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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第67巻(午の巻)
序文
総説
第1篇 美山梅光
第1章 梅の花香
第2章 思想の波
第3章 美人の腕
第4章 笑の座
第5章 浪の皷
第2篇 春湖波紋
第6章 浮島の怪猫
第7章 武力鞘
第8章 糸の縺れ
第9章 ダリヤの香
第10章 スガの長者
第3篇 多羅煩獄
第11章 暗狐苦
第12章 太子微行
第13章 山中の火光
第14章 獣念気
第15章 貂心暴
第16章 酒艶の月
第17章 晨の驚愕
第4篇 山色連天
第18章 月下の露
第19章 絵姿
第20章 曲津の陋呵
第21章 針灸思想
第22章 憧憬の美
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第67巻(午の巻)
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(B)
(N)
晨の驚愕 >>>
第一六章
酒艶
(
しゆえん
)
の
月
(
つき
)
〔一七一八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第67巻 山河草木 午の巻
篇:
第3篇 多羅煩獄
よみ(新仮名遣い):
たらはんごく
章:
第16章 酒艶の月
よみ(新仮名遣い):
しゅえんのつき
通し章番号:
1718
口述日:
1924(大正13)年12月28日(旧12月3日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年8月19日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
玄真坊はダリヤが自分に惚れたと勘違いし、上機嫌で酒を飲む。
ダリヤはコルトン、シャカンナにも酒を進め、酔わせてしまう。
ダリヤは玄真坊、シャカンナ、コルトンが酔いつぶれると、下戸のバルギーを誘惑して、手引きをさせ、いっしょに岩窟を逃げ出してしまう。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6716
愛善世界社版:
206頁
八幡書店版:
第12輯 106頁
修補版:
校定版:
209頁
普及版:
68頁
初版:
ページ備考:
001
玄真坊
(
げんしんばう
)
はダリヤ
姫
(
ひめ
)
が、
002
俄
(
にはか
)
にやさしくなり、
003
どうやら
自分
(
じぶん
)
にゾッコン
惚
(
ほれ
)
て
来
(
き
)
たやうな
気分
(
きぶん
)
がしたので
益々
(
ますます
)
得意
(
とくい
)
となり、
004
顔
(
かほ
)
の
相好
(
さうがう
)
を
崩
(
くづ
)
し、
005
身知
(
みし
)
らずに
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
から
川端
(
かはばた
)
の
乱杭
(
らんぐひ
)
のやうな
歯
(
は
)
の
口
(
くち
)
へ
盃
(
さかづき
)
を
運
(
はこ
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
006
玄
(
げん
)
『オイ、
007
ダリヤ、
008
さう
夫
(
をつと
)
許
(
ばか
)
りに
酒
(
さけ
)
をつぐものぢやない。
009
エー、
010
チツト
人
(
ひと
)
さまの
手前
(
てまへ
)
もあらうぞや。
011
どうだ、
012
チツト
親方
(
おやかた
)
にも
注
(
つ
)
がないか』
013
ダリ『ホヽヽヽヽ、
014
あのマア
憎
(
にく
)
たらしい
事
(
こと
)
仰有
(
おつしや
)
いますわいのう。
015
何
(
なん
)
ぼ
親方
(
おやかた
)
が
大切
(
たいせつ
)
だとて、
016
一生
(
いつしやう
)
身
(
み
)
を
任
(
まか
)
した
夫
(
をつと
)
を
後
(
あと
)
にする
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ますか。
017
妾
(
わたし
)
もチツト
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ふてゐますから、
018
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すか
知
(
し
)
れませぬが、
019
そこは、
020
はしたない
女
(
をんな
)
と
思召
(
おぼしめ
)
してお
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませや』
021
玄
(
げん
)
『ウンウンヨシヨシ、
022
お
前
(
まへ
)
の
白
(
しろ
)
いお
手々
(
てて
)
で
燗徳利
(
かんどくり
)
を
握
(
にぎ
)
つた
姿
(
すがた
)
と
云
(
い
)
つたら
天下
(
てんか
)
無類
(
むるゐ
)
だよ。
023
エヘヽヽヽヽ。
024
酔
(
よ
)
うて
能
(
よ
)
うて、
025
うまうて
能
(
よ
)
うて、
026
気分
(
きぶん
)
が
冴
(
さ
)
えて
能
(
よ
)
うて、
027
腹
(
はら
)
にたまらいで
能
(
よ
)
うて、
028
ヨイヨイヨイの
宵
(
よひ
)
の
口
(
くち
)
から、
029
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
ける
迄
(
まで
)
、
030
しつぽりと
夫婦
(
ふうふ
)
が
酒
(
さけ
)
汲
(
く
)
み
交
(
か
)
はし、
031
浩然
(
こうぜん
)
の
気
(
き
)
を
養
(
やしな
)
ふのは、
032
又
(
また
)
とない
天下
(
てんか
)
の
愉快
(
ゆくわい
)
だ。
033
月
(
つき
)
か
雪
(
ゆき
)
か
花
(
はな
)
かとも
云
(
い
)
ふべき
美人
(
びじん
)
のお
前
(
まへ
)
に
好
(
す
)
かれる
俺
(
おれ
)
は
034
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
果報者
(
くわほうもの
)
だらう。
035
これこれシャカンナ
殿
(
どの
)
、
036
羨
(
けな
)
るうは
厶
(
ござ
)
らぬか、
037
エー。
038
今夜
(
こんや
)
に
限
(
かぎ
)
り
吾
(
わが
)
妻
(
つま
)
の
弁才天
(
べんざいてん
)
をして、
039
貴下
(
きか
)
のお
酒
(
さけ
)
の
相手
(
あひて
)
を
命
(
めい
)
じますから、
040
聊
(
いささ
