○こきうすき色は変れど紅葉の、聞えも高き高尾山、峰の木の間に照妙の、綾と錦を織り成して、世人の為に歌はれし、其装ひも夢の間に、寒き木枯し吹き荒び、元の姿もあらし山、嵐の跡の淋しさは、この世の遷り変り行く、神の誠の黙示なり。省み覚れ浮世人、世の行末も眼のあたり、花咲く春の来る迄、神の恵みに冬小森、心を尽し身を尽し、常磐の春の長閑なる、御代松こころ持てよ世の人。
○えらまれし人のみ住める神の世は、戦ひも無く暗みも無く、苦しみ迷ふ人も無く、饑え凍えたる人も無き、天明けく地豊に、見る人毎に神心、曲津の潜む蔭も無し。齢も長く病無く、眼涼しく顔清く、現世幽界隔て無く、澄み渡りたる世の中に、残る身魂の楽しけれ。
○てる妙の綾部の里の鬼村は、人が倒けよが斃れようが、我れさえ良けりや宵の口、酒呑童子のさかさまに、神の教も聞かばこそ、弱いと見れば人呑みに、因縁付けて酒買はし、貧しき家をば呑み潰す、鬼と大蛇の極悪の、本宮村ぞ憐れなり。
○あらたうと神の御教の深くして、斗り知られぬ味ひは、この世開けし初めより、今に至りて変り無く、千々に心を砕きつつ、青人草を愛くしみ、陰に陽に守らいて、罪に穢れし空蝉の、からの身魂を救ひ上げ、神代乍らの霊主肉従の、神の御国を立よこの、二柱神が現はれて、二度目の天の岩戸をば、開く日本の梅の花、四方に薫りて鶯の、谷の戸開けて初春の、鳴く音に優るあはれさを、只白雪の世の人の、解けぬ霊魂を目のあたり眺めて忍び玉の井の、底ひも知らぬ皇神の、深き御心汲み取りて、清まり澄むを松の代の、楽しき時ぞ待ち玉ふ、いづの御魂の畏こけれ。
○さか孔子も悟り得ざりし真理を、覚す高天の大本に、参来集ひて類無き、神の御教を聞人の、身の幸こそは芽出度けれ。曲津の猛き世の中に、心平らに安らかに、勇みて暮す信徒の、心の奥は真寸鏡、光り輝き天地に、貫き徹す赤心の、苔の花の開く世は、千年の松の末長く、朽ぬ宝は万代に、生き死生れ死に生れ、限り無き身も魂線も、栄え栄えて皇神の、恩頼を蒙りて、誠の栄えと歓は、月日と共に続くなり。
○きみの為御国の為に身を忘れ、家をも捨て尽す身は、俸給も位階も何も無く、世人の足に踏れつつ、臣たる道に勤みて、心の限り身の限り、筑紫の端も東路も、南も北も厭ひ無く、神の教を敷島の、底津岩根に搗固め、上津岩根に突凝し、千代万世の礎を、科戸の風の福知山、一宮神社の氏の子の、桐村氏の珍の娘と、生れ給ひし我開祖、綾部神宮の坪の内、神の出口の家に嫁り、世の艮に隠身し、国常立の大神に、久しき間撓み無く、仕え給ひし勲功の、花咲き実る御代と成り、世人の為に竭さるる、教御祖ぞ畏こけれ。
○ゆみ張の月の光はやましろの、鞍馬の山に輝やけど、教御祖の御心は、乱れたる世を治めんと、千々の思に村肝の、心の空も懸曇り、木の間の星の遠近と、深山の奥に杖を曳き、岩窟の中に差籠り、斯世を乱す鼻高を、言向和し治めんと、柴の褥に雲の笠、石の枕も厭ひ無く、四人の伴を引連て、善言美詞の神嘉言、心を籠て宣給ふ、其勲功に八衢の、醜の曲霊も服従いて、十五の月の有明に、鞍馬の山を立出て、綾の高天へ復命、申し奉りし大僧正、数多の下神引き連て、本宮山に鎮りつ、神の御国に尽さむと、誓いを立し高神の、言葉を栞に帰り坐し、百と十日の其間、一間を閉ぢて入り給ひ、世の神々に神言を、宣らせ給ひし畏こさよ。
