信仰に酔つ払ひたる偽信者の社会奉仕の脱線ぶりかな
竹村は社会奉仕と云ひながら道路の草をひきてまはれり
片足に草履をうがち片足に下駄をうがちて孝子ぶる彼
ぼろぼろの着物をわざと身にまとひ誠の教と行人に誇る
乱れたる三千世界のたてかへの手本といひつつ道の草ひく
これ程の誠を綾部の町人は知らずにゐるかと呶鳴るをかしさ
町びとは発狂人と笑ひつつ口きく者もあらざりにけり
よくもまあこれ程曇りた世の中と一人よがりの竹村をかしき
この方は三千世界の鏡よと云ひつつ麦生の畑に屁をひる
屁のにほひ麦にかがせば収穫が多しと誇る彼の奇行よ
収穫と臭覚の語を間違へて無学の彼はあざむかれ居り
何鹿の山野に新緑萌えにつつ陽はほのぼのと風かをるなり
岩戸神社岩戸開きのわざ終へて手力男よとほこる竹村
今日からは手力男の神竹村が岩戸開きの御用とほこる
御開祖のつぎの一間に机おきて手力男の神筆先を写す
竹村のゆるし無くして神様へ参拝させぬと妙なこといふ
竹村のその狂態にあきれ果て役員たちは相談会を開く
相談の結果竹村に注意すれば筆先よみてごまかすのみなり
竹村の狂態日に日につのりつつ初夏の五月は過ぎ去りにけり
世がかはる三千世界が潰れると大声張り上げ怒鳴る曲神
吾こそは誠の神徳備はれりと一人善がりの竹村の狂態
竹村を信じきり居し迷信家もそろそろ眠り覚まし初めたり
山に野に働く時は近みつつ吾は曲津に妨げられゐし
手も足も出し様なければ寸閑に神の御教の研究をなせり
吾一人静に離家に立籠り古事記日本紀に眼をさらしけり
古の神典を読みて御開祖の教の尊きこと悟りけり
何事も神の経綸とあきらめて吾は静に古典をひもとく