)
か
拙僧
(
せつそう
)
の
好意
(
かうい
)
を
買
(
か
)
つて
下
(
くだ
)
さるでせうな。
041
ゲー、
042
アフヽヽヽアーア。
043
何
(
なん
)
とよくまはる
酒
(
さけ
)
だらう。
044
まだ
一二合
(
いちにがふ
)
より
飲
(
の
)
んでゐない
積
(
つも
)
りだのに』
045
シャ『アハヽヽヽ、
046
拙者
(
せつしや
)
も
大変
(
たいへん
)
酩酊
(
めいてい
)
して
厶
(
ござ
)
る。
047
花
(
はな
)
に
嘘
(
うそ
)
つくダリヤ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
顔
(
かんばせ
)
を
拝
(
をが
)
み
乍
(
なが
)
ら、
048
芳醇
(
はうじゆん
)
な
酒
(
さけ
)
をひつかける
心持
(
こころもち
)
と
云
(
い
)
つたら、
049
春
(
はる
)
の
花見
(
はなみ
)
よりも
秋
(
あき
)
の
月見
(
つきみ
)
、
050
紅葉見
(
もみぢみ
)
、
051
地上
(
ちじやう
)
一面
(
いちめん
)
の
銀世界
(
ぎんせかい
)
を
現
(
げん
)
じた
雪見
(
ゆきみ
)
の
宴
(
えん
)
よりも、
052
何程
(
なにほど
)
爽快
(
さうくわい
)
だか
知
(
し
)
れませぬわい』
053
玄
(
げん
)
『いかにも、
054
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
らう。
055
之
(
これ
)
も
拙者
(
せつしや
)
の
貴下
(
きか
)
に
対
(
たい
)
する
好意
(
かうい
)
の
賜物
(
たまもの
)
で
厶
(
ござ
)
るぞ。
056
感謝
(
かんしや
)
せなくちや、
057
バヽヽ
罰
(
ばち
)
が
当
(
あた
)
りますよ』
058
シャ『イヤ、
059
モウお
目出度
(
めでた
)
い
所
(
ところ
)
を
沢山
(
たくさん
)
に
拝見
(
はいけん
)
致
(
いた
)
し、
060
シャカンナも
満足
(
まんぞく
)
致
(
いた
)
しました。
061
此
(
この
)
光景
(
くわうけい
)
を
眺
(
なが
)
めて、
062
霊前
(
れいぜん
)
から
亡
(
な
)
き
女房
(
にようばう
)
の
霊
(
れい
)
が
喜
(
よろこ
)
んでる
事
(
こと
)
でせう。
063
南無
(
なむ
)
幽霊
(
いうれい
)
頓生
(
とんしやう
)
菩提
(
ぼだい
)
…うまい
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
む
阿弥陀
(
あみだ
)
仏
(
ぶつ
)
だ。
064
噛
(
か
)
む
阿弥陀
(
あみだ
)
仏
(
ぶつ
)
だ。
065
アツハヽヽヽ』
066
ダリ『オツホヽヽヽヽ、
067
親方
(
おやかた
)
さまと
云
(
い
)
ひ、
068
吾
(
わが
)
夫
(
つま
)
天真坊
(
てんしんばう
)
様
(
さま
)
と
云
(
い
)
ひ、
069
随分
(
ずいぶん
)
面白
(
おもしろ
)
いお
方
(
かた
)
ですこと。
070
妾
(
あたい
)
こんなお
方
(
かた
)
大好
(
だいす
)
きよ。
071
妾
(
あたい
)
どうして
又
(
また
)
気
(
き
)
の
軽
(
かる
)
い、
072
人
(
ひと
)
の
好
(
よ
)
い
立派
(
りつぱ
)
な
男
(
をとこ
)
さまに
添
(
そ
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るのでせう。
073
さうしてシャカンナさまの
様
(
やう
)
に
腮髭
(
あごひげ
)
の
生
(
は
)
えた
勇
(
いさ
)
ましい、
074
猛々
(
たけだけ
)
しいお
顔立
(
かほだ
)
ち、
075
あたいは
天地
(
てんち
)
の
幸福
(
かうふく
)
を
一身
(
いつしん
)
に
集
(
あつ
)
めたやうな
嬉
(
うれ
)
しい
気分
(
きぶん
)
が
致
(
いた
)
します。
076
オホヽヽヽ』
077
シャ『ハヽヽヽ、
078
どうも
感心
(
かんしん
)
だ。
079
ダリヤ
姫
(
ひめ
)
さまは
交際家
(
かうさいか
)
だな。
080
外交官
(
ぐわいかうくわん
)
にでもしたら、
081
屹度
(
きつと
)
凄
(
すご
)
い
腕
(
うで
)
を
現
(
あらは
)
すだらう。
082
惜
(
を
)
しい
事
(
こと
)
には
女性
(
ぢよせい
)
だから
仕方
(
しかた
)
がないわ』
083
ダリ『ホヽヽヽ、
084
あのマア
親方
(
おやかた
)
様
(
さま
)
の
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
わいのう。
085
女
(
をんな
)
だつて
外交官
(
ぐわいかうくわん
)
になれない
事
(
こと
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬよ。
086
今日
(
こんにち
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
女
(
をんな
)
が
活躍
(
くわつやく
)
せなくちや、
087
夫
(
をつと
)
が
世
(
よ
)
に
出
(
で
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないぢやありませぬか。
088
今日
(
こんにち
)
の
小名
(
せうみやう
)
だとか
大名
(
だいみやう
)
だとかいふ
役人
(
やくにん
)
さま
達
(
たち
)
は
皆
(
みな
)
奥
(
おく
)
さまの
外交
(
ぐわいかう
)
が
巧
(
うま
)
いから、
089
あそこ
迄
(
まで
)
の
地位
(
ちゐ
)
を
得
(
え
)
たのですよ。
090
女
(
をんな
)
が
裏口
(
うらぐち
)
からソツと
這入
(
はい
)
つて
上役
(
うはやく
)
の
奥
(
おく
)
さまに
一寸
(
ちよつと
)
、
091
やさしい
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ひ、
092
阿諛
(
おべつか
)
を
振
(
ふり
)
まき、
093
反物
(
たんもの
)
の
一
(
ひと
)
つでも
贈
(
おく
)
つておくと、
094
直様
(
すぐさま
)
、
095
その
夫
(
をつと
)
は
一月
(
ひとつき
)
も
経
(
た
)
たぬ
中
(
うち
)
に
役
(
やく
)
が
上
(
あが
)
るのですもの。
096
何程
(
なにほど
)
男
(
をとこ
)