○めしま男島の荒海原を、神の御言を畏こみて、明治は三十三年の、六月八日の未明、上田海潮出口寿美、四方平蔵木下の、慶太郎四人を引連て、雨風強く浪猛き、底さえ知れぬ海原を、小さき舟に身を任せ、勇み進んで出給ふ、教御祖の雄々しさに、波路半ばを渡る頃、海の御神も驚きて、御空を晴し風を和ぎ、波を静めて心安く、送り給ひし尊とさよ。神代の遠き昔より、竜宮島と聞えたる、大海原の無人島、波打寄る磯の辺に、小舟を繋ぎ静々と、上り給へば百鳥の、声を限りに鳴叶び、迎え奉りし時も在れ、若狭の海の波の上に、漂ひ上る天津日の、御蔭も最と麗かに、日の出の神の御姿を、天地四方に光しつつ、神の出口の出修を、諾ひ給ふ心地して、神の御告の業も了え、翌る十日の夕暮に、月を頭に星を踏み、世継王の山の麓なる、大本指して帰り坐す、出口の御祖の勇ましさ。
○みづ清き金竜海の島々は、日出る国の雛形と、祝ひ定めて築きたり。日出る国の日の本は、全く世界の雛形ぞ。神倭磐余の君が大和なる、火々真の岡に登り坐、蜻蛉の臀甞せる国と、詔せ給ふも理や。我九州は亜弗利加に、北海道は北米に。台湾島は南米に四国の島は濠州に、我本州は広くして、欧亜大陸其儘の、地形を止むるも千早振、神代の古き昔より、深き神誓の在すなり。豊葦原の中津国、秋津根別の神国は、世界を統ぶる天職を、神代乍らに具えたる、珍の御国ぞ美し国、国の真秀良場畳並る、青垣山に囲まれし、綾の錦の本宮に、斯世を統ぶる皇神の、御稜威も高く四方の国、輝き渡る兄の花の、咲耶この時言霊の、照るや斯時畏こくも、皇大神の御教を、顕はし奉れ大本の、下津岩根に集まれる、心優しき神の御子。
○しき島の大和島根の礎と、神の撰みし益良夫の、清き身魂と駿河なる、不二の御山に宮柱、太知立て鎮りし木花咲哉姫神の、御言の随に丹波路に、天駆り来し芙蓉坊、瑞の御魂の神代を、明治は三十一年の、雪まだ残る如月の、十日の夜半に奥深き、高熊山に連れ行て、神の御詔を宣べ伝へ、神の柱と経緯の、錦の機を織らさむと、心づくしの兄の神の、教の甲斐や有明の、月を合図に穴太なる、宮の傍の宮垣内、賤が伏屋に帰り行く、神の経綸の奇びなれ。
○ゑらまれし神の柱の甲斐も無し、早二十年を過ぬれど、神の依しの神業の、万の中の一つさえ、為し遂げ得ざる苦しさに、千々に砕くる村肝の、心の空は五月暗、袖に涙の晴間なく、御国に尽す赤心を、雲井に告よ時鳥。玉の御声を待乳山、姿隠して泣き渡るなり。
○ひさ方の天津御空に照る月は、昔も今も変らねど、変り果たる現世の、人の心を悲しみて、夜は寝もやらず只一人、加茂の川辺に彷徨つ、月に誓ひを掛巻も、恐き神の御国をば、元の神代に還さんと、乙女心の一筋に、思ひ浮ベて行水の、流れに沈む月影は、波に砕けて果敢なくも、年も十五の朝野子が、御国を思ふ赤心の、行る瀬無きこそ憐れなり。
○もとと末内外の法を過たず、御国の為に身を忘れ、家を忘れて惟神、神の大道を辿りつつ、審神者の道に勤しみて、諸々の霊魂を夫れぞれに、立別け調べ神国の、柱を造る益良雄の、未だ日も浅野王仁の大人、相並ばして葦原の、醜の仇草薙祓ひ、祓ひ清めて国造り、吾大君に奉る、厳の御魂の神勅を、謹み恐み弥遠に、弥広らかに伝え行く、心は清き和知川の、瑞の御魂と現はれて、世人を救ふ神柱の、誉れは世々に流る也。
