霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
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【新刊】「ミタマの夫婦」とは?
王仁三郎のソウルメイト論
<<< 山出女
(B)
(N)
変装太子 >>>
第四章
茶湯
(
ちやのゆ
)
の
艶
(
えん
)
〔一七二八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻
篇:
第1篇 名花移植
よみ(新仮名遣い):
めいかいしょく
章:
第4章 茶湯の艶
よみ(新仮名遣い):
ちゃのゆのえん
通し章番号:
1728
口述日:
1925(大正14)年01月28日(旧01月5日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年9月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
スバールは、タラハン市の町外れにある、茶湯の宗匠タルチンの館にかくまわれることになった。タルチンは、茶湯の道をかなり悟ってはいるが、流行らない宗匠。その女房は若い色黒の大女で、五斗俵を軽々と持ち運び、ヒステリ性を尊ぶ当世流の才子連には、見向きもされないようなタイプである。
タルチンがスバール姫に茶湯を教えているところへ、スダルマン太子がやってくる。二人は互いの逢瀬に恋の歌を交換し合う。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6804
愛善世界社版:
58頁
八幡書店版:
第12輯 171頁
修補版:
校定版:
58頁
普及版:
69頁
初版:
ページ備考:
001
タラハン
市
(
し
)
の
町外
(
まちはづ
)
れ、
002
裏
(
うら
)
は
薄濁
(
うすにご
)
つた
可
(
か
)
なり
広
(
ひろ
)
い
溝
(
みぞ
)
が
流
(
なが
)
れてゐる。
003
常磐木
(
ときはぎ
)
のこんもりとした
余
(
あま
)
り
広
(
ひろ
)
からぬ
屋敷
(
やしき
)
の
中
(
なか
)
に
004
茶湯
(
ちやのゆ
)
の
宗匠
(
そうしやう
)
タルチンの
形
(
かたち
)
ばかりの
茅屋
(
ばうをく
)
が
建
(
た
)
つてゐる。
005
家
(
いへ
)
は
古
(
ふる
)
く
狭
(
せま
)
けれども
006
宗匠
(
そうしやう
)
一人
(
ひとり
)
が
独身
(
どくしん
)
生活
(
せいくわつ
)
には
可
(
か
)
なり
広
(
ひろ
)
い。
007
しかも
母屋
(
おもや
)
と
離
(
はな
)
れて
煩
(
うるさ
)
き
物音
(
ものおと
)
も
聞
(
きこ
)
えず、
008
生
(
お
)
い
茂
(
しげ
)
れる
庭
(
には
)
の
植込
(
うゑこ
)
みを
吾
(
わが
)
物
(
もの
)
と
見
(
み
)
れば、
009
世間体
(
せけんてい
)
を
飾
(
かざ
)
つた
紳士
(
しんし
)
紳商
(
しんしやう
)
の
苦
(
くる
)
しい
外観
(
みえ
)
を
飾
(
かざ
)
る
別荘
(
べつさう
)
よりも
遥
(
はるか
)
に
勝
(
まさ
)
り、
010
呑気
(
のんき
)
で
住心地
(
すみごこち
)
もよい。
011
春雨
(
はるさめ
)
に
包
(
つつ
)
まるる
向日
(
むかひ
)
の
森
(
もり
)
、
012
朧月夜
(
おぼろづきよ
)
に
見渡
(
みわた
)
す
田圃道
(
たんぼみち
)
、
013
軒端
(
のきば
)
に
近
(
ちか
)
い
若葉
(
わかば
)
の
揺
(
ゆ
)
るぎ、
014
窓
(
まど
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
小田
(
をだ
)
の
蛙
(
かはず
)
の
泣
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
、
015
見
(
み
)
るからに
茶人
(
ちやじん
)
の
住
(
す
)
みさうな
家構
(
いへがま
)
へである。
016
雀
(
すずめ
)
の
子
(
こ
)
が
羽
(
は
)
ばたきをするのは、
017
やがて
天空
(
てんくう
)
をかける
準備
(
じゆんび
)
だ。
018
猫
(
ねこ
)
の
子
(
こ
)
がじやれるのは
大好物
(
だいかうぶつ
)
の
鼠
(
ねずみ
)
をとらむとする
下稽古
(
したげいこ
)
だ。
019
年頃
(
としごろ
)
の
女
(
をんな
)
が
鏡
(
かがみ
)
に
向
(
むか
)
つて、
020
顔面
(
がんめん
)
や
頭髪
(
とうはつ
)
の
整理
(
せいり
