霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第一一章 怪道(くわいだう)〔一六一八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第63巻 山河草木 寅の巻 篇:第3篇 幽迷怪道 よみ(新仮名遣い):ゆうめいかいどう
章:第11章 怪道 よみ(新仮名遣い):かいどう 通し章番号:1618
口述日:1923(大正12)年05月24日(旧04月9日) 口述場所:教主殿 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年2月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
カークス、ベースの二人は、にわかにあたりの光景が一変した大原野の真ん中を、とぼとぼと何者かに押されるように進んでいく。冬の景色と見えて、松葉は風に揺られ桜の梢は木枯らしにふるえている。
二人は、宣伝使たちと一緒にスーラヤ山の岩窟に入ったはずが、見慣れない原野を歩いていることをいぶかしんだ。二人は述懐を歌いながらともかく先に進んで歩いていく。
二人は濁流みなぎる河辺についた。二人はどうやらここが現界ではないと思い始めた。行く手を阻まれて座り込み、地獄へ暴れこんで王国でも建てようかなどというのんきなほら話に花を咲かせている。
傍らの茅の中に藁小屋があり、黒いやせこけた怪しい婆が現れた。婆は伊太彦宣伝使一行がすでに河を渡って向こう側に行ったという。
遅れてはたいへんと二人は河を渡ろうとした。婆はベースの胸ぐらをつかんで、肝玉を引き抜いて食ってやるとすごんだ。カークスは婆の足をつかんだが、突けども押せどもビクとも動かない。
二人は進退窮まってしまった。するとはるか後ろの方から宣伝歌が聞こえてきた。はっと我に返ると、今まで婆と見えていたのは巨岩であった。河と見えたのは薄原であった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-04-23 16:16:09 文字数:4743 OBC :rm6311
愛善世界社版:150頁 八幡書店版:第11輯 315頁 修補版: 校定版:153頁 普及版:64頁 初版: ページ備考:
001 カークス、002ベースの両人(りやうにん)は、003俄(にはか)に四辺(あたり)の光景(くわうけい)一変(いつぺん)した大原野(だいげんや)の真中(まんなか)を無言(むごん)の儘(まま)トボトボと、004何者(なにもの)にか押(お)さるるやうに進(すす)んで往(ゆ)く。005頭(あたま)の禿(は)げた饅頭形(まんぢうがた)の小(ちひ)さい丘(をか)の麓(ふもと)を辿(たど)つて往(ゆ)くと006其所(そこ)には、0061松(まつ)と桜(さくら)の樹(き)が一株(ひとかぶ)のやうになつて睦(むつ)まじげに立(た)つてゐる。007冬(ふゆ)の景色(けしき)と見(み)えて008尖(とが)つた松葉(まつば)が風(かぜ)に揺(ゆ)られて009パラパラと両人(りやうにん)が頭上(づじやう)にふつて来(く)る。010桜(さくら)はもはや真裸(まつぱだか)となつて凩(こがらし)に梢(こずゑ)が慄(ふる)うて居(ゐ)た。
