霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二一章 本霊(ほんれい)〔五四七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻 篇:第4篇 奇窟怪巌 よみ(新仮名遣い):きくつかいがん
章:第21章 本霊 よみ(新仮名遣い):ほんれい 通し章番号:547
口述日:1922(大正11)年03月21日(旧02月23日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年10月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
巨大な火弾は、以前の女神の姿になった。女神は五人の宣伝使の御魂が開けたことを宣言し、フサの都に進むようにと命じた。そして、岩彦は心は固いがまだ開けていないので、よくなごめるように、と諭した。
女神は、自分は木花姫の和魂であると名乗って消えた。
五人は感謝に天津祝詞を唱えていると、気絶していた岩彦が起き出した。岩彦は今の爆発で、五人が死んでしまったと思い、遺体を探し始めた。
しかし髪の毛一本見つからないので、てっきり大蛇が五人を飲んでしまったと早合点して、敵を取ろうといきんでいる。五人の宣伝使が岩彦に話しかけるが、岩彦は大蛇と会話していると思って、けんか腰で応対している。
このとき、闇の中に六個の光の玉が現れた。そして五柱の女神と、一柱の鬼になった。各々名札がついており、女神には五人の宣伝使の名が、鬼には岩彦の名がついていた。
自分自身の副守護神の姿を見て思い知らされ、ようやく鬼を追い払った岩彦は、五人と同じように正しい言葉を使うようになった。すると岩彦の本守護神が立派な神となって現れた。
ここに六人の宣伝使と六柱の本守護神は、宣伝歌を歌った。やがて各自の本守護神は五色の玉となって宣伝使らの頭上に留まった。そして次第に宣伝使の体内にしみこんでしまった。
一行は岩窟を出て、コシの峠を指して進んで行く。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-11-26 18:10:52 文字数:4023 OBC :rm1321
愛善世界社版:244頁 八幡書店版:第3輯 119頁 修補版: 校定版:245頁 普及版:107頁 初版: ページ備考:
001 巨大(きよだい)なる火弾(くわだん)爆発(ばくはつ)すると見(み)る中(うち)に、002忽然(こつぜん)として以前(いぜん)の女神(めがみ)の姿(すがた)が現(あら)はれた。003五(ご)人(にん)は思(おも)はず平地(へいち)に蹲(しやが)んで最敬礼(さいけいれい)を表(へう)した。004女神(めがみ)は声(こゑ)も淑(しとや)かに、
005女神『道(みち)の勲(いさを)も鷹彦(たかひこ)や、006一度(いちど)に開(ひら)く白梅(しらうめ)の、007薫(かを)り床(ゆか)しき梅彦(うめひこ)や、008心(こころ)の駒(こま)の勇(いさ)み立(た)ち、009誠(まこと)の道(みち)に矗々(すくすく)と、010進(すす)む駒彦(こまひこ)万代(よろづよ)の、011神(かみ)の教(をしへ)の亀彦(かめひこ)や、012言霊(ことたま)清(きよ)き音彦(おとひこ)よ、013汝(なんぢ)等(ら)今(いま)より麻柱(あななひ)の、014神(かみ)の教(をしへ)を宣(の)べ伝(つた)ふ、015いつの御魂(みたま)の宣伝使(せんでんし)、016あゝ勇(いさ)ましし勇(いさ)ましし、017もはや汝(なんぢ)が身魂(みたま)の曇