霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二二章 高加索(コーカス)(まゐり)〔五四八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻 篇:第5篇 膝栗毛 よみ(新仮名遣い):ひざくりげ
章:第22章 高加索詣 よみ(新仮名遣い):こーかすまいり 通し章番号:548
口述日:1922(大正11)年03月21日(旧02月23日) 口述場所: 筆録者:岩田久太郎 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年10月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
日の出別の神がコーカス山に現れて以来、コーカス山の御宮には参詣者がたくさん参るようになった。弥次彦と与太彦は、御宮参りの道中、コーカス山に程近い町で、かつて弥次彦の下女であったお竹の家に泊まることになった。
お竹の家も、参詣者の宿泊でいっぱいのため、お竹の家の二階の柴屋に泊まることになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-12-15 18:09:36 OBC :rm1322
愛善世界社版:257頁 八幡書店版:第3輯 124頁 修補版: 校定版:257頁 普及版:112頁 初版: ページ備考:
001 四方(よも)山辺(やまべ)青々(あをあを)と、002若芽(わかめ)(みどり)春姫(はるひめ)の、003(そで)()()えて(くれなゐ)の、004(はな)()(にほ)(はる)(そら)005コーカス(ざん)(あらは)れし、006()出別(でのわけ)活神(いきがみ)を、007(した)うて絡繹(らくえき)(まう)づる男女(だんぢよ)真中(まんなか)に、008(ひいで)(くろ)二人(ふたり)大男(おほをとこ)は、009宣伝歌(せんでんか)此処(ここ)彼処(かしこ)010千切(ちぎ)千切(ちぎ)れに(うた)ひながら(すす)(きた)り、011路傍(ろばう)(くさ)(うへ)(こし)(うち)()けて、012雑談(ざつだん)(ふけ)るあり。
013弥次彦『オイ与太彦(よたひこ)014どうだ、015(なが)らくの(あひだ)016日月(じつげつ)(ひかり)もなく、017草木(くさき)(いろ)枯葉(かれは)(やう)になつて(はる)気分(きぶん)もトント()かつたが、018()出別(でわけ)活神(いきがみ)さまが、019コーカス(ざん)(あら)はれてより、020金覆輪(きんぷくりん)日輪(にちりん)(さま)晃々(くわうくわう)(かがや)(たま)ひ、021草木(さうもく)若芽(わかめ)()き、022(はな)()小鳥(ことり)(うた)ひ、023陽気(やうき)()く、024本当(ほんたう)地獄(ぢごく)から極楽(ごくらく)早替(はやがは)りをしたやうだなア』
025与太彦本当(ほんたう)にさうだ、026(いち)()(はや)くコーカス(ざん)()(みや)参拝(さんぱい)したいものだ。027しかし(これ)だけ大勢(おほぜい)老若(らうにやく)男女(なんによ)が、028珠数(じゆず)(つな)ぎになつて参拝(さんぱい)するのだから、029()つくりと(あし)()ばして(やす)むことも出来(でき)やしない。030マゴマゴして()れば()(つぶ)されて仕舞(しま)ふわ。031ノー弥次公(やじこう)032今晩(こんばん)何処(どこ)宿(やど)()つたらよからうかなア』