011カークス『オイ、012ベース、013俺(おれ)達(たち)はスーラヤの死線(しせん)を越(こ)えて、014伊太彦(いたひこ)司(つかさ)と共(とも)に竜王(りうわう)の岩窟(がんくつ)に確(たしか)に這入(はい)つた積(つも)りで居(ゐ)るのに、015何時(いつ)の間(ま)にか、016かふ云(い)ふ所(ところ)へ来(き)てゐるのは不思議(ふしぎ)ぢやないか。017さうして俺(おれ)の立(た)つた時(とき)はまだ夏(なつ)の終(をは)りぢやつたが018いつの間(ま)にかう冬(ふゆ)が来(き)たのだらう。019合点(がつてん)の行(ゆ)かぬ事(こと)だなア』
020ベース『ウン、021さうだなア、022何(なん)とも合点(がつてん)の行(い)かぬ事(こと)だ。023大方(おほかた)夢(ゆめ)を見(み)て居(ゐ)たのだらう。024矢張(やつぱり)スダルマ山(さん)の山腹(さんぷく)で樵夫(きこり)をやつて居(ゐ)た時(とき)に、025グツスリと眠(ねむ)つて仕舞(しま)ひ、026其(その)間(あひだ)に冬(ふゆ)が来(き)たのかも知(し)れないよ』
027カークス『それだと云(い)つて028伊太彦(いたひこ)と云(い)ふ綺麗(きれい)な神司(かむつかさ)とテルの里(さと)へいつて、029ルーブヤさまの館(やかた)に宿(とま)り込(こ)み結構(けつこう)な御(ご)馳走(ちそう)に預(あづ)かり、030それから船(ふね)に乗(の)り、031スーラヤ山(さん)の死線(しせん)を越(こ)えた事(こと)は確(たしか)に記憶(きおく)に残(のこ)つて居(ゐ)る。032大方(おほかた)今(いま)が夢(ゆめ)かも知(し)れないよ。033夢(ゆめ)と云(い)ふ奴(やつ)は僅(わづ)か五分(ごふん)か六分(ろつぷん)かの間(あひだ)に生(うま)れて死(し)ぬ迄(まで)の事(こと)を見(み)るものだ、034夢(ゆめ)は想念(さうねん)の延長(えんちやう)だから、035かうして居(ゐ)るのが夢(ゆめ)かも知(し)れない。036何(なん)と云(い)つても夢(ゆめ)の浮世(うきよ)と云(い)ふからなア』
037ベース『何(なん)と言(い)つても此処(ここ)は見馴(みなれ)ない所(ところ)だ。038いつの間(ま)にスーラヤ山(さん)から此処(ここ)へ来(き)たのだらう。039さうして四辺(あたり)の景色(けしき)は冬(ふゆ)の景(けい)ぢや。040パインの老木(らうぼく)の間(あひだ)から針(はり)のやうな枯松葉(かれまつば)が降(ふ)つて来(く)る。041桜(さくら)は真(ま)つ裸(ぱだか)になつて慄(ふる)つて居(ゐ)る。042兎(と)も角(かく)も行(ゆ)く所(ところ)迄(まで)行(ゆ)かうよ。043又(また)好(い)い事(こと)があるかも知(し)れないよ。
044ベース『思(おも)ひきやスーラヤ山(さん)の岩窟(がんくつ)に
045進(すす)みし吾(われ)の斯(かく)あらむとは。
046夢(ゆめ)ならば一(いち)時(じ)も早(はや)く覚(さ)めよかし
047心(こころ)の空(そら)の雲(くも)を晴(は)らして』
048カークス『大空(おほぞら)は皆(みな)黒雲(くろくも)に包(つつ)まれて
049行手(ゆくて)も知(し)らぬ吾(われ)ぞ悲(かな)しき。
050ウラル彦(ひこ)神(かみ)の命(みこと)の戒(いまし)めに
051遇(あ)ひて迷(まよ)ふか吾(われ)ら二人(ふたり)は』
052ベース『ウラル彦(ひこ)神(かみ)の教(をしへ)も三五(あななひ)の
053道(みち)も御神(みかみ)の作(つく)らしし教(のり)。
054吾(われ)は今(いま)途方(とはう)に暮(く)れて冬(ふゆ)の野(の)の
055いとも淋(さび)しき旅(たび)に立(た)つかな。
056伊太彦(いたひこ)やブラヷーダ姫(ひめ)は今(いま)いづく
057アスマガルダの影(かげ)さへ見(み)えず』