さまが
力
(
ちから
)
があると
云
(
い
)
つても、
097
智慧
(
ちゑ
)
があると
云
(
い
)
つても
098
妻
(
つま
)
に
外交
(
ぐわいかう
)
の
腕
(
うで
)
がなくては
駄目
(
だめ
)
ですよ。
099
ネー
天真坊
(
てんしんぼう
)
様
(
さま
)
、
100
貴方
(
あなた
)
、
101
どう
思
(
おも
)
ひますか』
102
玄
(
げん
)
『ウツフヽヽヽ、
103
お
前
(
まへ
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りだ。
104
見
(
み
)
かけによらぬ、
105
お
前
(
まへ
)
は
立派
(
りつぱ
)
な
女
(
をんな
)
だな。
106
器量
(
きりやう
)
許
(
ばか
)
りかと
思
(
おも
)
へば
仲々
(
なかなか
)
の
智慧
(
ちゑ
)
もあり
腕
(
うで
)
もあるやうだ。
107
尚々
(
なほなほ
)
、
108
俺
(
おれ
)
はお
前
(
まへ
)
が
慕
(
した
)
はしく
恋
(
こひ
)
しくなつて
来
(
き
)
たよ。
109
「
此
(
この
)
夫
(
をつと
)
にして
此
(
この
)
妻
(
つま
)
あり」とは、
110
よく
云
(
い
)
つたものだ。
111
流石
(
さすが
)
は
天真坊
(
てんしんぼう
)
様
(
さま
)
のお
嬶
(
かか
)
になる
丈
(
だ
)
けあつて、
112
何
(
なに
)
かに
気
(
き
)
が
利
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
るわい、
113
偉
(
えら
)
いものだな。
114
俺
(
おれ
)
はもう、
115
スツカリお
前
(
まへ
)
に
惚
(
ほれ
)
たよ。
116
本当
(
ほんたう
)
によく
惚
(
ほれ
)
たよ、
117
エヘヽヽヽ』
118
ダリ『ホヽヽヽ、
119
あのマア
天真坊
(
てんしんぼう
)
様
(
さま
)
の
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
わいな、
120
まるつきり
井戸掘
(
ゐどほり
)
の
検査
(
けんさ
)
の
様
(
やう
)
だわ。
121
掘
(
ほ
)
れた
掘
(
ほ
)
れた、
122
よう
掘
(
ほ
)
れたと
仰有
(
おつしや
)
いましたね。
123
之
(
これ
)
では
何
(
なん
)
とか
賞与金
(
しやうよきん
)
を
頂
(
いただ
)
かなくちやなりますまい』
124
玄
(
げん
)
『いや、
125
益々
(
ますます
)
惚
(
ほれ
)
た。
126
屹度
(
きつと
)
賞与金
(
しやうよきん
)
を
渡
(
わた
)
してやらう、
127
ウンと
張込
(
はりこ
)
んでやらうぜ』
128
ダリ『いくら
下
(
くだ
)
さいますか。
129
嘘
(
うそ
)
八百
(
はつぴやく
)
円
(
ゑん
)
は
御免
(
ごめん
)
を
蒙
(
かうむ
)
りますよ』
130
玄
(
げん
)
『ウン、
131
もつとやる、
132
千
(
せん
)
円
(
ゑん
)
やる
積
(
つも
)
りだ』
133
ダリ『エー
今日
(
けふ
)
やらう、
134
明日
(
あす
)
やらう、
135
もう
暫
(
しばら
)
くしてからやらう、
136
と
遷延
(
せんえん
)
又
(
また
)
遷延
(
せんえん
)
、
137
どこ
迄
(
まで
)
もズルズルベツタリ
引伸
(
ひきの
)
ばして
人
(
ひと
)
をつらくる
考
(
かんが
)
へでせう。
138
そんな
縁起
(
えんぎ
)
の
悪
(
わる
)
い
言霊
(
ことたま
)
は
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
りませう』
139
玄
(
げん
)
『ても
扨
(
さて
)
も
140
小
(
こ
)
むつかしいお
嬶
(
かか
)
だな。
141
そんなら、
142
いくら
与
(
や
)
つたら
好
(
い
)
いのだ』
143
ダリ『お
嬶
(
かか
)
お
嬶
(
かか
)
と、
144
よう
仰有
(
おつしや
)
いますな、
145
余
(
あま
)
りみつともないぢやありませぬか。
146
俥夫
(
しやふ
)
、
147
馬丁
(
ばてい
)
の
女房
(
にようばう
)
ぢやあるまいし、
148
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
天真坊
(
てんしんばう
)
様
(
さま
)
の
奥方
(
おくがた
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
149
もし
賞与金
(
しやうよきん
)
を
下
(
くだ
)
さるのなら、
150
この
奥方
(
おくがた
)
に
対
(
たい
)
して、
151
貴方
(
あなた
)
の
誠意
(
せいい
)
のある
丈
(
だ
)
けを
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
して
下
(
くだ
)
さい』
152
玄
(
げん
)
『ヤー
困
(
こま
)
つたな、
153
誠意
(
せいい
)
のある
丈
(
だ
)
けと
出
(
で
)
られちや
一寸
(
ちよつと
)
面喰
(
めんくら
)
はざるを
得
(
え
)
ない。
154
俺
(
おれ
)
の
誠意
(
せいい
)
は
百億
(
ひやくおく
)
円
(
ゑん
)
でもやり
度
(
た
)
いのだが、
155
さうは
懐
(
ふところ
)
が
許
(
ゆる
)
さない。
156
奥様
(
おくさま
)
の
初
(
はじ
)
めての
御
(
ご
)
要求
(
えうきう
)
だから、
157
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
与
(
あた
)
へたいが、
158
何分
(
なにぶん
)
経済界
(
けいざいかい
)
の
行詰
(
ゆきつま
)
りでおれの
懐
(
ふところ
)
もチツト
許
(
ばか
)
り
秋風
(
あきかぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いてゐる。
159
どうか
三百
(
さんびやく
)
円
(
えん
)
位
(
ぐらゐ
)
で
今日
(
けふ
)
の
所
(
ところ
)
は
耐
(
こら
)
へて
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
いものだな』
160
ダリ『ホヽヽヽ、
161
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
天真坊
(
