霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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昭和七年(六百二十一首)

インフォメーション
題名:昭和七年(六百二十一首) 著者:出口王仁三郎
ページ:334 目次メモ:
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :B121807c07
暁鶏声
東方のひかり讃へて新年(にひどし)の朝いさましく鶏鳴きわたる
鵲のこゑもいさまし新年のあかつきうたふ鶏の音もよし
野の村の萱葺屋根の軒もれて勇ましきかな鶏のこゑ
新春
味方富士かげを落せる新年の小雲の川は波しづかなり
白梅
張り替へし障子明るき室に居て梅咲く春を待つは楽しき
日ならべて暖かなれば冬ながら薮の垣根の梅は笑へり
白梅の匂へるもとに佇めば吹くとしもなき風のつめたき
曼珠沙華の葉はあをあをと田の畔に冬知らぬがにもえいでてをり
うす濁る金竜池の底ふかく揺れてゐるかも冬の夜の月
三千万民衆
さんざんに新聞で攻撃した男から謹賀新年の葉書が来た
満蒙の天地に翻へる愛善旗に三千萬民衆の魂がをどる
俺の空想はいつも実現するのだ、朗かな朗かな朝の太陽
鏡に向ひながら悩みのない自分の顔をほほ笑んでゐる
日に日に新しい感情の湧いて来る自分に進展主義が呼びかけてゐる
春雨
紫陽花の梢は芽ぐめど庭の面にまだうそ寒き春の雨ふる
わが庭の濠の面うすら濁りたり昨日も今日も降る春雨に
降りしきる雨の中にも春といふ心いだきて長閑なりけり
春の夜はしづかに更けてひそやかに寝耳にひびく川のせせらぎ
春の夜
小夜ふけてあたり静けき初春を鉄瓶の湯のたぎる音きく
春の夜のおぼろの月の縁にゐて筧の水の音きくしづけさ
拍子木の音おひおひと近よりてわが軒のベに人声きこゆる
浅春雑吟
涅槃会(ねはんゑ)は早や過ぎぬれどこの春は吹く風寒く霰降るなり
筍のかをりゆかしき夕餉なり窓にちり入る梅のはなびら
白梅も紅梅もみな散りはてて庭に一本さくらにほへる
庭のべの桜の花のひとつひとつ露を宿して月かがやけり
東山のふくれ上りし松の間にほのかに咲ける桜いくもと
そよろそよろ庭のおもてに風ありてセキセイインコの篭さゆれをり
庭木木は春まつらしも木蓮の花のつぼみはふくらみにけり
南桑の春野は清く晴れにつつ牛松山の尾根はかすめり
薮あとに伐りのこされし細長き椿も春は花を持ちたり
光秀の昔かよひし大枝坂をとほくながむる高台のうへ
惜しけれど作事の邪魔と白桃の花の下枝を伐りとりにけり
わが住居建つる敷地と薮あとの荒地をならす春の楽しさ
日並べて日和つづけば高熊の小琴の瀧のほそりたるかも
雨はれの山の渓間のひとところ霧たちのぼりあをくも見ゆる
早春風景
立候補者の顔はどれもこれも蛙に似てゐる早春の風景
咲きそめた庭の白梅べに椿の花、清楚な感じにひたる早春
庭の杉苔に露が上つて一つ一つ月が輝く宵のすがしさ
暁の雲に押し上げられて山の端に上る太陽、何といふ朗かさだ
生活の保証、これだけで朗かになる人間の天地だ
何でもない事を声高に叱り飛ばした女に、今は悔いてゐる
出雲行
波寄する稲佐の浜にわれ立ちて神代の神のいさをを思ふ
出雲平野に雨がけぶつて早春の宍道湖はうすにごつてゐる
赤山の対岳亭から見てゐる大橋川の支流の白い光りを
松江大橋に立ってみる、冬の嫁ケ島は何だか淋しい木枯
雨後の水蒸気がもえあがつて空にかくれた伯耆大山
早春の光りが大山の雪にぶつかつて朗かな日吉津別院
なぐり書きの色紙一枚にほほ笑んでゐる信者の顔が愛らしい
赤土の匂ひ
赤土の山を伐り拓いてつけた道、にちやにちや降る雨はなやましい
電車から下りる雨あと道、泥をなめた袴の裾がさびしい
ぬかるみをよけて歩いてゐる自分の袴に泥ぶつかけてゆく自動車
新開の自動車道に雨が降つて、靴にねばりつく粘土の悲しさ
新開の山道をのぼりながら、粘土のにほひがしたしい(早春)
山裾の赤土を削つて新道を拓いたあとに残る断層の匂ひ!