)
をするのは
恋愛
(
れんあい
)
至上
(
しじやう
)
主義
(
しゆぎ
)
を
完全
(
くわんぜん
)
に
達
(
たつ
)
せむ
為
(
ため
)
の
準備
(
じゆんび
)
である。
021
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
宗匠
(
そうしやう
)
タルチンは
朝
(
あさ
)
早
(
はや
)
うから、
022
坊主頭
(
ばうずあたま
)
に
捻鉢巻
(
ねぢはちまき
)
、
023
腰衣
(
こしごろも
)
を
高
(
たか
)
くまき
上
(
あ
)
げ
座敷
(
ざしき
)
を
掃
(
は
)
いたり、
024
門
(
かど
)
を
掃除
(
さうぢ
)
したり、
025
何
(
なに
)
か
珍客
(
ちんきやく
)
の
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る
様子
(
やうす
)
。
026
さうして
何
(
なん
)
となく
万金
(
まんきん
)
の
宝
(
たから
)
を
人知
(
ひとし
)
れぬ
処
(
ところ
)
で
拾
(
ひろ
)
つたやうな
顔付
(
かほつき
)
して
027
ニコニコと
笑
(
わら
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
028
愚者
(
ぐしや
)
の
一芸
(
いちげい
)
とか
云
(
い
)
つて、
029
此
(
この
)
茶坊主
(
ちやばうず
)
も
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
道
(
みち
)
丈
(
だ
)
けは
可
(
か
)
なり
覚
(
さと
)
つて
居
(
ゐ
)
るやうである。
030
母屋
(
おもや
)
の
方
(
はう
)
には
宗匠
(
そうしやう
)
の
女房
(
にようばう
)
として
年
(
とし
)
の
若
(
わか
)
い
体格美
(
たいかくび
)
に
傾
(
かたむ
)
き
過
(
す
)
ぎた
布袋
(
ほてい
)
女
(
をんな
)
が
一人
(
ひとり
)
住
(
す
)
まつてゐる。
031
五斗俵
(
ごとべう
)
を
軽々
(
かるがる
)
と
持
(
も
)
ち
運
(
はこ
)
ぶその
力
(
ちから
)
、
032
どこに
一点
(
いつてん
)
の
女
(
をんな
)
らしい
処
(
ところ
)
も
見
(
み
)
えない。
033
顔色
(
がんしよく
)
黒
(
くろ
)
く
頭髪
(
とうはつ
)
は
茶褐色
(
ちやかつしよく
)
の
大女
(
おほをんな
)
、
034
到底
(
たうてい
)
ヒステリ
性
(
せい
)
を
尊
(
たふと
)
ぶ
小説家
(
せうせつか
)
の
材料
(
ざいれう
)
になりさうもない
奴
(
やつ
)
。
035
もし
当世流
(
たうせいりう
)
の
才子風
(
さいしふう
)
より
見
(
み
)
れば
036
一切
(
いつさい
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
に
何
(
なん
)
等
(
ら
)
の
意味
(
いみ
)
もなく
殆
(
ほとん
)
ど
生存
(
せいぞん
)
の
要
(
えう
)
もなく、
037
只
(
ただ
)
一個
(
いつこ
)
の
哀
(
あは
)
れ
至極
(
しごく
)
なる
肉体物
(
にくたいぶつ
)
に
過
(
す
)
ぎないのだ。
038
鞋虫
(
わらぢむし
)
の
文学者
(
ぶんがくしや
)
や、
039
穀潰
(
ごくつぶ
)
しの
政治家
(
せいぢか
)
や、
040
蓄音器
(
ちくおんき
)
の
教育家
(
けういくか
)
や、
041
米搗
(
こめつき
)
螽斯
(
ばつた
)
の
小役人
(
こやくにん
)
共
(
ども
)
が、
042
仔細
(
しさい
)
らしく
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
手前
(
てまへ
)
を
誇
(
ほこ
)
り、
043
交際
(
かうさい
)
場裡
(
じやうり
)
の
補助
(
ほじよ
)
にもがなと、
044
茶坊主
(
ちやばうず
)
の
茅屋
(
ばうをく
)
を
折々
(
をりをり
)
訪
(
たづ
)
ねて
来
(
く
)
るのみで、
045
余
(
あま
)
り
流行
(
はや
)
らない
宗匠
(
そうしやう
)
である。
046
身代
(
しんだい
)
は
痩
(
や
)
せて
壁
(
かべ
)
迄
(
まで
)
が
骨
(
ほね
)
を
出
(
だ
)
し
軒
(
のき
)
は
傾
(
かたむ
)
き、
047
上雪隠
(
かみせつちん
)
の
屋根
(
やね
)
から
月
(
つき
)
を
見
(
み
)
