霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は従来バージョンをお使い下さい| サブスクのお知らせ

第一四章 自惚鏡(うぬぼれかがみ)〔一三二九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻 篇:第3篇 鷹魅艶態 よみ(新仮名遣い):ようみえんたい
章:第14章 自惚鏡 よみ(新仮名遣い):うぬぼれかがみ 通し章番号:1329
口述日:1923(大正12)年01月26日(旧12月10日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月29日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
妖幻坊の高宮彦は、侍女の五月に命じて高姫を呼びにやらせた。高姫は鏡台の前に座って、若返った自分の姿に見とれている。高子と宮子は高姫の自惚れ姿を見て笑い、我に返った高姫は二人を連れて妖幻坊の居間に進んで行った。
部屋に入ると、四方の壁は鏡のように光って互いに反射し、高姫の姿を幾十ともなく映している。高姫は、妖幻坊が美人に取り巻かれていると勘違いして、悋気を起こして食って掛かった。高姫は鏡の女たちが自分と同じ動作をするのに怒って、こぶしを固めて突貫し、壁に鼻を打って倒れてしまった。
妖幻坊は豆狸に水を汲んで持ってこさせ、高姫の顔に吹きかけて正気に返させた。高姫はまだ疑っているので、妖幻坊は鏡を壁土で塗ってしまった。
高宮彦は、ランチと片彦をまんまと罠にはめて閉じ込めることができたことを喜び、高姫と共にさらなる悪計の相談に入った。妖幻坊の高宮彦は上機嫌で、高姫をからかってちょっとした夫婦喧嘩を演じ、高子と宮子は高姫の自惚れ姿を明かしてからかい笑った。
高姫が部屋を引き取ろうとすると、妖幻坊は高子か宮子の一人を置いていくように頼んだ。高姫は、高子に妖幻坊を見張って、他の女を引き入れたらそっと自分に知らせるように言い含めると、宮子を連れて自分の部屋に帰って行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-09-09 17:00:32 OBC :rm5114
愛善世界社版:201頁 八幡書店版:第9輯 338頁 修補版: 校定版:208頁 普及版:92頁 初版: ページ備考:
001 妖幻坊(えうげんばう)高宮彦(たかみやひこ)侍女(じぢよ)五月(さつき)高宮姫(たかみやひめ)居間(ゐま)(つか)はし、002一度(いちど)(わが)(しつ)(きた)れと命令(めいれい)した。003(この)五月(さつき)といふ美人(びじん)(じつ)竹藪(たけやぶ)(なか)()んでゐる豆狸(まめだぬき)さまである。
004五月御免(ごめん)なさいませ。005高宮姫(たかみやひめ)(さま)006()城主(じやうしゆ)(さま)()(まね)きで(ござ)いますよ』
007 高姫(たかひめ)脇息(けふそく)にもたれて、008うつら うつら居眠(ゐねむ)つてゐたが、009パツと()(ひら)き、
010高姫『ああ其方(そなた)五月(さつき)であつたか、011(わが)君様(きみさま)が、012(わらは)御用(ごよう)があると仰有(おつしや)るのかい』
013五月『ハイ、014直様(すぐさま)()でを(ねが)ひたいとの(こと)(ござ)います』
015高姫『すぐに(まゐ)りますから、016一寸(ちよつと)()()(くだ)さいませと、017()つておいておくれ』
018 五月(さつき)は、
019『ハイ』
020(こた)へて、021ここを足早(あしばや)立去(たちさ)つた。022高姫(たかひめ)鏡台(きやうだい)(まへ)にキチンと(すわ)り、023(かみ)のほつれをかき()げ、024衣紋(えもん)(ととの)へ、025(くち)をあけたり、026すぼめたり、027種々(いろいろ)美顔術(びがんじゆつ)(かぎ)りを(つく)し、