(くも)り、018晴(は)れ渡(わた)りたり真如(しんによ)の日月(じつげつ)、019心(こころ)の海(うみ)に隈(くま)なく照(て)り渡(わた)り、020胸(むね)の仇浪(あだなみ)静(しづ)まりたれば、021一日(ひとひ)も早(はや)く片時(かたとき)も、022疾(と)く速(すむ)やけく、023フサの都(みやこ)に出立(しゆつたつ)せよ、024それにしても岩彦(いはひこ)が、025固(かた)き心(こころ)は嘉(よみ)すれど、026三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)として、027今(いま)少(すこ)し足(た)らはぬ処(ところ)あれば、028汝(なんぢ)等(ら)五(いつ)の御魂(みたま)は岩彦(いはひこ)が、029心(こころ)をなごめ、030誠(まこと)に強(つよ)き益良雄(ますらを)として、031立(た)ち働(はたら)かしめよ。032斯(か)く申(まを)す妾(わらは)は天教山(てんけうざん)の木花姫(このはなひめ)が和魂(にぎみたま)なるぞ、033夢々(ゆめゆめ)疑(うたが)ふ事(こと)なかれ』
034と宣(せん)し終(をは)ると共(とも)に、035女神(めがみ)の姿(すがた)は火煙(くわえん)と消(き)えにけり。036五(ご)人(にん)は感謝(かんしや)の涙(なみだ)に咽(むせ)びつつ、037嗚呼(ああ)有難(ありがた)し忝(かたじけ)なし、038天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)せむと一同(いちどう)宣(の)る言霊(ことたま)も円満(ゑんまん)清朗(せいらう)、039その声(こゑ)はさしもに広(ひろ)き遠(とほ)き巌窟(がんくつ)の内(うち)を隈(くま)なく響(ひび)き渡(わた)りける。040この言霊(ことたま)の声(こゑ)に岩公(いはこう)はムクムク起(お)き上(あが)り、
041岩彦『アヽ大変(たいへん)だ。042エライ目(め)に出会(でくわ)した。043俺(おれ)のやうな肝玉(きもたま)の太(ふと)い宣伝使(せんでんし)でも吃驚(びつくり)して一(いち)時(じ)性念(しやうねん)を失(うしな)つた位(くらゐ)であるから、044鷹公(たかこう)、045亀公(かめこう)、046駒公(こまこう)、047音(おと)、048梅(うめ)の連中(れんぢう)は定(さだ)めて肝(きも)を潰(つぶ)したらう。049アヽ胆(きも)を潰(つぶ)すは俺(おれ)位(くらゐ)の程度(ていど)の者(もの)だ。050それ以下(いか)の程度(ていど)の五(ご)人(にん)の奴(やつ)は、051大方(おほかた)木葉(こつぱ)微塵(みぢん)となつたかも知(し)れやしない。052彼奴(あいつ)等(ら)にしても可愛(かあい)い女房(にようばう)や子(こ)が国許(くにもと)に待(ま)つて居(ゐ)るのだから、053エヽ道連(みちづれ)になつた好誼(よしみ)に骨(ほね)なと拾(ひろ)つて女房(にようばう)や子供(こども)に届(とど)けてやらねばなるまい。054これがせめてものこの岩(いは)サンの親切(しんせつ)だ。055アヽ五(ご)人(にん)のもの情(なさけ)ない事(こと)になつて呉(く)れたなア。056何(なん)だか真闇(まつくら)がりで目(め)も碌々(ろくろく)見(み)えやしないわ。057エヽ仕方(しかた)がない、058鷹公(たかこう)の骨(ほね)だか音公(おとこう)の肉(にく)だか区別(くべつ)はつくまいが、059何(なん)でも女房(にようばう)や子(こ)の気休(きやす)めの為(ため)に、060これが鷹公(たかこう)の骨(ほね)だ、061これや髪(かみ)だと云(い)つて慰(なぐさ)めてやるより仕方(しかた)がないワイ。062暗(くら)いと云(い)つても、063これくらゐ暗(くら)い事(こと)は開闢(かいびやく)以来(いらい)だ』