てんしんばう
)
様
(
さま
)
の
奥方
(
おくがた
)
が、
162
タツタ
三百
(
さんびやく
)
円
(
えん
)
の
枕金
(
まくらがね
)
とは
安
(
やす
)
いものぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
163
あまり
殺生
(
せつしやう
)
だわ、
164
ネー、
165
シャカンナの
親分
(
おやぶん
)
様
(
さま
)
』
166
シャ『ハヽヽヽ、
167
そこは
夫婦
(
めをと
)
の
仲
(
なか
)
だ。
168
どつと
張込
(
はりこ
)
んで、
169
負
(
まけ
)
ておきなさい。
170
実際
(
じつさい
)
女房
(
にようばう
)
に
金
(
かね
)
を
出
(
だ
)
すやうなデレ
助
(
すけ
)
は、
171
今日
(
こんにち
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
には
有
(
あ
)
りませぬよ。
172
諸物価
(
しよぶつか
)
の
極端
(
きよくたん
)
に
騰貴
(
とうき
)
した
今日
(
こんにち
)
でも、
173
最
(
もつと
)
も
安
(
やす
)
いものは
女房
(
にようばう
)
ですよ。
174
藁
(
わら
)
の
上
(
うへ
)
から
蝶
(
てふ
)
よ
花
(
はな
)
よと
育
(
そだ
)
て
上
(
あ
)
げ、
175
中等
(
ちうとう
)
以上
(
いじやう
)
の
家庭
(
かてい
)
になれば
小学校
(
せうがくかう
)
から
女学校
(
ぢよがくかう
)
、
176
女子
(
ぢよし
)
大学
(
だいがく
)
と
沢山
(
たくさん
)
な
金
(
かね
)
を
投
(
とう
)
じた
上
(
うへ
)
、
177
箪笥
(
たんす
)
だ、
178
長持
(
ながもち
)
だ、
179
イヤ
三重
(
みつがさね
)
だ、
180
何
(
なん
)
だ
彼
(
かん
)
だと
181
家
(
いへ
)
の
棟
(
むね
)
が
歪
(
ゆが
)
む
程
(
ほど
)
、
182
拵
(
こしら
)
へして、
183
「
不調法
(
ぶてうはふ
)
の
女
(
をんな
)
だけど
宜
(
よろ
)
しく」と
云
(
い
)
つて、
184
只
(
ただ
)
呉
(
く
)
れる
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だから、
185
何
(
なに
)
が
安
(
やす
)
いと
云
(
い
)
つても
嫁
(
よめ
)
の
相場
(
さうば
)
位
(
ぐらゐ
)
安
(
やす
)
いものはない。
186
それだから、
187
ダリヤさま
三百
(
さんびやく
)
円
(
えん
)
貰
(
もら
)
つたら、
188
お
前
(
まへ
)
さまは
天下一
(
てんかいち
)
の
手柄者
(
てがらもの
)
だ。
189
天真坊
(
てんしんぼう
)
が、
190
ぞつこん、
191
首
(
くび
)
つたけ
惚
(
ほれ
)
てゐるのだから
大枚
(
たいまい
)
三百
(
さんびやく
)
円
(
えん
)
を、
192
おつ
放
(
ぽ
)
り
出
(
だ
)
さうと
云
(
い
)
ふのだよ。
193
アーア、
194
酔
(
よ
)
ふた
酔
(
よ
)
ふた。
195
何
(
なん
)
だか
宙
(
ちう
)
に
浮
(
う
)
いてるやうだ。
196
こんな
時
(
とき
)
に
女房
(
にようばう
)
があつたら
197
私
(
わし
)
も
気楽
(
きらく
)
に
膝枕
(
ひざまくら
)
でもして
寝
(
ね
)
るのだけどな。
198
まさか
天真坊
(
てんしんぼう
)
様
(
さま
)
の
奥方
(
おくがた
)
の
膝枕
(
ひざまくら
)
を
借
(
か
)
る
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
199
エーエ
羨
(
うらや
)
ましい
事
(
こと
)
だわい』
200
ダリ『ホヽヽヽ、
201
いい
加減
(
かげん
)
に
弄
(
から
)
かつておいて
下
(
くだ
)
さい。
202
然
(
しか
)
し
親方
(
おやかた
)
さまのお
話
(
はなし
)
によりまして、
203
妾
(
わたし
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
世界一
(
せかいいち
)
の
幸福
(
かうふく
)
女
(
をんな
)
だと
覚
(
さと
)
りました。
204
何
(
なん
)
とマア
天真坊
(
てんしんぼう
)
様
(
さま
)
と
云
(
い
)
ふ
方
(
かた
)
は
結構
(
けつこう
)
なお
方
(
かた
)
でせう。
205
それを
承
(
うけたま
)
はると
益々
(
ますます
)
可愛
(
かあい
)
うなつて
来
(
き
)
ましたよ、
206
ネー
天真坊
(
てんしんぼう
)
様
(
さま
)
。
207
「
古
(
ふる
)
くなつたから、
208
もう
要
(
い
)
らぬ」
等
(
など
)
と
云
(
い
)
つて、
209
破
(
やぶ
)
れた
靴
(
くつ
)
を
棄
(
す
)
てるやうな
無情
(
むじやう
)
な
事
(
こと
)
を
為
(
な
)
さつちや、
210
嫌
(
いや
)
ですよ。
211
……お
椀
(
わん
)
百
(
ひやく
)
迄
(
まで
)
、
212
箸
(
はし
)
や
九十九
(
くじふく
)
迄
(
まで
)
、
213
ともに
朱塗
(
しゆぬり
)
の
剥
(
は
)
げる
迄
(
まで
)
……
仲
(
なか
)
よう
添
(
そ
)
うて
下
(
くだ
)
さるでせうね。
214
そして
妾
(
てかけ
)
なんか、
215
持
(
も
)
たないやうにして
下
(
くだ
)
さいね。
216
あたい
217
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
みますからね』
218
玄
(
げん
)
『ウンウンヨシヨシ、
219
そんな
心配
(
しんぱい
)
は
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
だ。
220
お
前
(
まへ
)
は、
221
まだ
俺
(
わし
)
の
誠意
(
せいい
)
が
分
(
わか
)
らぬと
見
(
み
)
えて
先
(
さき
)
の
先
(
さき
)
まで
心配
(
しんぱい
)
するのだな。
222
可愛
(
かあい
)
いお
前
(
まへ
)
を
棄
(
す
)
てて、
223
どうして
外
(
ほか
)
の
女
(
をんな
)
に
心
(
こころ
)
を
移
(
うつ
)
す
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ようか。