(やぶ)あとを崩す土の香を満喫してトロを押してゐる若者逹(赤山別院にて)
朝の挨拶
香水の匂ひがぷんと来る朝の挨拶、頭をさげた少女の髪の光
人の言葉に顔をあからめる純情な乙女をにくめようか
闇夜に池の底が光るといふ、自分のひつそりとした気持(赤山別院にて)
城ノ崎
何もかもうら枯れた湯の町の、もうそこに春が来てゐる
歌の選に倦いた夕べ、欠伸を握つて空につき上げてゐる
箱風呂にゆつたりと浸つて歌の国の出雲を想つてゐる
湯上りの爪を切つてくれる女のやはらかい頬をそつと見てゐる
水上飛行機に搭乗をすすめられてやや軽い不安を感じてゐる
早咲きの白梅がすぼむ様な気がして山に落ちた夕日かげ
逝く春
啼きほけし薮鴬を聞きながら濠の桜の散りゆくを見し
わが植ゑし小松は草にうづまりてわづかに緑をふき出でにけり
庭の面にさへづりあへる雀子のこゑ長閑なる高殿の朝
春植ゑし植木大方若芽ふきてなじみそめたり土のしめりに
木蓮のはなしろじろと水底にうつるもすがし庭の溜池
もえいでし楓の若葉あかあかと庭のおもてに春をにほへり
入梅にまだ間はあれど何となく青葉にふれる雨の小暗き
何時の間に春深みけむ菜の畑の菜種の青葉薹たちてをり
早咲きのつつじはもえて春ながらまだ襟さむき風ふけりけり
石斛(せきこく)は花持ちにけり月宮殿の岩のさけめに根をかためつつ
初夏
四尾山若葉のかげにひそみつつ山時鳥なきわたるなり
若萌えの椎の梢に何鳥かきたりて朝をさへづりてをり
つる山の椎のしげ葉の下かげに青あをしかも杉苔のいろ
山下の掬水荘にやすらへばひよどり鳴けり笛の音のごと
山畑の梅のみのりも近からむ畑にまきたる紫蘇はのびたり
新緑のかをる五月の風はらみ高く泳げる大鯉の幟
苗代の苗は漸くのびたちて水のおもてをのぞきそめたり
雨の庭を蕗の葉かげにひそみつつ鶏の雛ちちと鳴きをり
夜嵐に吹きたたかれて新緑の一枝は庭にちぎれ落ちをり
夕ちかみ四尾の山の頂にすれすれひかる一つ星のかげ
綾の聖地に煙突がなければと思ふ五月晴の朝
五月雨
よべの雨に打叩かれて散りにけむ庭のおもての藤の花びら
垣の外の葱のぼんぼりふくらみて五月の雨は降り出でにけり
ひとつひとつ松の針葉に露おきて真画の雨は霽れ上りけり
雨の窓あけて眺むる隣家のあかきつつじは目にしみるなり
緋カンナの花をめぐしと見る庭に小雨ふり来て夕ベとなれり
苗代に集ふ蛙のこゑやみて初夏の雨ははれあがりたり
よべかけて降る夏雨に藤波の花はかなしくくづれたるかな
展望台
花明山(かめやま)高台の展望、むぎばたけが青ずんで明るい春
苑内の窪田を埋めてひろびろとした朝の感情
白い曇天朝、玻璃戸越しにみる愛宕山はけぶつてゐる
素睛らしい天気だ、新緑の梢にてかてか光る真昼のひかげ
毛虫のやうな栗の花が梢にふるうてゐる、五月の庭
限りない向上心を唆られてゐる、すみきつた青空の下に
湯ケ島静居(一)
忙しき()が身ながらも時を得て今日憧憬の湯の里に来つ
いたづきの身をいやさむと国遠くさかりて吾は湯ケ島に来つ
古びたる家居なれども住み心地われによろしき川沿ひの家
天城嶺の谷間に雪や残るらむ狩野の流れの水は冷たき
天城嶺ゆ吹きおろすらむ狩野川の土手吹く風のいたく冷たき
奥伊豆は風寒ければ桑畑の桑の芽いまだつぶらなりけり
渓川のかたへに石垣めぐらしてわさびをつくる奥伊豆の里
夕焼の雲はつぎつぎひろごりて湯ヶ島の空ほの明りつつ
土産もの何一つなき湯ケ島の温泉の里はこころやすきも
ほのにがき野生の独活に朝夕を親しみにつつ湯の宿にゐる
いたづきを癒さむとして湯にあそぶわれを気づかひ妻は訪ひ来ぬ
山青く川風きよき湯ケ島に吾妹子とゐて河鹿にしたしむ
湯の宿の窓をふさぎてそそりたつ太き榎に若芽もえつつ
玻璃窓にかけたる白きカーテンに松を描きて陽は山に入りぬ
迫り来る夕べの風の冷やかさげんのしようこを煎じて飲むも
朝津陽は釜石山にさしそひてほのあかりけりわが温泉の宿は
かけ渡す筧の水をぬきはなち熱き温泉にさして浸りぬ
いたづける身をよこたへて湯の宿の窓ごしに見る若葉はすがし
伊豆の湯の旅にうれしく見たりけり葉がくれに白き山桜花
どんよりとみ空曇らひ宮の杜になく山鳩の声はおもたき
久方の天より地より黄昏れて釜石山は見えずなりけり
日ならべて降る春雨に小庭べの岩松の葉はいきほひのよき
狩野川の速瀬の水はぬるみつつすいすい上るあゆの子の群
新緑は萌え出でたれど朝夕はまだ風さむき湯ケ島の宿
蕗蕨篭にみたして帰り来る里のをみなは草鞋はきてをり
おちつきて雨の一日を歌詠みぬわれ湯ケ島の温泉の宿に
伊豆の藤波
奥伊豆の藤の花咲く頃はよし天城連山うすみどリして
向つ山谷のひととこむらさきに染めて明るき藤波の花
見の限り温泉の里は若葉していま咲きにほふ藤波の花
中島にわたせる湯屋の板橋の上にこぼるる藤波の花
あやめ
あやめ咲く庭のおもてにしとしとと五月の雨は降り出でにけり
あやめ咲く庭の小池に溌剌と鯉跳ねて居り雨もよひして
橘の花
橘の花におく露しらじらと月にかをりて夜は更けにけり
ただならぬ花のにほひをめでにつつ雨ふる庭にたちばなを見る
庭の面に花橘はにほへども訪ふ人もなし五月雨の降る
橘のはな散る里の君もへばこの初夏のしづごころなき
庭の面にたち出で見れば橘の花のにほひか風かをるなり
橘の花の清しくかをる夜を月冴えにつつ時鳥なく
五月雨るる庭のおもてに橘の花こなごなに散れるさびしさ
傷める島
温泉()の宿のわが徒然を慰むる鴉は無二の友なりにけり
親羽をきられし鴉明けくれを餌を乞ひにつつなきさけぶなり
鴉の仔やうやく人に馴れそめて庭を飛びつつ逃ぐるとはせず
里の子らは集ひ来りて金網の檻の鴉にたはむれてをり
ゆかりなき鴉ながらも人に馴れて餌を乞ふさまの愛らしきかも
新緑のもゆる樹かげ、鴉の仔に餌を与へてゐる清しいまひる
新緑
釜石の山の新緑をうつして朗かな朝のあをぞら
新緑の萌える釜石山がふくれ上つて鮮しく見える五月!
