霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 袂別(けつべつ)〔九二七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第33巻 海洋万里 申の巻 篇:第2篇 鶴亀躍動 よみ(新仮名遣い):かくきやくどう
章:第12章 袂別 よみ(新仮名遣い):けつべつ 通し章番号:927
口述日:1922(大正11)年08月28日(旧07月6日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年11月10日
概要: 舞台:ウヅの館 あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
神素盞嗚大神は、言依別命とカールを連れて天の鳥舟に乗り込み、国依別夫婦一同に見送られてウヅの都を後にし、フサの国の斎苑の館への帰途についた。
大神は、高砂島は殊のほか神が選んだすばらしい場所であり、それゆえ日々固く神の教えを守って人々を導くように、という道歌を残した。
国依別は、大神の歌に応えて決意を歌い、また言葉に尽くせぬ感謝を歌って大神との別れを惜しんだ。末子姫も空を打ち仰ぎ、別れを惜しみ、父大神への感謝とこれからの高砂島の司としての決意を歌った。
末子姫の歌の中には、カールが木花姫命の化身であることが明かされていた。末子姫は歌いまた述懐を終わると、一同に会釈をして神殿に進み入った。
竜国別は歌の中に、大神との別れを惜しみ、自分は今後、母・鷹依姫とともに自転倒島へと帰るつもりであることを詠み込んだ。
高姫も大神との別れを惜しみ、大神への感謝を述べ、国依別と末子姫の前途を祝しまた高砂島での活動を任せつつ、高砂島一同への別れを歌に詠み込んだ。
鷹依姫も大神への思いを述べ、これまでの述懐を詠みつつ、自転倒島への帰還と、まだ果たせぬ玉探しの行く末を思う歌を歌った。
テーリスタンとカーリンスもそれぞれ述懐の歌を歌った。高姫、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンス、常彦の一行はウヅの都に別れを告げ、テル山峠を越えてハラの港に出て、自転倒島に向かって帰ることとなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-08-21 19:47:29 文字数:3150 OBC :rm3312
愛善世界社版:121頁 八幡書店版:第6輯 296頁 修補版: 校定版:125頁 普及版:45頁 初版: ページ備考:
001 神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)は言依別(ことよりわけの)命(みこと)、002カールと共(とも)にウヅの都(みやこ)を後(あと)にして、003国依別(くによりわけ)夫婦(ふうふ)を初(はじ)め其(その)他(た)一同(いちどう)に送(おく)られ、004天(あま)の鳥船(とりふね)に乗(の)りて、005空中(くうちう)高(たか)く羽(は)ばたき勇(いさ)ましく、006フサの国(くに)斎苑(いそ)の館(やかた)を指(さ)して帰(かへ)り玉(たま)ふこととなりましぬ。007別(わか)れに臨(のぞ)み、008大神(おほかみ)は一同(いちどう)に左(さ)の歌(うた)を賜(たま)はりける。
009神素盞嗚大神『天(あめ)と地(つち)との中空(なかぞら)を
010功績(いさを)も高(たか)く身(み)も高(たか)く
011心(こころ)も広(ひろ)く帰(かへ)り行(ゆ)く
012斎苑(いそ)の館(やかた)へ欣々(いそいそ)と
013言依別(ことよりわけ)の神司(かむつかさ)