058カークス『村肝(むらきも)の心(こころ)の暗(やみ)に包(つつ)まれて
059今(いま)八衢(やちまた)に迷(まよ)ふなるらむ。
060天地(あめつち)の皇(すめ)大神(おほかみ)よ憐(あは)れみて
061吾(われ)等(ら)二人(ふたり)の行方(ゆくて)を照(て)らしませ。
062月(つき)も日(ひ)も星(ほし)かげもなき冬(ふゆ)の野(の)を
063彷徨(さまよ)ふ吾(われ)等(ら)が心(こころ)淋(さび)しさ。
064如何(いか)にせば常世(とこよ)の春(はる)の花(はな)匂(にほ)ふ
065吾(わが)故郷(ふるさと)に帰(かへ)りゆくらむ』
066ベース『日(ひ)も月(つき)も西(にし)に傾(かたむ)く世(よ)の中(なか)に
067吾(われ)は淋(さび)しき荒野(あらの)に迷(まよ)ふ。
068西(にし)きたか東(ひがし)へ来(き)たか知(し)らねども
069みなみの罪(つみ)と諦(あきら)めゆかむ。
070西(にし)東(ひがし)南(みなみ)も北(きた)もわきまへぬ
071今(いま)幼児(をさなご)となりにけるかな』
072カークス『エヽ仕方(しかた)がない。073犬(いぬ)も歩(ある)けば棒(ぼう)に当(あた)るとやら云(い)ふ事(こと)がある。074さア075これから膝栗毛(ひざくりげ)の続(つづ)くだけ此(この)道(みち)を進(すす)んで見(み)よう』
076 茲(ここ)に二人(ふたり)は凩(こがらし)吹(ふ)き荒(すさ)ぶ野路(のぢ)の淋(さび)しみを消(け)さむが為(ため)に出放題(ではうだい)の歌(うた)を謡(うた)つて077足(あし)に任(まか)せトボトボと進(すす)み行(ゆ)く事(こと)となつた。
078カークス『あゝ訝(いぶ)かしや訝(いぶ)かしや
079茲(ここ)は冥途(めいど)か八衢(やちまた)か
080但(ただ)しは浮世(うきよ)の真中(まんなか)か
081四辺(あたり)の景色(けしき)を眺(なが)むれば
082山野(やまの)の草木(くさき)は枯(かれ)果(は)てて
083露(つゆ)もやどらぬ淋(さび)しさよ
084パインの木蔭(こかげ)に立(た)ち寄(よ)つて
085息(いき)休(やす)めむと打(う)ち仰(あふ)ぎ
086見(み)れば枯葉(かれは)はバタバタと
087針(はり)の如(ごと)くに下(くだ)り来(き)て
088薄(うす)き衣(ころも)を刺(さ)し通(とほ)し
089桜(さくら)の梢(こずゑ)はブルブルと
090冷(つめた)き風(かぜ)に慄(ふる)ひ居(ゐ)る
091合点(がてん)の行(い)かぬ此(この)旅路(たびぢ)
092夢(ゆめ)か現(うつつ)か幻(まぼろし)か
093三五教(あななひけう)の伊太彦(いたひこ)と
094スダルマ山(さん)の間道(かんだう)を
095漸(やうや)く渡(わた)りてテルの里(さと)
096ルーブヤ館(やかた)に立(た)ちよりて
097天女(てんによ)のやうなブラヷーダ
098姫(ひめ)の命(みこと)にもてなされ
099それより船(ふね)に身(み)を任(まか)せ
100一行(いつかう)五(ご)人(にん)スーラヤの
101山(やま)に鎮(しづ)まるウバナンダ
102ナーガラシャーの宝玉(はうぎよく)を
103神(かみ)の御(おん)為(ため)世(よ)の為(ため)に
104受(う)け取(と)り珍(うづ)の聖場(せいぢやう)へ
105献(たてまつ)らむと思(おも)ひしは
106夢(ゆめ)でありしかこれは又(また)
107合点(がてん)の行(ゆ)かぬ事(こと)計(ばか)り
108夢(ゆめ)の中(なか)なる貴人(あでびと)は
109今(いま)はいづくに在(ましま)すか