若葉に照る五月の日の光を満喫しながら湯に浸る
屋根の上に岩松が青青としげる、五月の伊豆の山里は清しい
朗かな新緑の山のふくらみだ、五月の湯に魂を養つてゐる
空も山も水も青い五月の朗かな天地
まぶしい天気だ、五月の青葉に太陽がてかてかしみこんでゐる
燃えあがりふくれあがらうとする魂を押へて病床にあるもどかしい五月
朗かな五月の空だ、新しい慾情がわきあがる
富士山を雲間に仰ぎながら朗かな初夏の気もちをいつくしまう
花瓶にさした牡丹の花を朝あけの床に見てゐる、黄いろい蕊!
憂欝な曇天の下に紅躑躅がもえてあたりを朗かにしてゐる
釣り上げた狩野川の鮎!若わかしい初夏が匂つてゐる
生水の味がひえびえと咽喉にしみわたる山の五月馬に乗つて通る村男がある、五月の馬の匂ひはよい
蒲公英の花の茎をくはへながら茶碗の水に泡をふかしてゐる子ら
湯あたりの口熱に、さらりとした茶漬のほしい夕ぐれ
何といふ朗かな感じだ、新緑の庭に月がかがやいて
月光を浴びながら葉桜の庭を歩いてゐる清しい宵
高い高い空からかをる月、新緑の梢を透して
尻尾のとれかけたおたまじやくしに小さい手足が生えて、びしよびしよの雨
しくしくと下腹のいたむ朝を黙黙と畳に坐つてみた
不平の塊が破裂して身体を畳に投げつけてゐる
寒村
どの家にも電燈がともつてゐて、文明に呪はれた寒村!
軒先の街燈が白けてほんのり明るい東の空
何年たつても進歩のあとをみない蒲公英の花だ、山裾の草家の軒
湯ケ島静居(二)
雨はれしあしたの庭に雛鳥のちちとなきつつ餌をあさりをり
家毎に蚕を飼へるこの里は山ひくうして風あたたかし
木蓮の花のつぼみはふくらみて風のぬくとき湯ケ島の里
しろじろとにほへる庭の木蓮の花の真下の神さびし岩
すかんぽのやはらかき茎のびたちて小さき白き花を持ちをり
新緑の梢にちちと鳴きわたる小鳥めぐしも温泉のやどの庭
温泉の宿の夕ベひそけし川の音河鹿の声も聞きなれにつつ
いたづきの身はたどたどし今日も亦青葉に降れる雨ききてをり
単辯の山吹の花咲きてをり川に沿ひたる杉むらのかげ
よべの雨にうたれたりけむ莢となりし菜種の茎は片なびきたり
花の一つなき湯ケ島の初夏はゆふべの空の月のみ恋しき
南縁の窓を開けば月冴えて青葉のかをりほのぼの匂ふ
クローバの花のましろに咲く庭に弁当ひらきて遊ぶ子のあり
薮かげに実れる枇杷の青あをとのぞく夕べを五月雨の降る
さみだれの雲低うして朝夕を風冷えわたる湯ケ島の宿
さみだれの温泉の宿にこもりゐてはつかに咲ける虎耳草に親しむ
日並べてさみだれすれど時鳥いまだ来鳴かず湯ケ島の宿
狩野川のたぎち高だか響かひて雨降る宿の窓べ明るし
南天の花しろじろと咲きてをり青葉のかをる夕暮のには
ここしばし雨降りつづけば藤棚の藤は残らずさやとなりたり
書読めば吾が目にいたみ覚えたり電燈の灯のあまり明るきに
蒙古の月(思出)
愛善の道を蒙古にひろめむと命をかけて進み入りたり
アジア人のアジアにせむと甲子の春たち出でぬ蒙古の空に
ウラル山遠くふみこえ外蒙古の民すくふべく駒にむちうつ
美はしく杏の花のひらきたる初夏の山野をかけめぐりゆく
果てしなき蒙古荒野のあさかぜに旗なびかせて駒を進めし
月清く冴えきる蒙古の広き野に戦ひ死すともくいずと思へり
夕されば四方の山辺に燃え上る野火のあかるき蒙古野の旅
人の世の戦のさまも知らぬがにほほゑみたまふ蒙古野の月
渓間のつつじ
()がために咲ける花かも人の見ぬ渓の深処に匂ふ丹つつじ
山深みつつじ折らむとわが行けば谷のはざまに閑古鳥なく
故郷を思ふ
ゆつたリと雨降る今日を湯に入りて故郷の空を思ひつつゐる
ちちのみの父いまさばと思ふかなこの湯の宿のよきにつけても
垂乳根の母は故郷にこの雨を一人さびしくききますらむか
ははそはの母のたよりはきかねども便りのなきを安しと思へり
鶴山に機や織るらむ吾妹子は青葉の風を窓に入れつつ
鶴山の眺めは清し花明山もわれ捨てがたくかたみに住まむ
子はすでに母となりたり更生のわれ童心に甦りつつ
神苑の新築工事如何なりしと遠く思ひぬ湯の宿にゐて
しつぽりと温かい湯にひたりながら遠い故郷の妻を思つてゐる
教子の死を悼む
教へ子は世をまかりしと知らせありしこの夕暮をさみだれの降る
うつしよにあひ見む術はなけれどもたましひ通へわが夢枕に
ウエストミンスター
一本のウエストミンスターに室内の空気がぷんぷん匂ふ朝
枇杷の香がぷんとかをる朝、ひらく小包に友情を感じてゐる
田舎から送つて来た草餅のかをりに更生の春を感じてゐる
更生第二年の白童子に信者から贈つてくるセルロイド玩具の鴬がよく囀る
次から次へ話のきれない私です、朝から晩まで訪問客にかこまれて
天気予報のやうな男が、今日も亦うまい話をしてゆく
便利の悪い湯ケ島の温泉に遊んで新聞の遅いのに困つてゐる
自分の童心をそそつて一途に川に飛び込ませる炎天!