る
重宝
(
ちようはう
)
な
住居
(
すまゐ
)
である。
048
夕立
(
ゆふだち
)
の
時
(
とき
)
にはバケツや、
049
盥
(
たらひ
)
、
050
手桶
(
てをけ
)
等
(
など
)
を
慌
(
あわ
)
てまはして
座敷中
(
ざしきぢう
)
に
持
(
も
)
ち
運
(
はこ
)
び、
051
時
(
とき
)
ならぬ
雨太鼓
(
あまだいこ
)
の
音
(
おと
)
をさせてゐる。
052
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
此
(
この
)
茶室
(
ちやしつ
)
に
家
(
いへ
)
と
主人
(
しゆじん
)
に
不相当
(
ふさうたう
)
な
珍客
(
ちんきやく
)
が、
053
チヨコチヨコ
窓
(
まど
)
の
内外
(
ないぐわい
)
から
顔
(
かほ
)
を
出
(
だ
)
す
事
(
こと
)
がある。
054
艶々
(
つやつや
)
した
髪
(
かみ
)
の
色
(
いろ
)
、
055
名人
(
めいじん
)
の
描
(
ゑが
)
いた
天人
(
てんにん
)
の
絵
(
ゑ
)
から
抜
(
ぬ
)
け
出
(
だ
)
したやうな
美人
(
びじん
)
が、
056
何処
(
どこ
)
とはなしに
初心
(
うぶ
)
々々
(
うぶ
)
しいけれども、
057
さりとて
田舎出
(
いなかで
)
の
女
(
をんな
)
とも
見
(
み
)
えず、
058
山猿
(
やまざる
)
の
娘
(
むすめ
)
とも
見
(
み
)
えず、
059
起居
(
ききよ
)
振舞
(
ふるまひ
)
しとやかに、
060
頭
(
あたま
)
の
先
(
さき
)
から
指
(
ゆび
)
の
先
(
さき
)
まで、
061
一寸
(
ちよつと
)
動
(
うご
)
けば
四辺
(
あたり
)
の
空気
(
くうき
)
は
千万
(
せんまん
)
里
(
り
)
の
彼方
(
かなた
)
迄
(
まで
)
波動
(
はどう
)
するかと
思
(
おも
)
はるる
位
(
くらゐ
)
、
062
有情
(
いうじやう
)
男子
(
だんし
)
の
肝魂
(
きもたま
)
を
奪
(
うば
)
つた。
063
宗匠
(
そうしやう
)
のタルチンは
妙齢
(
めうれい
)
の
美人
(
びじん
)
に
向
(
むか
)
つて
得意
(
とくい
)
の
茶道
(
さだう
)
に
就
(
つ
)
いて
鹿爪
(
しかつめ
)
らしき
講義
(
かうぎ
)
を
初
(
はじ
)
め
出
(
だ
)
した。
064
美
(
うつく
)
しき
乙女
(
をとめ
)
は
云
(
い
)
ふ
迄
(
まで
)
もなくアリナが
山奥
(
やまおく
)
から
生捕
(
いけど
)
つて
来
(
き
)
た、
065
山霊
(
さんれい
)
水伯
(
すいはく
)
の
精
(
せい
)
の
変化
(
へんげ
)
と
云
(
い
)
ふべき、
066
スバール
姫
(
ひめ
)
たる
事
(
こと
)
は
云
(
い
)
ふ
迄
(
まで
)
もない。
067
タル『
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
068
女
(
をんな
)
の
最
(
もつと
)
も
習
(
なら
)
つておかねばならない
事
(
こと
)
は
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
069
今日
(
こんにち
)
は
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
の
有難
(
ありがた
)
き
尊
(
たふと
)
き
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
によりまして、
070
卑
(
いや
)
しき
私
(
わたし
)
が
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
御
(
お
)
手前
(
てまへ
)
を
恐
(
おそ
)
れ
乍
(
なが
)
ら
伝授
(
でんじゆ
)
さして
頂
(
いただ
)
きませう。
071
先
(
ま
)
ず
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
講目
(
かうもく
)
から
心得
(
こころえ
)
て
居
(
を
)
つて
貰
(
もら
)
はなくてはなりませぬから、
072
あらましの
事
(
こと
)
を
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げます』
073
ス『ハイ、
074
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