028高姫『ホホホホ、029(なん)とマア、030人魚(にんぎよ)でも()つたのかいな。031五十(ごじふ)(しり)(つく)つてをる(この)高姫(たかひめ)も、032自分(じぶん)ながらに吃驚(びつくり)(いた)(ほど)(わか)くなつたものだなア。033まるきり、034十七(じふしち)(ろく)(ぐらゐ)な、035うひうひしい姿(すがた)だ。036初稚姫(はつわかひめ)何程(なにほど)綺麗(きれい)だと()つても、037(この)高宮姫(たかみやひめ)には、038ヘン、039(かな)ひますまい、040ホホホホホ。041如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(たま)といふものは、042本当(ほんたう)(えら)いものだワイ。043杢助(もくすけ)さまも(いま)高宮彦(たかみやひこ)と、044真面目(まじめ)(かほ)して名乗(なの)つて(ござ)るが、045ヤーパリ、046(えら)いものだ。047ようマア、048斎苑(いそ)(やかた)宝物(ほうもつ)(うま)くチヨロまかされたものだなア。049(これ)だから(ひと)()(ゆる)されぬといふのだなア。050素盞嗚(すさのをの)(みこと)盲神(めくらがみ)や、051言依別(ことよりわけ)のドハイカラ、052八島主(やしまぬし)青瓢箪(あをびやうたん)053それに東野別(あづまのわけ)のウスノロ、054ガラクタばかりが()りやがつて、055奇略(きりやく)縦横(じうわう)杢助(もくすけ)(さま)を、056真正直(ましやうぢき)人間(にんげん)だと(おも)ひつめ、057ヘヘヘヘヘ、058(たこ)揚壺(あげつぼ)(くら)つて、059(いま)では斎苑(いそ)(やかた)梟鳥(ふくろどり)夜食(やしよく)(はづ)れたやうな、060小難(こむつか)しい(かほ)をして()るだらう。061あああ、062心地(ここち)よや、063気味(きみ)がよや、064ドレドレ(この)綺麗(きれい)姿(すがた)(わが)()(きみ)にお()にかけ、065(ひと)(よろこ)ばして()げませうかな。066()れば()(ほど)()綺麗(きれい)な、067(なん)とした()(をんな)だらう。068何程(なにほど)杢助(もくすけ)さまに()(おほ)いと()つても、069どこに(ひと)(てん)のうち(どころ)もない、070(かみ)()(さき)まで、071愛嬌(あいけう)がたつぷり(あふ)れてゐる(この)(たか)ちやまを、072どうして()てられるものか。073何程(なにほど)世界(せかい)美人(びじん)があると()つても、074(これ)(また)格別(かくべつ)だなア。075本当(ほんたう)(この)(かがみ)(そば)(はな)れたくないやうだ。076杢助(もくすけ)さまも(この)(かがみ)()たら、077さぞ(うれ)しからう、078(しか)自分(じぶん)自分(じぶん)()れる(くらゐ)美人(びじん)だからなア。079(わたし)だつて、080(わたし)姿(すがた)にゾツコン惚込(ほれこ)んで(しま)つた。081(しか)自分(じぶん)姿(すがた)()(わけ)にゆかず、082(この)(かがみ)(まへ)()つた(とき)ばかりだ。083ああ(はな)れともない、084(かがみ)(きみ)085名残(なごり)()しいけれど、086(しばら)杢助(もくすけ)さまの()機嫌(きげん)(うかが)つて()(ほど)に、087(かがみ)さま、088(また)(かへ)つて()(この)綺麗(きれい)姿(すがた)(うつ)して()げるから、089(たの)しんで()つてゐなさいや』
090高子(たかこ)『ウフフフフ』
091宮子(みやこ)『ホホホホ』
092高姫『エーエ、093(まへ)此処(ここ)()つたのかいな。094()るなら()るとなぜ()はぬのだい、095(みな)(わたし)独言(ひとりごと)()いたのだらう』
096高子(たかこ)『ホホホホ』
097宮子(みやこ)『フツフフフ』
098高姫『エーエ、099(あま)自分(じぶん)姿(すがた)()とれて、100二人(ふたり)侍女(こしもと)(よこ)()るのも()()かなかつた。101ホンにさう(おも)へば、102(むか)ふの(はう)人間(にんげん)姿(すがた)がうつつてるやうだつたが、103()がつかなかつた。104コレ二人(ふたり)(むすめ)(けん)侍女(こしもと)105こんな(こと)106(わが)()(きみ)(はじ)め、107(たれ)にも()つちやなりませぬよ。108サアサア(まゐ)りませう』