篭のセキセイインコが独り居の自分をそそつて夜の街を歩かせる
カフエーの女だらう、湯上りの金盥を持つた儘そつと横路にそれた
湯ケ島のトロトロ坂の散歩に軽い疲れを感じる夕ぐれ
傾く日に電柱のやうな細長い自分のかげが横たはる原つぱ
湯ケ島静居(三)
露おける芝生の上をふみてゆく素足の朝の心地よきかな
草枕旅の温泉の雨の日をこころおきなく湯にひたりゐる
月一つなきこの頃の湯ケ島の夜を河鹿になぐさまれつつ
釜石の山のなぞへのひとところ篁ありて陽かげさゆるる
河鹿のこゑ川の瀬音にまじりつつ今日もくれたり湯ケ島の宿
あれあれといふまもあらず里の子は素裸となりて淵にとびこむ
瀬音高み樵の斧の音かそかにも聞え来るなり釜石の山
向つ岸に渡せる筧の黒ぐろと半ば朽ちたるが湯をはきてをり
今日もまた魚釣る人のかげ見えつ狩野の石むら真陽にてらへり
紫陽花の花はまばらに咲きそめて庭のおもてに雨そぼつなり
塀越しにあかあか見ゆる幾株の夾竹桃に日は暮れのこる
泥深き沼田に板子なみ渡しあやふげに苗植うる乙女子
朝風に紫陽花の花かをりつつ温泉の里の梅雨はれにけリ
セメントをもちて固めし川岸に青苔むして梅雨は晴れたり
稲草はまだ若けれど朝夕に野辺吹く風はほの匂ふなり
去年焼きし山の斜面の蕨原わらびはたけてほととぎす啼く
故郷の夢はさめけり吾が居間の玻璃戸叩きてゆく夜嵐に
天城連山
梅雨ばれの天城(あまぎ)の嶺はひとところ山ひだ見せて雲のかかれる
天城嶺の樹海しづかに靄こめてむしあつきかも今日の梅雨ばれ
天城嶺の樹海をわたる山風に乗りて来にけむ湯ケ島の雨
天城嶺に雲ありながら狩野川のたぎちしぶきに月かがよへり
たたなはる天城連山雨はれていよよ明るきさみどりのいろ
天城嶺は今や躑躅の真盛りと聞きつつ訪はず湯の宿にゐて
箱根に遊ぶ
箱根山なぞへの麦生あかあかと熟れつつ空に雲雀啼くなり
右ひだり鴬の声聞きにつつ夏の箱根を下るすがしさ
マガレツトの花さびしげに咲いてをり箱根の町の藁屋の軒に
箱根山権現堂の石段はむかしさびたり苔むしにつつ
青葉もゆる箱根の宿にやすらひつつ心静かに雨の音聞く
新緑のもゆる箱根の宿にゐて早川上の瀬鳴り聞きをり
山の雨にもろく崩るる親躑躅の庭面淋しくたそがれにけり
今日もまた雨しとしとと小止みなき箱根の宿に黄昏を待つ
山道にバスを馳せつつ谷底に幾すぢかかる瀧を愛でゆく
三千尺の箱根の尾根に立ちながらみ空のくもに眺めえぬ富士
芦の湖
箱根山わが越え来れば芦の湖は富士を浮べてすみきらひたり
夕つ陽のかげにやあらむ芦の湖のわが目のはてはほの明りつつ
芦の湖の主と称ふる九頭竜の朱塗の宮に陽は暮れ残る
青葉かをる芦の湖の湖畔の宿にゐそ真昼清しくうぐひすをきく
くちなしの花
くちなしの花しろじろとにほひたる庭にしたてば朝風すずし
山梔の花の匂へる朝庭に露を照らして陽はのぼりたり
くちなしの花しろじろとかをりつつ夕ベの庭に暮れ残るなり
梅雨空
降つただけの雨がかたまつて落下する浄連の瀧の物凄い梅雨
間断なき瀬鳴りの音に浸つて梅雨の日をすごす温泉の宿
入梅の空はよごれたエプロン、雲の奥から月がボンヤリ覗いてゐる
増水に狩野川辺の温泉が熱度と噴出量を高めた雨後
雨後の石ころに朝陽がさして、握り飯のやうに湯気がたつてゐる
ひろげた傘で一ぱいになつてゐる、雨霽れの温泉宿の庭
鴉のつばさがやたらに美しい、つゆばれの松の梢
温泉()の宿のつれづれにキングを読んで慰めてくれる彼女
純潔な彼女が自分の手を洗つてくれた、白いハンカチーフ
純潔な乙女の心を思ひながら天城嶺の山躑躅を佇んで見る
やはらかな肩と肩ふれながらでこぼこ道を自動車で走つてゐる楽しさだ
うちとけたやうでうちとけられぬ微妙なものをもつてゐる二人
冷笑で迎へた彼女の胸に嫌忌の二字がきざまれてゐる
二人ひそひそと行く月夜の庭、小松のかげが人間に見えて来る
林檎の皮をむきながらそつとその君の横顔をのぞいてみるはかなさ
ひきとめられながら拗ねて二足三足歩いてみる彼女の前
何でもない様にいつてのけた後で自分の軽率さを悔いている
湯ケ島静居(四)
朝まだき八ツ手広葉に雨ありてかそけき音を聞くわが窓辺
雨のあし釜石山にかかりたり庭の百木に枝蛙なく
夏草のしげれる土手を歩みつつ真葛の蔓に足からまれぬ
濃緑の釜石山の中腹にしろじろ咲けりしばぐりの花
天青く地また青きこの夏を旅にありつつ思ふことなし
釜石の山の尾上に白けたる月ほのみつつ朝の湯に入る
山雀の声はすがしく朝庭にきこえて夏の雨あがりたり
瀧津瀬の音にまぎれず杣人の杉伐る斧のおと冴ゆる朝
温泉の筧をもるる湯のしづく掌にうけて遊ぶ子ろあり
ひとむらの竹を残して釜石の杉生残らず伐りとられけり
湯殿山背に陽は落ちてくろぐろとわが窓のべにかげ襲ひ来も
湯殿山尾上を渡る白雲は雨をさそひてたそがれにけり
向日葵の花ことごとく傾けりあかつき雨のつゆをおもたみ
岩をかむ早瀬のしぶきしろじろとかがやきにつつ雨あがりたリ
トラツクに杉の丸太を満載し沼津に運べりこの温泉の里より
雨はれの伊豆街道をどよもして鉱石はこぶトラツクはゆく