014カールを従(したが)へ三人(みたり)連(づ)れ
015ウヅの都(みやこ)を今(いま)はしも
016別(わか)れに臨(のぞ)みて末子姫(すゑこひめ)
017国依別(くによりわけ)や其(その)外(ほか)の
018百(もも)の司(つかさ)に宣(の)べておく
019あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
020神(かみ)の恵(めぐみ)のいや深(ふか)く
021道(みち)の御稜威(みいづ)のいや尊(たか)く
022山川(やまかは)清(きよ)く野(の)は青(あを)き
023高砂島(たかさごじま)は神(かみ)の国(くに)
024尊(たふと)き神(かみ)の殊更(ことさら)に
025選(えら)み玉(たま)ひし真秀良場(まほらば)ぞ
026心(こころ)を清(きよ)め身(み)を浄(きよ)め
027神(かみ)の教(をしへ)を朝夕(あさゆふ)に
028固(かた)く守(まも)りて三五(あななひ)の
029道(みち)の光(ひかり)を輝(かがや)かし
030青人草(あをひとぐさ)を悉(ことごと)く
031恵(めぐみ)の露(つゆ)にうるほはせ
032千代(ちよ)も八千代(やちよ)も穏(おだや)かに
033治(をさ)め玉(たま)へよ惟神(かむながら)
034神(かみ)の司(つかさ)や信徒(まめひと)に
035別(わか)れに臨(のぞ)み宣(の)べておく
036あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
037御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ』
038と歌(うた)ひ玉(たま)へば、039国依別(くによりわけ)は直(ただち)に立(た)つて歌(うた)を歌(うた)ひ、040大神(おほかみ)に名残(なごり)を惜(を)しみまいらせけり。
041国依別『四方(よも)の雲霧(くもきり)吹(ふ)き払(はら)ひ
042汚(けが)れを清(きよ)め天地(あめつち)の
043百(もも)の神人(かみびと)助(たす)けむと
044心(こころ)を配(くば)り身(み)を砕(くだ)き
045尽(つ)くさせ玉(たま)ふ瑞御霊(みづみたま)
046神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)の
047神言(みこと)を畏(かしこ)みウヅの国(くに)
048神(かみ)の司(つかさ)に選(えら)まれて
049末子(すゑこ)の姫(ひめ)と諸共(もろとも)に
050アルゼンチンを守(まも)りつつ
051三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)を
052ウヅの御国(みくに)は云(い)ふも更(さら)
053高砂島(たかさごじま)は尚(なほ)愚(おろか)
054常世(とこよ)の国(くに)の果(は)て迄(まで)も
055開(ひら)き進(すす)めて大神(おほかみ)の
056深(ふか)き恵(めぐみ)に酬(むく)いなむ
057吾(われ)は卑(いや)しき身(み)を以(もつ)て
058尊(たふと)き神(かみ)の御裔(みすゑ)なる
059末子(すゑこ)の姫(ひめ)の夫(つま)となり
060空(むな)しく月日(つきひ)を送(おく)る身(み)の
061うら恥(はづ)かしき神司(かむつかさ)
062今(いま)より心(こころ)を練直(ねりなほ)し
063千代(ちよ)も八千代(やちよ)に永久(とこしへ)に
064皇(すめ)大神(おほかみ)の御(おん)教(をしへ)
065あななひまつりうまし世(よ)を
066五六七(みろく)の神世(かみよ)と開(ひら)きなむ
067あゝ大神(おほかみ)の御(おん)恵(めぐみ)
068仮令(たとへ)天地(てんち)は変(かは)るとも