110尋(たづ)ぬるよしも泣(な)く計(ばか)り
111霜(しも)の剣(つるぎ)や露(つゆ)の玉(たま)
112吾(わが)身(み)にひしひし迫(せま)り来(く)る
113これぞ全(まつた)く今(いま)迄(まで)の
114犯(をか)せし罪(つみ)の報(むく)いにか
115唯(ただ)しは前世(ぜんせ)の因縁(いんねん)か
116実(げ)に怖(おそ)ろしき今日(けふ)の空(そら)
117進(すす)みかねたる膝栗毛(ひざくりげ)
118あて所(ど)もなしに彷徨(さまよ)ひて
119地獄(ぢごく)の里(さと)に進(すす)むのか
120但(ただ)しは常世(とこよ)の花(はな)匂(にほ)ふ
121天国(てんごく)浄土(じやうど)に上(のぼ)るのか
122神(かみ)ならぬ身(み)の吾々(われわれ)は
123如何(いか)に詮術(せんすべ)泣(な)く涙(なみだ)
124暗路(やみぢ)に迷(まよ)ふ苦(くる)しさよ
125あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
126神(かみ)の光(ひかり)の一時(ひととき)も
127早(はや)く吾(わが)身(み)を照(て)らせかし』
128ベース『旭(あさひ)は照(て)らず月(つき)は出(で)ず
129星(ほし)の影(かげ)さへ見(み)えぬ空(そら)
130亡者(まうじや)の如(ごと)く吾々(われわれ)は
131見(み)なれぬ道(みち)を辿(たど)りつつ
132あてどもなしに進(すす)み行(ゆ)く
133吾(わが)行(ゆ)く先(さき)は天国(てんごく)か
134但(ただ)しは聖地(せいち)のエルサレム
135黄金山(わうごんざん)か八衢(やちまた)か
136深(ふか)き濃霧(のうむ)に包(つつ)まれて
137大海原(おほうなばら)を行(ゆ)く船(ふね)の
138あてども知(し)らぬ心地(ここち)なり
139あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
140天地(てんち)に神(かみ)のましまさば
141二人(ふたり)の今(いま)の身(み)の上(うへ)を
142憐(あはれ)みたまひて現界(げんかい)か
143はた霊界(れいかい)か天国(てんごく)か
144但(ただ)しは地獄(ぢごく)か八衢(やちまた)か
145いと明(あきら)けく知(し)らしませ
146人(ひと)は神(かみ)の子(こ)神(かみ)の宮(みや)
147なりとの教(をしへ)は聞(き)きつれど
148かくも迷(まよ)ひし吾(わが)霊(たま)は
149常夜(とこよ)の暗(やみ)の如(ごと)くなり
150月日(つきひ)の光(ひかり)も左程(さほど)には
151尊(たふと)く清(きよ)く思(おも)はざりし
152吾(われ)等(ら)も今(いま)は漸(やうや)くに
153いづの御光(みひかり)瑞御霊(みづみたま)
154月(つき)の光(ひかり)の尊(たふと)さを
155正(まさ)しく悟(さと)り初(そめ)てけり
156あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
157吾(われ)等(ら)を作(つく)りし皇神(すめかみ)よ
158一(いち)時(じ)も早(はや)く吾(わが)胸(むね)の
159醜(しこ)の横雲(よこぐも)打(う)ち払(はら)ひ
160完全(うまら)に委曲(つばら)に行方(ゆくへ)をば
161照(て)らさせたまへ惟神(かむながら)
162神(かみ)の御前(みまへ)に願(ね)ぎまつる』
163 斯(か)く謡(うた)ひつつ漸(やうや)くにして濁流(だくりう)漲(みなぎ)る河辺(かはべ)に着(つ)いた。