地の上に緑樹のかげを描きつつ空すみわたる夏の夜の月
さみどりの庭に一本あかあかと百日紅の花はにほへり
いたづきて温泉にあるわれを知りながら歌送れとは心なきかな
もくもくと湧き立つ渓間の白雲を見つつ思へりわがなさむこと
夏ながらこの湯ケ島は珍らしも夕さり来れば蟋蟀の鳴く
遊ぶてふ事は苦しきものなりとつくづく思ふ温泉の宿に
帰らむ日いよよ近づき湯ケ島の空はまさをに晴れわたりけり
土産物売る家もなし湯ケ島の温泉の里はむかしめきたる
著書と生命
血と汗と涙で綴つた自分の著書がいつまで生命を保つだらうか
空が澄みきつて芝生が青い、行きつまつた農村経済に心がいたむ
何といふ冷淡さだ、診察料の高い院長の検脈
形式的な好意を形式的に感謝してゐる冷やかな眼のいろ
躍動する感動
楽天主義の俺の周辺はいつも百花爛漫の春だ
さきへさきへ進まうとする自分、過去の悲痛な夢をくり返したくない
澄みきつた大空の色に自分の魂が躍動する朝
自分の感情が際限もなくのび拡がつてゆく青くもの空
天と地とに抱かれてゐる自分だ、人生を嘆かふやうもない
成功疑ひなしといふ確信がいつも自分の心に鞭をうつのだ
日日に新らしくなつてゆく自分を、地上の春が呼びかけてくる
自分の誇大妄想狂を抹殺する洋洋たる太平洋の浪
たんたんたる大道を行く心地、自分の提唱する愛善運動
何ものにも押しきつてゆく強い力を私に持たせたもの
空想の山から川へそして海へ、たうとう六十年を夢とくれた私
経綸のない政治家の常套語はいつも白紙主義だ
フアツシヨのあとから矢継早に海を渡つてくるヒツトラの感情(ヒツトラー)
チヤツプリンの来朝を救世主の降臨のごと騒ぐ日本人の軽率さに呆れる
大志抱懐
故郷に帰るべき日が近づいて俄に親しくなつた温泉の宿
浴客の浴衣をあふつ風からぷんと来る香水の匂ひ
そよ風にも倒れようとするいま植ゑたての田の稲葉
大いに働かうと思ふ心が自分を駆つて温泉に遊ばせるのだ
青い菜漬
青い菜漬の匂ひに若い日の田園生活がよみがへる夕餉
青っぽい蚕豆の莢を見てもなやましかつた故郷の若き日だ
半生をはぐくまれた故郷の空に魂が飛んでゆく折をり
若葉の梢に小鳥が居て朗かに唄ふ山の七月
浜松に行く
自動車の灯りは見えつ隠れつつ山のカーブを下り来るかも
みぎひだり蛙の声に送られて五月雨の野をわが汽車は行く
自動車をはせ行く道のみぎひだり田は植ゑられて雨そぼつなり
浜松の町めづらしと吾妹子は友をいざなひ朝をいでゆく
玉の川
大空に月はなけれど玉の川の夜はほの明したぎつしぶきに
あれといふ間もあらなくに揚花火玉の川原の空に消えたり
夏の渓間
谷あひの小路をたどれば虎杖草のたけたるが先ふさぎて立てり
断崖をしたたる水の細りつつ草のいきれの暑き真昼間
河底にあをあを伸びしみづ草の水にならひてそよげるが見ゆ
新しき天地
天から地から平和と幸福の福音がきこえる、天恩郷の日日
教会の神を認めよとはいはぬ、大自然の力をさとらせたい
束縛のない生活にも一つのつつしみを感じてゐる
自然の意志にさからはぬと云ふ心が自分を豊かに朗かにしてくれる
私の着古しを縫ひかへして喜んで着てゐる伜がいとしくなる
慈父厳母主義の家庭にいつも春が漂うてゐる
土用
土用日ざかりの空気を動揺させて、なり渡る製材所のサイレン
高速度輪転機の前に立つて目まぐるしい世の変転を感じてゐる
大樹の梢から生捕つた梟のあけつ放しな瞳孔
古き感覚
宗教家の自分をみて人間味たつぷりと評する人がある、宗教の真味を知らないのだらう
常識よばはりする奴に常識のある奴のない淋しい世相だ
明日のない政治にさびしみを感ずる秋のタベの虫の声
蚊帳(かや)のはてまだ来らねど虫の音に秋のこころをそそらるるかな
新らしき家をつくると農園の牛蒡の畠をきりひらきたり
古井戸のかたへにしげる無花果の熟れる間もなく子ろがむしりぬ
玉泉苑碧瓦の露にさえわたる月のひかりはあをかりにけり
萩の花大方散りてコスモスの蕾やうやくほぐれ初めたり
手折らるるなやみも知らになでしこの笑みかたむけて道の辺に咲く
なよ草の女の子ばかりのまろうどに松茸のめしふるまはむかな
はや菊は蕾をもちて風寒くひよどり一羽庭木に鳴けり
秋雨の祭の神輿しとしとと人出の少なき町をねりゆく
秋の夕
ヴエランダの窓にさし入る夕つ陽をまぶしみにつつ煙草すひをり
夕つ陽のまぶしくにほふヴエランダに茶をすすりつつ友と歌かく
庭の面に清しくなけるこほろぎの声聞きにつつ夕飯をとる
わがこもる部屋の玻璃戸を射照して山に落ちたり秋の夕陽は
建設途上
古城の廃墟を繕ふ石畳にひしひしと思ふ世界改造の経綸
新聞をしきりに吐き出す輪転機の音が生きてゐる感じ
寄宿舎の生活状態を見て満洲新国家がしのばれる
故郷の山河は自分を容れるには余り狭隘な感じだ、百舌が鳴いてゐて
非常時風景
機動演習の機関銃の音がきこえる霧の丹波の秋を
機関銃の音をききながら世界の前途を痛感してゐる
鬚のはえた男が子供のやうにたわいなく模擬飛行機をとばせてゐる神苑
出雲巡行
出雲路や恵曇(ゑとも)の宿の朝しづにかをる鮮魚の味のよろしも