までお
世話
(
せわ
)
になりまして
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
075
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
許
(
ばか
)
りも
子供
(
こども
)
の
時
(
とき
)
から
山奥
(
やまおく
)
に
連
(
つ
)
れ
行
(
ゆ
)
かれ、
076
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
風
(
かぜ
)
にも
当
(
あた
)
つてゐないやうな、
077
おぼこ
娘
(
むすめ
)
の
世間
(
せけん
)
知
(
し
)
らずで
厶
(
ござ
)
いますから、
078
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
に
限
(
かぎ
)
らず
何事
(
なにごと
)
も
御
(
ご
)
指導
(
しだう
)
をお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します』
079
タルチンは
笑
(
ゑみ
)
を
満面
(
まんめん
)
に
浮
(
うか
)
べ、
080
低
(
ひく
)
い
鼻
(
はな
)
をピコつかせ、
081
三方白
(
さんぱうじろ
)
の
目
(
め
)
をきよろつかせ
乍
(
なが
)
ら、
082
フンと
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
の
甲
(
かふ
)
で
鼻
(
はな
)
を
左
(
ひだり
)
から
右
(
みぎ
)
へ
撫
(
な
)
で、
083
自分
(
じぶん
)
の
尻
(
しり
)
の
方
(
はう
)
でモシヤモシヤとこすりつけ、
084
言葉
(
ことば
)
迄
(
まで
)
も
荘重
(
さうちよう
)
らしく
粧
(
よそほ
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
085
タル『
抑
(
そもそも
)
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
は
三ケ
(
さんこ
)
の
綱領
(
かうりやう
)
を
以
(
もつ
)
て
本
(
もと
)
とされてゐます。
086
さうして
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
仲通
(
なかどほり
)
の
習
(
なら
)
ひと
云
(
い
)
ふのは
明徳
(
めいとく
)
を
明
(
あきら
)
かにするの
謂
(
いひ
)
であつて、
087
天命
(
てんめい
)
に
基
(
もとづ
)
いて
性
(
せい
)
を
率
(
ひき
)
ゆるの
道
(
みち
)
で
厶
(
ござ
)
います。
088
扨
(
さ
)
て
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
も、
089
その
大本
(
たいほん
)
を
極
(
きは
)
めるならば
何
(
いづ
)
れの
手前
(
てまへ
)
も
十三
(
じふさん
)
手前
(
てまへ
)
が
父
(
ちち
)
となり
母
(
はは
)
となるのです。
090
之
(
これ
)
から
三百
(
さんびやく
)
八十
(
はちじふ
)
手前
(
てまへ
)
も
分
(
わか
)
れるのです。
091
「すべて
物
(
もの
)
は
本末
(
ほんまつ
)
があり、
092
事
(
こと
)
には
終始
(
しうし
)
があり、
093
前後
(
ぜんご
)
する
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
る
時
(
とき
)
は
即
(
すなは
)
ち
道
(
みち
)
に
近
(
ちか
)
し。
094
その
本
(
もと
)
乱
(
みだ
)
れて
未
(
いま
)
だ
其
(
その
)
末
(
すゑ
)
をさまるものは
非
(
あら
)
ざる
也
(
なり
)
」と
聖人
(
せいじん
)
が
説
(
と
)
かれてゐるでせう。
095
それ
故
(
ゆゑ
)
に
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
は
十三
(
じふさん
)
手前
(
てまへ
)
を
根本
(
こんぽん
)
にして
諸々
(
もろもろ
)
の
手前
(
てまへ
)
は
此
(
この
)
中
(
うち
)
にあるのです。
096
そして
又
(
また
)
許可
(
ゆるし
)
の
手前
(
てまへ
)
と
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
