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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第1巻(子の巻)
序
基本宣伝歌
発端
第1篇 幽界の探険
第1章 霊山修業
第2章 業の意義
第3章 現界の苦行
第4章 現実的苦行
第5章 霊界の修業
第6章 八衢の光景
第7章 幽庁の審判
第8章 女神の出現
第9章 雑草の原野
第10章 二段目の水獄
第11章 大幣の霊験
第2篇 幽界より神界へ
第12章 顕幽一致
第13章 天使の来迎
第14章 神界旅行(一)
第15章 神界旅行(二)
第16章 神界旅行(三)
第17章 神界旅行(四)
第18章 霊界の情勢
第19章 盲目の神使
第3篇 天地の剖判
第20章 日地月の発生
第21章 大地の修理固成
第22章 国祖御隠退の御因縁
第23章 黄金の大橋
第24章 神世開基と神息統合
第4篇 竜宮占領戦
第25章 武蔵彦一派の悪計
第26章 魔軍の敗戦
第27章 竜宮城の死守
第28章 崑崙山の戦闘
第29章 天津神の神算鬼謀
第30章 黄河畔の戦闘
第31章 九山八海
第32章 三個の宝珠
第33章 エデンの焼尽
第34章 シナイ山の戦闘
第35章 一輪の秘密
第36章 一輪の仕組
第5篇 御玉の争奪
第37章 顕国の御玉
第38章 黄金水の精
第39章 白玉の行衛
第40章 黒玉の行衛
第41章 八尋殿の酒宴(一)
第42章 八尋殿の酒宴(二)
第43章 丹頂の鶴
第44章 緑毛の亀
第45章 黄玉の行衛
第46章 一島の一松
第47章 エデン城塞陥落
第48章 鬼熊の終焉
第49章 バイカル湖の出現
第50章 死海の出現
附記 霊界物語について
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霊界物語
>
霊主体従(第1~12巻)
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第1巻(子の巻)
> 第2篇 幽界より神界へ > 第13章 天使の来迎
<<< 顕幽一致
(B)
(N)
神界旅行(一) >>>
第一三章
天使
(
てんし
)
の
来迎
(
らいがう
)
〔一三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第1巻 霊主体従 子の巻
篇:
第2篇 幽界より神界へ
よみ(新仮名遣い):
ゆうかいよりしんかいへ
章:
第13章 天使の来迎
よみ(新仮名遣い):
てんしのらいごう
通し章番号:
13
口述日:
1921(大正10)年10月18日(旧09月18日)
口述場所:
筆録者:
外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1921(大正10)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
自分はなお進んで水獄の二段目を奥深く極めた。そして三段目を探検しようとしたとき、にわかに天上から喨々と音楽が聞こえてきた。
空を仰ぐと、天使が共を連れて、自分の方に降臨してくるのが見えた。そして、都合により産土の神のお迎えであるから、一時帰るがよい、とお達しがあった。
三四十分、ふわりふわりと上へ上っていくような心地がし、気づくと高熊山の岩窟の前に端座していた。それから約一時間ばかり経つとまた、再び霊界にいた。
すると、産土様である小幡神社の大神様が現れた。そして、霊界が切迫しているため、幽界より先に、神界の探検をする必要があることを告げた。
自分の体が捉まれて運ばれ、おろされたところは綺麗な海辺であり、富士山が近くに大きく見えた。今から思うと、三穂神社に行ったのである。そこで、夫婦の神様に、天然笛と鎮魂の玉を授かった。
と思うせつな、不思議にも自分は小幡神社の前に端座していた。帰宅の念を天使にたしなめられ、神界へ旅立つことになった。天使は、神界と幽界が今、混乱状態であることを告げ、神界へ旅立って高天原に上るように、と告げた。
天の八衢までは天使が送っていくので、そこから鮮やかな花の色をした神人が立っている方へいくように、と教えられた。