064と云(い)ひながら四(よ)つ這(ばひ)になり、
065岩彦(いはひこ)『オイ鷹公(たかこう)の骨(ほね)ヤーイ、066音公(おとこう)の腕(かいな)ヤーイ、067俺(おれ)は岩公(いはこう)ぢや、068死(し)んでも魂魄(こんぱく)この世(よ)に留(とど)まつて居(を)るだらう、069骨(ほね)の所在地(ありか)ぐらゐは俺(おれ)に知(し)らせやい。070アヽコツクリ、071コツクリと何処(どこ)かへ散(ち)つて了(しま)つたと見(み)える。072あまり無残(むざん)だ、073焼(や)けても灰(はい)なと残(のこ)るのだが、074髪(かみ)の毛(け)一本(いつぽん)落(お)ちて居(を)らぬとは此奴(こいつ)はあんまり残酷(ざんこく)だ。075大方(おほかた)巌窟(いはや)の化物(ばけもの)が来(き)よつて、076余(あま)り弱音(よわね)を吹(ふ)くものだから、077蟒(うはばみ)の奴(やつ)弱味(よわみ)につけ込(こ)んで一呑(ひとの)みに呑(の)みよつたに違(ちが)ひないワ。078待(ま)て待(ま)て、079一行(いつかう)六(ろく)人(にん)の三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)、080五(ご)人(にん)まで大蛇(をろち)に呑(の)まれて俺(おれ)一人(ひとり)が何(ど)うしてオメオメと生(いき)て還(かへ)られようか。081待(ま)て待(ま)てこれから胆玉(きもたま)の太(ふと)いこの岩(いは)サンが、082大蛇(をろち)を見付(みつ)けたが最後(さいご)、083足(あし)でもグツと出(だ)して、084オイ蟒(うはばみ)の奴(やつ)、085尻(しり)から俺(おれ)を呑(の)めと言挙(ことあ)げしてやらう。086さうすれば大蛇(をろち)の奴(やつ)、087あの岩公(いはこう)は手強奴(てごはいやつ)だ、088彼奴(あいつ)だけは迚(とて)も呑(の)む事(こと)は出来(でき)ぬと因果腰(いんぐわごし)を極(き)めて居(を)つたのに、089先方(むかう)の方(はう)から呑(の)めと云(い)ひよる、090五(ご)人(にん)呑(の)むも六(ろく)人(にん)呑(の)むも一(いつ)しよだ。091ヤア美味(うまい)々々(うまい)と蛇(へび)が蛙(かへる)を呑(の)んだやうに、092呑(の)みにかかるだらう。093さうしたら此方(こつち)の勝利(しようり)だ。094神妙(しんめう)に呑(の)まれてやつて、095這入(はいり)がけに、096頤(あご)の片一方(かたいつぱう)に、097この十握(とつか)の劔(つるぎ)をグツと引(ひ)つかけて両手(りやうて)で力(ちから)一(いつ)ぱい柄(つか)を握(にぎ)り、098大蛇(をろち)の奴(やつ)がグツと呑(の)めばグツと切(き)れる。099グウグツと呑(の)めばグウグツと切(き)れる。100自業(じごう)自得(じとく)、101大蛇(をろち)は竹(たけ)を割(わ)つたやうに二(ふた)つにポカンと割(わ)れたが最後(さいご)、102呑(の)まれてからまだ間(ま)もない五(ご)人(にん)の宣伝使(せんでんし)、103虫(むし)の息(いき)でウヨウヨとやつて居(ゐ)るだらうから、104其処(そこ)へこの岩(いは)サンが恭(うやうや)しく神言(かみごと)を奏上(そうじやう)し、105声(こゑ)も涼(すず)しく言霊(ことたま)の水火(いき)をもつてウンとやつたが最後(さいご)息(いき)吹(ふ)き返(かへ)し、106アヽ誰(たれ)かと思(おも)へば岩公(いはこう)サンか、107イヤ岩(いは)サンか、108誠(まこと)にもつて有難(ありがた)い、109貴方(あなた)のお蔭(かげ)でこの弱(よわ)い吾々(われわれ)も命(いのち)が助(たす)かりましたと半泣(はんな)きに泣(な)きよつて、110手(て)の舞(ま)ひ足(あし)の踏(ふ)む処(ところ)を知(し)らずと云(い)ふ歓喜(くわんき)の幕(まく)が下(お)りるのだ。