第一次・第二次大本事件の原因および経過とその結末については、上巻および本巻に既述したが、大本事件は、周知のように宗教弾圧としては、日本歴史上まれにみる苛酷なものであった。そこにあらわされた権力の本質と、その嵐のなかに発揮された信仰のかがやきは、日本近代史上に注目すべき事件の内容をかたちづくっている。第一次・第二次の事件が、大本教団にとって重要な教訓と意義をもつものであることはいうまでもない。だが問題はひとり教団にとって貴重な体験であったばかりでなく、日本ファシズムの実態を解明する有力な鍵がそこに内包されている。そこでもう一度事件の経過をふりかえり、その性格と意義の一斑にふれておくことにしよう。