神界といえども善悪不二であり、よいことばかりではないこと、現界と霊界は相関しているので、互いに出来事が移ってくること、また神界にいたる道には、神界を占領しようとする悪魔が邪魔をしようとすることを聞いた。
やがて自分ひとり、天然笛と鎮魂の玉を持ち、羽織袴装束で、神界へと旅立ちすることになった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm0113
愛善世界社版:
59頁
八幡書店版:
第1輯 66頁
修補版:
校定版:
59頁
普及版:
31頁
初版:
ページ備考:
001
自分
(
じぶん
)
はなほ
進
(
すす
)
んで
二段目
(
にだんめ
)
を
奥深
(
おくふか
)
く
究
(
きは
)
め、
002
また
三段目
(
さんだんめ
)
をも
探険
(
たんけん
)
せむとした
時
(
とき
)
、
003
にはかに
天上
(
てんじやう
)
から
何
(
なん
)
ともいへぬ
嚠喨
(
りうりやう
)
たる
音楽
(
おんがく
)
が
聞
(
きこ
)
えてきた。
004
そこで
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
いでみると、
005
白衣
(
びやくい
)
盛装
(
せいさう
)
の
天使
(
てんし
)
が
数人
(
すうにん
)
の
御
(
お
)
供
(
とも
)
を
伴
(
つ
)
れて、
006
自分
(
じぶん
)
の
方
(
はう
)
にむかつて
降臨
(
かうりん
)
されつつあるのを
拝
(
をが
)
んだ。
007
さうすると
何十
(
なんじふ
)
里
(
り
)
とも
知
(
し
)
れぬ、
008
はるか
東南
(
とうなん
)
の
方
(
はう
)
に
当
(
あた
)
つて、
009
ほんの
小
(
ちひ
)
さい
富士
(
ふじ
)
の
山頂
(
さんちやう
)
が
見
(
み
)
えてくるやうな
気
(
き
)
がした。
010
自分
(
じぶん
)
のその
時
(
とき
)
の
心持
(
こころもち
)
は、
011
富士山
(
ふじさん
)
が
見
(
み
)
えたのであるから、
012
富士山
(
ふじさん
)
の
芙蓉
(
ふよう
)
仙人
(
せんにん
)
が
来
(
き
)
たものと
思
(
おも
)
つた。
013
しかしてその
前
(
まへ
)
に
降
(
お
)
りてきた
天使
(
てんし
)
を
見
(
み
)
ると、
014
実
(
じつ
)
に
何
(
なん
)
とも
言
(
い
)
へぬ
威厳
(
ゐげん
)
のある、
015
かつ
優
(
やさ
)
しい
白髪
(
はくはつ
)
の、
016
そして
白髯
(
しらひげ
)
を
胸前
(
むなさき
)
まで
垂
(
た
)
れた
神人
(
しんじん
)
であつた。
017
神人
(
しんじん
)
は
自分
(
じぶん
)
に
向
(
むか
)
つて、
018
『
産土
(
うぶすなの
)
神
(
かみ
)
からの
御
(
お
)
迎
(
むか
)
へであるから、
019
一
(
いち
)
時
(
じ
)
帰
(
かへ
)
るがよい』
020
との
仰
(
あふ
)
せであつた。
021
しかし
自分
(
じぶん
)
は
折角
(
せつかく
)
ここまで
来
(
き
)
たのだから、
022
今
(
いま
)
一度
(
いちど
)
詳
(
くは
)
しく
調
(
しら
)
べてみたいと
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひしてみた。
023
けれども
御
(
お
)
許
(
ゆる
)
しがなく、
024
『
都合
(
つがふ
)
によつて
天界
(
てんかい
)
の
修業
(
しうげふ
)
が
急
(
いそ
)
ぐから、
025
一
(
ひと
)
まづ
帰
(
かへ
)
れ』
026
と
言
(
い
)
はるる
其
(
そ
)
の
言葉
(
ことば
)
が
未
(
ま
)
だ
終
(
をは
)
らぬうちに、
027
紫
(
むらさき
)
の
雲
(
くも
)
にわが
全身
(
ぜんしん
)
が
包
(
つつ
)
まれて、
028
ほとんど
三四十