111可愛(かあい)い子(こ)には旅(たび)をさせと云(い)ふ事(こと)がある。112神(かみ)様(さま)も随分(ずゐぶん)皮肉(ひにく)だな、113大蛇(をろち)の喉坂峠(のどさかたうげ)を旅行(りよかう)して痛(いた)い味(あぢ)を知(し)り、114危険(きけん)な関所(せきしよ)を越(こ)えて初(はじ)めて勇壮(ゆうさう)活溌(くわつぱつ)なる大丈夫(だいぢやうぶ)の宣伝使(せんでんし)とならせる経綸(しぐみ)だらう。115あまり弱音(よわね)を吹(ふ)くものだから屹度(きつと)神(かみ)様(さま)の試錬(しれん)に遇(あ)うたのだらう、116愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して居(を)れば息(いき)が止(と)まるか知(し)れない。117ヤアヤア巌窟(いはや)に棲(す)む大蛇(をろち)の奴(やつ)、118五(ご)人(にん)喰(く)ふも六(ろく)人(にん)喰(く)ふも同(おな)じ事(こと)だ。119五(ご)人(にん)の奴(やつ)は麦飯(むぎめし)だ。120この岩(いは)サンは名(な)は固(かた)いが歯当(はあた)りのよい味(あぢ)のよい鮨米(すしまい)のやうな肉着(にくつ)きだよ。121サア早(はや)く尻(しり)の方(はう)から呑(の)んだり呑(の)んだり』
122 暗(くら)がりより『アハヽヽヽ、123ウフヽヽヽ』
124岩彦(いはひこ)『ヤイ大蛇(をろち)の奴(やつ)、125嬉(うれ)しいか、126嬉(うれ)しさうな笑(わら)ひ声(ごゑ)をしよつて、127サア早(はや)く呑(の)まぬかい』
128音彦(おとひこ)『モシモシ岩(いは)サン、129お気(き)が付(つ)きましたか、130それは誠(まこと)に結構(けつこう)でございます』
131岩彦(いはひこ)『モシモシ岩(いは)サン、132お気(き)が付(つ)きましたか、133結構(けつこう)だつて、134ソンナ辞令(じれい)は後(あと)にして遠慮(ゑんりよ)は入(い)らぬ。135結構(けつこう)だらう。136早(はや)く呑(の)んだり呑(の)んだり』
137鷹彦(たかひこ)『岩(いは)サン、138結構(けつこう)は結構(けつこう)ですが、139貴方(あなた)はお考(かんが)へ違(ちが)ひでせう。140吾々(われわれ)はお案(あん)じ下(くだ)さいますな、141助(たす)かつて居(を)りますよ』
142岩彦(いはひこ)『何(なん)だ、143尻(けつ)も甲(かふ)もあつたものかい、144足(あし)から喰(く)へ、145食料(しよくれう)に欠乏(けつぼう)して餓死(がし)に迫(せま)つて居(を)つた処(ところ)、146半(はん)ダースも人肉(じんにく)の温(あたた)かいのが来(き)たものだから、147結構(けつこう)でございますの、148吾々(われわれ)はお蔭(かげ)で助(たす)かりましたのと、149何(なに)を吐(ぬか)すのだい。150愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して居(を)ると侶伴(つれ)の奴(やつ)の息(いき)が切(き)れるワイ、151遠慮(ゑんりよ)は要(い)らぬ早(はや)く呑(の)まぬかい』