033弥次彦『サア(はる)()つてもまだ夜分(やぶん)はよほど(さむ)いから、034まさか野宿(のじゆく)する(わけ)にも()かず、035(これ)から()()ばかり()くと、036田子(たご)()(ちひ)さい(まち)があつて、037そこには(おれ)のとこに(なが)らく奉公(ほうこう)をして()つた、038(たけ)()下女(げぢよ)(うち)がある(はず)だから、039今晩(こんばん)其処(そこ)までコンパスを()ばして、040()めて(もら)つたらどうだらう』
041与太彦『ウーン、042あのお(たけ)ドンの(うち)か、043それは()からう。044しかし()めて(くれ)るだらうか、045これだけ大勢(おほぜい)(ひと)だから、046(たけ)ドンの(うち)沢山(たくさん)()(あひ)(ひと)があるだらうから、047(おい)()()(まで)満員(まんゐん)になつて()るやうな(こと)はあるまいかな』
048弥次彦『そこが主人(しゆじん)家来(けらい)だ、049いかに無情(むじやう)なお(たけ)だつて、050(じふ)(ねん)()うてやつた主人(しゆじん)(たの)(こと)まさか(いや)とは()はれよまい。051マアともかくもお(たけ)(うち)目当(めあて)()かうかい。052ヤア沢山(たくさん)参詣者(さんけいしや)だナア』
053()ひながら、054両人(りやうにん)草臥(くたび)れた(あし)をチガチガと(はこ)びはじめた。055()(やま)()(ぼつ)せむとする(ころ)056やうやう田子(たご)(まち)()いた。
057弥次彦(なん)でもこの(まち)だ。058(ひど)(おほ)きな(うち)ぢやないさうなから、059貴様(きさま)右側(みぎがは)調(しら)べて()ろ、060(おれ)左側(ひだりがは)調(しら)べて()く』
061与太彦(よたひこ)(なに)屋号(やがう)でもあるのか』
062弥次彦(やじひこ)『お(まへ)(たけ)(かほ)()つとるだらう、063彼奴(あいつ)(かほ)見当(けんたう)()くのだよ』
064与太彦(よたひこ)『お(たけ)だつて、065さう日当(ひあた)りに看板(かんばん)(やう)に、066(あさ)から(ばん)まで()(つづ)けにして()(はず)()いから、067ソンナ(たよ)()標的(へうてき)(まと)(さが)しても不可(いかん)ぢやないか。068それよりもいつその(こと)069軒毎(のきごと)にお(たけ)ドンの(うち)はここかここかと、070両側(りやうがは)(いへ)(たづ)ねて(まは)つたら一番(いちばん)的確(てきかく)だよ』
071弥次彦(やじひこ)『ウン、072それがよからう。073サア此処(ここ)田子(たご)(まち)だ。074(まへ)右側(みぎがは)だ、075(おれ)左側(ひだりがは)だ……モシモシ、076(たけ)ドンのお(たく)はこなたぢや御座(ござ)いませぬか』
077 屋内(をくない)より
078(ちが)ひます』
079弥次彦(やじひこ)『こなたはお(たけ)ドンの(やかた)では御座(ござ)いますまいか』
080 屋内(をくない)より
081『お(たけ)(うち)ですが、082(たけ)十五(じふご)年前(ねんぜん)()にましたよ』
083弥次彦『ナニ、084十年前(じふねんぜん)(おれ)のとこに奉公(ほうこう)して()たのだ、085十五(じふご)年前(ねんぜん)()んだとはお(まへ)サンチツト勘定(かんぢやう)(ちが)ひぢやないかなア。086高取村(たかとりむら)弥次彦(やじひこ)(うち)奉公(ほうこう)して()つたお(たけ)(こと)だよ』
087 屋内(をくない)より、
088私処(わしとこ)(むすめ)奉公(ほうこう)にやつた(こと)()い』
089弥次彦『ぢやお(たけ)(ちが)ひだ、090これはおタゲーに迷惑(めいわく)だ。091エー仕方(しかた)がない、092(はじ)めからドンを()かれだ。093これだけ(ちひ)さい(まち)だと()つても、094随分(ずゐぶん)家数(いへかず)だ、095軒毎(のきごと)(たづ)ねて()ると乞食(こじき)間違(まちが)へられて()()かぬ。096天秤棒(てんびんぼう)星当(ほしあた)りだ。097二軒(にけん)三軒(さんげん)づつ(あひ)をあけて(たづ)ねて()ようかい』