(
さんしじつ
)
分
(
ぷん
)
と
思
(
おも
)
はるる
間
(
あひだ
)
、
029
ふわりふわりと
上
(
うへ
)
に
昇
(
のぼ
)
つてゆくやうな
気
(
き
)
がした。
030
しかしてにはかに
膝
(
ひざ
)
が
痛
(
いた
)
みだし、
031
ブルブルと
身体
(
からだ
)
が
寒
(
さむ
)
さに
慄
(
ふる
)
へてゐるのを
覚
(
おぼ
)
えた。
032
その
時
(
とき
)
には、
033
まだ
精神
(
せいしん
)
が
朦朧
(
もうろう
)
としてゐたから、
034
よくは
判
(
わか
)
らなかつたが、
035
まもなく
自分
(
じぶん
)
は
高熊山
(
たかくまやま
)
の
巌窟
(
がんくつ
)
の
前
(
まへ
)
に
端坐
(
たんざ
)
してゐることに、
036
明瞭
(
はつきり
)
と
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
いた。
037
それから
約
(
やく
)
一
(
いち
)
時間
(
じかん
)
ばかり
正気
(
しやうき
)
になつてをると、
038
今度
(
こんど
)
はだんだん
睡気
(
ねむけ
)
を
催
(
もよほ
)
しきたり、
039
ふたたび
霊界
(
れいかい
)
の
人
(
ひと
)
となつてしまつた。
040
さうすると
其処
(
そこ
)
へ、
041
小幡
(
をばた
)
神社
(
じんじや
)
の
大神
(
おほかみ
)
として
現
(
あら
)
はれた
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
があつた。
042
それは
自分
(
じぶん
)
の
産土
(
うぶすな
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
であつて、
043
『
今日
(
こんにち
)
は
実
(
じつ
)
に
霊界
(
れいかい
)
も
切迫
(
せつぱく
)
し、
044
また
現界
(
げんかい
)
も
切迫
(
せつぱく
)
して
来
(
き
)
てをるから、
045
一
(
ひと
)
まづ
地底
(
ちてい
)
の
幽冥界
(
いうめいかい
)
を
探究
(
たんきう
)
する
必要
(
ひつえう
)
はあるけれども、
046
それよりも
神界
(
しんかい
)
の
探険
(
たんけん
)
を
先
(
さき
)
にせねばならぬ。
047
またそれについては、
048
霊肉
(
れいにく
)
ともに
修業
(
しうげふ
)
を
積
(
つ
)
まねばならぬから、
049
神界
(
しんかい
)
修業
(
しうげふ
)
の
方
(
はう
)
に
向
(
むか
)
へ』
050
と
仰
(
あふ
)
せられた。
051
そこで
自分
(
じぶん
)
は、
052
『
承知
(
しようち
)
しました』
053
と
答
(
こた
)
へて、
054
命
(
めい
)
のまにまに
随
(
したが
)
ふことにした。
055
さうすると
今度
(
こんど
)
は
自分
(
じぶん
)
の
身体
(
しんたい
)
を
誰
(
だれ
)
とも
知
(
し
)
らず、
056
非常
(
ひじやう
)
に
大
(
おほ
)
きな
手
(
て
)
であたかも
鷹
(
たか
)
が
雀
(
すずめ
)
を
引掴
(
ひつつか
)
んだやうに、
057
捉
(
つか
)
まへたものがあつた。
058
やがて
降
(
おろ
)
された
所
(
ところ
)
を
見
(
み
)
ると、
059
ちやうど
三保
(
みほ
)
の
松原
(
まつばら
)
かと
思
(
おも
)
はるるやうな、
060
綺麗
(
きれい
)
な
海辺
(
うみべ
)
に
出
(
で
)
てゐた。
061
ところが
先
(
さき
)
に
二段目
(
にだんめ
)
で
見
(
み
)
た
富士山
(
ふじさん
)
が、
062
もつと
近
(
ちか
)
くに
大
(
おほ
)
きく
見
(
み
)
えだしたので、
063
今
(
いま
)
それを
思
(
おも
)
ふと
三穂
(
みほの
)
神社
(
じんしや
)
だと
思
(
おも
)