稽古
(
けいこ
)
が
進
(
すす
)
むと
技芸
(
ことわざ
)
が
広
(
ひろ
)
くて、
097
色々
(
いろいろ
)
に
別
(
わか
)
れます。
098
これ
新民
(
しんみん
)
の
場
(
ば
)
にして
品々
(
しなじな
)
変
(
かは
)
りあり。
099
手前
(
てまへ
)
は、
100
その
心
(
こころ
)
を
選択
(
せんたく
)
するの
謂
(
いひ
)
であります。
101
古
(
いにしへ
)
東山殿
(
ひがしやまどの
)
より
千
(
せん
)
の
利休
(
りきう
)
及
(
および
)
現代
(
げんだい
)
に
至
(
いた
)
つて
其
(
そ
)
の
命
(
めい
)
維
(
こ
)
れ
新
(
あたら
)
しく、
102
拙者
(
せつしや
)
の
教
(
をし
)
ふる
所
(
ところ
)
は
真台子
(
しんだいす
)
七段
(
しちだん
)
は
允可
(
いんか
)
至極
(
しごく
)
なり。
103
徳
(
とく
)
を
明
(
あきら
)
かにするを
本
(
もと
)
となし、
104
民
(
たみ
)
を
明
(
あきら
)
かにするを
末
(
すゑ
)
とするが
故
(
ゆゑ
)
に、
105
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
なるものは
仲通
(
なかどほり
)
を
本
(
もと
)
となし、
106
手前
(
てまへ
)
を
末
(
すゑ
)
となすのです。
107
真台子
(
しんだいす
)
を
本
(
もと
)
となすを
至善
(
しぜん
)
とするのです。
108
されば
七段
(
しちだん
)
は、
109
その
目
(
もく
)
の
大
(
だい
)
なるものです。
110
ここに
於
(
おい
)
て
其
(
その
)
精美
(
せいび
)
を
極
(
きは
)
め、
111
皆
(
みな
)
以
(
もつ
)
て
其
(
その
)
止
(
とど
)
まる
所
(
ところ
)
を
知
(
し
)
る
時
(
とき
)
は、
112
少
(
すこ
)
しの
疑
(
うたが
)
ひもなし。
113
故
(
ゆゑ
)
に
私
(
わたくし
)
の
教
(
をし
)
へるのを
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
真台子
(
しんだいす
)
と
申
(
まを
)
します。
114
先
(
ま
)
づ
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
席
(
せき
)
にはこれ
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
四畳半
(
よでふはん
)
、
115
順勝手
(
じゆんかつて
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がある。
116
そして
順
(
じゆん
)
のまはり
式
(
しき
)
とは
居畳
(
ゐだたみ
)
より
左
(
ひだり
)
へ
廻
(
まは
)
るのを
順
(
じゆん
)
と
申
(
まを
)
し、
117
又
(
また
)
四畳半
(
よでふはん
)
に
順逆
(
じゆんぎやく
)
の
勝手
(
かつて
)
に
習
(
なら
)
ひがある。
118
順
(
じゆん
)
の
回
(
まは
)
り
式
(
しき
)
にして
仲
(
なか
)
の
半畳
(
はんぜふ
)
に
爐
(
ろ
)
をきり、
119
自在鎖
(
じざいぐさり
)
をかけるか、
120
または
五徳
(
ごとく
)
に
釜
(
かま
)
をかけるか、
121
之
(
これ
)
を
順勝手
(
じゆんかつて
)
と
申
(
まを
)
すのです。
122
今
(
いま
)
私
(
わたくし
)
が
一
(
ひと
)
つの
歌
(
うた
)
を
詠
(
よ
)
みますから、
123
つけとめておいて
下
(
くだ
)
さい』
124
ス『ハイ、
125
いろいろと
高遠
(
かうゑん
)
な
御
(
ご
)
教訓
(
けうくん
)
を
頂
(
いただ
)
きまして
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
126
何分
(
なにぶん
)
世間
(
せけん
)
慣
(
な
)
れのしない
少女
(
せうぢよ
)
の
事
(
こと
)
ですから、
127
嘸
(
さぞ
)
御
(
お
)
師匠
(
ししやう
)
様
(
さま
)
もまどろしい
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いませう』
128
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
料紙箱
(