○せまり来る国の乱れを治めむと、御国を思ふ大丈夫が、活動く時機を松の世の、東の国に冬小森、国の鎮めと木花の、咲耶の姫の弥固き、千代の常磐の岩下に、深き経綸を駿河湾、富士より高き久方の、天津御祖の日の御子の、御稜威を四方に輝かし、神の御徳を刈碁母の、乱れ果たる武蔵野に、布て迷へる百姓を、彼方の岸に渡さむと、一つ心に太元の、教に尽す赤心は、天の児屋根や太玉の、神の御魂の御幸なり。田畑に植えし種物は、大宣津姫の御幸はひ、世人の生命弥長に、守らせ給ふ豊受の、深き恵は伊勢の海、山田の宮の奥深き、神の経綸の一柱、五伴緒の厳御魂、水野御魂の直くして、雲井に上る十六夜の、月も隈無く照り渡り、曙の烏の勇ましく、天津御空に日の神の、輝き渡り日の御子の、鎮り坐す高御座、千代に八千代に限り無く、射照徹らす天の下、四方の国々平らけく、治る御代の豊本の、瑞穂の国ぞ尊とけれ。
○すみきりし国常立の大神の、神勅畏こみ謹しみて、明治の廿五年より、一つ心に仕えたる、教御祖と諸共に、神の御教を王仁が、、幽より顕に懸巻も、恐こき神の造らしし、御国の汚清めんと、二十年余りて言霊の、学びに心砕きつつ、息艮放両火脹与血濁緯濁縦、輪搦与玉濁水火続根凝濁水渦巻、浮水火清水起降文向差別吹凝胞衣発、空水割別和回月始搦回日諸瀬洲、京の都の九重の、花咲く春を松の代に、四十余八文字の生御魂、揃えて四方の国々を、ミロクの御代に進めむと、尽す日本の雄心は、一つに成て金竜の、生島々の神社、中にも別けて大八洲、天の岩戸の頂きに、真木の柱の弥高く、梅田の薫り芳ばしく、小松林の弥繁く、秋の紅葉の錦織り、澄渡りたる十六夜の、月に心を照しつつ、神霊鎮座の大祭典、時も吉田に稔りたる、千五百の秋の八束穂や、山海河野種々の、御饌献り一向に、今日の生日を祝ひつつ、八雲の琴の音も清く、天に座神国つ神、千五百万の神等も、集まり坐して賑敷、御祭り終えし勲功は、世の大本に信従し、清き身魂の撓み無く、道に尽せし報ひぞと、代々に伝へて芳ばしく、咲哉木の花直日嬢、御代の一の大二に、誉も竜の宮の棟、十曜の星のキラキラと、月日に照りて照妙の、綾部に錦飾る世を、松間の長き鶴の首、亀の齢の万世の、固めの基と素盞嗚の須賀の新宮八雲立、出雲八重垣妻ごみに、八重垣造る其八重野垣、瑞穂の国の中国の、天皇の大稜威、四方に轟く八雲琴、其音も清く澄渡り、天地四方に響きけり。
○京浪花東京駿河大和路に、神の柱を配置て、二度目の天の岩屋戸を、開く常磐の松の代の、国常立之皇神は、古き神代の初発より、隠身坐して幽世と、現つの国の身魂をば、最と詳細に取調ベ、天津御祖の大神に、奏し給ひて畏こくも、ミロクの神代に造らむと、思は胸に三千歳の、溢れて茲に神柱、出口開祖の身体に、鎮り坐て万世の、国の固めの神勅を、或は口に或は手は、写して世人導きつ、曲の集える大江山、鬼も大蛇も言向けて、三段に分り霊魂をば、目鼻を附けて安らけき、常磐の御代を待乳山、鳴く郭公血も涸て、叫び給ふぞ尊とけれ。
(「神霊界」大正七年一月号)