164カークス『オイ、165此処(ここ)には雨(あめ)も降(ふ)らぬのに大変(たいへん)な濁流(だくりう)が流(なが)れて居(ゐ)るぢやないか。166斯(こ)んな大(おほ)きな川(かは)を渡(わた)らうものなら、167夫(それ)こそ命(いのち)の安売(やすうり)だ。168もう仕方(しかた)がない。169二十(にじつ)世紀(せいき)ぢやないが、170何(なに)も彼(か)も行(ゆ)きつまりだ、171後(あと)へ引(ひ)きかへさうか』
172ベース『引(ひ)きかへさうと思(おも)つても、173何者(なにもの)か後(うしろ)から押(お)して来(く)るのだから仕方(しかた)が無(な)いぢやないか。174「慢心(まんしん)致(いた)すと神(かみ)の試(ためし)に遇(あ)ふて行(ゆき)も帰(かへ)りもならないやうになる」と三五教(あななひけう)の教典(けうてん)に示(しめ)されて居(ゐ)るが175矢張(やつぱ)り吾々(われわれ)は、1751ソーシャリズムとか自由(じいう)平等(べうどう)主義(しゆぎ)だとか云(い)つて神(かみ)様(さま)を軽(かろ)んじて来(き)た結果(けつくわ)176こんな羽目(はめ)に陥(おちい)つたのだ。177どうしても是(これ)は現界(げんかい)とは思(おも)はれないな。178竜神(りうじん)の岩窟(がんくつ)で命(いのち)を取(と)られ此処(ここ)へ来(き)たのだ。179もう斯(か)うなれば覚悟(かくご)をするより仕方(しかた)が無(な)いぞ』
180カークス『さうだ。181どう考(かんが)へて見(み)ても現界(げんかい)のやうぢやない。182お前(まへ)の云(い)ふ通(とほ)り、183これから駒(こま)の頭(かしら)を立(た)て直(なほ)し、184弱(よわ)くてはいけないから、185仮令(たとへ)地獄(ぢごく)へ行(ゆ)かうとも大(おほ)いに馬力(ばりき)を出(だ)してメートルをあげ、186地獄(ぢごく)の鬼(おに)を脅迫(けふはく)し、187舌(した)を捲(ま)かせ、188共和国(きようわこく)でも建設(けんせつ)しようぢやないか。189兎(と)に角(かく)今日(こんにち)の世(よ)の中(なか)は弱(よわ)くては立(た)てぬのだからなア』
190ベース『さうだと云(い)つて、191吾々(われわれ)両人(りやうにん)の小勢(こぜい)では地獄(ぢごく)を征服(せいふく)する訳(わけ)にも行(ゆ)くまい。192閻魔(えんま)大王(たいわう)とか云(い)ふやつが居(ゐ)て193帖面(ちやうめん)を繰(く)つて吾々(われわれ)の罪状(ざいじやう)を一々(いちいち)読(よ)み上(あ)げ194焦熱(せうねつ)地獄(ぢごく)へでも落(おと)さうと云(い)つたらどうする。195どうせ天国(てんごく)へ行(ゆ)かれる様(やう)な行(おこな)ひはして来(き)て居(ゐ)ないからなア』
196カークス『何(なに)心配(しんぱい)するな地獄(ぢごく)と云(い)ふ所(ところ)は強(つよ)い者(もの)勝(がち)の世(よ)の中(なか)だ。197小(ちひ)さい悪人(あくにん)は厳(きび)しい刑罰(けいばつ)を受(う)けるなり、198大(だい)なる悪人(あくにん)は地獄(ぢごく)の王者(わうじや)となつて大勢(おほぜい)の亡者(まうじや)を腮(あご)で使(つか)ひ、199愉快(ゆくわい)な生活(せいくわつ)を送(おく)らうと儘(まま)だよ。200閻魔(えんま)などはあるものぢやない。201霊界(れいかい)も現界(げんかい)も同(おな)じ事(こと)だ。