国家はつねに、磐石不動なる大哲学上の根底ありて、その興隆をいたすものなり。プラトンの理想国が、帝王をもって大哲学者たるを要すと説けるゆえんは、じつにここにあり。
大哲学の根底は大倫理の母にして、大宗教の素因たり。大哲学、大倫理、大宗教が、相一致して系統あり、組織ある精華を発揮する国家、これを理想の国家というなり。ゆえに大哲学、大倫理、大宗教の確立なき国家は、いかに隆昌膨大をいたすといえども、その国家の運命の脆弱なることガラスよりも危し。
大哲学、大倫理、大宗教の確立は、国民をして大元気あらしめ、大奮励あらしめ、真摯にして至誠、忠実にして勇奮、死を賭し国家につくしてかえりみるところなし。国家、ために日に月に隆乎として悠久なるのみ。
(「神の国」大正14年5月)