秋ばれの出雲の国の旅まくらいく日重ねてこころ清しき
到るところ丘に常磐木茂りつつ稲田豊けき出雲国原
宍道湖に遊ぶ
宍道湖の鏡にうつる大山(だいせん)のかげさやかなる秋日和なり
雲のかげ宍道の湖をところどころ彩りにつつ秋陽流るる
発動船さざなみわけて進みゆく秋の宍道の湖のしづけさ
鏡なす宍道の湖水に風あれて白波たかく立ちさわぐなり
十神山に登る
十神山(とかみやま)松の木の間のかへで葉は色づきにつつ秋陽はれたり
山あひの赤土ならしつくりたる孟宗の薮に斜に陽はさし
信徒の家に宿りてさまざまのよごと曲事聞く旅路かな
おもふどち道の話に小夜更けて秋の夜長しと思はざりけり
旅中思ふことありて
歌人(うたびと)の心はみやびなるべきをただ利に走り名にはしるかも
世の中をおそれずくいずひたすらに神の大道をわれゆかむかな
よみがへりよみがへりつつ永久にわれは栄えむ神の大道に
天地の神のよさしの神業をわれ仕へつつ歌を楽しむ
歌よまむ暇さへなき吾が身なりあした夕べを神に仕へて
人生は時じく敵と戦ひて生くべきものかあさましの世や
かむながら誠の道をゆく人の世は坦坦とひらけゐるなり
怒るべき時には怒り笑ふべき時に笑ふは誠心なりけり
なりゆきにまかせて時を待つといふ人の心の愚さを思ふ
現世はなべて楽しと思ふかなあした夕ベを神にならひて
及ばざるくり言いひてなげくより天地にひろく強く生きなむ
赤山別院にて
泰山木(たいさんぼく)花はなけれど青き葉のつゆけく照れる秋晴れの庭
庭の面の白萩のはな散りはてて秋陽にはゆるかへでもみぢば
朝ばれの出雲富士ケ峯ほんのりと雲をすかしてあらはれにけり
有明の月の夜頃を庭に立てばかそけき風にもみぢばの散る
別院の赤き瓦に照りわたる秋陽は清しもみぢ映えつつ
苔むせる多毘の大樹の下陰にわが歌碑立つる地を定めたり
羽久羅山尾根にかがやく夕陽かげをわが窓のべに見つつあかるき
夕餉たく里の煙のよこなびき羽久羅の山に日は暮れのこる
朝靄は出雲平野をながれたり別院の庭にひよどり鳴きて
八雲山尾上の松に夕陽落ちて里はもみぢに暮れのこるなり
海潮の里
柿の実は枝もたわわに実りたり秋風澄める海潮の山里
苔むせる庭の千引の岩の上に焼物の布袋笑みておはせり
中の海宍道の湖水目の下に秋陽をうけてかがやきにけり
地恩郷にて
たそがれて地恩の郷にしとしとと雨ふりにつつ風冷えわたる
出雲路や八雲の山の山のぼり終へて帰れば夕ベの雨降る
老松の大空たかくそそりたつ地恩の郷をわれは愛ぐしむ
もも木木はみな苔むして古びたり地恩の郷は昔ながらに
晩秋の出雲の旅もなかばをへて地恩の郷に今日は休らふ
吾郷山の尾の上になびく穂すすきの花しろじろと秋更けにけり
地恩郷にはの老松幹ふとく丈たかくして空をふさげる
須賀の宮
須賀の宮ありし昔をしのばむとますらを率ゐて上る高千場
伯耆大山
久方の空に雲なく大山の尾根一ところまよふしらくも
夕さりて陽はありながら風寒み秋の更けしをおもはしむるも
鳥取に到る
庭の()に柿あかあかと実りつつ日吉津別院の秋は更けたり
庭の()に清しく生ふる磯なれ松丈ひくけれど年さびてをり
城ノ崎に帰りて
虚無僧(こむそう)の竪笛の音さやさやに城ノ崎町の秋をながせり
カラコロと板橋わたる浴客の足駄の響きに秋はこもれり
木の間もる秋陽の光に松山の紅葉色映え風冷えにつつ
夕ぐれを宿の男にかつがれて温泉にかよふ秋はさびしも
秋晴れの夕べの庭に百舌なきて出石平野の風冷ゆるなり
おほかたの陸田は刈られ稲垣の高きがならぶ出石平原
紺青の空にあちこち白雲のまよへる今日は秋あたたかし
山陰の旅ををはりて帰り路の今日のすがしき秋日和かも
水あせし河のほとりにもくもくと牛の仔草をはみて遊べる
愛善郷にて
立雲峡老木の桜もみぢして夕陽にてれる秋はすがしき
地の上のあらむ限りの国国をひき寄せてみむ愛善の郷
国といふ国のことごと八十綱をかけてむすばむわが愛善に
虫の声せせらぎの音こもごもにわが耳洗ふ下町のやど
山に野に秋は来にけり虎臥の城趾のさくらもみぢそめつつ
虎臥の山のすがたの清らかさ立雲峡とむかひあひつつ
山と山重り合ひてもみぢするながめよろしき虎臥の山
竜胆の花のあちこちにほひたる朝来の山道秋はたのしき
船岡山
船岡山の(さくら)紅葉(もみぢ)が夕陽に照つて苔むす戦役記念碑の長い影
車中雑感
右になり左になる月とマラソン競走をしてみた山間の汽車の窓
マツチさへろくにすりえない乙女のおぼこさにうつとりさせられる
神苑の秋
水盤に活けたる長きほすすきは窓吹く風にたふされにけり
水盤のすすきに添へる豆菊もともにたふれぬ窓吹く風に
生垣をたくみにくぐり村の子が庭のおち栗ひろひにげゆく
朝夕は風冷えにつつこほろぎの声ほそりたる晩秋のには
夕時雨はれゆくあとに月冴えて軒のしづくは玉とかがやく
いたづきの身を横たへて庭にちる紅葉し見れば心淋しも
秋深み刈田の庵に月冴えて霜しろじろと小夜更けわたる
山茶花(さざんくわ)の蕾やうやく見えそめていよいよ秋はふかみたるかも
コスモスの花から来るやさしい感情、乙女の純情をおもふ
常陸野の旅
老松の並木街道はせながら秋の常陸のたびをすがしむ