はれる
所
(
ところ
)
に、
064
ただ
一人
(
ひとり
)
行
(
い
)
つたのである。
065
すると
其処
(
そこ
)
に
二人
(
ふたり
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
現
(
あら
)
はれて、
066
天然笛
(
てんねんぶえ
)
と
鎮魂
(
ちんこん
)
の
玉
(
たま
)
とを
授
(
さづ
)
けて
下
(
くだ
)
さつたので、
067
それを
有難
(
ありがた
)
く
頂戴
(
ちやうだい
)
して
懐
(
ふところ
)
に
入
(
い
)
れたと
思
(
おも
)
ふ
一刹那
(
いちせつな
)
、
068
にはかに
場面
(
ばめん
)
が
変
(
かは
)
つてしまひ、
069
不思議
(
ふしぎ
)
にも
自分
(
じぶん
)
の
郷里
(
きやうり
)
にある
産土
(
うぶすな
)
神社
(
じんじや
)
の
前
(
まへ
)
に、
070
身体
(
しんたい
)
は
端坐
(
たんざ
)
してゐたのである。
071
ふと
気
(
き
)
がついて
見
(
み
)
ると、
072
自分
(
じぶん
)
の
家
(
いへ
)
は
つい
そこであるから、
073
一遍
(
いつぺん
)
帰宅
(
かへ
)
つて
見
(
み
)
たいやうな
気
(
き
)
がしたとたんに、
074
にはかに
足
(
あし
)
が
痛
(
いた
)
くなり、
075
寒
(
さむ
)
くなりして
空腹
(
くうふく
)
を
感
(
かん
)
じ、
076
親
(
おや
)
兄弟
(
きやうだい
)
姉妹
(
しまい
)
の
事
(
こと
)
から
家政
(
かせい
)
上
(
じやう
)
の
事
(
こと
)
まで
憶
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
されてきた。
077
さうすると
天使
(
てんし
)
が、
078
『
御
(
おん
)
身
(
み
)
が
今
(
いま
)
人間
(
にんげん
)
に
復
(
かへ
)
つては、
079
神
(
かみ
)
の
経綸
(
しぐみ
)
ができぬから
神
(
かみ
)
にかへれ』
080
と
言
(
い
)
ひながら、
081
白布
(
しらぬの
)
を
全身
(
ぜんしん
)
に
覆
(
おほ
)
ひかぶされた。
082
不思議
(
ふしぎ
)
にも
心
(
こころ
)
に
浮
(
うか
)
んだ
種々
(
しゆじゆ
)
の
事
(
こと
)
は
打忘
(
うちわす
)
れ、
083
いよいよこれから
神界
(
しんかい
)
へ
旅立
(
たびだ
)
つといふことになつた。
084
しかして
其
(
そ
)
の
時
(
とき
)
持
(
も
)
つてをるものとては、
085
ただ
天然笛
(
てんねんぶえ
)
と
鎮魂
(
ちんこん
)
の
玉
(
たま
)
との
二
(
ふた
)
つのみで、
086
しかも
何時
(
いつ
)
のまにか
自分
(
じぶん
)
は
羽織
(
はおり
)
袴
(
はかま
)
の
黒装束
(
くろしやうぞく
)
になつてゐた。
087
その
処
(
ところ
)
へ
今
(
いま
)
一人
(
ひとり
)
の
天使
(
てんし
)
が、
088
産土神
(
うぶすながみ
)
の
横
(
よこ
)
に
現
(
あら
)
はれて、
089
教
(
をし
)
へたまふやう、
090
『
今
(
いま
)
や
神界
(
しんかい
)
、
091
幽界
(
いうかい
)
ともに
非常
(
ひじやう
)
な
混乱
(
こんらん
)
状態
(
じやうたい
)
に
陥
(
おちい
)
つてをるから、
092
このまま
放
(
はう
)
つておけば、
093
世界
(
せかい
)
は
丸潰
(
まるつぶ
)
れになる』
094
と
仰
(
あふ
)
せられ、
095
しかして、
096
『
御
(
おん
)
身
(
み
)
はこれから、
097
この
神
(
かみ
)
の
命
(
めい
)
ずるがままに
神界
(
しんかい
)
に
旅立
(
たびだ
)
ちして
高天原
(
たかあまはら
)
に
上
(
のぼ
)
るべし』
098
と
厳命
(