098 二人(ふたり)(まち)両側(りやうがは)をあちらこちらとお(たけ)()()(たづ)ねて(すす)()く。
099 (ちひ)さき屑屋葺(くづやぶき)軒下(のきした)から、
100お竹『モシモシ、101貴方(あなた)高取村(たかとりむら)旦那(だんな)(さま)ぢや御座(ござ)いませぬか』
102弥次彦『イヤーお(まへ)はお(たけ)か。103ナンとマア(えら)(ばば)アになつたなア。104(おれ)のとこに()つた(とき)は、105ちよつと渋皮(しぶかは)のむけた別嬪(べつぴん)だつたが、106(じふ)(ねん)()てば一昔(ひとむかし)107()つたりな()つたりな(しわ)三十二(さんじふに)になつたらう。108(しわ)三十二(さんじふに)(さい)のお(まへ)姿(すがた)109これを(おも)へば(とし)()りたくないものだ。110しかしながら()りたいものが(ひと)つある』
111お竹『オホヽヽヽヽ、112旦那(だんな)(さま)113()りたいと(おつ)しやるのは(なん)でございます』
114弥次彦今晩(こんばん)宿(やど)()りたいのだ。115貴様(きさま)(うち)()めて(くれ)ないか』
116お竹滅相(めつさう)な、117旦那(だんな)(さま)のお(とま)りなさるやうな(うち)ぢやございませぬ。118ホントウに穢苦(むさくる)しうて、119(はづ)かしう御座(ござ)いますから、120どうぞそれ(ばか)りは(ゆる)して(くだ)さいませ』
121弥次彦『ソンナラ何処(どこ)宿屋(やどや)案内(あんない)をして()れないか』
122お竹『これだけ沢山(たくさん)なコーカス(まゐ)りに、123何処(どこ)(うち)彼処(かしこ)(うち)も、124ギツシリ鮓詰(すしづ)めと()有様(ありさま)でございます。125(わたし)とこの(やう)(ちひ)さい(うち)でも、126何処(どこ)(かた)()りませぬが、127軒下(のきした)でもよいから()めて()れいと(おつ)しやつて、128身動(みうご)きも出来(でき)(ほど)のお(ひと)でございます』
129弥次彦何処(どこ)でもいいが()いた(とこ)()いか。130ハンモツクでもあれば、131天井裏(てんじやううら)でも(かま)はぬ。132雨露(あめつゆ)さへ(しの)げばいいのだから』
133お竹『ソンナ()()いたものが(わたし)とこの(やう)貧乏(びんぼう)(うち)()りますものか。134()いた(とこ)()へば(すす)だらけの柴屋(しばや)がある(だけ)です』
135弥次彦『イヤーその柴屋(しばや)結構(けつこう)だ。136しかし随分(ずゐぶん)(くす)ぼるだらうなア』
137お竹(した)御飯(ごぜん)()いたりお(ちや)(わか)したり(いた)しますから、138随分(ずゐぶん)天井(てんじやう)(くす)ぼりませう。139旦那(だんな)(さま)140ソンナ(ところ)でお(とま)りやしたら(たぬき)間違(まちが)へられますぜ。141オホヽヽヽヽヽ』
142弥次彦『イヤー(たぬき)でも(きつね)でも(かま)はぬ、143一夜(いちや)()かせば()いのだ。144ヤア今晩(こんばん)宿舎(しゆくしや)(これ)解決(かいけつ)がついた。145オイ与太彦(よたひこ)146此処(ここ)此処(ここ)だ、147宿屋(やどや)(きま)つた。148ヤアー何処(どこ)()きよつた、149狼狽者(あわてもの)だなア。150与太公(よたこう)(やつ)大勢(おほぜい)(ひと)(まぎ)れて(おれ)談判(だんぱん)(わか)らなかつたと()えるワイ。151オイお(たけ)152(おれ)(つれ)与太彦(よたひこ)()んで()(くれ)ないか』