109『アイ』
110(こた)へて二人(ふたり)高姫(たかひめ)前後(ぜんご)につき()ひ、111妖幻坊(えうげんばう)居間(ゐま)(すす)んで()く。112ソツとドアを(ひら)いて(なか)(うかが)()れば、113()もくらむ(ばか)り、114金色(きんしよく)燦爛(さんらん)(かがや)いてゐる。115そして四方(しはう)(かべ)(のこ)らず(かがみ)のやうに(ひか)り、116高姫(たかひめ)妖艶(えうえん)姿(すがた)は、117鏡面(きやうめん)(たがひ)反射(はんしや)して、118幾十(いくじふ)(にん)とも()れぬ(ほど)(うつ)つてゐる。119高姫(たかひめ)自分(じぶん)のやうな美人(びじん)(おそ)らく天地(てんち)(あひだ)に、120自分(じぶん)一人(ひとり)よりないと(ほこ)(がほ)(おも)つて、121盛装(せいさう)()らし、122(かほ)造作(ざうさ)まで修繕(しうぜん)してやつて()たのに、123自分(じぶん)同様(どうやう)美人(びじん)が、124幾十(いくじふ)(にん)ともなく妖幻坊(えうげんばう)中心(ちうしん)取巻(とりま)いてゐるので、125(にはか)にクワツと悋気(りんき)(つの)()やし、
126高姫『これはこれは、127高宮彦(たかみやひこ)(さま)128(たの)しみの(ところ)を、129多福(たふく)がお邪魔(じやま)(いた)しまして、130さぞ()迷惑(めいわく)(ござ)いませう。131これだけ沢山(たくさん)美人(びじん)をお(かか)へになつてゐる以上(いじやう)は、132(わたし)のやうなお多福(たふく)には到底(たうてい)()がまはりますまい。133成程(なるほど)(わたし)同棲(どうせい)しないと仰有(おつしや)るのは(わか)りました。134(わたし)はどうせ(かず)にも()らぬ馬鹿者(ばかもの)135これだけ沢山(たくさん)美人(びじん)(そば)(はべ)らし、136(わたし)だけは(ただ)一人(ひとり)137こんな少女(あまつちよ)(そば)において監視(かんし)させ、138自分(じぶん)栄耀(えいえう)栄華(えいぐわ)に、139(てふ)(ごと)(はな)(ごと)美人(びじん)(たはむ)れ、140ホンにマア(えら)いお腕前(うでまへ)141(おそ)()りまして(ござ)います』
142妖幻坊の杢助『ハハハハ、143コレ高宮姫(たかみやひめ)144そりや(なに)()ふのだ、145(たれ)もゐないぢやないか。146(この)高宮彦(たかみやひこ)(ただ)一人(ひとり)147孤塁(こるい)(まも)つてゐるのだ。148大方(おほかた)(まへ)姿(すがた)玻璃壁(はりへき)(うつ)つて、149それが(たがひ)反射(はんしや)してゐるのだ。150それ(ゆゑ)沢山(たくさん)美人(びじん)がゐるやうに()えるのだが、151(みな)(まへ)姿(すがた)だよ』
152高姫『エー、153うまいこと仰有(おつしや)いませ。154(かがみ)(ひと)つの姿(すがた)がうつる(こと)は、155それは(ござ)いませう、156これ(ほど)四方(しはう)八方(はつぱう)(うつ)道理(だうり)はありませぬ。157あれを御覧(ごらん)なさい、158(みぎ)()いたり、159(ひだり)()いたり、160(まへ)()いたり、161()()けたりしてるのぢやありませぬか。162(わたし)()くのぢや(ござ)りませぬが、163なぜ貴方(あなた)水臭(みづくさ)い、164(をんな)があるなら、165これだけあると仰有(おつしや)つて(くだ)さいませぬのか。166(わたし)悋気(りんき)させ、167(おこ)らせて(たの)しまうとの(たく)みで(ござ)いませう。168そしてこれだけの(をんな)高宮姫(たかみやひめ)狂乱振(きやうらんぶり)()せて、169(わら)はしてやらうとの()(かんが)へ、170ヘン、171(たれ)(その)()()るものですか。172(けつ)して(おこ)りませぬよ。173(しか)しながら(みな)さま、174()(どく)ながら、175(この)高宮彦(たかみやひこ)(わたし)(をつと)176ここで意茶(いちや)ついて御覧(ごらん)()れるから、177(ゆび)をくはへて御覧(ごらん)なさい。178ヘン、179すみまへんな。180コレコレもうしこちの(ひと)181否々(いないな)(わが)()(きみ)(さま)182どうで(ござ)います、183()機嫌(きげん)は……』