069いかで忘(わす)れむ神心(かみごころ)
070心(こころ)を平(たひら)に安(やす)らかに
071国依別(くによりわけ)や末子姫(すゑこひめ)
072ウヅの館(やかた)に御心(みこころ)を
073配(くば)らせ玉(たま)はずすくすくに
074天津(あまつ)御空(みそら)をかけらして
075御国(みくに)に帰(かへ)らせ玉(たま)へかし
076あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
077親子(おやこ)夫婦(ふうふ)の生別(いきわか)れ
078名残(なごり)は尽(つ)きじ雲(くも)の上(うへ)
079仰(あふ)ぐも高(たか)し君(きみ)の恩(おん)
080謹(つつし)み感謝(かんしや)し奉(たてまつ)る
081あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
082御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ』
083 茲(ここ)に素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)は再(ふたた)び天(あま)の鳥船(とりふね)に乗(の)つて、084天空(てんくう)高(たか)く帰(かへ)り玉(たま)ひぬ。085末子(すゑこ)の姫(ひめ)は空(そら)を打仰(うちあふ)ぎ、086歌(うた)を詠(よ)む。087其(その)歌(うた)、
088末子姫『久方(ひさかた)の天津(あまつ)御空(みそら)を打仰(うちあふ)ぎ
089隠(かく)れし後(あと)も眺(なが)めつるかな。
090垂乳根(たらちね)の父(ちち)は雲井(くもゐ)の空(そら)高(たか)く
091かけりて波斯(フサ)に帰(かへ)りましけり。
092今(いま)暫(しば)し待(ま)たせ玉(たま)へと願(ねが)ふ間(ま)も
093なくなく父(ちち)は帰(かへ)りましけり。
094打(う)ち仰(あふ)ぎ眺(なが)めすかして大空(おほぞら)の
095清(きよ)きは父(ちち)の心(こころ)なる哉(かな)。
096国依別(くによりわけ)神(かみ)の命(みこと)と諸共(もろとも)に
097ウヅの館(やかた)に清(きよ)く仕(つか)へむ。
098言依別(ことよりわけ)神(かみ)の命(みこと)の御姿(みすがた)を
099仰(あふ)けば清(きよ)し瑞御霊(みづみたま)かも。
100言依別(ことよりわけ)神(かみ)の命(みこと)はいかにして
101珍(うづ)の館(やかた)を去(さ)りましにけむ。
102木(こ)の花(はな)の神(かみ)の命(みこと)の分霊(わけみたま)
103カールの司(つかさ)いとなつかしき哉(かな)。
104大空(おほぞら)を昇(のぼ)りつめたる鳥船(とりふね)は
105恵(めぐみ)の露(つゆ)をふらしてぞ行(ゆ)く。
106霊(たま)幸(ち)はふ神(かみ)の恵(めぐみ)を朝夕(あさゆふ)に
107忘(わす)れざらまし夫婦(めをと)二人(ふたり)は。
108天降(あまくだ)り玉(たま)ひし父(ちち)も今(いま)は早(はや)
109雲井(くもゐ)の空(そら)に隠(かく)れましけり。
110千早(ちはや)ふる神(かみ)の造(つく)りしウヅの国(くに)
111高砂島(たかさごじま)の国(くに)の真秀良場(まほらば)。
112桃上彦(ももがみひこ)神(かみ)の司(つかさ)の鎮(しづ)まりし
113ウヅの神国(かみくに)殊(こと)にさやけき。
114国彦(くにひこ)の神(かみ)の御裔(みすゑ)の松若彦(まつわかひこ)が
115尽(つく)す誠(まこと)は神(かみ)ぞ知(し)るらむ。
116高砂(たかさご)の尾(を)の上(へ)に立(た)てる松若彦(まつわかひこ)の