224
オイ、
225
ダリヤ、
226
シャカンナさまには
済
(
す
)
まないが
一
(
ひと
)
つ
膝
(
ひざ
)
を
借
(
か
)
してくれないか』
227
ダリ『サアサア
夫
(
をつと
)
が
女房
(
にようばう
)
の
膝
(
ひざ
)
にお
眠
(
ねむ
)
り
遊
(
あそ
)
ばすのが、
228
何
(
なに
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
が
要
(
い
)
りませう。
229
「
膝
(
ひざ
)
を
借
(
か
)
してくれ」
等
(
など
)
とお
頼
(
たの
)
み
遊
(
あそ
)
ばす、
230
その
水臭
(
みづくさ
)
いお
言葉
(
ことば
)
が
231
妾
(
あてえ
)
、
232
却
(
かへつ
)
て
憎
(
にく
)
らしいわ』
233
シャ『ヤア、
234
どうも
堪
(
たま
)
らぬ
堪
(
たま
)
らぬ。
235
天真坊
(
てんしんぼう
)
殿
(
どの
)
、
236
怪
(
け
)
しからぬぢや
厶
(
ござ
)
らぬか』
237
玄
(
げん
)
『ヤ、
238
之
(
これ
)
は
失礼
(
しつれい
)
で
厶
(
ござ
)
る。
239
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らは
拙者
(
せつしや
)
の
自由
(
じいう
)
権利
(
けんり
)
を
行使
(
かうし
)
するのに、
240
別
(
べつ
)
に
遠慮
(
ゑんりよ
)
も
要
(
い
)
りますまい。
241
御免
(
ごめん
)
下
(
くだ
)
さいませ、
242
失礼
(
しつれい
)
』
243
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
らダリヤの
膝
(
ひざ
)
に、
244
胡麻
(
ごま
)
入
(
い
)
りの
頭
(
あたま
)
を
安置
(
あんち
)
した。
245
ダリ『ホヽヽヽ、
246
酒
(
さけ
)
臭
(
くさ
)
いこと。
247
そしてお
頭
(
つむ
)
の
毛
(
け
)
の
香
(
にほひ
)
、
248
妾
(
あてえ
)
249
鼻
(
はな
)
が
歪
(
ゆが
)
むやうだわ。
250
オヤ、
251
マア
観世音
(
くわんぜおん
)
菩薩
(
ぼさつ
)
が
御
(
ご
)
出現
(
しゆつげん
)
遊
(
あそ
)
ばして
厶
(
ござ
)
るわ、
252
ホヽヽヽヽ』
253
玄
(
げん
)
『オイ、
254
ダリヤ、
255
観世音
(
くわんぜおん
)
菩薩
(
ぼさつ
)
は
子供
(
こども
)
が
好
(
す
)
きで
頭
(
かしら
)
に
沢山
(
たくさん
)
の
童子
(
どうじ
)
をのせて
厶
(
ござ
)
るだらう。
256
俺
(
わし
)
はその
観世音
(
くわんぜおん
)
を
沢山
(
たくさん
)
に
頭
(
かしら
)
に
頂
(
いただ
)
いてゐるのだから、
257
大抵
(
たいてい
)
俺
(
わし
)
の
神徳
(
しんとく
)
も
解
(
わか
)
つただらうのう』
258
ダリ『ア、
259
それで
天帝
(
てんてい
)
の
御
(
ご
)
化身
(
けしん
)
様
(
さま
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
判然
(
はんぜん
)
致
(
いた
)
しましたわ。
260
もし
天真坊
(
てんしんぼう
)
様
(
さま
)
、
261
貴方
(
あなた
)
のお
頭
(
つむり
)
は、
262
丁度
(
ちやうど
)
胡麻
(
ごま
)
煎
(
いり
)
のやうですね』
263
玄
(
げん
)
『オイオイ
無茶
(
むちや
)
を
云
(
い
)
ふない。
264
胡麻
(
ごま
)
煎
(
いり
)
なら
持
(
も
)
つ
処
(
ところ
)
がありさうなものだ。
265
柄
(
え
)
がないぢやないか』
266
ダリ『
何事
(
なにごと
)
も
改良
(
かいりやう
)
の
流行
(
はや
)
る
時節
(
じせつ
)
ですから、
267
貴方
(
あなた
)
の
胡麻
(
ごま
)
煎
(
いり
)
頭
(
あたま
)
は
柄
(
え
)
は
有
(
あ
)
りませぬが、
268
其
(
その
)
代用
(
だいよう
)
として
鍋
(
なべ
)
のやうに
二
(
ふた
)
つの
耳
(
みみ
)
がついてゐますよ。
269
この
耳
(
みみ
)
をかう、
270
二
(
ふた
)
つ
下
(
さ
)
げて
胡麻
(
ごま
)
を
煎
(
い
)
つたら、
271
素敵
(
すてき
)
でせうね。
272
観音
(
くわんのん
)
さまの
胡麻
(
ごま
)
煎
(
いり
)
が
出来
(
でき
)
るでせう、
273
ホヽヽヽ』
274
コル『これこれダリヤ
姫
(
ひめ
)
さまとやら、
275
こんな
席
(
せき
)
で、
276
さう
意茶
(
いちや
)
ついて
貰
(
もら
)
つちや、
277
吾々
(
われわれ
)
独身者
(
どくしんもの
)
はやりきれぬぢやないですか。
278
チツトは
徳義
(
とくぎ
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
考
(
かんが
)
へて
貰
(
もら
)
はなくちや
堪
(
たま
)
りませぬよ』
279
ダリ『ホヽヽヽ、
280
何
(
なん
)
とマア
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
承
(
うけたま
)
はるものですな。
281
山賊
(
さんぞく
)
の
仲間
(
なかま
)
にも
徳義
(
とくぎ
)
等
(
など
)
と
云
(
い
)
ふ
言葉
(
ことば
)
が
流行
(
はや
)
つてゐますか』
282
コル『
無論
(
むろん
)
です。
283
泥棒
(
どろばう
)
でなくとも
今日
(
こんにち
)
の
人間
(
にんげん
)
を
御覧
(
ごらん
)
なさい。
284
上
(
うへ
)
から
下
(
した
)
まで
285
徳義
(
とくぎ
)
だとか、
286
仁義
(
じんぎ
)
だとか、
287
慈善
(
じぜん
)
だとか、
288
博愛
(
はくあい
)
だとか、
289
いろいろの
雅号
(
ががう
)
を
並
(
なら
)
べて、
290
愚人
(
ぐじん
)
の
目
(
め
)
を
晦
(
くら
)
ませ、
291
耳
(
みみ
)
を
痺
(
しび
)
らせ、
292
ソツト
裏
(
うら
)
の
方
(
はう
)
から
甘
(
うま
)
い
汁
(
しる
)
を
吸
(
す
)
ふてるぢやありませぬか。
293
徳義
(
とくぎ
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