184妖幻坊の杢助『イヤ、185高宮姫(たかみやひめ)186よくマア()(くだ)さつた、187これだけ沢山(たくさん)(をんな)()れども、188()()つたものは一人(ひとり)もない、189(なん)()つてもお(まへ)(はだ)(こま)かい、190そして(やはら)かい。191(せな)(さき)まで(しり)(あな)まで、192(なん)とも()へぬ(かん)ばしい(にほ)ひがする、193(また)ワイガ特別(とくべつ)(かう)ばしい』
194()ひながら、195高姫(たかひめ)(ほほ)()()いてみせた。196高姫(たかひめ)はグニヤグニヤになり、197()(ほそ)うして(かがみ)映像(えいざう)(むか)ひ、
198高姫『オイ、199そこな(たち)(ばう)200ヘン、201すみまへんな。202高宮姫(たかみやひめ)さまは高宮彦(たかみやひこ)(あい)独占(どくせん)して()りますよ。203ここで夫婦(ふうふ)親愛振(しんあいぶり)()せて()げませう』
204()ひながら、205四方(しはう)八方(はつぱう)()まはし、206(した)をペロツと()して()せた。207どの姿(すがた)(この)姿(すがた)同様(どうやう)(した)をペロリと()す。
208高姫『エー馬鹿(ばか)ツ』
209(あご)(まへ)()()して呶鳴(どな)ると、210(また)(いち)()(あご)()()し、211(くち)をあける。212高姫(たかひめ)は、
213高姫『コラ、214失敬(しつけい)な、215真似(まね)をしやがるか、216(この)高宮姫(たかみやひめ)正妻(せいさい)だ、217ガラクタ()
218()ひながら、219(にぎ)(こぶし)(かた)めて突貫(とつくわん)し、220(かべ)(はな)()つてウンと一声(ひとこゑ)(その)()(たふ)れた。221妖幻坊(えうげんばう)此奴(こいつ)大変(たいへん)打驚(うちおどろ)き、222豆狸(まめだぬき)(ゐぢ)(みづ)()ませにやり、223高姫(たかひめ)頭部(とうぶ)面部(めんぶ)(きら)ひなく()きかけた。224(やうや)くにして高姫(たかひめ)正気(しやうき)(かへ)つた。225四辺(あたり)()れば使(つか)ひに()つた豆狸(まめだぬき)が、226まだ高姫(たかひめ)中々(なかなか)()がつかうまいと安心(あんしん)してゐたものだから、227変相(へんさう)もせず、228(その)(まま)にチヨコンと(すわ)つてゐた。229流石(さすが)妖幻坊(えうげんばう)高姫(たかひめ)失神(しつしん)した()も、230何時(なんどき)()()くか()れぬと(おも)ひ、231(その)(からだ)(くづ)さなかつた。232高姫(たかひめ)は、
233高姫(この)豆狸(まめだぬき)
234()ひながら、235ポンと(あたま)(たた)いた。236(あた)(どころ)(わる)うて、237一匹(いつぴき)(たぬき)(その)()悶絶(もんぜつ)した。238()一匹(いつぴき)一生(いつしやう)懸命(けんめい)(まど)(あな)から飛出(とびだ)して(しま)つた。
239高姫『ああ、240あの(にく)(をんな)(はな)をこつかれて、241ふん()びました。242高宮彦(たかみやひこ)(さま)243何卒(どうぞ)(ねが)ひだから、244彼奴(あいつ)(みな)()なして(くだ)さいな。245(わたし)(なん)だか気分(きぶん)(わる)くてたまりませぬワ』
246妖幻坊の杢助『あれは(その)(はう)姿(すがた)(かがみ)(うつ)つてゐるのだが、247それ(ほど)(わか)らねば、248(この)(ひか)つた(かべ)(どろ)()つて()げよう、249さうすれば(うつ)らなくなつて(うたがひ)()れるだらう』