れうしばこ
)
より
硯
(
すずり
)
、
129
筆
(
ふで
)
、
130
墨
(
すみ
)
、
131
巻紙
(
まきがみ
)
等
(
など
)
とり
出
(
だ
)
し、
132
タルチンの
読
(
よ
)
み
上
(
あ
)
げる
歌
(
うた
)
を
記
(
しる
)
し
初
(
はじ
)
めける。
133
タル『一、
134
門
(
かど
)
に
入
(
い
)
り
右
(
みぎ
)
に
座敷
(
ざしき
)
のあるならば
135
順勝手
(
じゆんかつて
)
とはかねて
知
(
し
)
るべし。
136
一、
137
亭主
(
ていしゆ
)
居
(
ゐ
)
て
左
(
ひだり
)
へ
廻
(
まは
)
るを
順
(
じゆん
)
と
云
(
い
)
ふ
138
之
(
これ
)
は
即
(
すなは
)
ち
正
(
せい
)
の
字
(
じ
)
の
心
(
こころ
)
。
139
一、
140
家
(
いへ
)
造
(
つく
)
りかねて
思案
(
しあん
)
をしてぞよき
141
建
(
た
)
て
上
(
あが
)
りのなきは
悪
(
あし
)
きものぞと。
142
一、
143
爐
(
ろ
)
の
内
(
うち
)
の
見
(
み
)
えにくき
程
(
ほど
)
難儀
(
なんぎ
)
なは
144
炭
(
すみ
)
する
時
(
とき
)
に
燈火
(
あかり
)
欲
(
ほ
)
しきぞ。
145
一、
146
枯木
(
かれき
)
だも
香
(
にほ
)
へと
藤
(
ふぢ
)
をまとわせて
147
流石
(
さすが
)
亭主
(
ていしゆ
)
の
手利
(
てぎ
)
きとは
知
(
し
)
る。
148
一、
149
野
(
の
)
も
山
(
やま
)
も
花
(
はな
)
も
香
(
にほひ
)
も
見
(
み
)
乍
(
なが
)
らに
150
生
(
い
)
ける
心
(
こころ
)
を
知
(
し
)
る
人
(
ひと
)
ぞ
知
(
し
)
る。
151
一、
152
よりよりに
埃
(
ほこり
)
を
払
(
はら
)
ふ
茶
(
ちや
)
の
湯師
(
ゆし
)
の
153
心
(
こころ
)
の
塵
(
ちり
)
はさもあらむかし。
154
一、
155
門
(
かど
)
に
入
(
い
)
り
左
(
ひだり
)
に
座敷
(
ざしき
)
のあるものは
156
逆勝手
(
ぎやくかつて
)
ぞと
知
(
し
)
るがよろしき。
157
一、
158
亭主
(
ていしゆ
)
居
(
ゐ
)
て
右
(
みぎ
)
へ
廻
(
まは
)
るを
逆
(
ぎやく
)
と
云
(
い
)
ひ
159
之
(
これ
)
は
即
(
すなは
)
ち
従
(
じゆう
)
の
字
(
じ
)
の
心
(
こころ
)
。
160
サアサア
此
(
この
)
歌
(
うた
)
によつて
爐
(
ろ
)
の
構
(
かま
)
へや
室内
(
しつない
)
の
様子
(
やうす
)
があらまし
解
(
わか
)
るでせう。
161
あまり
一度
(
いちど
)
に
沢山
(
たくさん
)
教
(
をし
)
へると、
162
お
忘
(
わす
)
れになるといかぬから、
163
もう
少
(
すこ
)
し
教
(
をし
)
へて
之
(
これ
)
で
休
(
やす
)
みませう。
164
又
(
また
)
明日
(
みやうにち
)
から
実地
(
じつち
)
の
手前
(
てまへ
)
を
御覧
(
ごらん
)
に
入
(
い
)
れますから。
165
扨
(
さて
)
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
講目
(
かうもく
)
七段
(
しちだん
)
の
習
(
なら
)
ひを
申
(
まを
)
します。
166
初段
(
しよだん
)
、
167
大盆
(
だいぼん
)
、
168
小盆
(
こぼん
)
、
169
唐津物
(
からつもの
)
、
170
茶入台
(
ちやいれだい
)
、
171
天目
(
てんもく
)
172
二段
(
にだん
)
、
173
大盆
(
だいぼん
)
、
174
大海
(
だいかい
)
茶入
(
ちやいれ
)
、
175
合子
(
がふす
)
の
物置
(
ものおき
)
、
176
盆点
(
ぼんてん
)
177
三段
(
さんだん
)
、
178
大盆袋
(
だいぼんぶくろ
)
、
179
天目
(
てんもく
)
茶筌入
(
ちやせんいれ
)
180
四段
(
よだん
)
、
181
大盆
(
だいぼん
)
内海
(
ないかい
)
長緒
(
ながお
)
、
182
薄茶台
(
うすちやだい
)
、
183
天目
(
てんもく
)
三組
(
みくみ
)
184
五段
(
ごだん
)
、
185
大盆台
(
だいぼんだい
)
、
186
天目
(
てんもく
)
茶碗
(
ちやわん
)
、
187
二眼点
(
にがんてん
)
188
六段