117誉(ほまれ)は千代(ちよ)に輝(かがや)きやせむ。
118惟神(かむながら)神(かみ)の御前(みまへ)に慴(ひ)れ伏(ふ)して
119朝(あさ)な夕(ゆふ)なに国(くに)を守(まも)らむ。
120数万(すまん)年(ねん)歴史(れきし)の末(すゑ)に夫(つま)と言(い)ひ
121妻(つま)といふ者(もの)生(うま)れ来(こ)しかな。
122垂乳根(たらちね)の親(おや)の恵(めぐみ)を身(み)に受(う)けて
123ウヅの都(みやこ)に照(て)りわたるかな。
124朝日(あさひ)さす夕日(ゆふひ)輝(かがや)くウヅの国(くに)
125恵(めぐみ)は殊(こと)に高砂(たかさご)の島(しま)。
126国民(くにたみ)のかまどの煙(けむり)賑(にぎは)しく
127竜世(たつよ)の姫(ひめ)の恵(めぐみ)尊(たふと)き。
128アマゾンの河(かは)の魔神(まがみ)を言向(ことむ)けし
129言依別(ことよりわけ)や国依別(くによりわけ)の神(かみ)。
130国依別(くによりわけ)神(かみ)の命(みこと)の働(はたら)きに
131時雨(しぐれ)の森(もり)は治(をさ)まりにけり』
132 末子姫(すゑこひめ)は三十一(みそひと)文字(もじ)の歌(うた)を以(もつ)て、133名残(なごり)を惜(をし)み、134或(あるひ)は述懐(じゆつくわい)を述(の)べなどして、135茲(ここ)に一同(いちどう)に会釈(ゑしやく)し、136神殿(しんでん)指(さ)して進(すす)み入(い)りにける。
137 竜国別(たつくにわけ)は別(わか)れに臨(のぞ)み、138三十一(みそひと)文字(もじ)を詠(よ)む。139其(その)歌(うた)、
140竜国別『霊(たま)幸(ち)はふ神(かみ)の国依(くにより)別(わか)れ別(わか)れに
141竜国別(たつくにわけ)の心(こころ)悲(かな)しき。
142神国(かみくに)を今(いま)竜国別(たつくにわけ)の神司(かむつかさ)
143母(はは)諸共(もろとも)に自凝島(おのころ)へ行(ゆ)かむ』
144 高姫(たかひめ)の歌(うた)、
145高姫『高砂(たかさご)の千歳(ちとせ)の松(まつ)に今(いま)しばし
146別(わか)れなむとす名残(なごり)惜(を)しさよ。
147遥々(はるばる)と海山(うみやま)越(こ)えてウヅの国(くに)
148珍(うづ)の身魂(みたま)と吾(われ)はなりぬる。
149惟神(かむながら)神(かみ)の光(ひかり)に照(て)らされて
150高姫(たかひめ)胸(むね)も晴(は)れわたりける。
151素盞嗚(すさのをの)神(かみの)尊(みこと)のいます限(かぎ)り
152世(よ)はおだやかに治(をさ)まりて行(ゆ)く。
153高砂(たかさご)の島(しま)に天降(あも)りし素盞嗚(すさのをの)
154神(かみ)の尊(みこと)ぞ尊(たふと)かりけり。
155国依別(くによりわけ)貴(うづ)の命(みこと)の神司(かむつかさ)
156千代(ちよ)に八千代(やちよ)に御国(みくに)守(まも)れよ。
157大神(おほかみ)の八人(やたり)乙女(をとめ)の末子姫(すゑこひめ)
158わけて清(きよ)けき君(きみ)の御姿(みすがた)。
159松若彦(まつわかひこ)神(かみ)の命(みこと)の神司(かむつかさ)
160ウヅの館(やかた)に永遠(とは)に仕(つか)へよ。
161惟神(かむながら)神(かみ)の御国(みくに)を高姫(たかひめ)が
162別(わか)れ惜(をし)みて神言(かみごと)を宣(の)る』
163 鷹依姫(たかよりひめ)も亦(また)三十一(みそひと)文字(もじ)を詠(よ)む。164其(その)歌(うた)、
165鷹依姫『自凝(おのころ)の島(しま)より来(きた)る鷹依姫(たかよりひめ)の
166神(かみ)の司(つかさ)は今(いま)別(わか)れなむ。