202現界(げんかい)の状態(じやうたい)を考(かんが)へて見(み)よ。203下(した)にあつて乱(らん)すれば刑(けい)せられ、204上(うへ)にあつて乱(らん)すれば衆人(しうじん)より尊敬(そんけい)せらるる矛盾(むじゆん)暗黒(あんこく)の世(よ)の中(なか)だ 205吾々(われわれ)は弱(よわ)くてはならない。206是(これ)から褌(ふんどし)を確(しつか)りと締(し)め、207捻鉢巻(ねぢはちまき)をして細(ほそ)い腕(うで)に撚(より)をかけ、208此(この)濁流(だくりう)を向(むか)ふに渡(わた)り、209地獄(ぢごく)征服(せいふく)と出(で)かけようぢやないか。210人間(にんげん)の精霊(せいれい)と云(い)ふものは211所主(しよしゆ)の愛(あい)によつて天国(てんごく)なり、2111又(また)地獄(ぢごく)へ籍(せき)を置(お)いて居(ゐ)るのださうだから、212何(なに)地獄(ぢごく)だつて構(かま)ふものか、213自分(じぶん)の本籍(ほんせき)に帰(かへ)るやうなものだ。214片端(かたつぱし)から暴威(ばうゐ)を揮(ふる)つて四辺(あたり)の小団体(せうだんたい)を征服(せいふく)し、215大同(だいどう)団結(だんけつ)を作(つく)り、216カークス、217ベース王国(わうごく)を建(た)てようぢやないか。218何(なに)、219地獄(ぢごく)位(くらゐ)に屁古垂(へこた)れてたまらうかい。220何程(なにほど)地獄(ぢごく)が辛(つら)いと云(い)つても現界(げんかい)位(くらゐ)のものだ。221現界(げんかい)は所謂(いはゆる)地獄(ぢごく)の映象(えいしやう)だと云(い)ふ事(こと)だから、222吾々(われわれ)は経験(けいけん)がつんで居(ゐ)る。223現界(げんかい)では大黒主(おほくろぬし)と云(い)ふ大将(たいしやう)が居(ゐ)るから吾々(われわれ)の思(おも)ふやうには往(ゆ)かないが、224地獄(ぢごく)では勝手(かつて)だ。225この腕(うで)が一本(いつぽん)あればどんな事(こと)でも出来(でき)るよ』
226ベース『さうだなア。227どうやら地獄(ぢごく)の八丁目(はつちやうめ)らしい。228取(と)つたか見(み)たかだ。229此(この)濁流(だくりう)を横(よこ)ぎり、230其(その)勢(いきほひ)で地獄(ぢごく)に侵入(しんにふ)し、231一(ひと)つ脅喝(けふかつ)的(てき)手段(しゆだん)を弄(ろう)して粟散(ぞくさん)鬼王(きわう)を平(たひら)げ、232天晴(あつぱれ)地獄界(ぢごくかい)の勇者(ゆうしや)となるも妙(めう)だ。233ヤア勇(いさ)ましくなつて来(き)た。234毒(どく)を喰(くら)へば皿(さら)迄(まで)だ。235どうせ吾々(われわれ)は天国(てんごく)代物(しろもの)ぢやないからなア。236アハヽヽヽ』
237 斯(かく)両人(りやうにん)は河端(かはばた)に佇(たたず)み泡沫(はうまつ)の如(ごと)き望(のぞ)みを抱(いだ)いて雄健(をたけ)びして居(ゐ)る。238傍(かたはら)の生(は)へ茂(しげ)つた茅(かや)の中(なか)の藁小屋(わらごや)から239黒(くろ)い痩(やせ)こけた怪(あや)しい婆(ばば)が破(やぶ)れた茣蓙(ござ)を肩(かた)にかけ、240ガサリガサリと萱草(かやぐさ)を揺(ゆす)りながら二人(ふたり)の前(まへ)に出(で)て241左(ひだり)の手(て)に榎(えのき)の杖(つゑ)を携(たづさ)へた儘(まま)、
