い)つても夫(をつと)ある身(み)の上(うへ)、191思(おも)ふやうには参(まゐ)りませぬ。192身魂(みたま)の因縁(いんねん)相応(さうおう)の御用(ごよう)より出来(でき)ないものと見(み)えますなア』
193玉治別『いかにも左様(さやう)で御座(ござ)いませう。194時(とき)に三五教(あななひけう)の黒姫(くろひめ)さまは、195高山彦(たかやまひこ)といふ御(ご)主人(しゆじん)が御座(ござ)いますが、196綾(あや)の聖地(せいち)に於(おい)て、197下(くだ)らぬことから喧嘩(けんくわ)をなされまして、198高山彦(たかやまひこ)さまは、199筑紫(つくし)の島(しま)へ行(ゆ)くと云(い)ひ切(き)つた儘(まま)、200何処(どこ)かへお隠(かく)れになりました。201そこで黒姫(くろひめ)さまが、202高山彦(たかやまひこ)さまは屹度(きつと)筑紫島(つくしじま)に御座(ござ)ることと思召(おぼしめ)され、203はるばると海山(うみやま)越(こ)えて此(この)国(くに)へ来(き)てゐられます。204高国別(たかくにわけ)さまの又(また)の御名(みな)が高山彦(たかやまひこ)さまと申(まを)すので、205黒姫(くろひめ)さまは吾(わが)夫(をつと)とのみ思(おも)ひつめ、206やがて此処(ここ)へお越(こ)しになるでせうから、207どうぞお願(ねが)ひで御座(ござ)います。208奥(おく)へ御(お)通(とほ)し下(くだ)さいまして、209一応(いちおう)話(はなし)をきいて上(あ)げて下(くだ)さいませ。210玉治別(たまはるわけ)が御(お)願(ねが)ひで御座(ござ)います』
211愛子姫『それは又(また)妙(めう)な事(こと)で厶(ござ)いますなア。212黒姫(くろひめ)さまの御(ご)主人(しゆじん)の御名(みな)もヤツパリ高山彦(たかやまひこ)さまで厶(ござ)いましたかなア。213其(その)高山彦(たかやまひこ)さまの御(お)所在(ありか)はお分(わか)りになつて居(を)りますか』
214玉治別『高山彦(たかやまひこ)さまはアフリカへ御(お)渡(わた)りかと思(おも)ひきや、215依然(いぜん)として聖地(せいち)に現(あら)はれ、216神(かみ)さまに朝夕(あさゆふ)お仕(つか)へをして居(ゐ)られます。217私(わたし)はそれを見(み)るにつけ、218黒姫(くろひめ)さまの御(お)心根(こころね)が可哀相(かあいさう)になり、219神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)さまのまします斎苑(いそ)の館(やかた)へ一旦(いつたん)参(まゐ)りまして、220更(あらた)めてここへ渡(わた)り、221黒姫(くろひめ)さまに巡(めぐ)り会(あ)つて、222知(し)らして上(あ)げたいと思(おも)ひ、223宣伝(せんでん)を兼(か)ねお迎(むか)へ旁(かたがた)参(まゐ)りましたので御座(ござ)います』
224愛子姫『それはマア御(ご)親切(しんせつ)な事(こと)で御座(ござ)います。225黒姫(くろひめ)さまがあなたの御(ご)心底(しんてい)をお聞(き)きになられたら、226さぞお喜(よろこ)びになることでせう』
227玉治別『ハイ有難(ありがた)う、228私(わたくし)の伺(うかが)ひでは、229このお館(やかた)にて余(あま)り遠(とほ)からぬ内(うち)、230黒姫(くろひめ)さまに御(ご)面会(めんくわい)が出来(でき)るやうに存(ぞん)じます』
231愛子姫『妾(わらは)も左様(さやう)に心得(こころえ)ます。232どうぞ早(はや)くお越(こ)し下(くだ)さると宜(よろ)しいがなア』
233 かく話(はな)す折(をり)しも、234門番(もんばん)の玉公(たまこう)はあわただしく入(い)り来(きた)り、
235玉公『三五教(あななひけう)の黒姫(くろひめ)と云(い)ふ婆(ば)アさまが、236五(ご)人(にん)の荒男(あらをとこ)を連(つ)れて、237表門(おもてもん)へ現(あら)はれ、238此(この)門(もん)を開(あ)け……と言(い)つて居(を)りまする。239如何(いかが)致(いた)しませうかなア』
240 津軽(つがるの)命(みこと)は言下(げんか)に、
241津軽命『玉公(たまこう)御(ご)苦労(くらう)だが、242早(はや)く表門(おもてもん)をひらき、243黒姫(くろひめ)さま一行(いつかう)を此処(ここ)へ御(ご)案内(あんない)申(まを)せ』
244 玉公(たまこう)は不審(ふしん)な面持(おもも)ちにて、
245玉公『へー、246あんな悪(わる)い奴(やつ)を沢山(たくさん)伴(つ)れた婆(ばば)アでも、247通(とほ)して宜(よろ)しいか。248高山彦(たかやまひこ)さまの女房(にようばう)だなんぞと言(い)つてゐましたよ。249モシもあんな婆(ば)アさまを引(ひ)つぱり込(こ)まうものなら大変(たいへん)ですよ。250第一(だいいち)愛子姫(あいこひめ)さまが御(ご)迷惑(めいわく)を遊(あそ)ばすでせう』
251津軽命『構(かま)はないから、252早(はや)くお迎(むか)へ申(まを)して来(こ)い』
253玉公『ハイ』
254と答(こた)へて門番(もんばん)は表(おもて)をさして走(はし)り行(ゆ)く。
255(大正一一・九・一七 旧七・二六 松村真澄録)
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