152亀彦(かめひこ)『モシモシ岩(いは)サン、153私(わたくし)は亀(かめ)でございます、154何卒(どうぞ)ご安心(あんしん)して下(くだ)さいませ。155種々(いろいろ)のお心(こころ)づくし、156骨身(ほねみ)にこたへて嬉(うれ)しうございます』
157岩彦(いはひこ)『ヤア貴様(きさま)は亀(かめ)と云(い)つたな、158狼(おほかみ)か、159骨身(ほねみ)にこたへるなンて何(なん)だい、160グツと一口(ひとくち)に呑(の)まぬかい。161バリバリと骨(ほね)も身(み)も一緒(いつしよ)にパクつかれては此方(こちら)もちつと都合(つがふ)が悪(わる)いワイ』
162 この時(とき)闇(くら)がりに、163六個(ろくこ)の光玉(くわうぎよく)いづくともなく現(あら)はれ来(きた)り、164たちまち五柱(いつはしら)の女神(めがみ)と、165一柱(ひとはしら)の鬼(おに)のやうな顔(かほ)した男(をとこ)とが現(あら)はれた。166岩公(いはこう)は驚(おどろ)いてこの姿(すがた)を見守(みまも)りゐる。
167 五(ご)人(にん)の女神(めがみ)には一々(いちいち)名札(なふだ)がついて居(ゐ)る。168見(み)れば鷹彦(たかひこ)の本(ほん)守護神(しゆごじん)、169梅彦(うめひこ)、170音彦(おとひこ)、171亀彦(かめひこ)、172駒彦(こまひこ)の本(ほん)守護神(しゆごじん)の名札(なふだ)をぶら下(さ)げて居(ゐ)る。173一方(いつぱう)の鬼(おに)の名(な)はと見(み)れば、174こは抑(そも)如何(いか)に、175一層(いつそう)広(ひろ)く長(なが)き名札(なふだ)にグシヤグシヤと文字(もじ)が現(あら)はれて居(ゐ)る。176よくよく見(み)れば、
177『この鬼(おに)は岩彦(いはひこ)の副(ふく)守護神(しゆごじん)なり、178本(ほん)守護神(しゆごじん)は岩彦(いはひこ)の驕慢(けうまん)不遜(ふそん)にして慢心(まんしん)強(つよ)き為(ため)に、179未(いま)だ顕現(けんげん)する事(こと)能(あた)はず。180一(いち)時(じ)も早(はや)く改心(かいしん)の上(うへ)、181かかる醜(みにく)き副(ふく)守護神(しゆごじん)に退却(たいきやく)を命(めい)ずべし。182野立彦(のだちひこの)命(みこと)の命(めい)に依(よ)り、183木花姫(このはなひめ)これを記(しる)す』
184と現(あら)はれて居(ゐ)る。
185岩彦(いはひこ)『ヤア大変(たいへん)だ。186五(ご)人(にん)の宣伝使(せんでんし)は何(なん)だ。187俄(にはか)に女(をんな)見(み)たやうな優(やさ)しい事(こと)を云(い)ひよると思(おも)つたら、188何奴(どいつ)も此奴(こいつ)もアンナ綺麗(きれい)な本(ほん)守護神(しゆごじん)が現(あら)はれたからだな。189しかしながら岩(いは)サンはどこまでも岩(いは)サンだ。190アンナ女々(めめ)しい本(ほん)守護神(しゆごじん)よりも、191仁王(にわう)様(さん)の様(やう)な鬼面(おにづら)をした副(ふく)守護神(しゆごじん)に守護(しゆご)して貰(もら)ふ方(はう)が悪魔(あくま)征伐(せいばつ)にはもつて来(こ)いだ。192未(ま)だ未(ま)だ武装(ぶさう)撤回(てつくわい)は出来(でき)ない。193ヤア副(ふく)守護神(しゆごじん)、194明日(あす)から九分(くぶ)九厘(くりん)までお前(まへ)が俺(おれ)の肉体(にくたい)を守護(しゆご)するのだよ、195一厘(いちりん)と云(い)ふところになつてから本(ほん)守護神(しゆごじん)の女神(めがみ)になればよいのだ。