153お竹『この(まち)(ちひ)さい(まち)でございますから、154いづれ(むか)ふまで()つて(いへ)()くなつたら、155(また)こちら(がは)(たづ)ねて(かへ)つて()られませうから、156マア渋茶(しぶちや)でも()んでゆつくり()つて()(くだ)さいナ』
157弥次彦『ヤア与太公(よたこう)どうだつた。158これがお(たけ)(さま)のお(やかた)だ。159今晩(こんばん)はここで()宿泊(しゆくはく)だ』
160与太彦(よたひこ)『ヨー、161ナントお粗末(そまつ)……ぢやない結構(けつこう)なお(うち)だ。162ヤアお(たけ)サン、163(わたし)(かほ)()つてますか。164(じふ)(ねん)(むかし)牛部屋(うしべや)から(しの)()んだ(とき)165コーンと臂鉄(ひじてつ)()はせましたなア、166(おぼ)えてますか』
167お竹『オホヽヽヽヽ、168(ひと)()いてますよ、169ソンナ()つともない(こと)(おつ)しやいますな。170マア(うら)(ゆつ)くりと一服(いつぷく)して()つて(くだ)さい。171柴屋(しばや)片付(かたづ)けましてお(やす)場所(ばしよ)(こしら)へますまで』
172弥次彦『アーお(まへ)()(とほ)(ちひ)さい(うち)似合(にあは)沢山(たくさん)なお客様(きやくさま)だなア。173アーこれがお(まへ)母親(ははおや)か、174(あたま)(ひか)つたお爺様(ぢいさん)がござるな。175ヤア結構(けつこう)々々(けつこう)176(とし)がよつて達者(たつしや)なのは(なに)よりだ』
177お竹旦那(だんな)(さま)178どうぞ此方(こなた)(うら)(やす)んで()(くだ)さいませ』
179弥次彦『ヨシヨシ。180オイ与太彦(よたひこ)181(おもて)随分(ずゐぶん)穢苦(むさくる)しい(きたな)(うち)だが、182(うら)(まは)ると立派(りつぱ)(うち)があるぢやないか。183マア、184ここで(ゆつ)くりと一服(いつぷく)しようかい。185ウーン(とこ)()(かざ)りと()ひ、186欄間(らんま)()ひ、187書院(しよゐん)工合(ぐあひ)やら(なに)から(なに)まで、188到底(たうてい)(おれ)(とこ)座敷(ざしき)(くら)べて、189幾層倍(いくそうばい)上等(じやうとう)かも()れない。190(たけ)(やつ)随分(ずゐぶん)()つてけつかるのだらう。191(おもて)立派(りつぱ)にすると税金(ぜいきん)がかかるものだから、192コンナ(きたな)()すぼらしい(いへ)()てよつて、193(うら)には立派(りつぱ)亭座敷(ちんざしき)()てて()よる、194()かりの()(やつ)だ。195(いま)人間(にんげん)(おもて)(かざ)つて(うら)這入(はい)れば(みな)我楽多(がらくた)(ばか)りだが、196(たけ)(やつ)(なが)らく(おれ)(とこ)修行(しうぎやう)をしたお(かげ)で、197(おもて)(きたな)内心(ないしん)はこの(とほ)立派(りつぱ)にやつてけつかるのだらう、198感心(かんしん)感心(かんしん)だ。199コンナ結構(けつこう)座敷(ざしき)になぜ給仕人(きふじにん)()いて()かぬのだらう。200オイ()(たた)いて()(ちや)でも()()いと(めい)ずるかなア、201与太彦(よたひこ)
202与太彦『ホントウに感心(かんしん)だ、203これだから(ひと)出世(しゆつせ)(わか)らぬと()ふのだよ。204(あま)(ひと)零落(おちぶれ)たと()ふて(あなど)るものぢやないぞ』
205 弥次彦(やじひこ)はやたらに()(たた)き、
206弥次彦『オーイ、207(ちや)だお(ちや)だ』
208 白髪(はくはつ)老人(らうじん)一人(ひとり)(わか)(をとこ)(ともな)(きた)り、209ギロギロとした()()きながら、