250()ひながら、251(うら)背戸口(せとぐち)使(つか)(あま)りの壁土(かべつち)があるのを、252妖幻坊(えうげんばう)(おほ)きな(たらひ)一杯(いつぱい)()り、253片手(かたて)にささげ、254片手(かたて)(どろ)(にぎ)つて、255一面(いちめん)室内(しつない)()つて(しま)つた。256そして(たらひ)(そと)()し、257()(あら)つて(ふたた)()(きた)り、
258妖幻坊の杢助高姫(たかひめ)259これで(うたがひ)()れただらうな』
260高姫『なる(ほど)261貴方(あなた)はヤツパリ(わたし)可愛(かあい)いのですな、262あれだけ沢山(たくさん)(をんな)を、263縄虫(はへむし)かなんぞのやうに、264(みな)(どろ)魔法(まはふ)使(つか)つて(たひら)げて(しま)つた(その)手並(てなみ)は、265(じつ)天晴(あつぱれ)なものですよ』
266妖幻坊の杢助天地(てんち)(あひだ)幸福(かうふく)一身(いつしん)(あつ)めたのは其女(そなた)(それがし)だ。267(しか)高姫(たかひめ)268()苦労(くらう)(ござ)つたなア。269ランチ、270片彦(かたひこ)両人(りやうにん)は、271(うま)其方(そなた)計略(けいりやく)にかかり、272(いま)(ほとん)嚢中(なうちう)(ねづみ)273活殺(くわつさつ)権利(けんり)(この)高宮彦(たかみやひこ)掌中(しやうちう)にあるも同然(どうぜん)だ。274ホホー(たの)もしい(たの)もしい。275かふいふ仕事(しごと)其女(そなた)(かぎ)るよ。276(この)高宮彦(たかみやひこ)其女(そなた)より(ほか)何程(なにほど)美人(びじん)があつても(こころ)(まよ)はさないから、277安心(あんしん)して高子(たかこ)278宮子(みやこ)(ともな)ひ、279何卒(どうぞ)()一遍(いつぺん)は、280椿(つばき)(もと)まで人曳(ひとひ)きに()つてくれ。281これがお(まへ)(つと)めだ。282(まへ)春野(はるの)(はな)()みながら、283郊外(かうぐわい)散歩(さんぽ)(あま)(わる)くはあるまいから……』
284高姫『ハイ、285さう(いた)しませう。286本当(ほんたう)昨日(きのふ)のやうに(うま)()きますと、287心持(こころもち)がよう(ござ)います。288そうしてあの両人(りやうにん)如何(いかが)なさいました。289(その)()()つから(わたし)(かほ)()せませぬがな』
290妖幻坊の杢助彼奴(あいつ)何程(なにほど)()()かしても、291到底(たうてい)ウラナイの(みち)帰順(きじゆん)する見込(みこみ)がないによつて、292()かしておけば三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)となり、293吾々(われわれ)兇党界(きようたうかい)……(いな)(ぜん)のお(みち)邪魔(じやま)(いた)すによつて、294石牢(いしらう)(なか)にブチ()んでおいた。295かうしておけば自然(しぜん)寂滅(じやくめつ)為楽(ゐらく)296モウ此方(こつち)のものだ。297(べつ)(ほね)()らなくとも、298刃物(はもの)()たずの人殺(ひとごろし)299丁度(ちやうど)(まへ)(おな)じやり(かた)だ、300アハツハハハ』
301高姫『コレ、302もし(わが)夫様(つまさま)303(わたし)人殺(ひとごろし)とは、304ソラ(あま)りぢや(ござ)いませぬか。305何時(いつ)(ひと)(ころ)しました』