(
ろくだん
)
、
189
丸盆
(
まるぼん
)
、
190
分紊
(
ぶんぶん
)
隠架
(
いんか
)
の
蓋置
(
ふたおき
)
191
七段
(
しちだん
)
、
192
大盆
(
だいぼん
)
二
(
ふた
)
つ
台
(
だい
)
、
193
天目
(
てんもく
)
穂屋
(
ほや
)
、
194
香爐
(
かうろ
)
、
195
蓋置
(
ふたおき
)
196
の
次第
(
しだい
)
をもボツボツ
教
(
をし
)
へませう』
197
ス『ハイ、
198
有難
(
ありがた
)
う、
199
どうかよろしう
願
(
ねが
)
ひます』
200
かかる
所
(
ところ
)
へ
面
(
おもて
)
を
包
(
つつ
)
み
足音
(
あしおと
)
を
忍
(
しの
)
ばせて、
201
空巣
(
あきす
)
狙
(
ねら
)
ひが
人
(
ひと
)
の
住宅
(
ぢうたく
)
を
覗
(
のぞ
)
くやうな
様子
(
やうす
)
で、
202
四辺
(
あたり
)
を
憚
(
はばか
)
り
乍
(
なが
)
ら
入
(
い
)
り
来
(
く
)
るのはスダルマン
太子
(
たいし
)
の
君
(
きみ
)
であつた。
203
タルチンは
太子
(
たいし
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るより
且
(
かつ
)
驚
(
おどろ
)
き
且
(
かつ
)
喜
(
よろこ
)
び
乍
(
なが
)
ら、
204
米搗
(
こめつき
)
螽斯
(
ばつた
)
宜
(
よろ
)
しく
幾度
(
いくど
)
となく
禿頭
(
とくとう
)
の
杵
(
きね
)
で
畳
(
たたみ
)
の
上
(
うへ
)
に
餅
(
もち
)
をつき
乍
(
なが
)
ら、
205
玄関口
(
げんくわんぐち
)
迄
(
まで
)
五足
(
いつあし
)
六足
(
むあし
)
スルスルと
後
(
あと
)
びざりをなし、
206
雪駄
(
せつた
)
のやうに
擦
(
す
)
りへらした
庭下駄
(
にはげた
)
を
足
(
あし
)
にひつかけ、
207
粋
(
すゐ
)
を
利
(
き
)
かして
母屋
(
おもや
)
の
方
(
はう
)
へと
208
茶色
(
ちやいろ
)
の
帽子
(
ばうし
)
を
目深
(
まぶか
)
に
冠
(
かぶ
)
り、
2081
稍
(
やや
)
俯向
(
うつむ
)
き
気味
(
ぎみ
)
になつて、
209
尻
(
しり
)
をプリンプリンとふり
乍
(
なが
)
ら
庭
(
には
)
の
木立
(
こだち
)
を
縫
(
ぬ
)
うて
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
210
野山
(
のやま
)
に
嘯
(
うそぶ
)
く
虎
(
とら
)
、
211
獅子
(
しし
)
、
212
熊
(
くま
)
、
213
狼
(
おほかみ
)
も、
214
山林
(
さんりん
)
に
囀
(
さへづ
)
る
百鳥
(
ももどり
)
も
乃至
(
ないし
)
は
虫族
(
むしけら
)
地虫
(
ぢむし
)
の
類
(
るゐ
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
、
215
天地
(
てんち
)
の
間
(
あひだ
)
に
生
(
い
)
きとし
生
(
い
)
けるもの、
216
一
(
いつ
)
として
恋
(
こひ
)
を
歌
(
うた
)
はぬはなく、
217
色情
(
いろ
)
におぼれぬものはない。
218
況
(
ま
)
してや
坊
(
ぼつ
)
ちやま
育
(
そだ
)
ちのタラハン
城
(
じやう
)
の
太子
(
たいし
)
、
219
青春
(
せいしゆん
)
の
血
(
ち
)
にもゆる
好男子
(
かうだんし
)
が
220
花
(
はな
)
も
恥
(
はぢ
)
らう
天成
(
てんせい
)
の
美人
(
びじん
)
の
前
(
まへ
)
に
出
(
で
)
ては
胸
(
むね
)
の
高鳴
(
たかな
)
りを、
2201
止
(
とど
)
むる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
なかつた。
221
スバール
姫
(
ひめ
)
も
同
(
おな
)
じ
思
(
おも
)
ひの
恋衣
(
こひごろも
)
、
222
頬
(
ほほ
)
を
紅
(
くれなゐ
)
に
染
(
そめ
)
乍
(
なが
)
ら、
223
片袖
(
かたそで
)
に
艶麗
(
えんれい
)
な
顔
(
かほ
)
を
包
(
つつ
)
んで
暫
(
しば
)
しは
無言
(
むごん
)
の
幕
(
まく
)
をつづけてゐた。
224
恋
(
こひ
)
にかけては
初心
(
うぶ
)
の
太子
(
たいし
)
と
初心
(
うぶ
)
の
乙女