大利根の水はしづかに流れつつ汀の芦に風そよぐなり
稲みのる常陸野行けばそよそよと自動車の窓に風かをるなり
真菰生ふる池のつつみにさやさやと風おとなへり夕ベ淋しも
大利根の堤の下の家にゐて秋の夕ベをしづかに虫きく
庭萩の花二つ三つ散りてゐてつくつくぼうし夕暮をなく
わが居間の床に活けたる女郎花たがすさびにやはや萎れたり
雨降れば今日の一日を下総の宿に絵をかきたそがれにけり
わが行けは村の童ら集りて道のかたへにささやきみてをり
大利根の堤に立ちて下総のひろき平野の風にひたれり
廃川(はいせん)のつつみを駒にまたがりてわれ下総の国に入りたり
草枕旅のつかれをやすやすと蚊帳つりて寝し土浦の宿に
大利根のつつみを行ける里人のかげはかすみてたそがれにけり
虫の音にふけゆく秋の総の野は雨の音さへ静かなりけり
東京に帰らむとせし今日の日を一日のばしぬ秋さめ降れば
電燈のまばゆさ黒き風呂敷をほやにかぶせて秋の夜いねたり
北国の旅
われは今芦別山(あしわけやま)にあこがれて道も遙けき旅に立つなり
能登路
苔むせる老木(おいき)松原ならびたる砂丘にかがよふにぶき冬の陽
昨夜(よべ)かけて寒風吹けば寳達の屋根に積れるうすら白雪
散らぬあり散りたるもありて七尾野の雑木の紅葉秋を惜しめり
日の光さやかなれども風寒み初冬の能登路の旅は淋しき
辻毎に石の地蔵の立ちすくむ能登路はさみし初冬の旅
草まくら旅のやどりをかさねつつ北陸道の冬をたのしむ
天も地ももみぢにはるる初冬のたびはすがしも北陸の山
雨後の犀川(さいかは)を氾濫する濁流のむせびに現代世相を感じてゐる
新聞の切り抜きを逆に張つた女の旅のつかれを気の毒に思つてゐる
越後路
雪積める越の立山空晴れてこの初冬を風すみきらふ
山を越え野こえ川越えわれここに越の立山の雪にしたしむ
立山の雪より清き心もちてわれ天地の神に仕へむ
立山の連峰のこらず雪とぢて越の平野にかぜはあかるき
煙突の煙くろぐろ地にはひて立山おろし夕べを吹くなり
冬の日の日本海は珍らしく晴れて風なく佐渡ケ島けぶる
佐渡ケ島遠くかすみてたそがれの豊の浦曲に浪うちさわぐ
突堤にうちよす波の高しぶきしろく散りつつ暮れのこる海
佐渡ケ島通ふ千鳥のこゑ消えてふり出したる夕暮の雨
越後路のたびの夜汽車の寝台にはからず見たり藤原義江を
陸奥
松の山もみぢの丘の彼方高く雪にかがよふ鳥海のみね
鳥海山遠さりにつつわが汽車は風のつめたき秋田に来つる
くもの間に八甲田山ほんのりとすがたあらはす大舘の駅
十和田湖の近路ありと大舘の駅にしるせり初冬のたび
見の限り陸奥の大野は雨けむり初冬の風は身に迫るなり
厳かに大御祭のはじまりてさやかにひびかふ八雲琴の音(山形別院)
山茶花のはなを活けたる床のべに君とい向ひ歌よむ雨の宿
青森
まつかな林檎が両側の店頭にならんでゐる、青森の朝の街道
どれを見ても林檎のやうな顔してゐる青森市の婦人たち
北国の冬の旅、着替を満腹させた重いトランク
農村不景気の現状を見ながらさびしい北国の旅
北海道
石狩の大野を行けば落葉松のこずゑさびしく雨にふるへり
とど松の林つづきて朝明を吾が汽車はゆく小樽まぢかく
熊笹の茂れる冬野かけりゆく北海道の汽車はさびしも
朝戸出の庭のおもてにおどろきぬ音なく積める雪のふかさに
しろじろと熊笹の葉に霜おきてゆふ風さむし石狩の平野
夕さぶみ玻璃戸すかせば庭の面のトタンの屋根は雪にまがへり
北海の旅の夕べを風さむし雪ふらむ日の近づきにけむ
芦別山
芦別の山のみたまに招かれて蝦夷ケ島根をいゆくわが旅
芦別の山のいかしさすがしさにそへて珍らし峰のしら雪
あこがれの思ひはるけく吾が来つる芦別山は雪雲とざせり
神つ代の神の姿をそのままにけだかく聳ゆる芦別の山
蝦夷ケ島くにのまなかのまほらばにいかしく生ける芦別のやま
ままにならば芦別山を朝夕にうち仰ぎつつ住ままくおもふ
芦別の山のいただき雲晴れて空知の川に夕陽ながるる
芦別の山に名残ををしみつつ帰るベき日は明日に迫れり
時じくを雲のあそべる芦別の山はたかしも神さびにつつ
羊蹄の山はみ雪をかぶりつつ旅ゆく朝のわが目にすがし
暁の鳥の音とほくまた近く聞え来るかも風のまにまに
有明の月山の端にかたむきてあさ風さむく霜にくもれり
芦別の雪の高嶺のまたきかげ仰ぎ見るまに雲はかかれり
雪ちかき空模様なり芦別の山にあつまる雲はうごかず
芦別山いただきの雪むらさきに染めてのぼれり朝津日のかげ
日をおひて冬ふかみゆく蝦夷の島に心せはしみ帰途を思へり
芦別の山の霊気はひさかたの空むらさきに染めてかがよふ
いかしくもまた清しくもそそりたつ国の鎮めの芦別の山
芦別の神山に降れる白雪を居ながらに見る別院のには
芦別のみ山ゆ降り来る白雪はみ代のけがれをはらふ切幣
見るからに生きていませる芦別の山の姿はいかしくやさしき
鉄道地図に眼をはしらせてうんざりとする北海道の旅
青空が灰白色の雲に濁されたとおもふ間もなく降つて来るまばら雪
水仙を活けた宿の床の間に冬の感じがますます深く心落ちつく
鎌先温泉(宮城県)
東北の旅の長きに疲れたる身をやすらふと温泉に来つ