泥棒
(
どろばう
)
にとつては
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
武器
(
ぶき
)
ですよ、
294
アハヽヽヽ』
295
ダリ『
成程
(
なるほど
)
、
296
さう
承
(
うけたま
)
はれば、
297
いかにも
御尤
(
ごもつと
)
も、
298
仲々
(
なかなか
)
泥棒学
(
どろばうがく
)
も
修養
(
しうやう
)
が
要
(
い
)
りますな』
299
コル『さうですとも、
300
泥棒
(
どろばう
)
が
泥棒
(
どろばう
)
の
看板
(
かんばん
)
をうつて、
301
どうして
仕事
(
しごと
)
が
出来
(
でき
)
ませう。
302
すぐ
目付
(
めつけ
)
に
捕
(
つか
)
まつて
了
(
しま
)
ひますよ。
303
表面
(
うはべ
)
は
善
(
ぜん
)
を
飾
(
かざ
)
りつつソツト
悪事
(
あくじ
)
をやるのが
当世
(
たうせい
)
ですからね』
304
ダリ『ヤア、
305
之
(
これ
)
は
大変
(
たいへん
)
な
知識
(
ちしき
)
を
得
(
え
)
ました。
306
サアお
気
(
き
)
に
召
(
め
)
しますまいが……
一杯
(
いつぱい
)
注
(
つ
)
ぎませう。
307
妾
(
わたし
)
の
杯
(
さかづき
)
でも
受
(
う
)
けて
下
(
くだ
)
さるでせうね』
308
コル『ヘイヘイ、
309
受
(
う
)
ける
段
(
だん
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬ。
310
三杯
(
さんぱい
)
九杯
(
きうはい
)
、
311
百杯
(
ひやくぱい
)
でも
千杯
(
せんぱい
)
でも
頂
(
いただ
)
きますわ、
312
エヘヽヽヽ』
313
ダリ『これこれコルトンさま、
314
さう
杯
(
さかづき
)
を
近
(
ちか
)
く
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
ちや
旦那
(
だんな
)
さまの
顔
(
かほ
)
にかかつたら
大変
(
たいへん
)
ですよ。
315
もつと、
316
そちらに
引
(
ひ
)
きなさいよ。
317
その
代
(
かは
)
り
妾
(
あてえ
)
の
方
(
はう
)
から
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
手
(
て
)
を
伸
(
の
)
ばして
注
(
つ
)
ぎますよ』
318
コル『イヤ
有難
(
ありがた
)
う。
319
オツトヽヽヽ
零
(
こぼ
)
れます
零
(
こぼ
)
れます、
320
もう
沢山
(
たくさん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
321
然
(
しか
)
し、
322
これ
一杯
(
いつぱい
)
で
沢山
(
たくさん
)
と
云
(
い
)
ふのぢやありませぬよ。
323
又
(
また
)
、
324
後
(
あと
)
をお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
しますよ、
325
エヘヽヽヽ。
326
オイ、
327
バルギー、
328
どうだい、
329
色男
(
いろをとこ
)
と
云
(
い
)
ふものは、
330
こんな
者
(
もの
)
だよ。
331
岩窟
(
いはや
)
の
女帝
(
によてい
)
様
(
さま
)
のお
手
(
て
)
づからお
酒
(
さけ
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
したのだからな、
332
イヒヽヽヽ。
333
貴様
(
きさま
)
もチツト、
3331
あやかつたら、
334
どうだい。
335
蜴
(
とかげ
)
奴
(
め
)
、
336
何
(
なに
)
を
燻
(
くす
)
ぼつてゐやがるのだい』
337
バル『ヤア、
338
俺
(
おれ
)
や
下戸
(
げこ
)
だ。
339
ホンのお
交際
(
つきあい
)
に
席
(
せき
)
に
列
(
つらな
)
つてる
丈
(
だ
)
けだ。
340
酒
(
さけ
)
なんか
飲
(
の
)
み
度
(
た
)
くはないわ』
341
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
れてグタリと
前後
(
ぜんご
)
も
知
(
し
)
らず
眠
(
ねむ
)
つて
了
(
しま
)
つた。
342
ダリヤ
姫
(
ひめ
)
はソツと
膝
(
ひざ
)
を
外
(
はづ
)
し、
343
木
(
き
)
の
枕
(
まくら
)
を
胡麻
(
ごま
)
煎
(
いり
)
頭
(
あたま
)
に
支
(
ささ
)
へておき、
344
細
(
ほそ
)
い
涼
(
すず
)
しい
声
(
こゑ
)
でコルトンに
一杯
(
いつぱい
)
注
(
つ
)
ぎ
乍
(
なが
)
ら、
345
ダリ『
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
む
人
(
ひと
)
心
(
しん
)
から
可愛
(
かあ
)
い
346
酔
(
よ
)
ふて
管捲
(
くだま
)
きや
猶
(
なほ
)
可愛
(
かあ
)
い。
347
サアサアコルトンさま、
348
男
(
をとこ
)
らしうお
過
(
す
)
ごしなさいませ。
349
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
天真
(
てんしん
)
さまもお
眠
(
やす
)
みになりました。
350
どうやら
親方
(
おやかた
)
さまも
眠
(
やす
)
まれたやうです。
351
妾
(
あてえ
)
が
之
(
これ
)
から
貴方
(
あなた
)
を
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
して
上
(
あ
)
げますわ。
352
バルギーさまはお
下戸
(
げこ
)
なり、
353
二人
(
ふたり
)
の
親分
(
おやぶん
)
さまはお
眠
(
やす
)
みになつたし、
354
もう、
355
妾
(
あてえ
)
とコルトンさまとの
天下
(
てんか
)
だわ』
356
コル『エヘヽヽヽ、
357
イヤ
有難
(
ありがた
)
う、
358
之
(
これ
)
も
酒
(
さけ
)
飲
(
の
)
むお
蔭
(
かげ
)
だ。
359
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまが
運上
(
うんじやう
)
をとりに
来
(
く
)
るやうな
美
(
うつく
)
しいお
姫
(
ひめ
)
さまと
杯
(
さかづき
)
を