げんめい
)
された。
099
しかしながら
自分
(
じぶん
)
は、
100
高天原
(
たかあまはら
)
に
上
(
のぼ
)
るには
何方
(
どちら
)
を
向
(
む
)
いて
行
(
ゆ
)
けばよいか
判
(
わか
)
らぬから、
101
『
何
(
なに
)
を
目標
(
めあて
)
として
行
(
ゆ
)
けばよいか、
102
また
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
伴
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さるのか』
103
とたづねてみると、
104
『
天
(
あめ
)
の
八衢
(
やちまた
)
までは
送
(
おく
)
つてやるが、
105
それから
後
(
のち
)
は、
106
さうはゆかぬから
天
(
あめ
)
の
八衢
(
やちまた
)
で
待
(
ま
)
つてをれ。
107
さうすると
神界
(
しんかい
)
の
方
(
はう
)
すなはち
高天原
(
たかあまはら
)
の
方
(
はう
)
に
行
(
ゆ
)
くには、
108
鮮花色
(
せんくわしよく
)
の
神人
(
しんじん
)
が
立
(
た
)
つてをるからよくわかる。
109
また
黒
(
くろ
)
い
黒
(
くろ
)
い
何
(
なん
)
ともしれぬ
嫌
(
いや
)
な
顔
(
かほ
)
のものが
立
(
た
)
つてをる
方
(
はう
)
は
地獄
(
ぢごく
)
で、
110
黄胆
(
わうだん
)
病
(
や
)
みのやうに
黄色
(
きいろ
)
い
顔
(
かほ
)
したものが
立
(
た
)
つてゐる
方
(
はう
)
は
餓鬼道
(
がきだう
)
で、
111
また
真蒼
(
まつさを
)
な
顔
(
かほ
)
のものが
立
(
た
)
つてをる
方
(
はう
)
は
畜生道
(
ちくしやうだう
)
で、
112
肝癪筋
(
かんしやくすぢ
)
を
立
(
た
)
てて
鬼
(
おに
)
のやうに
怖
(
おそ
)
ろしい
顔
(
かほ
)
のものが
立
(
た
)
つてゐる
方
(
はう
)
は
修羅道
(
しゆらだう
)
であつて、
113
争
(
あらそ
)
ひばかりの
世界
(
せかい
)
へゆくのだ』
114
と
懇切
(
こんせつ
)
に
教示
(
けうじ
)
され、
115
また、
116
『
汝
(
なんぢ
)
が
先
(
さき
)
に
行
(
い
)
つて
探険
(
たんけん
)
したのは
地獄
(
ぢごく
)
の
入口
(
いりぐち
)
で、
117
一番
(
いちばん
)
易
(
やす
)
い
所
(
ところ
)
であつたのだ。
118
それでは
今度
(
こんど
)
は
鮮花色
(
せんくわしよく
)
の
顔
(
かほ
)
した
神人
(
しんじん
)
の
立
(
た
)
つてゐる
方
(
はう
)
へ
行
(
ゆ
)
け。
119
さうすればそれが
神界
(
しんかい
)
へゆく
道
(
みち
)
である』
120
と
教
(
をし
)
へられた。
121
しかして
又
(
また
)
、
122
『
神界
(
しんかい
)
といへども
苦
(
くる
)
しみはあり、
123
地獄
(
ぢごく
)
といへどもそれ
相当
(
さうたう
)
の
楽
(
たの
)
しみはあるから、
124
神界
(
しんかい
)
だからといつてさう
良
(
よ
)
い
事
(
こと
)
ばかりあるとは
思
(
おも
)
ふな。
125
しかし
高天原
(
たかあまはら
)
の
方
(
はう
)
へ
行
(
ゆ
)
く
時
(
とき
)
の
苦
(
くる
)
しみは
苦
(
くる
)
しんだだけの
効果
(
かうのう
)
があるが、
126
反対
(
はんたい
)
の
地獄
(
ぢごく
)
の
方
(
はう
)
へ
行
(
ゆ
)
くのは、
127
昔
(
むかし
)
から
其
(
そ
)
の
身魂
(
みたま
)
に
罪業
(
めぐり
)
があるのであるから、
128
単
(
たん
)
に
罪業
(
めぐり
)
を
償
(
つぐな
)
ふのみで、
129
苦労
(
くらう
)
しても
何
(
なん
)
の
善果
(
ぜんくわ