167これやこの行(ゆ)くも帰(かへ)るも別(わか)れても
168神(かみ)の恵(めぐみ)に大本(おほもと)の道(みち)。
169足曳(あしびき)の山(やま)を踏(ふ)み越(こ)え川(かは)わたり
170海(うみ)に浮(うか)びて神(かみ)の道(みち)行(ゆ)く。
171国依別(くによりわけ)貴(うづ)の命(みこと)や末子姫(すゑこひめ)
172幸(さち)多(おほ)かれと朝夕(あさゆふ)祈(いの)る。
173鷹依姫(たかよりひめ)神(かみ)の司(つかさ)は珍(うづ)の都(みやこ)
174別(わか)れむとして涙(なみだ)こぼるる。
175惟神(かむながら)神(かみ)の御(おん)為(ため)道(みち)の為(ため)
176世人(よびと)の為(ため)に尽(つく)す真心(まごころ)。
177アマゾンの河(かは)の流(なが)れはさかしくも
178神(かみ)とわたればさかしくもなし。
179アマゾンの時雨(しぐれ)の森(もり)に鷹依(たかより)の
180姫(ひめ)の司(つかさ)は心(こころ)残(のこ)りぬ。
181月(つき)の神(かみ)斎(いつ)きまつりし兎(う)の都(みやこ)
182今(いま)は恋(こひ)しくなりにけるかな。
183黄金(わうごん)の玉(たま)の所在(ありか)を探(たづ)ねむと
184求(ま)ぎ来(きた)りける親子(おやこ)悲(かな)しも。
185惟神(かむながら)神(かみ)の御前(みまへ)にひれ伏(ふ)して
186ウヅの館(やかた)の幸(さち)を祈(いの)らむ。
187見渡(みわた)せば山川(やまかは)清(きよ)く野(の)は青(あを)し
188天津(あまつ)御空(みそら)は真澄(ますみ)の鏡(かがみ)。
189野(の)も山(やま)も清(きよ)くさやけき神国(かみくに)に
190別(わか)れて帰(かへ)る名残(なごり)惜(を)しさよ。
191自凝(おのころ)の島(しま)を立出(たちい)で早(はや)三年(みとせ)
192四年振(よとせぶり)にて錦(にしき)の宮(みや)へ。
193四尾(よつを)の山(やま)の麓(ふもと)にそそり立(た)つ
194錦(にしき)の宮(みや)を遠(とほ)く拝(をが)みつ。
195素盞嗚(すさのをの)神(かみの)尊(みこと)の御姿(みすがた)を
196近(ちか)く拝(をが)みし事(こと)の嬉(うれ)しさ。
197言依別(ことよりわけ)神(かみ)の命(みこと)に巡(めぐ)り会(あ)ひ
198雄々(をを)しき姿(すがた)見(み)たる嬉(うれ)しさ。
199国依別(くによりわけ)神(かみ)の命(みこと)よ今日(けふ)よりは
200心(こころ)を配(くば)れ重荷(おもに)負(お)ふ身(み)は。
201八乙女(やおとめ)の末子(すゑこ)の姫(ひめ)の御(おん)館(やかた)
202今(いま)別(わか)れ行(ゆ)く心(こころ)悲(かな)しき。
203惟神(かむながら)神(かみ)の恵(めぐみ)の幸(さち)はひて
204又(また)会(あ)ふ春(はる)を待(ま)ちつつぞ経(へ)む』
205 テーリスタンは覚束(おぼつか)なげに歌(うた)を詠(よ)む。
206テーリスタン『鷹依姫(たかよりひめ)神(かみ)の司(つかさ)に従(したが)ひて
207玉(たま)を索(もと)めつ今(いま)此処(ここ)にあり。
208玉々(たまたま)と玉(たま)に心(こころ)を奪(うば)はれて
209今(いま)はたまらぬ悲(かな)しい別(わか)れ。
210魂(たましひ)はどこかの空(そら)に宿替(やどがへ)し
211テーリスタンの魂無(たまな)し男(をとこ)。
212われも亦(また)自凝島(おのころじま)に立帰(たちかへ)り
213若草(わかぐさ)の妻(つま)持(も)たむとぞ思(おも)ふ。
214若草(わかぐさ)の妻(つま)の命(みこと)と手(て)をひいて