210老人『お(まへ)たちは何処(どこ)(かた)だい、211(わし)(とこ)(はな)座敷(ざしき)(ことわ)りもなく侵入(しんにふ)して(なに)をして()るのだ。212家宅(かたく)侵入罪(しんにふざい)(うつた)へようか』
213弥次彦『ヤアお爺様(ぢいさん)214()洒落(しやれ)るなア。215(おれ)はお(まへ)(とこ)(むすめ)のお(たけ)主人(しゆじん)だよ』
216老人私処(わしとこ)にお(たけ)()(もの)()らぬ。217(たけ)(うち)はその(まへ)(ちつ)ぽけな(うち)だぞ』
218弥次彦『ヤアー、219さうすると此処(ここ)(うち)はお(たけ)(うち)ぢやないのか、220それなら何故(なぜ)(かき)をして()かないのか、221(たけ)(うら)(やす)めと()ふから、222()()いた座敷(ざしき)だと(おも)つて一寸(ちよつと)一服(いつぷく)して()つたのだ』
223老人『ハハーお(まへ)たちは間違(まちが)へて這入(はい)つたのだなア、224仕方(しかた)がない(はや)()(くだ)さい。225オイ長松(ちやうまつ)226(しほ)()つて()い。227大切(たいせつ)座敷(ざしき)(うら)からノコノコと這入(はい)つて()よつて、228ここは(かみ)(さま)のお座敷(ざしき)だ。229(わし)さへ此処(ここ)()るのには、230(みづ)をかぶらな這入(はい)らぬ座敷(ざしき)をば、231泥塗(どろまぶ)れの(あし)(あが)りよつて()しからぬ(やつ)だ』
232弥次彦『ヤアお爺様(ぢいさん)これは失敬(しつけい)233オイ与太公(よたこう)234長居(ながゐ)(おそ)れだ。235退却(たいきやく)々々(たいきやく)
236(たけ)は、
237お竹『モシモシ旦那(だんな)さま、238何処(どこ)()つてゐらつしやいました、239最前(さいぜん)から心配(しんぱい)をして、240そこらを(たづ)ねて()りました。241仕度(したく)出来(でき)ましたから、242どうぞ柴屋(しばや)(あが)つて(くだ)さいませ』
243弥次彦『ヤア、244それは有難(ありがた)い、245案内(あんない)して()れ』
246お竹『サア、247ここに梯子(はしご)()けてございます、248ここからトントンとお(あが)(くだ)さいませ。249沢山(たくさん)(しば)()めてありますが、250二人(ふたり)(さま)(くらゐ)はどうなつと(やす)めませう』
251弥次彦『アヽ、252仕方(しかた)()い。253ヤア()(がた)う。254与太公(よたこう)二階(にかい)(あが)つて休息(きうそく)しようかなア』
255とビヨビヨした(あぶな)虫食(むしく)ひだらけの梯子(はしご)恐々(こわごわ)(のぼ)つて()く。
256弥次彦『サア、257マー(これ)一安心(ひとあんしん)だ、258(すす)だらけだな。259しかしマア(そと)()()るより(まし)かい。260()(くす)ぼる(うち)だなア。261クシャンクシャン。262アー()(いた)い』
263与太彦『ともかく今晩(こんばん)宿(やど)(さだ)まりまして弥次彦(やじひこ)さまにもお目痛(めいた)うございます、264ウフヽヽヽ』
265弥次彦洒落(しやれ)どころか、266アタけぶたいのに』
267 与太彦(よたひこ)(しば)(まくら)にコロリと(よこ)になる。268弥次彦(やじひこ)(した)(なが)めて、269大勢(おほぜい)(もの)(めし)()(ちや)()かし、270右往(うわう)左往(さわう)する(さま)をヂツと見下(みおろ)して()た。271(たけ)母親(ははおや)()えて、272渋紙(しぶかみ)のやうな(かほ)した(あたま)禿()げた婆々(ばばあ)は、273()(くろ)けの(あか)だらけの()()し、274(くろ)杓子(しやくし)(なべ)から(めし)(ひだり)()のひらに()せ、275杓子(しやくし)(した)におろし、276(みぎ)()(みづばな)をツンとかみ、277()(かふ)にて(はな)をこすり、278(めし)をクネクネと(にぎ)つて()る。279(ひと)(にぎ)つては(ざる)(なか)()()み、280(ひと)(にぎ)つては(ざる)(なか)()()み、281()()二十(にじふ)(ばか)三角形(さんかくがた)(にぎ)(めし)(かた)めて(しま)ひ、