196何(なん)だ五(ご)人(にん)の宣伝使(せんでんし)奴(め)、197目的(もくてき)の半途(はんと)にして最早(もはや)一角(ひとかど)の神業(しんげふ)奉仕(ほうし)をしたやうに、198泰然(たいぜん)と澄(す)まし切(き)つて居(ゐ)よる。199これからが肝腎(かんじん)要(かなめ)の正念場(しやうねんば)だぞ。200エヽ仕方(しかた)がない、201副(ふく)守護神(しゆごじん)確(しつか)り頼(たの)む』
202鬼(おに)『俺(おれ)は、203お前(まへ)の買(か)ひ被(かぶ)つて居(ゐ)るやうな鬼(おに)ぢやない。204鬼(おに)みそだよ。205一(ひと)つの火(ひ)の玉(たま)にも雷(かみなり)にも胆(きも)を潰(つぶ)す柔(やさ)しい鬼(おに)だ。206姿(すがた)はかう強(つよ)さうに怖(こは)さうに見(み)えても、207肝腎(かんじん)の魂(たましひ)は味噌(みそ)のやうなものだよ。208アンアンアン、209オイオイオイ、210ウンウンウン、211エンエンエン、212インインイン』
213岩彦(いはひこ)『何(なん)だ、214不整頓(ふせいとん)な言霊(ことたま)の泣(な)き声(ごゑ)を出(だ)しよつて、215俺(おれ)はソンナ弱(よわ)い守護神(しゆごじん)と違(ちが)ふぞ。216貴様(きさま)大方(おほかた)偽神(にせがみ)だらう』
217鬼(おに)『それでも、218お前(まへ)の模型(もけい)だから仕方(しかた)がないわ。219空威張(からいば)りの上手(じやうづ)な、220胆玉(きもだま)の据(す)わらぬ、221見(み)かけ倒(たふ)しのガラクタ鬼(おに)だよ』
222岩彦(いはひこ)『さう云(い)へば、223何処(どこ)かの端(はし)が些(ちつ)と似(に)とるやうな、224矢張(やつぱり)さうかいなア。225ヤア本当(ほんたう)にこれから強(つよ)くなる。226貴様(きさま)今日(けふ)限(かぎ)り暇(ひま)を遣(つか)はす程(ほど)に、227必(かなら)ず必(かなら)ず岩(いは)サンの肉体(にくたい)に踏(ふ)み迷(まよ)つて戻(もど)つて来(く)るな。228門火(かどび)を焚(た)いて送(おく)つてやるのが本当(ほんたう)なれど、229生憎(あひにく)焚物(たきもの)もなし、230不本意(ふほんい)だが今日(けふ)限(かぎ)り帰(かへ)つて仕舞(しま)へ』
231鬼(おに)『ハイハイ、232何(なに)しにマゴマゴとして居(を)りませう。233疾(と)うの昔(むかし)から帰(かへ)り度(た)くて帰(かへ)り度(た)くて仕方(しかた)が無(な)けれども、234お前(まへ)の執着心(しふちやくしん)が私(わし)を今(いま)まで鉄(かね)の鎖(くさり)で縛(しば)つて何(ど)うしても斯(か)うしても解放(かいはう)してくれないのだ。235左様(さやう)ならこれでお暇(ひま)を致(いた)しませう、236アリヨウス』
237岩彦(いはひこ)『アーア、238これでこの岩公(いはこう)も何(なん)だか其辺(そこら)が明(あ)かるくなつたやうな心持(こころもち)が致(いた)しました。239モシモシ五(ご)人(にん)の宣伝使(せんでんし)様(さま)、240ご苦労(くらう)でございました。241サアサアこれから貴方(あなた)方(がた)のお伴(とも)して、242タカオ山脈(さんみやく)のコシの峠(たうげ)の麓(ふもと)を指(さ)して参(まゐ)りませう。243イヤもう私(わたくし)の鬼(おに)を逐出(おひだ)す為(ため)にいかいご苦労(くらう)をかけました』
