四方氏を伴ひ綾部に帰りみれば上谷行場は大騒ぎと聞く
福島や村上野崎篤三郎あらぬことをば口ばしりをり
大本の名を汚さんと村上は妖魅につかれて狂ひまはれる
出口直は申の年生れ上田は未年二人で未申と曲云ふ
福『艮の金神福島寅之助にはとてもかなはぬ上田とお直は』
福『皆のものとり違ひすな改心せよこの方が即ち艮の金神』
本当の艮の金神は直ではなしこの福島がまことの神と呶鳴る
福『福島を神が使うて地の上の大立直し立替するぞよ』
この方は神も仏も人民も虫けらまでも救ふといふ曲
違うたら神はこの世にをらんぞよ大の字さかさまと呶鳴る福島
福『天と地がでんぐりかへる用意せよ今足もとに鳥がたつぞよ』
福『艮の金神表にあらはれて善と悪とをたてわけるぞよ』
福『この方が松の神代にいたすぞよ世界の人民改心いたせよ』
この方は嘘は申さん疑へば神の気障りと福島がいふ
福『穴太から上田かへれば捨てておけ相手になるなまことの神が気をつけるぞよ』
筆先の真似ばかりする福島がのべつまくなし終日呶鳴る
福島を鎮魂すればおどろいて邪神の暴動しづまりにけり
修行者は邪神にかかられ一同に口をそろへて福島の加勢
福『皆のものよしつかりいたせこれからは上田の曲津に胡麻かさるるな』
艮のこの金神がわからねば皆谷底へ落すとおどす
濃き黒き眉を上げ下げしながらに腕をふり上げ目をむく福島
福島は尻をまくりてはね上りとんだり跳ねたり畳に穴あける
どんどんと飛び上りつつ福島は四方の家の床を落せり
福島の雄猛び見んとさと人が弁当たづさへ見物に来る
修行者二十四名に曲津神わが留守の間にかかりてあばれる
一方をおさへるうちに一方がまた飛び上り狂ひまはれり
日に増しに狂態はげしく修行者の親兄弟はわれに迫り来
大切な伜娘を気違ひにさした狸をつけたと責めくる
俺の子を巫子に仕立てた狸つけた告訴をするとうるさく責めかくる
人人の反抗妨害も介意せずあくまで審神者の道とほしけり
正信は好機逸すべからずとし金明会の破壊をくはだつ
位田村田中新之助の家に集ひ吾を追ひ出す密議を凝らす
金明会ほとんど四分五裂して竹村仲蔵春蔵雄猛ぶ
野心家に煽動されて修行者はひそかにわれに反抗をなす
魔法師が狐をつかふと竹村や村上遠近をふれまはしゆく
福島はいの一番に反抗し足立村上二人を頤使せり
信用のある人物に憑依して悪魔は道をさまたぐるなり
幽斎に認識かけば善人もたちまち悪魔の容れものとなる
味のよき果実に虫のつく如く善者は却つて悪魔におそはる
幽斎の修行をするに第一の必要なるは胆力なりけり
邪神等にとりかこまれて吾はただ開祖の道を守りゐたりき
一人になるともわれは恐れじと百のさまたげひたくぐりたり
自然の道
天帝は霊力体の三元をもちて一切万有をつくれり
霊体の力徳によりつくりたる万物に善悪美醜あるなり
善となり悪となるのも力徳の配合度合によるものと知れ
美とうまれ醜とうまるも天帝のみな力徳の按配なりけり
至善至美の神のつくりし天地も善悪美醜はまぬがれざるなり
天帝は全智全能力もちて真善美なるものをつくらす
美なるもの善なるもののみ造らんと思ほす神も力徳によらす
もろもろの宗教倫理道徳説にわざはひされし頭脳にわからず
天帝の力にたいして哲学者宗教家等も古来迷へり
厭離穢土と此世を蔑しむ教あり天国浄土と楽しむ道あり
大本は地上天国建設の基礎と金明会を開けり
人生の真目的は地の上に無窮の天国建つるにありけり
天帝が宇宙創造の大真理真解したる賢哲なき御代
真神は万物普遍の霊にして人は天地の経綸者なる
天地を経綸すべき人間も善悪美醜の区別はのがれず
経綸の妨害のみする人間はみな悪神のうつはなりけり
天地の神のみわざに奉仕して善事をなすは人の本分
地の上のあらゆる曲を駆逐して真善美なる世を開かばや
自己愛のこころを捨てて大愛の神にならひて善事を尽さん
有りとある世界は万世一系の君の政事に従ふべきもの
人間の作りし教をかへりみず天地自然の道行く吾なり
五倫五常の道は人間特有の生れしままの慣習なりけり
人間は各自特異の職業につとめはげみて国富ますべき
○余白に
霧こむる深山の裾に得意気に狐狸の朝夕ほゆるも
皇神は四十余年のその昔今の世のさま示したまへり