282婆(お竹の母)『モシモシ二階(にかい)のお(きやく)さま、283そこに(くろ)(つな)があるだらう、284(つな)(さき)(しば)()(あげ)(かぎ)()いて()るから、285それをスルスルと(おろ)して(くだ)さい、286(にぎ)りマンマをあげます』
287弥次彦『お婆様(ばあさん)288(これ)かなア』
289()ひながら(かぎ)()いた(くろ)(つな)をツルツルとおろした。290婆々(ばばあ)(ざる)十文字(じふもんじ)(しば)り、291その中央(まんなか)(かぎ)(ひつ)かけ、
292お竹の母『サアサアこれを(うへ)()()げて(はら)(いつ)ぱい(あが)つて(くだ)さい。293(ちや)()いたらまた()らすから(かぎ)をおろして(くだ)され、294土瓶(どびん)(ひつ)かけてあげるから、295(また)ツルツルと(うへ)()げるのだよ』
296弥次彦『オイ与太彦(よたひこ)297(にぎ)(めし)だ。298(はら)()つただらう、299シコタマ頂戴(ちやうだい)せぬか』
300与太彦有難(ありがた)いなア、301天道(てんだう)(ひと)(ころ)さず、302弁当(べんたう)(ひと)(たす)ける。303今晩(こんばん)宿屋(やどや)がなくて(めし)(いただ)けまいと(おも)うて()たのに、304これはマー結構(けつこう)(こと)だ。305オー沢山(たくさん)(にぎ)(めし)だなア、306(えら)(くろ)いのと(しろ)いのと()るぢやないか』
307弥次彦『ソラ(きま)つた(こと)だよ、308(はじめ)(にぎ)つた(やつ)(くろ)いに(きま)つて()るわ、309(しろ)(やつ)から()うたらよからう』
310 与太彦(よたひこ)311(ひと)つカブツて、
312与太彦『ヤア弥次彦(やじひこ)313(しほ)加減(かげん)()いぜ、314(まへ)(ひと)()つたらどうだ』
315弥次彦『イヤ今日(けふ)(あま)草臥(くたびれ)胸脹(むなぶく)れがして(めし)(いや)だ。316与太公(よたこう)ヨバレテ仕舞(しま)へ』
317与太彦『ホントウにお(まへ)いいのか、318それなら()まぬがお(まへ)代理(だいり)二人前(ににんまへ)失敬(しつけい)しようかい。319ヤア(いろ)(くろ)いが(しほ)加減(かげん)()いわ、320ネンバリとして(なん)とも()へぬ(あぢ)だよ。321この(へん)(こめ)はよつぽど(たち)がよいと()えるナア』
322()ひながら(くろ)いのを(ふた)(のこ)全部(ぜんぶ)(たひら)げて仕舞(しま)つた。
323弥次彦『アハヽヽヽ、324(うま)かつたか、325(しほ)加減(かげん)()かつただらう。326その(はず)だ、327(おれ)がかうして(した)(のぞ)いて()ると、328渋紙(しぶかみ)(やう)な、329(あたま)禿()げた、330(きたな)婆々(ばばあ)()(くろ)()()して、331(なべ)(なか)ヘグサツと()()()んではグツと(にぎ)り、332(みづばな)()らしては手洟(てばな)をかみ、333(にぎ)(かた)めたのだもの、334(しほ)加減(かげん)のよいのは婆々(ばばあ)洟汁(はなしる)(まぢ)つて()るからだよ。335アハヽヽヽ』