306妖幻坊の杢助『アハハハハ、307其方(そなた)美貌(びばう)一寸(ちよつと)(にら)まれたが最後(さいご)308(こひ)(やまひ)()りつかれ、309()ても()めても煩悩(ぼんなう)(いぬ)()はれて(わす)れられず、310(つひ)には気病(きびやう)(おこ)して不断(ふだん)(とこ)につき、311身体(しんたい)骨立(こつりふ)してこがれ()ぬやうになつて(しま)ふのだ。312(この)高宮彦(たかみやひこ)其方(そなた)(こと)(おも)へば、313(ほね)までザクザクとするやうだ。314(この)高宮彦(たかみやひこ)(ころ)すのには、315チツとも刃物(はもの)はいらぬ。316(まへ)(ひと)(しり)をふつたが最後(さいご)317(たちま)寂滅(じやくめつ)為楽(ゐらく)(みち)辿(たど)るのだ。318アハハハハハ、319てもさても(つみ)男殺(をとこごろし)のナイスだなア。320それさへあるに、321毒酸(どくさん)(もつ)珍彦(うづひこ)夫婦(ふうふ)(ころ)さうとなさるのだから、322イヤハヤ(おそ)ろしい、323安心(あんしん)して(よる)(ひる)(ねむ)られない代物(しろもの)だ、324アハハハハハ』
325高姫『コレ、326(もく)ちやま、327ソラ(なに)をいふのだい、328(まへ)さまが発頭人(ほつとうにん)ぢやないか。329(わたし)(をし)へて(もら)つてやつたのぢやないか。330(くち)番所(ばんしよ)がないかと(おも)うて(あま)りな(こと)()うて(くだ)さるな』
331とソロソロ生地(きぢ)(あら)はし、332野卑(やひ)言葉(ことば)になりかけたが、333フツと()がつき、334(にはか)言葉(ことば)(あらた)めて、
335高姫(わが)()(きみ)(さま)336揶揄(からか)ひなさるも、337いい加減(かげん)(あそ)ばせ。338(わらは)(かな)しう(ござ)います、339オンオンオンオン』
340妖幻坊の杢助『アハハハハ、341面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、342人間(にんげん)といふものはいろいろの(げい)()つてゐるものだなア』
343高姫『ヘン、344人間(にんげん)なんて、345チツと(ちが)ひませう。346ソリヤ(わたし)人間(にんげん)でせう。347(しか)(みたま)義理(ぎり)天上(てんじやう)()出神(でのかみ)生宮(いきみや)ですよ、348何卒(どうぞ)見損(みそこな)ひをして(くだ)さいますな』
349妖幻坊の杢助『ハハハハ、350イヤもう(おそ)()りました。351義理(ぎり)天上(てんじやう)(さま)352今後(こんご)はキツと(つつ)しみませう』
353高姫『コレ(たか)さま、354(みや)さま、355(なに)をクツクツ(わら)つてゐるのだい、356それ(ほど)可笑(をか)しいのか。357子供(こども)といふものは、358仕方(しかた)のないものだなア』
359高子(たかこ)『それでもお(かあ)さま、360可笑(をか)しいぢやありませぬか。361チンチン喧嘩(げんくわ)をなさるのだもの、362ねえ(みや)さま、363可笑(をか)しいてたまらないぢやないか』
364妖幻(えうげん)『ハハハハ、365オイ、366高宮姫(たかみやひめ)さま、367子供(こども)(わら)つてゐるよ』
368高姫貴方(あなた)が、369しようもない(こと)仰有(おつしや)るから、370二人(ふたり)(わら)ふのですよ』
371高子(たかこ)『それでもお(かあ)さま、372貴女(あなた)のお居間(ゐま)可笑(をか)しかつたぢやありませぬか。373あの(とき)はお(とう)さまはゐませぬでしたね。374(かあ)さま一人(ひとり)(わたし)()二人(ふたり)()へきれない(ほど)375可笑(をか)しい身振(みぶり)をなさいましたワ』
376妖幻(えうげん)『アハハハハ、377大方(おほかた)おやつしの(ところ)()たのだらう』
378宮子(みやこ)『ハア、379さうですよ。380(いど)をふつたり(くち)(ゆが)めてみたり、381独言(ひとりごと)をいつたり、382自分(じぶん)姿(すがた)()れたり、383そして(この)姿(すがた)(わが)()(きみ)()せたら、384さぞお(よろこ)びだろツて()つてゐらつしやいましたよ。385ねえ(たか)さま、386(ちが)ひありませぬだらう』
387高子(たかこ)本当(ほんたう)(その)(とほ)りでしたね、388(かあ)さまも余程(よつぽど)面白(おもしろ)いお(かた)だよ』
389妖幻(えうげん)『アハハハハ』
390高姫(たかひめ)『あああ、391(をつと)(わが)()に、392ぞめかれ、393ひやかされ、394別嬪(べつぴん)(うま)れて()ると(つら)いものだ。395ホホホホホ、396アハハハハハ、397フフフフフ』