215ウヅの都(みやこ)にいます芽出(めで)たさ。
216素盞嗚(すさのをの)神(かみの)尊(みこと)の御(おん)姿(すがた)
217伏(ふ)し拝(をが)む時(とき)涙(なみだ)こぼれつ。
218言依別(ことよりわけ)神(かみ)の命(みこと)は空(そら)高(たか)く
219吾(わ)れを見棄(みす)てて去(さ)りましにけり。
220カールさま二人(ふたり)の後(あと)に従(したが)ひて
221身(み)もカールガールと御空(みそら)行(ゆ)くかな。
222高姫(たかひめ)も漸(やうや)く心(こころ)和(やは)らぎて
223久方(ひさかた)振(ぶ)りに笑(わら)ひ顔(がほ)見(み)る。
224いと涼(すず)し風(かぜ)吹(ふ)く島(しま)の神(かみ)の国(くに)
225後(あと)に見棄(みす)てて帰(かへ)る惜(を)しさよ。
226黒姫(くろひめ)の生命(いのち)救(すく)ひし其(その)為(ため)に
227高砂島(たかさごじま)に退(やら)はれにけり。
228烏羽玉(うばたま)の心(こころ)も黒(くろ)き黒姫(くろひめ)は
229今(いま)や何処(いづこ)の空(そら)に彷徨(さまよ)ふ。
230いつ迄(まで)も腰折歌(こしをれうた)は尽(つ)きざれど
231神(かみ)のまにまにとどめおくなり』
232 カーリンスは、233又(また)もや三十一(みそひと)文字(もじ)を詠(よ)む。
234カーリンス『カーリンス、テーリスタンと諸共(もろとも)に
235涙(なみだ)の海(うみ)に漂(ただよ)ひにけり。
236高砂(たかさご)の島(しま)にやうやう渡(わた)り来(き)て
237玉捜(たまさが)しする時(とき)の苦(くる)しさ。
238天祥(てんしやう)の山(やま)の瀑布(ばくふ)へ現(あらは)れて
239モールバンドを言向(ことむ)け和(やは)しぬ。
240言向(ことむ)けしモールバンドの功績(いさをし)は
241カーリンスならで鷹依(たかより)の姫(ひめ)。
242竜国別(たつくにわけ)神(かみ)の命(みこと)の鼻(はな)高(たか)き
243帽子(ぼうし)ケ岳(だけ)に登(のぼ)り行(ゆ)くかな。
244素盞嗚(すさのをの)神(かみの)尊(みこと)を伏(ふ)し拝(をが)み
245身(み)の置所(おきどころ)知(し)らぬ嬉(うれ)しさ。
246嬉(うれ)しやと思(おも)ふ間(ま)もなく大神(おほかみ)は
247われを見(み)すてて帰(かへ)りましけり。
248高姫(たかひめ)の司(つかさ)と共(とも)に海原(うなばら)を
249渡(わた)ると思(おも)へば涙(なみだ)含(ぐ)まるる。
250高姫(たかひめ)よ心(こころ)の駒(こま)を立直(たてなほ)し
251波(なみ)太平洋(たいへいやう)を渡(わた)りましませ。
252カーリンスこれが一生(いつしやう)の御(お)願(ねがひ)ぞ
253波高姫(なみたかひめ)よ心(こころ)鎮(しづ)めよ。
254村肝(むらきも)の心(こころ)の海(うみ)に荒波(あらなみ)の
255竜国別(たつくにわけ)よ暫(しば)し鎮(しづ)まれ』
256と口(くち)から出放題(ではうだい)の歌(うた)を並(なら)べ、257高姫(たかひめ)、258鷹依姫(たかよりひめ)、259竜国別(たつくにわけ)、260テーリスタン、261カーリンス、262常彦(つねひこ)の一行(いつかう)は、263ウヅの都(みやこ)に別(わか)れを告(つ)げ、264テル山峠(やまたうげ)を踏(ふ)み越(こ)え、265ハラの港(みなと)に出(い)で、266自凝島(おのころじま)に向(むか)つて帰(かへ)ることとなりにけり。
267(大正一一・八・二八 旧七・六 松村真澄録)
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