336与太彦『ペツペツ、337エー気分(きぶん)(わる)い、338(なん)だかムカツイテ()た。339オイ弥次彦(やじひこ)340(ちや)でも請求(せいきう)して()れないか、341(いつ)ペん(はら)洗濯(せんたく)でもせないと、342(のど)がニチヤクチヤして気分(きぶん)(わる)い』
343弥次彦『オーさうだらう。344モシモシお(ばあ)サン、345(かぎ)()ろすからお(ちや)(くだ)さいなア』
346婆(お竹の母)『その(つな)()つかりと()つて()なされや、347途中(とちう)(はな)して(もら)うと、348(した)()婆々(ばばあ)()(ちや)(かぶ)るから』
349 土瓶(どびん)()(くろ)(ちや)(いつ)ぱいもつて(かぎ)にかけた。350弥次彦(やじひこ)はツルツルと引上(ひきあ)げた。
351弥次彦『サア与太彦(よたひこ)352ナンボなと()んだり()んだり』
353与太彦()まいでかい、354(はら)洗濯(せんたく)だもの』
355()ひながら土瓶(どびん)(いつ)ぱいの(ちや)をコロリと()けて仕舞(しま)つた。
356弥次彦『オイオイ、357(まへ)ばかり()んで()つて(おれ)にも一杯(いつぱい)()まさぬかい』
358与太彦『もう仕舞(しまひ)だ、359マア一杯(いつぱい)請求(せいきう)して()れないか』
360弥次彦()(ちや)()らふ親仁(おやぢ)だなア。361モシモシお(ばあ)サン、362もう一杯(いつぱい)(ちや)(くだ)さらぬか』
363 (した)には禿頭(はげあたま)(おやぢ)(ばば)364その()(たけ)兄弟(きやうだい)五六(ごろく)(にん)365沢山(たくさん)のお客様(きやくさま)(にぎ)(めし)一生(いつしやう)懸命(けんめい)(こしら)へて()る。
366 弥次彦(やじひこ)(かぎ)土瓶(どびん)()つかけ、367ツルツルと(おろ)した途端(とたん)に、368禿頭(はげあたま)(おやぢ)額口(ひたひぐち)にコツンと(あた)つた。369弥次彦(やじひこ)吃驚(びつくり)して土瓶(どびん)(つな)(にはか)手繰(たぐ)()げる。
370爺(お竹の父)『ヤア怪体(けたい)(こと)()るものぢや、371土瓶(どびん)(やつ)(おれ)(あたま)()りよつて逸早(いちはや)天上(てんじやう)して仕舞(しま)つた。372化物(ばけもの)だらうかなア』
373婆(お竹の母)(ぢい)さまの薬鑵頭(やくわんあたま)土瓶(どびん)()るのは(あた)(まへ)だよ。374たとへ土瓶(どびん)天上(てんじやう)(くらゐ)したつて(なに)不思議(ふしぎ)ぢやない。375今朝(けさ)婆々(ばばあ)()()れば門前(かど)(ねぶか)浄瑠璃(じやうるり)(かた)りや、376大根(だいこん)役者(やくしや)(とほ)つた。377土瓶(どびん)天上(てんじやう)(くらゐ)(べつ)不思議(ふしぎ)(こと)()いわいなア』
378 (また)もや土瓶(どびん)柴屋(しばや)からツルツルと()りて()た。
379(たけ)『ヤア旦那(だんな)(さま)大変(たいへん)(のど)(かわ)かして御座(ござ)ると()える、380充分(じうぶん)()れて()げて(くだ)されな』
381 (ばば)は、
382婆(お竹の母)『ヨシヨシ』
383()ひながら(めし)のついた()(しやく)(にぎ)り、384土瓶(どびん)()(ふたた)(かぎ)()けた。385土瓶(どびん)(たちま)天井(てんじやう)姿(すがた)(かく)した。
386大正一一・三・二一 旧二・二三 岩田久太郎録)

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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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