谷川の清き流れを見つつわれおもふことなし山の湯の宿
冬菜売る里の老女のかしましさ朝の道べに客をよびつつ
自炊する客をあてどに野菜売る山の温泉の田舎めきたる
山の温泉の不便を吾はゆかしみてはるばる鎌先温泉に来つ
並山の尾上くまなく晴れにつつ北吹く風のつめたき湯の里
小夜更けて雨戸とざせば渓川の瀬鳴りの音も遠ざかりけり
湯の客の浴室に唄ふおけさ節ききつつ吾は眠りに入りけり
共同湯に若き男女の唄ふ声聞く山里の冬は長閑けし
温泉に通ふ足駄の音のしげくなりて鎌先村のあかつき近めり
温泉の里の灯冴えておけさ節声ほがらかに山にこだます
温泉にゆつたりひたり湯をいぢり幼心にしらずにかへれり
宿の女がつぎ足してゆく木炭のにほひ床しき鎌先の朝
老松の梢は風を孕みつつ鎌先山の冬を叫ベり
静かなる暁の空やほのぼのと薄紫に雲はそまれり
吾が顔を珍らしさうに湯の客の障子細目に開けて見て居り
共同湯に男をみなの唄ふ声せせらぎに和して賑はしきあさ
白銀の光放ちて鎌先の夕ベの空に月はかかれり
天なるや佐佐良桂男昼もなほ澄みきらひつつ風の寒きも
にぶき陽のさせる鎌先温泉の村に日はたけにつつ風あるるなり
不忘山尾上の雪をけぶらせて青空ながら風すさぶなり
溌剌たる英気に充てる昭青の査閲たのしも雪の大野に
雪降らむ気配は見えて夕空のほの明りつつ陽は沈みたり
夕べ吹く風に翼をあふられて烏のむれは飛びなやみつつ
たたなはる山はことごと冬樹して雪にかがよふ夜半の月かげ
散り果てし紅葉林にさらさらと音のさびしく霰ふるなり
千引岩立ち並びたる庭山にところせきまで茂るつつじ木
湯の村は雨にけぶれど風寒み山の尾上は雪ふるらしも
広重(ひろしげ)の絵を見るやうな並木松、白石川が冬をながれてゐる
盛岡から仙台へ急ぐ田圃道、風致のよい松林が点綴する冬
旅の徒然
彼女の本心をときかねてゐるさびしい俺、窓外には吹雪がうなる
右だ、左だ、真中だ、フアツシヨだ、こんなこと言つてる社会の一年はもう暮れてゐる
あはれつぽいじめじめとした歌を書き並べて得意がつてゐる現代歌人だ
東海の旅
冬ばれの志太の丸山の上に立ちてわがみはるかす富士の気高さ
若人の駕篭にかかれて五洲山の尾根の古木の松かげに立つ
東海の旅はたのしも昨日今日富士の高嶺に見まもられつつ
天城山とほくかすみて太平の海見はるかす志太の丸山
冬の野
稲の田は大方刈られ豆の木のあからみたるが畔にたつ見ゆ
高田みな麦蒔き終へしこの冬をひく田の面は薄氷りせり
夕まけて凩吹けばさむざむと刈田の原に月凍るなり
霜柱のたつた朝の小路に草鞋の跡が小判型に残つてゐる
日常の歌
東光苑に朝まだき響く喇叺の音ききつつ庭の雪に見入れり
わが生命もゆる思ひやわかうどの兵式訓練みつつ楽しき
うたたねの夢を破りて青訓のラツパ響けり近き野の村
縁側にわが立ち居れば飛行機は空どよもしてつぎつぎ来る
青空のあなたに消えし飛行機のあとぼんやりとわれ立ちて見つ
輪転機の音いさましき冬の日の真昼楽しく校正をなす
ひねもすを人の訪ひ来る吾が舘は昼餉の時を忘れがちなる
つぎつぎに神苑に植うる若松の末たのもしくわれはおもへり
こはたれし宮居の跡なる清庭の実生えの松は丈にのびたり
ふるびたる居間の襖に絵をかきてよみがへりたる心地せるかも
夕津陽は山におちけむ雨空の雲の一とこほのあかりつつ
大空にさゆる月かげ恋しけれど風のさむきに戸をとざしをり
月ひくう南の空をわたりつつ寝やの障子にかげをうつせり
君が代を千歳の宮に祈らむと雪道わけてわれ詣でたり
(近郷の出雲神社に詣づ一首)
寄非常時
さくくしろ五十鈴の宮の清庭にやまとみたまの栄えを祈る
国際連盟おそるるなかれ日の本は神のつくりて神の守る国
世にたたむ時を待ちつつ天地の神秘の門を入りつ出でつつ
わが命とこよにもがもと思ふかな山川きよきこの日の本に
大日本国の果てまで神軍を備へ足らはし御代につくさむ
飛行機のおとききながら朝床にしづ心なく御国を思ふ
わが思ふことは神国のそらにあり天の鳥船磐樟のふね
選まれて君の御盾と益良夫がいくさの場に勇みたたかふ
千早振る神の御国に仇をなす曲のいくさを言向け和せ
ありたけの心の思ひうちあける友垣ほしといつも思へり
千古の書われ読まむよりは世を思ふ天下の志士を友とせむかな
うつしみ
男子(をのこ)われ君の涙にひたされてこほしさ日日にいやまさりつつ
八百重波へだつる島の君恋ひて寝る夜はさむしこがらしの音
むらきもの心ゆたけき君ゆゑに何時もにこにこ笑ませ給へる
君一人家に残して旅に立つ夕べの虫のこゑはかなしき
あたひなきこの慎しみをいつまでか守り続けむ年さびし吾に
君待ちて恋ふる心はつぎ橋のいやつぎつぎに思ひたえなく
唐衣木曾のかけ橋あやふくもわたりて行かむ君が庵に
思ふことありて酒のむこの宵はひとしほものの淋しさを知る
ひえびえと寒さ身にしむ小夜更けをひとり寝ねつつ人を思へり
大空の星のかがやき仰ぎつつ蒙古の旅にありし日を思ふ
   
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