242婆(ばば)『誰(たれ)だ誰(たれ)だ、243あた矢釜(やかま)しい。244そんな大(おほ)きな声(こゑ)で喋(しやべ)り散(ち)らすと、245俺(おれ)の耳(みみ)が蛸(たこ)になるわい。246貴様(きさま)はどこの兵六玉(ひやうろくだま)だ。247一寸(ちよつと)こちらへ来(こ)い』
248カークス『ハヽヽヽヽ。249何(なん)とまア汚(きたな)い婆(ばば)もあつたものぢやないかい。250物(もの)を言(い)ふも汚(けが)らはしいわい。251何(なん)と云(い)つても天下(てんか)の豪傑(がうけつ)兵六玉(ひやうろくだま)のカークス王(わう)様(さま)だからなア』
252婆(ばば)『ヘン、253人(ひと)の見(み)ぬ所(ところ)でそつと猫婆(ねこばば)を極(き)め込(こ)み、254欲(よく)な事(こと)計(ばか)り致(いた)し、255何(なに)も彼(か)も人(ひと)の前(まへ)にカークス爺(おやぢ)だらう。256も一匹(いつぴき)の奴(やつ)は何(なん)と云(い)ふ兵六玉(ひやうろくだま)だい』
257ベース『此(この)方(はう)は失敬(しつけい)ながら月(つき)の国(くに)にて名(な)も高(たか)きベース様(さま)だよ』
258婆(ばば)『成程(なるほど)259どいつも此奴(こいつ)も人気(にんき)の悪(わる)い面(つら)つきだなア。260ベースをカークスやうな其(その)哀(あは)れつぽいスタイルは何(なん)だ。261此処(ここ)は三途(せうづ)の川(かは)の渡船場(わたしば)だ。262サアこれから貴様(きさま)の衣類(いるい)万端(ばんたん)剥(はぎ)取(と)つてやらう。263覚悟(かくご)を致(いた)したがよいぞい。264今(いま)の先(さき)、265伊太彦(いたひこ)、266ブラヷーダの若夫婦(わかふうふ)が嬉(うれ)しさうに手(て)を引(ひ)いて此所(ここ)を通(とほ)りよつた。267さうして馬鹿面(ばかづら)をした、268何(なん)でも兄貴(あにき)と見(み)えるが、269アスマガルダと云(い)ふ奴(やつ)が270妹(いもうと)や妹(いもうと)の婿(むこ)の僕(しもべ)となつて通(とほ)りよつたぞや』
271カークス『何(なに)、272伊太彦(いたひこ)さまが此所(ここ)を通(とほ)られたと云(い)ふのか。273何(なん)ぞ立派(りつぱ)な玉(たま)でも持(も)つて居(を)られただらうなア』
274婆(ばば)『玉(たま)は沢山(たくさん)持(も)つて居(を)つたよ。275粟粒(あはつぶ)のやうな小(ち)つぽけな肝玉(きもだま)やら276縮(ちぢ)こまつた睾丸(きんたま)やら277どん栗(ぐり)のやうな目(め)の玉(たま)やらをぶらさげて、278悄気(しよげ)かへつて此処(ここ)を通(とほ)りよつた。279真裸(まつぱだか)にしてやらうと思(おも)つたが280貴様(きさま)等(ら)とは余程(よほど)御霊(みたま)がよいので、281此(この)婆(ばば)も手(て)をかける事(こと)が出来(でき)ず、282此(この)萱(かや)の中(なか)に隠(かく)れてそつと見(み)て居(を)つたら、283綺麗(きれい)なナイスに手(て)を引(ひ)かれ、284あの川(かは)の真中(まんなか)を通(とほ)りよつた。285大方(おほかた)天国(てんごく)へ往(ゆ)くのだらう。286併(しか)し乍(なが)ら貴様(きさま)達(たち)は此(この)婆(ばば)の手(て)を経(へ)て、287三途(せうづ)の川(かは)を渡(わた)らずに一途(いちづ)の河(かは)を渡(わた)り、288直様(すぐさま)地獄(ぢごく)へ突(つ)き落(おと)される代物(しろもの)だ。289ても扨(さ)ても憐(あは)れなものぢやわいのう、290オンオンオン』
291ベース『ヤア此奴(こいつ)ア、292グヅグヅしては居(を)られない。293此(この)婆(ばば)を突(つ)つ倒(こ)かして置(お)いて此(この)河(かは)を渡(わた)り、294一(ひと)つ地獄(ぢごく)征服(せいふく)と出(で)かけようか、295カークス来(きた)れ』
296と早(はや)くも尻(しり)引(ひ)き捲(まく)り、297濁流(だくりう)目蒐(めが)けて渡(わた)らうとする。298婆(ばば)は細(ほそ)い痩(や)せこけた手(て)を出(だ)して、299ベースの胸座(むなぐら)を取(と)り、300三(み)つ四(よ)つ揺(ゆ)する。
301ベース『これや婆(ばば)、302どうするのだい。303失敬(しつけい)な、304人(ひと)の胸座(むなぐら)を取(と)りやがつて』
305婆(ばば)『取(と)らいでかい取(と)らいでかい、306貴様(きさま)の肝玉(きもだま)を引(ひ)き抜(ぬ)いてやるのだ。307こら其処(そこ)な兵六玉(ひやうろくだま)、308貴様(きさま)も同様(どうやう)だから待(ま)つて居(を)れ。309この婆(ばば)が此所(ここ)で荒料理(あられうり)をして310骨(ほね)も肉(にく)も付(つ)け焼(やき)にして食(く)つてやるのだ。311大分(だいぶん)腹(はら)が減(へ)つた所(ところ)へよい餌(ゑさ)が来(き)たものだ』
312 カークスは後(うしろ)より婆(ばば)の足(あし)をグツと掴(つか)み力(ちから)限(かぎ)り突(つ)けども押(お)せども、313地(ち)から生(は)えた岩(いは)のやうにビクとも動(うご)かない。
314カークス『ヤア何(なん)と腰(こし)の強(つよ)い、315強太(しぶと)い婆(ばば)だな』
316婆(ばば)『定(きま)つた事(こと)だよ。317俺(おれ)は地(ち)の底(そこ)から生(は)えたお岩(いは)と云(い)ふ幽霊婆(いうれいばば)だ。318兵六玉(ひやうろくだま)の十匹(じつぴき)や二十匹(にじつぴき)集(た)かつて来(き)た所(ところ)で319ビクとも動(うご)くものかい』
320ベース『こら婆(ば)アさま、321放(はな)さぬかい。322俺(おれ)の息(いき)が切(き)れるぢやないか』
323婆(ばば)『定(き)まつた事(こと)だい。324息(いき)の切(き)れるやうに掴(つか)んで居(ゐ)るのだ。325息(いき)を切(き)らして軍鶏(しやも)を叩(たた)くやうに叩(たた)きつぶし、326砂(すな)にまぶし、327肉団子(にくだんご)をこしらへて食(く)つて仕舞(しま)ふのだ。328こうなつたら貴様(きさま)達(たち)ももう娑婆(しやば)の年貢(ねんぐ)の納(をさ)め時(どき)だ。329潔(いさぎよ)う覚悟(かくご)をして居(ゐ)るがよい』
330 二人(ふたり)は進退(しんたい)谷(きは)まり、331如何(いかが)はせむかと案(あん)じ煩(わづら)ふ折柄(をりから)、332遥(はる)か後(うしろ)の方(はう)から、333宣伝歌(せんでんか)が聞(きこ)えて来(き)た。334ハツと思(おも)ふ途端(とたん)、335今(いま)迄(まで)婆(ばば)と見(み)えたのは河(かは)の傍(かたはら)の巨巌(きよがん)であつた。336川(かは)と見(み)えたのは果(はて)しも知(し)られぬ薄原(すすきばら)で、337其(その)薄(すすき)の穂(ほ)が風(かぜ)に揺(ゆ)られて水(みづ)と見(み)えて居(を)つたのであつた。
338(大正一二・五・二四 旧四・九 於教主殿 加藤明子録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→