)
も
来
(
きた
)
さない。
130
もつとも、
131
地獄
(
ぢごく
)
でも
苦労
(
くらう
)
をすれば、
132
罪業
(
めぐり
)
を
償
(
つぐな
)
ふといふだけの
効果
(
かうなう
)
はある。
133
またこの
現界
(
げんかい
)
と
霊界
(
れいかい
)
とは
相
(
あひ
)
関聯
(
くわんれん
)
してをつて、
134
いはゆる
霊体
(
れいたい
)
不二
(
ふじ
)
であるから、
135
現界
(
げんかい
)
の
事
(
こと
)
は
霊界
(
れいかい
)
にうつり、
136
霊界
(
れいかい
)
の
事
(
こと
)
はまた
現界
(
げんかい
)
にうつり、
137
幽界
(
いうかい
)
の
方
(
はう
)
も
現界
(
げんかい
)
の
肉体
(
にくたい
)
にうつつてくる。
138
ここになほ
注意
(
ちうい
)
すべきは、
139
神界
(
しんかい
)
にいたる
道
(
みち
)
において
神界
(
しんかい
)
を
占領
(
せんりやう
)
せむとする
悪魔
(
あくま
)
があることである。
140
それで
汝
(
なんぢ
)
が
今
(
いま
)
、
141
神界
(
しんかい
)
を
探険
(
たんけん
)
せむとすれば
必
(
かなら
)
ず
悪魔
(
あくま
)
が
出
(
で
)
てきて
汝
(
なんぢ
)
を
妨
(
さまた
)
げ、
142
悪魔
(
あくま
)
自身
(
じしん
)
神界
(
しんかい
)
を
探険
(
たんけん
)
占領
(
せんりやう
)
せむとしてをるから、
143
それをさうさせぬやうに、
144
汝
(
なんぢ
)
を
神界
(
しんかい
)
へ
遣
(
つか
)
はされるのだ。
145
また
神界
(
しんかい
)
へいたる
道路
(
みち
)
にも、
146
広
(
ひろ
)
い
道路
(
みち
)
もあればまた
狭
(
せま
)
い
道路
(
みち
)
もあつて、
147
決
(
けつ
)
して
広
(
ひろ
)
い
道路
(
みち
)
ばかりでなく、
148
あたかも
瓢箪
(
へうたん
)
を
いくつ
も
竪
(
たて
)
に
列
(
なら
)
べたやうな
格好
(
かくかう
)
をしてゐるから、
149
細
(
ほそ
)
い
狭
(
せま
)
い
道路
(
みち
)
を
通
(
とほ
)
つてゐるときには、
150
たつた
一人
(
ひとり
)
しか
通
(
とほ
)
れないから、
151
悪魔
(
あくま
)
といへども
後
(
あと
)
から
追越
(
おひこ
)
すといふわけには
行
(
ゆ
)
かぬが、
152
広
(
ひろ
)
い
所
(
ところ
)
へ
出
(
で
)
ると、
153
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
から
悪魔
(
あくま
)
が
襲
(
おそ
)
つて
来
(
く
)
るので、
154
かへつて
苦
(
くる
)
しめられることが
多
(
おほ
)
い』
155
と
教
(
をし
)
へられた。
156
間
(
ま
)
もなく、
157
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
天使
(
てんし
)
は
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
させたまひ、
158
自分
(
じぶん
)
はただ
一人
(
ひとり
)
天然笛
(
てんねんぶえ
)
と
鎮魂
(
ちんこん
)
の
玉
(
たま
)
とを
持
(
も
)
ち、
159
天
(
てん
)
蒼
(
あを
)
く
水
(
みづ
)
青
(
あを
)
く、
160
山
(
やま
)
また
青
(
あを
)
き
道路
(
みち
)
を
羽織
(
はおり
)
袴
(
はかま
)
の
装束
(
しやうぞく
)
で、
161
神界
(
しんかい
)
へと
旅立
(
たびだ
)
ちすることとなつた。
162
(
大正一〇・一〇・一八
旧九・一八
外山豊二
録)
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