398()(にん)一度(いちど)(わら)ふ。399高姫(たかひめ)(あたま)をくらはされて()んでゐた豆狸(まめだぬき)は、400(この)(わら)(ごゑ)にフツと()がつきムクムクと起上(おきあが)り、401室内(しつない)二三遍(にさんぺん)()けまはり、402(まど)(くち)から、403手早(てばや)姿(すがた)(かく)した。
404高姫(たかひめ)(なん)とマア、405これ(ほど)立派(りつぱ)御殿(ごてん)(たぬき)()んでゐるとは不思議(ふしぎ)ぢやありませぬか。406(いぬ)でもおいたら、407(みな)()げて()くでせうにねえ』
408妖幻(えうげん)『イヤ(おれ)何時(いつ)(まを)(とほ)り、409(さる)(とし)(うま)れだから、410(いぬ)大嫌(だいきら)ひだ。411それだから(ことわざ)にも、412(なか)(わる)間柄(あひだがら)(いぬ)(さる)みたやうだといふではないか』
413高姫(さる)といふのは、414(をとこ)(はう)からヒマをくれる(こと)415(いぬ)といふのは女房(にようばう)(はう)から(をつと)にヒマを()れて(かへ)ることで(ござ)いませう。416モウ(これ)から、417(いぬ)だの(さる)だの、418縁起(えんぎ)(わる)(こと)はいはぬやうに、419(たがひ)(つつ)しみませうね』
420妖幻坊の杢助『こつちは(つつ)しんでゐるが、421(まへ)(はう)から、422何時(いつ)約束(やくそく)(やぶ)るのだから(こま)つたものだよ、423アハハハハ』
424高姫左様(さやう)ならば、425(また)(よる)(こしら)へも(ござ)いますから、426(わらは)居間(ゐま)引取(ひきと)りませう』
427妖幻坊の杢助『コレ高宮姫(たかみやひめ)殿(どの)428二人(ふたり)侍女(こしもと)を……(いな)子供(こども)をお(まへ)独占(どくせん)しようとは(あま)りぢやないか。429どうか一人(ひとり)ここにおいてゐてくれまいかなア』
430高姫如何(いか)にも、431貴方(あなた)一人(ひとり)432(をとこ)一人(ひとり)()ると、433何時(いつ)()がさすか(わか)つたものぢやありませぬ。434コレ高子(たかこ)ちやま、435(まへ)()苦労(くらう)だが、436(とう)さまのお(そば)御用(ごよう)()いてゐて(くだ)さい。437そして、438もしも(ほか)(をんな)がここへ(はい)つて()たら、439いい()だから、440ソツと(わたし)()らすのだよ』
441 高子(たかこ)はワザと(おほ)きな(こゑ)で、
442高子『ハイお(とう)さまの居間(ゐま)へ、443どんな(をんな)にもせよ、444(はい)つて()たものがあつたら、445キツと内証(ないしよう)()らしてあげますワ』
446高姫『コレ高子(たかこ)さま、447そんな内証(ないしよう)がありますか。448エーエ()()かぬ()ぢやなア』
449妖幻(えうげん)『ハハハハ、450何処(どこ)までも()注意深(ちゆういぶか)いこと、451イヤハヤ(おそ)()りました。452高子(たかこ)(えう)するに、453(わたし)監視役(かんしやく)だなア。454ヤアこはい こはい。455コレ高子(たかこ)さま、456手柔(てやはら)かく(ねが)ひますよ。457何事(なにごと)があつても(けつ)して高宮姫(たかみやひめ)内通(ないつう)しちや()けませぬぞ、458アハハハハ』
459高姫(たかひめ)『エー、460なんぼなと仰有(おつしや)いませ、461さようなれば』
462宮子(みやこ)()をひき、463(わが)居間(ゐま)(かた)をゆすり、464(そで)()ばたき(いさ)ましく、465(なが)襠衣(うちかけ)()きずつて、466シヨナリシヨナリと太夫(たいふ)道中(だうちう)(よろ)しく(かへ)()く。
467大正一二・一・二六 旧一一・一二・一〇 松村真澄録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki