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霊界物語
天祥地瑞（第73～81巻）
第77巻（辰の巻）
序文
第1篇 万里の海原
第1章 天馬行空
第2章 天地七柱
第3章 狭野の食国
第4章 狭野の島生み
第5章 言霊生島
第6章 田族島着陸
第2篇 十一神将
第7章 万里平定
第8章 征魔の出陣
第9章 馬上征誦
第10章 樹下の雨宿
第11章 望月の影
第12章 月下の森蔭
第3篇 善戦善闘
第13章 五男三女神
第14章 夜光の眼球
第15章 笹原の邂逅
第16章 妖術破滅
第17章 剣槍の雨
第18章 国津女神
第19章 邪神全滅
第20章 女神の復命
第4篇 歓天喜地
第21章 泉の森出発
第22章 歓声満天（一）
第23章 歓声満天（二）
第24章 会者定離
余白歌
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第77巻
> 第1篇 万里の海原 > 第6章 田族島着陸
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(B)
(N)
万里平定 ＞＞＞
第六章
田族島
(
たからじま
)
着陸
(
ちやくりく
)
〔一九三八〕
インフォメーション
著者：
出口王仁三郎
巻：
霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
篇：
第1篇 万里の海原
よみ（新仮名遣い）：
までのうなばら
章：
第6章 田族島着陸
よみ（新仮名遣い）：
たからじまちゃくりく
通し章番号：
1938
口述日：
1933（昭和8）年12月12日（旧10月25日）
口述場所：
大阪分院蒼雲閣
筆録者：
内崎照代
校正日：
校正場所：
初版発行日：
1934（昭和9）年3月30日
概要：
舞台：
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です（一部加筆訂正してあります）。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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：
海はたそがれ日は落ちてきた。神々は述懐歌を歌っていたが、なんとはなしに寂しき道中に、起立比古はつい弱音を吐くが、立世比女に諭されて宣り直し、夜の海の美しさをたたえる歌を歌った。
朝香比女は、起立比古の言霊に万里の海原もよみがえり、輝きを取り戻したと喜び、夜の航海を楽しんだ。
そうするうちに、白馬ケ岳の麓に舟は着いた。この島は、万里（まで）の島と言い、万里の海の島々の中で、もっとも広く土の肥えた素晴らしい島であった。
万里の島には、幾千万ともなく野生の馬と羊が住んでおり、またこれまで誰も国津神が住んだことのない、田族（たから）の島であった。
朝香比女の神一行は、舟を磯につないで島に登って来ると、たくさんの馬・羊は先を争って、白馬ケ岳の麓をさして逃げていった。一行は、天を封じて立っている大きな楠の陰に憩いながら、おのおの述懐の歌を歌った。
住むものもなきこの島に白駒がいななき、野も開かれているのを見て朝香比女は、御樋代神の一人、田族（たから）比女神がこの島を統べていることを悟った。
神々が述懐歌を歌ううち、いずこよりか白駒にまたがった神が現れ、輪守比古の神、若春比古と名乗った。そして二柱の神は、田族比女の神の神言により、朝香比女一行を迎えにきたことを告げた。
一同はひらりと駒に乗り、月の照る夜半の野路を、くつわを揃えて田族比女の館へ進んで行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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：
備考：
タグ：
データ凡例：
データ最終更新日：
OBC ：
rm7706
愛善世界社版：
八幡書店版：
第13輯 612頁
修補版：
校定版：
97頁
普及版：
初版：
ページ備考：
001
伊猛
(
いたけ
)
り
狂
(
くる
)
ふ
荒浪
(
あらなみ
)
を
002
ものともなさず
比女神
(
ひめがみ
)
は
003
生言霊
(
いくことたま
)
の
御光
(
みひかり
)
に
004
忽
(
たちま
)
ち
巌
(
いは
)
の
島
(
しま
)
となし
005
泡立
(
あわだ
)
つ
浪
(
なみ
)
は
忽
(
たちま
)
ちに
006
島
(
しま
)
の
真砂
(
まさご
)
と
変
(
か
)
へさせて
007
いみじき
功
(
いさを
)
を
立
(
た
)
て
給
(
たま
)
ひ
008
諸神
(
ももがみ
)
等
(
たち
)
を
驚
(
おどろ
)
かせ
009
水火
(
いき
)
の
光
(
ひかり
)
を
照
(
て
)
らしまし
010
果
(
はて
)
しも
知
(
し
)
らぬ
万里
(
まで
)
の
海
(
うみ
)
011
浪
(
なみ
)
押
(
お
)
し
分
(
わ
)
けて
悠々
(
いういう
)
と
012
白馬
(
はくば
)
ケ
岳
(
だけ
)
を
目当
(
めあて
)
とし
013
声
(
こゑ
)
も
清
(
すが
)
しく
言霊
(
ことたま
)
の
014
御歌
(
みうた
)
を
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ひつつ
015
進
(
すす
)
ませ
給
(
たま
)
ふぞ
雄々
(
をを
)
しけれ
016
御空
(
みそら
)
を
渡
(
わた
)
る
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
は
017
高地秀
(
たかちほ
)
山
(
やま
)
の
頂
(
いただき
)
に
018
うすづき
給
(
たま
)
ひて
山影
(
やまかげ
)
は
019
万里
(
まで
)
の
海原
(
うなばら
)
襲
(
おそ
)
ひ
来
(
き
)
ぬ
020
冷
(
つめ
)
たき
夕
(
ゆふ
)
べの
海風
(
うなかぜ
)
は
021
女神
(
めがみ
)
の
御舟
(
みふね
)
に
襲
(
おそ
)
ひ
来
(
き
)
ぬ。
022
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
023
『
浪
(
なみ
)
高
(
たか
)
き
万里
(
まで
)
の
海原
(
うなばら
)
渡
(
わた
)
り
居
(
を
)
れば
024
高地秀
(
たかちほ
)
山
(
やま
)
に
陽
(
ひ
)
は
落
(
お
)
ちにけり
025
高地秀
(
たかちほ
)
の
山影
(
やまかげ
)
遠
(
とほ
)
く
万里
(
まで
)
の
海
(
うみ
)
の
026
面
(
おもて
)
に
黒
(
くろ
)
く
倒
(
たふ
)
れけるかも
027
百鳥
(
ももどり
)
は
塒
(
ねぐら
)
求
(
もと
)
めて
島々
(
しまじま
)
の
028
茂樹
(
しげき
)
の
梢
(
うれ
)
をさして
飛
(
と
)
ぶなり
029
奴婆玉
(
ぬばたま
)
の
翼
(
つばさ
)
の
黒
(
くろ
)
き
夕烏
(
ゆふからす
)
は
030
西
(
にし
)
の
島根
(
しまね
)
をさして
急
(
いそ
)
ぐも
031
浪
(
なみ
)
の
音
(
おと
)
いや
高
(
たか
)
らかに
響
(
ひび
)
きつつ
032
わが
乗
(
の
)
る
舟
(
ふね
)
はさゆらぎにけり
033
数限
(
かずかぎ
)
りなき
島山
(
しまやま
)
を
縫
(
ぬ
)
ひて
来
(
こ
)
し
034
舟
(
ふね
)
も
恵
(
めぐ
)
みに
恙
(
つつが
)
なかりき
035
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
は
山
(
やま
)
に
沈
(
しづ
)
みて
月読
(
つきよみ
)
の
036
光
(
かげ
)
はますます
冴
(
さ
)
え
渡
(
わた
)
るなり
037
月読
(
つきよみ
)
の
清
(
きよ
)
き
姿
(
すがた
)
を
眺
(
なが
)
むれば
038
わが
背
(
せ
)
の
岐美
(
きみ
)
を
偲
(
しの
)
ばるるかな
039
御空
(
みそら
)
ゆく
月
(
つき
)
をし
見
(
み
)
れば
背
(
せ
)
の
岐美
(
きみ
)
の
040
清
(
きよ
)
き
姿
(
すがた
)
の
偲
(
しの
)
ばるるかな
041
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
はかくろひぬれど
月読
(
つきよみ
)
の
042
御舟
(
みふね
)
は
磐楠舟
(
いはくすぶね
)
を
照
(
て
)
らせり
043
月
(
つき
)
冴
(
さ
)
ゆる
大海原
(
おほうなばら
)
を
渡
(
わた
)
りゆく
044
われ
国魂
(
くにたま
)
の
神
(
かみ
)
を
生
(
う
)
まむと
045
百鳥
(
ももどり
)
の
声
(
こゑ
)
は
聞
(
き
)
こえずなりにけり
046
ただ
潮騒
(
しほざゐ
)
の
音
(
おと
)
のみにして
047
島々
(
しまじま
)
の
岸
(
きし
)
打
(
う
)
つ
浪
(
なみ
)
は
白々
(
しらじら
)
と
048
しぶき
立
(
た
)
つなり
風
(
かぜ
)
のまにまに
049
滔々
(
たうたう
)
と
巌ケ根
(
いはがね
)
を
打
(
う
)
つ
浪
(
なみ
)
しぶきの
050
音
(
おと
)
は
一入
(
ひとしほ
)
高
(
たか
)
くなりけり
051
海
(
うみ
)
の
面
(
も
)
に
匂
(
にほ
)
はぬ
花
(
はな
)
の
咲
(
さ
)
き
満
(
み
)
ちて
052
わが
行
(
ゆ
)
く
夜半
(
よは
)
の
舟
(
ふね
)
はさやけし』
053
初頭
(
うぶがみ
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
054
『
万里
(
まで
)
の
海
(
うみ
)
早
(
は
)
や
黄昏
(
たそが
)
れて
潮騒
(
しほざゐ
)
の
055
音
(
おと
)
たかだかと
鳴
(
な
)
り
響
(
ひび
)
くかも
056
百鳥
(
ももどり
)
は
島
(
しま
)
の
茂樹
(
しげき
)
に
宿
(
やど
)
をとるか
057
只
(
ただ
)
一羽
(
いちは
)
だも
影
(
かげ
)
を
見
(
み
)
せなく
058
吾
(
われ
)
もまた
何
(
いづ
)
れの
島
(
しま
)
にか
舟
(
ふね
)
寄
(
よ
)
せて
059
雨宿
(
あまやど
)
りつつ
夢
(
ゆめ
)
を
結
(
むす
)
ばむ
060
白馬
(
はくば
)
ケ
岳
(
だけ
)
深雪
(
みゆき
)
は
月
(
つき
)
に
輝
(
かがや
)
きて
061
霧
(
きり
)
の
海原
(
うなばら
)
に
影
(
かげ
)
をうつせり
062
音
(
おと
)
にきく
白馬
(
はくば
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
生島
(
いくしま
)
は
063
白馬
(
しらこま
)
数多
(
あまた
)
群
(
む
)
れ
棲
(
す
)
むときく
064
吾
(
わが
)
駒
(
こま
)
は
終日
(
ひねもす
)
舟
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
せられて
065
苦
(
くる
)
しかるらむ
水
(
みづ
)
も
飼
(
か
)
はねば
066
水
(
みづ
)
飼
(
か
)
はむ
術
(
すべ
)
もなきかな
万里
(
まで
)
の
海
(
うみ
)
の
067
水
(
みづ
)
はことごと
塩
(
しほ
)
なりにける』
068
起立
(
おきたつ
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
069
『
比女神
(
ひめがみ
)
の
御供
(
みとも
)
に
仕
(
つか
)
へて
万里
(
まで
)
の
海
(
うみ
)
に
070
黄昏
(
たそが
)
れにつつくたびれしはや
071
曲神
(
まがかみ
)
の
伊猛
(
いたけ
)
り
狂
(
くる
)
ふ
海中
(
わだなか
)
に
072
黄昏
(
たそが
)
れてやる
舟
(
ふね
)
は
淋
(
さび
)
しも』
073
立世
(
たつよ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
074
『
起立
(
おきたつ
)
の
神
(
かみ
)
の
言葉
(
ことば
)
ぞあやしけれ
075
生言霊
(
いくことたま
)
の
旅
(
たび
)
にあらずや
076
さびしみを
語
(
かた
)
れば
淋
(
さび
)
し
楽
(
たの
)
しみを
077
語
(
かた
)
らば
楽
(
たの
)
しき
神世
(
かみよ
)
なるぞや
078
言霊
(
ことたま
)
のたすけ
幸
(
さちは
)
ふ
国中
(
くになか
)
に
079
弱音
(
よわね
)
ふかすな
起立
(
おきたつ
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
』
080
起立
(
おきたつ
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
081
『
立世
(
たつよ
)
比女
(
ひめ
)
神
(
かみ
)
の
言霊
(
ことたま
)
うべなうべな
082
吾
(
われ
)
言霊
(
ことたま
)
をあやまりにけり
083
久方
(
ひさかた
)
の
月
(
つき
)
照
(
て
)
る
夜半
(
よは
)
の
海原
(
うなばら
)
は
084
いと
賑
(
にぎ
)
はしくかがやきにけり
085
浪
(
なみ
)
の
秀
(
ほ
)
は
花
(
はな
)
と
冴
(
さ
)
えつつ
岸
(
きし
)
を
打
(
う
)
つ
086
潮
(
しほ
)
のしぶきは
玉
(
たま
)
と
照
(
て
)
るなり
087
生
(
い
)
き
生
(
い
)
きて
吾
(
われ
)
は
栄
(
さか
)
えむ
永久
(
とことは
)
に
088
心
(
こころ
)
も
魂
(
たま
)
も
疲
(
つか
)
るることなく
089
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
神
(
かみ
)
の
雄々
(
をを
)
しさに
比
(
くら
)
ぶれば
090
吾
(
われ
)
は
小
(
ちひ
)
さき
弱
(
よわ
)
き
神
(
かみ
)
かも』
091
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
092
『
起立
(
おきたつ
)
の
神
(
かみ
)
の
宣
(
の
)
らする
言霊
(
ことたま
)
に
093
万里
(
まで
)
の
海原
(
うなばら
)
よみがへりぬる
094
大空
(
おほぞら
)
の
星
(
ほし
)
も
降
(
くだ
)
りて
水底
(
みなそこ
)
に
095
光
(
ひか
)
りかがやき
給
(
たま
)
ふ
海原
(
うなばら
)
096
上
(
うへ
)
と
下
(
した
)
に
月
(
つき
)
と
星
(
ほし
)
とを
眺
(
なが
)
めつつ
097
わが
行
(
ゆ
)
く
舟
(
ふね
)
は
天
(
あま
)
の
鳥船
(
とりぶね
)
よ
098
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
美
(
うるは
)
しき
海
(
うみ
)
の
浪
(
なみ
)
の
上
(
へ
)
を
099
月
(
つき
)
に
照
(
て
)
らされ
行
(
ゆ
)
くは
楽
(
たの
)
しも』
100
天晴
(
あめはれ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
101
『
白馬
(
はくば
)
ケ
岳
(
だけ
)
影
(
かげ
)
はやうやく
近
(
ちか
)
みたり
102
千重
(
ちへ
)
の
浪路
(
なみぢ
)
を
遠
(
とほ
)
く
渡
(
わた
)
りて
103
海原
(
うなばら
)
の
浪
(
なみ
)
の
頭
(
かしら
)
は
百千々
(
ももちぢ
)
に
104
またたきにけり
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
に
105
右左
(
みぎひだり
)
島根
(
しまね
)
はここだく
並
(
なら
)
べども
106
神
(
かみ
)
の
住
(
す
)
むべき
所
(
ところ
)
だになし
107
巌骨
(
いはほね
)
をあらはし
島
(
しま
)
は
赤々
(
あかあか
)
と
108
空
(
そら
)
行
(
ゆ
)
く
月
(
つき
)
のかげをうつせり
109
仰
(
あふ
)
ぎみる
白馬
(
はくば
)
ケ
岳
(
だけ
)
は
青々
(
あをあを
)
と
110
樹木
(
じゆもく
)
茂
(
しげ
)
れり
行
(
ゆ
)
きてひらかばや』
111
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ひつつ
漸
(
やうや
)
くにして
白馬
(
はくば
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
麓
(
ふもと
)
に
御舟
(
みふね
)
は
着
(
つ
)
きにけり。
112
この
島
(
しま
)
は
万里
(
まで
)
の
島
(
しま
)
と
称
(
とな
)
へ、
113
この
海原
(
うなばら
)
に
浮
(
うか
)
べる
島々
(
しまじま
)
の
中
(
なか
)
に、
114
最
(
もつと
)
も
広
(
ひろ
)
くして
地
(
つち
)
肥
(
こ
)
えたる
貴
(
うづ
)
の
島ケ根
(
しまがね
)
なりける。
115
万里
(
まで
)
の
島
(
しま
)
には
幾千万
(
いくせんまん
)
ともなき
野馬
(
やば
)
と
羊
(
ひつじ
)
棲息
(
せいそく
)
し、
116
未
(
いま
)
だ
一柱
(
ひとはしら
)
の
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
も
住
(
す
)
みたることなき
田族
(
たから
)
の
島
(
しま
)
にぞありける。
117
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
船
(
ふね
)
を
磯辺
(
いそべ
)
に
繋
(
つな
)
ぎ、
118
静々
(
しづしづ
)
とのぼり
給
(
たま
)
へば、
119
数多
(
あまた
)
の
馬
(
うま
)
、
120
羊
(
ひつじ
)
は
先
(
さき
)
をきそひて
白馬
(
はくば
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
麓
(
ふもと
)
をさして
逃
(
に
)
げ
出
(
い
)
でにけり。
121
一行
(
いつかう
)
は、
122
こんもりと
天
(
てん
)
を
封
(
ふう
)
じて
立
(
た
)
てる
楠
(
くす
)
の
大樹
(
おほき
)
の
蔭
(
かげ
)
に
憩
(
いこ
)
はせながら、
123
各自
(
おのもおのも
)
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
124
『
万里
(
まで
)
の
海
(
うみ
)
やうやく
渡
(
わた
)
り
月
(
つき
)
の
夜半
(
やは
)
125
田族
(
たから
)
の
島
(
しま
)
に
着
(
つ
)
きにけるかも
126
こんもりと
空
(
そら
)
を
封
(
ふう
)
じて
聳
(
そそ
)
り
立
(
た
)
つ
127
楠
(
くす
)
の
樹蔭
(
こかげ
)
は
月影
(
つきかげ
)
見
(
み
)
えずも
128
この
島
(
しま
)
にわがのぼり
来
(
き
)
て
生島
(
いくしま
)
の
129
草
(
くさ
)
の
根
(
ね
)
に
鳴
(
な
)
く
虫
(
むし
)
聞
(
き
)
きにけり
130
虫
(
むし
)
の
音
(
ね
)
はいや
冴
(
さ
)
えにつつ
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
の
131
栄
(
さか
)
えを
永久
(
とは
)
にうたひつつ
居
(
を
)
り
132
白馬
(
はくば
)
ケ
岳
(
だけ
)
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
の
雪
(
ゆき
)
は
白々
(
しろじろ
)
と
133
夜目
(
よめ
)
にもしるく
輝
(
かがや
)
き
渡
(
わた
)
れり
134
この
島
(
しま
)
に
群
(
むら
)
がり
棲
(
す
)
める
幾万
(
いくまん
)
の
135
馬
(
うま
)
と
羊
(
ひつじ
)
は
逃
(
に
)
げ
失
(
う
)
せにけむ
136
土地
(
つち
)
肥
(
こ
)
えしこの
島ケ根
(
しまがね
)
は
百草
(
ももくさ
)
の
137
いや
茂
(
しげ
)
らひて
栄
(
さか
)
え
果
(
はて
)
なき
138
幾万
(
いくまん
)
の
馬
(
うま
)
と
羊
(
ひつじ
)
を
養
(
やしな
)
ふに
139
足
(
た
)
らふ
小草
(
をぐさ
)
の
萌
(
も
)
ゆる
島
(
しま
)
はも
140
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
国津神
(
くにつかみ
)
等
(
たち
)
のたねうゑて
141
千代
(
ちよ
)
に
八千代
(
やちよ
)
に
拓
(
ひら
)
かせ
度
(
た
)
きもの』
142
初頭
(
うぶがみ
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
143
『
仰
(
あふ
)
ぎみれば
白馬
(
はくば
)
ケ
岳
(
だけ
)
は
雲
(
くも
)
の
上
(
へ
)
に
144
雪
(
ゆき
)
をかぶりてかがやきにけり
145
浪
(
なみ
)
の
音
(
おと
)
高
(
たか
)
く
聞
(
きこ
)
えて
遠
(
とほ
)
つ
野
(
の
)
に
146
白馬
(
はくば
)
の
嘶
(
いなな
)
き
響
(
ひび
)
き
渡
(
わた
)
れり
147
白駒
(
しらこま
)
の
嘶
(
いなな
)
き
高
(
たか
)
く
千万
(
ちよろづ
)
の
148
声
(
こゑ
)
も
一
(
ひと
)
つに
響
(
ひび
)
かひにけり
149
この
島
(
しま
)
に
吾
(
われ
)
は
御樋代
(
みひしろ
)
神
(
かみ
)
ますと
150
おもはれにける
駒
(
こま
)
の
嘶
(
いなな
)
きに
151
白駒
(
しらこま
)
の
嘶
(
いなな
)
き
聞
(
き
)
けば
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
の
152
生言霊
(
いくことたま
)
の
光
(
ひかり
)
おぼゆも』
153
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
154
『
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
はただ
一柱
(
ひとはしら
)
も
住
(
す
)
まねども
155
八十
(
やそ
)
御樋代
(
みひしろ
)
の
神
(
かみ
)
はいまさむ
156
遠近
(
をちこち
)
の
野
(
の
)
はひらかれて
穀物
(
たなつもの
)
の
157
生
(
お
)
ひ
立
(
た
)
ちみれば
神
(
かみ
)
おはしまさむ
158
八十柱
(
やそはしら
)
御樋代
(
みひしろ
)
神
(
がみ
)
の
一
(
ひと
)
つなる
159
田族
(
たから
)
比女神
(
ひめがみ
)
の
住処
(
すみか
)
なるらむ
160
明日
(
あす
)
の
日
(
ひ
)
はこの
島
(
しま
)
ふかく
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
きて
161
御樋代
(
みひしろ
)
神
(
がみ
)
に
言問
(
ことと
)
ひせむかな』
162
立世
(
たつよ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
163
『この
島
(
しま
)
に
御樋代
(
みひしろ
)
神
(
がみ
)
のおはしますと
164
聞
(
き
)
けばかしこし
言問
(
ことと
)
ひまつらむ
165
御樋代
(
みひしろ
)
神
(
がみ
)
これの
田族島
(
たからじま
)
におはしまして
166
国魂神
(
くにたまがみ
)
を
生
(
う
)
ます
日
(
ひ
)
待
(
ま
)
たるる』
167
起立
(
おきたつ
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
168
『
万里
(
まで
)
の
島
(
しま
)
山野
(
やまぬ
)
は
清
(
きよ
)
く
見
(
み
)
えながら
169
谿
(
たに
)
の
狭間
(
はざま
)
に
黒雲
(
くろくも
)
立
(
た
)
つも
170
黒雲
(
くろくも
)
は
八十
(
やそ
)
曲津見
(
まがつみ
)
の
水火
(
いき
)
ならむ
171
明日
(
あす
)
は
近
(
ちか
)
みて
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
さむ』
172
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
173
『
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
神言
(
みこと
)
畏
(
かしこ
)
み
田族
(
たから
)
比女
(
ひめ
)
の
174
神
(
かみ
)
はこの
地
(
ち
)
に
住
(
す
)
み
給
(
たま
)
ふべし
175
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
の
出
(
い
)
でまし
待
(
ま
)
ちにつつ
176
この
島ケ根
(
しまがね
)
にひそみ
給
(
たま
)
はむ』
177
天晴
(
あめはれ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
178
『
八十柱
(
やそはしら
)
御樋代
(
みひしろ
)
神
(
がみ
)
は
只一人
(
ただひとり
)
179
この
広
(
ひろ
)
き
島
(
しま
)
におはしますにや
180
この
広
(
ひろ
)
き
島根
(
しまね
)
に
一人
(
ひとり
)
おはします
181
田族
(
たから
)
の
比女神
(
ひめがみ
)
は
淋
(
さび
)
しかるらむ』
182
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
183
『
十柱
(
とはしら
)
の
貴
(
うづ
)
の
神
(
かみ
)
たち
従
(
したが
)
へて
184
鎮
(
しづ
)
まりいまさむ
御樋代
(
みひしろ
)
神
(
がみ
)
は
185
ともかくも
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
くるまでこの
森
(
もり
)
に
186
安
(
やす
)
く
眠
(
ねむ
)
らむ
潮騒
(
しほざゐ
)
聞
(
き
)
きつつ』
187
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
はせ
給
(
たま
)
ふ
折
(
をり
)
しも、
188
何処
(
いづこ
)
よりか
輪守
(
わもり
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
、
189
若春
(
わかはる
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
の
二柱
(
ふたはしら
)
は、
190
白馬
(
しらこま
)
に
跨
(
またが
)
り
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
りこの
森
(
もり
)
の
蔭
(
かげ
)
に
駒
(
こま
)
を
止
(
とど
)
め、
191
『かしこけれど
言
(
こと
)
とひ
奉
(
まつ
)
らむこの
森
(
もり
)
に
192
いますは
朝香
(
あさか
)
比女神
(
ひめがみ
)
にまさずや
193
田族
(
たから
)
比女
(
ひめ
)
神
(
かみ
)
の
神言
(
みこと
)
をかしこみて
194
吾
(
われ
)
二柱
(
ふたはしら
)
伊迎
(
いむか
)
へまつるも』
195
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
もて
答
(
こた
)
へ
給
(
たま
)
ふ。
196
『
二柱
(
ふたはしら
)
神
(
かみ
)
に
申
(
まを
)
さむ
吾
(
われ
)
こそは
197
朝香
(
あさか
)
の
比女
(
ひめ
)
よ
御樋代
(
みひしろ
)
神
(
がみ
)
よ
198
霧
(
きり
)
こむる
万里
(
まで
)
の
海原
(
うなばら
)
晴
(
は
)
らしつつ
199
これの
島根
(
しまね
)
に
今
(
いま
)
来
(
き
)
つるはや』
200
若春
(
わかはる
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
201
『
待
(
ま
)
ち
待
(
ま
)
ちし
朝香
(
あさか
)
の
比女
(
ひめ
)
の
御姿
(
みすがた
)
を
202
拝
(
をろが
)
む
今宵
(
こよひ
)
ぞ
尊
(
たふと
)
かりける
203
いざさらば
御樋代
(
みひしろ
)
神
(
がみ
)
よ
諸神
(
ももがみ
)
よ
204
案内
(
あない
)
をなさむ
比女
(
ひめ
)
の
館
(
やかた
)
へ
205
吾
(
われ
)
こそは
田族
(
たから
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
へ
奉
(
まつ
)
る
206
若春
(
わかはる
)
比古
(
ひこ
)
の
神司
(
かむつかさ
)
なり
207
今
(
いま
)
ここに
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
りし
一柱
(
ひとはしら
)
は
208
輪守
(
わもり
)
の
比古
(
ひこ
)
の
神司
(
かむつかさ
)
なるよ
209
いざさらば
館
(
やかた
)
に
案内
(
あない
)
仕
(
つかまつ
)
らむ
210
早
(
は
)
や
立
(
た
)
たせませ
比女神
(
ひめがみ
)
諸神
(
ももがみ
)
』
211
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は、
212
『いざさらば
若春
(
わかはる
)
比古
(
ひこ
)
の
宣
(
の
)
り
言
(
ごと
)
に
213
従
(
したが
)
ひ
吾
(
われ
)
は
御館
(
みやかた
)
に
進
(
すす
)
まむ』
214
と
言
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く
白馬
(
しらこま
)
に
跨
(
またが
)
り
給
(
たま
)
へば、
215
初頭
(
うぶがみ
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
、
216
起立
(
おきたつ
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
、
217
立世
(
たつよ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
、
218
天晴
(
あめはれ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
の
四柱
(
よはしら
)
の
神
(
かみ
)
は、
219
ひらりと
駒
(
こま
)
に
跨
(
またが
)
り、
220
月
(
つき
)
照
(
て
)
る
夜半
(
よは
)
の
野路
(
のぢ
)
を
轡
(
くつわ
)
を
揃
(
そろ
)
へて
進
(
すす
)
ませ
給
(
たま
)
ふぞ
畏
(
かしこ
)
けれ。
221
（
昭和八・一二・一二
旧一〇・二五
於大阪分院蒼雲閣
内崎照代
謹録）
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