244一同(いちどう)『アハヽヽヽ岩(いは)サンお目出度(めでた)う、245あれをご覧(らん)なさいませ、246鬼(おに)の帰(かへ)りた後(あと)に、247あのやうな立派(りつぱ)な守護神(しゆごじん)が顕現(けんげん)されました』
248岩彦(いはひこ)『ヤア、249本当(ほんたう)にこれはこれは、250マア何(なん)と云(い)ふ立派(りつぱ)な、251お岩彦(いはひこ)の御(おん)御(ご)守護神(しゆごじん)様(さま)だこと、252マアマア、253よくもよくも御(おん)御(ご)守護(しゆご)下(くだ)さいました。254お有難(ありがた)うございます』
255守護神(しゆごじん)『岩(いは)サン分(わか)りましたか、256ようマア鬼(おに)を去(いな)して下(くだ)さいました。257私(わたくし)も天(あま)の岩戸(いはと)が開(ひら)けたやうな心持(こころもち)が致(いた)します。258サアサアこれから貴方(あなた)と私(わたくし)と霊肉(れいにく)一致(いつち)して膠(にかは)の如(ごと)く漆(うるし)の如(ごと)く密着(みつちやく)不離(ふり)の身魂(みたま)となつて、259岩戸(いはと)開(びら)きの神業(しんげふ)に参加(さんか)さして頂(いただ)きませう』
260岩彦(いはひこ)『これはこれは畏(おそ)れ入(い)つたるご挨拶(あいさつ)、261本(ほん)守護神(しゆごじん)様(さま)のご迷惑(めいわく)になる事(こと)ばかり、262我(が)を張(は)り詰(つめ)て致(いた)して来(き)ました。263どうぞこれからは比翼(ひよく)連理(れんり)偕老(かいらう)同穴(どうけつ)の夫婦(ふうふ)のやうになつて、264二世(にせ)も三世(さんせ)も、265後(さき)の世(よ)かけてご提携(ていけい)を願(ねが)ひます』
266 ここに六(ろく)人(にん)の本(ほん)守護神(しゆごじん)と、267六(ろく)人(にん)の宣伝使(せんでんし)は巌窟(がんくつ)の広場(ひろば)を指(さ)し、268手(て)を拍(う)ち宣伝歌(せんでんか)を高唱(かうしやう)し、269春(はる)の野(の)の花(はな)に蝶(てふ)の狂(くる)ふが如(ごと)く、270大地(だいち)を踏(ふ)み轟(とどろ)かし、
271一同『開(ひら)いた開(ひら)いた菜(な)の花(はな)が開(ひら)いた
272蓮(はす)の花(はな)が開(ひら)いた
273心(こころ)の花(はな)も開(ひら)いた
274身魂(みたま)のもつれも開(ひら)いた
275開(ひら)いた開(ひら)いた
276常夜(とこよ)の闇(やみ)となり果(は)てし
277天(あま)の岩戸(いはと)もサラリと開(ひら)いた』
278 各自(かくじ)の本(ほん)守護神(しゆごじん)はやがて、279得(え)も云(い)はれぬ五色(ごしき)の玉(たま)となつて各自(かくじ)の頭上(づじやう)に留(と)まつた。280玉(たま)は頭脳(づなう)に吸収(きふしう)さるる如(ごと)く、281追々(おひおひ)その容積(ようせき)を減(げん)じ、282遂(つひ)には宣伝使(せんでんし)の体内(たいない)に残(のこ)らず浸(し)み込(こ)んで仕舞(しま)つた。
283 これより一行(いつかう)はこの巌窟(がんくつ)を立(た)ち出(いで)て、284原野(げんや)を渡(わた)り、285コシの峠(たうげ)を指(さ)して勇(いさ)ましく進(すす)み行(ゆ)く。
286(大正一一・三・二一 旧二・二三 加藤明子録)
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