汲
(
く
)
み
交
(
かは
)
すとは、
360
丸
(
まる
)
で
夢
(
ゆめ
)
のやうだ。
361
ヤアお
姫
(
ひめ
)
さま、
362
私
(
わたし
)
も
男
(
をとこ
)
です。
363
いくら
下
(
くだ
)
さつても
後
(
あと
)
には
退
(
ひ
)
きませぬ。
364
私
(
わたし
)
の
飲
(
の
)
み
振
(
ぶ
)
りを
見
(
み
)
て
下
(
くだ
)
さい』
365
ダリ『
何
(
なん
)
とマア
立派
(
りつぱ
)
な
飲
(
の
)
み
振
(
ぶ
)
りだこと、
366
本当
(
ほんたう
)
に
男
(
をとこ
)
らしいわ。
367
妾
(
あてえ
)
こんな
方
(
かた
)
と
夫婦
(
ふうふ
)
になり
度
(
た
)
いのだけどな。
368
天真坊
(
てんしんばう
)
さまと
内約
(
ないやく
)
したものだから、
369
もう
抜
(
ぬ
)
き
差
(
さ
)
しならぬやうになつて
了
(
しま
)
つたわ』
370
と
態
(
わざ
)
と
小声
(
こごゑ
)
に
云
(
い
)
ふ。
371
コルトンは
本当
(
ほんたう
)
に
姫
(
ひめ
)
が
自分
(
じぶん
)
に
惚
(
ほれ
)
たと
思
(
おも
)
ひ
372
益々
(
ますます
)
図
(
づ
)
に
乗
(
の
)
つて
豪傑
(
がうけつ
)
振
(
ぶり
)
を
見
(
み
)
せ、
373
姫
(
ひめ
)
の
心
(
こころ
)
を
自分
(
じぶん
)
の
方
(
はう
)
へ
傾
(
かたむ
)
けねばおかぬと、
374
余
(
あんま
)
り
好
(
す
)
きでもない
酒
(
さけ
)
を
調子
(
てうし
)
にのつて
無性
(
むしやう
)
矢鱈
(
やたら
)
に
飲
(
の
)
み
干
(
ほ
)
した。
375
ダリ『オホヽヽヽ、
376
何
(
なん
)
と
美事
(
みごと
)
な
事
(
こと
)
。
377
なんぼ
召上
(
めしあが
)
つても、
378
チツトもお
酔
(
よ
)
ひなさらぬのね。
379
そこが
男子
(
だんし
)
の
値打
(
ねうち
)
ですよ。
380
チツト
許
(
ばか
)
りの
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んで
倒
(
たふ
)
れるやうな
事
(
こと
)
ぢや、
381
まさかの
時
(
とき
)
の
役
(
やく
)
に
立
(
た
)
ちませぬからね』
382
コル『それは、
383
さうですとも。
384
一斗桝
(
いつとます
)
の
隅飲
(
すみの
)
みをやつても、
385
ビクともせぬと
云
(
い
)
ふ、
386
有名
(
いうめい
)
な
酒豪
(
しゆがう
)
ですからな』
387
こんな
調子
(
てうし
)
にコルトンはダリヤに
盛
(
もり
)
潰
(
つぶ
)
され、
388
目
(
め
)
を
白黒
(
しろくろ
)
にして
我慢
(
がまん
)
をつづけてゐたが、
389
堪
(
た
)
へきれずして
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
他愛
(
たあい
)
もなく
倒
(
たふ
)
れて
了
(
しま
)
つた。
390
バラック
式
(
しき
)
の
小屋
(
こや
)
には
沢山
(
たくさん
)
の
乾児
(
こぶん
)
共
(
ども
)
が
菰
(
こも
)
を
敷
(
し
)
いて、
391
喧々
(
けんけん
)
囂々
(
がうがう
)
と
囀
(
さへづ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
392
ヘベレケに
酔
(
よ
)
ふて、
393
泣
(
な
)
く、
394
笑
(
わら
)
ふ、
395
鉄拳
(
てつけん
)
をとばす
等
(
など
)
の
乱痴気
(
らんちき
)
騒
(
さわ
)
ぎを
極端
(
きよくたん
)
に
発揮
(
はつき
)
してゐる。
396
ダリヤ
姫
(
ひめ
)
は
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
れたのを
見
(
み
)
すまし、
397
バルギーの
首
(
くび
)
に
白
(
しろ
)
い
腕
(
かひな
)
を
捲
(
ま
)
きつけ
乍
(
なが
)
ら
小声
(
こごゑ
)
になつて、
398
ダリ『もし、
399
バルギー
様
(
さま
)
、
400
本当
(
ほんたう
)
に
済
(
す
)
まない
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
しましたな。
401
貴方
(
あなた
)
はチツトもお
酒
(
さけ
)
を
召
(
め
)
し
上
(
あが
)
らないので
本当
(
ほんたう
)
に
行儀
(
ぎやうぎ
)
が
崩
(
くづ
)
れないで、
402
床
(
ゆか
)
しう
厶
(
ござ
)
いますわ。
403
妾
(
あてえ
)
、
404
貴方
(
あなた
)
のやうなお
方
(
かた
)
が
本当
(
ほんたう
)
に
好
(
す
)
きなのよ。
405
あれ
御覧
(
ごらん
)
なさい。
406
三
(
さん
)
人
(
にん
)
共
(
とも
)
、
407
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ふて
口
(
くち
)
から
泡
(
あわ
)
を
吹
(
ふ
)
いたり、
408
涎
(
よだれ
)
をくつたり、
409
本当
(
ほんたう
)
に
見
(
み
)
られた
態
(
ざま
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬね。
410
もしバルギーさま、
411
貴方
(
あなた
)
妾
(
わたし
)
を
憎
(
にく
)
いと
思
(
おも
)
ひますか』
412
バルギーは
意外
(
いぐわい
)
の
感
(
かん
)
に
打
(
う
)
たれ
乍
(
なが
)
ら、
413
嬉
(
うれ
)
しさうに
涎
(
よだれ
)
をくり、
414
両
(
りやう
)
の
手
(
て
)
で
慌
(
あわ
)
てて
手繰
(
たぐ
)
つてゐる。
415
そして
小声
(
こごゑ
)
になつて、
416
バル『
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
417
いい
加減
(
かげん
)
に
玩弄
(
おもちや
)
にしておいて
下
(
くだ
)
さい。
418
俺
(
わし
)
でも
男
(
をとこ
)
の
端
(
はし
)
くれですからな。
419
貴女
(
あなた
)
はお
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ふてゐらつしやるのでせう』