(
をとめ
)
、
225
互
(
たがひ
)
に
云
(
い
)
ひたき
事
(
こと
)
も
口
(
くち
)
ごもり、
226
何
(
なん
)
とはなく
恋
(
こひ
)
の
曲物
(
くせもの
)
にとり
挫
(
ひし
)
がれて、
227
『
会
(
あ
)
ひたかつた、
228
見
(
み
)
たかつた、
229
可愛
(
かあ
)
いいものよ』
230
と
只
(
ただ
)
一言
(
ひとこと
)
の
口切
(
くちき
)
りさへも、
231
なし
得
(
え
)
ぬ
迄
(
まで
)
に
臆病
(
おくびやう
)
になつてゐた。
232
さりながら、
233
数多
(
あまた
)
のよからぬ
小盗人
(
こぬすびと
)
と
共
(
とも
)
に、
234
山
(
やま
)
の
奥
(
おく
)
とは
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
235
揉
(
も
)
まれて
居
(
ゐ
)
たスバール
姫
(
ひめ
)
は、
236
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
心
(
こころ
)
も
開
(
ひら
)
けオキヤンになつて
居
(
ゐ
)
た。
237
スバール
姫
(
ひめ
)
は
思
(
おも
)
ひきつて
太子
(
たいし
)
の
肩
(
かた
)
に
飛
(
と
)
びつき、
238
腕
(
うで
)
もむしれる
許
(
ばか
)
り
固
(
かた
)
く
抱
(
だ
)
き
〆
(
し
)
めて
239
互
(
たがひ
)
の
熱
(
あつ
)
い
頬面
(
ほほべた
)
をピタリと
合
(
あは
)
せた。
240
四
(
よ
)
つの
目
(
め
)
には
恋
(
こひ
)
の
叶
(
かな
)
うた
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
が
滲
(
にじ
)
んでゐた。
241
スバール
姫
(
ひめ
)
は
思
(
おも
)
ひきつて
三十一
(
みそひと
)
文字
(
もじ
)
に
思
(
おも
)
ひを
述
(
の
)
べた。
242
『
我
(
わが
)
君
(
きみ
)
の
御幸
(
みゆき
)
のありしその
日
(
ひ
)
より
243
今日
(
けふ
)
の
吉
(
よ
)
き
日
(
ひ
)
を
待
(
ま
)
ちし
苦
(
くる
)
しさ。
244
嬉
(
うれ
)
しくもアリナの
君
(
きみ
)
に
迎
(
むか
)
へられ
245
太子
(
よつぎ
)
の
君
(
きみ
)
に
会
(
あ
)
ひし
嬉
(
うれ
)
しさ。
246
吾
(
わが
)
恋路
(
こひぢ
)
いや
永久
(
とこしへ
)
に
続
(
つづ
)
けかしと
247
過
(
す
)
ぎにし
日
(
ひ
)
より
祈
(
いの
)
りけるかな』
248
太
(
たい
)
『
浅倉
(
あさくら
)
の
山
(
やま
)
に
見初
(
みそ
)
めし
乙女子
(
をとめご
)
の
249
御姿
(
みすがた
)
こそは
命
(
いのち
)
なりけり。
250
汝
(
なれ
)
思
(
おも
)
ふ
吾
(
わが
)
恋衣
(
こひごろも
)
ボトボトと
251
乾
(
かわ
)
く
間
(
ま
)
もなく
涙
(
なみだ
)
しにけり。
252
天地
(
あめつち
)
の
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みに
守
(
まも
)
られて
253
今日
(
けふ
)
嬉
(
うれ
)
しくも
汝
(
なれ
)
に
会
(
あ
)
ふかな。
254
人
(
ひと
)
はいざ
如何
(
いか
)
に
吾
(
わが
)
身
(
み
)
を
図
(
はか
)
ゆとも
255
いねてむ
後
(
のち
)
は
如何
(
いか
)
で
恐
(
おそ
)
れむ』
256
ス『
有難
(
ありがた
)
し
吾
(
わが
)
恋
(
こ
)
ふ
君
(
きみ
)
の
御言葉
(
みことば
)
は
257
賤
(
しづ
)
の
乙女
(
をとめ
)
の
命
(
いのち
)
なりけり。
258
永久
(
とこしへ
)
に
変
(
かは
)
らずあれと
祈
(
いの
)
るかな
259
君
(
きみ
)
と
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
美
(
うつく
)
しき
仲
(
なか
)
を』
260
(
大正一四・一・五
新一・二八
北村隆光
録)
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<<< 山出女
(B)
(N)
変装太子 >>>
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