420
ダリ『
妾
(
わたし
)
だつて、
421
人間
(
にんげん
)
ですもの、
422
お
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
めば、
423
チツトは
酔
(
よ
)
ひますよ。
424
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
三
(
さん
)
人
(
にん
)
さまのやうに
本性
(
ほんしやう
)
を
失
(
うしな
)
ふ
所
(
ところ
)
まで
酔
(
よ
)
つては
居
(
ゐ
)
ませぬ。
425
妾
(
あてえ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を、
426
貴方
(
あなた
)
は
疑
(
うたが
)
つてゐるのですか、
427
エー
憎
(
にく
)
らしい』
428
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
らバルギーの
頬
(
ほほ
)
をギユツと
抓
(
つめ
)
つた。
429
バル『アイタヽヽヽ、
430
決
(
けつ
)
して
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
431
疑
(
うたが
)
ひませぬよ、
432
真剣
(
しんけん
)
に
承
(
うけたま
)
はります。
433
何卒
(
どうぞ
)
、
434
その
手
(
て
)
を
放
(
はな
)
して
下
(
くだ
)
さい。
435
顔
(
かほ
)
が
歪
(
ゆが
)
んで
了
(
しま
)
ひますわ』
436
ダリ『
本当
(
ほんたう
)
に
妾
(
あてえ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
信
(
しん
)
じますか』
437
バル『
全部
(
ぜんぶ
)
信
(
しん
)
じますよ、
438
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さい』
439
ダリ『そんなら、
440
妾
(
あてえ
)
の、
441
これ
丈
(
だ
)
け
思
(
おも
)
つてる
心
(
こころ
)
を
汲
(
く
)
みとつて
下
(
くだ
)
さるでせうね。
442
どうか
妾
(
あてえ
)
を
連
(
つ
)
れて
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
して
下
(
くだ
)
さいませぬか。
443
妾
(
あてえ
)
の
宅
(
たく
)
はスガの
里
(
さと
)
の
百万
(
ひやくまん
)
長者
(
ちやうじや
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
444
こんな
泥棒
(
どろばう
)
なんかしてゐるより、
445
余程
(
よほど
)
気
(
き
)
が
利
(
き
)
いてゐますよ。
446
そして
妾
(
あてえ
)
の
夫
(
をつと
)
になつて
下
(
くだ
)
さいましな』
447
バル『ヘヽヽヽヽ、
448
願
(
ねが
)
ふてもないお
頼
(
たの
)
み、
449
イヤ
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
しました。
450
今夜
(
こんや
)
のやうな、
451
好
(
い
)
い
機会
(
きくわい
)
は
又
(
また
)
とありませぬ。
452
誰
(
たれ
)
も
彼
(
か
)
も
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
れてゐますから、
453
貴女
(
あなた
)
と
私
(
わたし
)
と
手
(
て
)
に
手
(
て
)
をとつて
一
(
ひと
)
先
(
ま
)
づ
此処
(
ここ
)
を
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
しませうよ』
454
ダリヤは
嬉
(
うれ
)
しさうに、
455
『それでは
吾
(
わが
)
夫様
(
つまさま
)
、
456
どこ
迄
(
まで
)
も、
457
お
伴
(
とも
)
をさして
下
(
くだ
)
さいませね』
458
バルギーは
俄
(
にはか
)
に
足装束
(
あししやうぞく
)
を
拵
(
こしら
)
へ
459
ダリヤにも
草鞋
(
わらぢ
)
を
与
(
あた
)
へて
逃走
(
たうそう
)
の
準備
(
じゆんび
)
をさせた。
460
……
神
(
かみ
)
ならぬ
身
(
み
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
他愛
(
たあい
)
もなく
酔
(
よ
)
ひ
倒
(
たふ
)
れてゐる。
461
ダリヤは
筆
(
ふで
)
に
墨
(
すみ
)
を
染
(
そ
)
ませ、
462
天真坊
(
てんしんばう
)
の
額
(
ひたひ
)
に『ネンネコ』と
記
(
しる
)
し、
463
シャカンナの
額
(
ひたひ
)
に『モー、
464
イヌ』と
記
(
しる
)
し、
465
コルトンの
額
(
ひたひ
)
に『サル、
466
カヘル』と
落書
(
らくがき
)
し、
467
「ホヽヽヽヽ」と
一笑
(
ひとわら
)
ひを
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
し、
468
抜道
(
ぬけみち
)
の
勝手
(
かつて
)
を
知
(
し
)
つたバルギーに
案内
(
あんない
)
され、
469
首尾
(
しゆび
)
よく
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
つて
了
(
しま
)
つた。
470
月夜
(
つきよ
)
の
寝呆
(
ねぼ
)
け
烏
(
がらす
)
が
四辺
(
あたり
)
の
大木
(
たいぼく
)
の
枝
(
えだ
)
に
止
(
と
)
まつて、
471
『アホウアホウ』と
鳴
(
な
)
いてゐる。
472
岩窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
は
雷
(
らい
)
の
如
(
ごと
)
き
鼾
(
いびき
)
の
音
(
おと
)
に、
473
ダンダンと
夜
(
よ
)
は
更
(
ふ
)
けて
行
(
ゆ
)
く。
474
無心
(
むしん
)
の
月
(
つき
)
は
二人
(
ふたり
)
の
逃
(
に
)
げ
道
(
みち
)
をニコニコし
乍
(
なが
)
ら
照
(
て
)
らしてゐる。
475
(
大正一三・一二・三
新一二・二八
於祥雲閣
北村隆光
録)
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