霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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園部大橋

インフォメーション
題名:園部大橋 著者:出口王仁三郎
ページ:457
概要:28歳の頃 備考: タグ:竹村(中村竹造、中村竹蔵) データ凡例: データ最終更新日:2023-11-21 14:27:36 文字数:2411 OBC :B119800c101
二十八歳の頃
秋ふかき朝なりにけりわれ一人園部(そのべ)大橋に立ちて霧(きり)見る
深霧(ふかぎり)の中よりほのぼの近(ちか)み来る人は井上(ゐのうへ)獣医なりけり
お早(は)ようと挨拶すれば井上は神にとぼけて居(ゐ)るかとにらむ
かむながら神の大路(おほぢ)を進む身ぞみ国の為(た)めとわれはいらへり
なまくらな逃げ口上(こうじやう)は聞かないと井上われをどなりて過ぐる
井上の帰りを待ちて彼(かれ)が家を橋のたものとにおとなひにけり
橋下(はししも)の金光教会と軒(のき)ならべ井上は此処(ここ)に住みてありけり
教会も持たぬ身にして神の道説(と)くはをかしと井上あざける
小(ち)つぽけな金光教会が何(なに)になる吾(わが)ゆく先を見よかしといふ
獣医学牧畜業を中途にてやめるやからに何が出来るか
かむながら真(まこと)の道と営利事業と一緒にするは無理解なるべし
金(かね)なくて人はこの世にたてるかと拝金主義の井上はいふ
信仰が徹底すればおのづから金(かね)は神より賜(たま)ふべきもの
神様を拝んで金(かね)が出来るなら俺(わし)は獣医をやめるとわらふ
敬神家(けいしんか)と拝金主義者とは根本(こんぽん)に意見があはぬとわれいひ放つ
それほどに嫌ひな拝金者の家(いへ)に何故(なぜ)出てうせたと額(ひたひ)の青筋(あをすぢ)
金儲けするもよけれど神様の道をさとるも悪くはあるまい
神様の事ならとつくに知つてゐる釈迦に経(きやう)をば説くなと怒(いか)る
金銭の奴隷(どれい)を止(や)めて神様のつかひとなれる喜楽さんだよ
こら喜楽何をぬかすといひながら金槌(かなづち)ふり上げ追つかけ来たる
畜生の医者には相手にならないと尻たたきつつ逃げ出しにけり
井上は馬鹿よばかよと大声を張りあげながら呶鳴りてゐるも
井上はわれとの間隔約(やく)半丁顋(あご)をしやくりて吾(われ)はわらひぬ
こん畜生あごをしやくつて嗤(わら)うたと井上怒(おこ)つてまた追ひかける
大橋(おほはし)を南にわたり本町(ほんまち)の奥村(おくむら)かたに逃げ入りにけり
奥村商店
奥村の家にひそみてふるひ居(を)れば井上棍棒(こんぼう)うちふり来たる
この家に逃げた畜生つき出せと井上店(みせ)にたちてどなれり
この家に畜生なんか居(を)らないと奥村主人(しゆじん)逆襲して居(を)り
井上はぶつぶつ叱言(こごと)いひながら不承(ふしよう)不承(ぶしよう)にこの家(や)を出(い)でゆく
井上が帰りしと聞き胸撫(な)でてありし次第を主人(あるじ)に語る
井上は少し発狂の気味にして時(とき)どき人を追つかけるといふ
奥村のはなれ座敷の窓開(あ)けて井上の家川(かは)むかふに見る
井上はわが姿(すがた)見て怒(いか)りたち猟銃(れふじう)とり出しねらひ出したり
驚きて窓を閉(とざ)せば間(ま)もあらずどんと一(いつ)ぱつ猟銃のおと
黒田に移転
発狂の井上をれば園部(そのべ)町(ちやう)は危険なりとて黒田(くろた)にうつる
園部(そのべ)村(むら)黒田の西田(にしだ)宇之助(うのすけ)が座敷を借りて移り住みたり[※西田の名前は本書では「西田宇之助」だが霊界物語や大地の母では「西田卯之助」(宇ではなく卯)と表記されている。]
七十余戸(よこ)の黒田(くろた)の里人(さとびと)悉(ことごと)くわが説く道をうべなひにけり
この里(さと)に臨時会合所をひらき神を斎(いつ)きて人をみちびく
遠近(をちこち)の人びと次(つ)ぎつぎ訪ね来てその応接に忙殺されたり
若森の里
宇之助(うのすけ)の妹(いもうと)わさ子(こ)が嫁入(よめい)れる若森(わかもり)の里にたのまれてゆく
若森(わかもり)の中井(なかゐ)太一(たいち)氏の家に入(い)り瀕死の病人に鎮魂をなす
鎮魂のいさをたちまちあらはれて大病人(たいびやうにん)は全快なしたり
霊顕(れいけん)はいやちこなりと村むらの人次(つ)ぎつぎに詣(まう)で来たれり
訪(と)ひ来たる人しげければ中井家はありがた迷惑の姿なりけり
里人(さとびと)は集ひにつどひ相(あひ)はかり竹村(たけむら)かたに会合所(くわいがふしよ)をおく
有難迷惑
朝夕を集ひ来たりていろいろと吾(わが)為(た)め世話する婦人ありけり
この婦人うるさきことのみ云ひ出して神に仕ふるわれをこまらす
気の小(ち)さいひらけぬ神といひながら婦人は袂(たもと)で涙ふき居り
気の小(ち)さい神様ならねど修行の身許(ゆる)したまへと吾(われ)はことわる
諾冊(なぎなみ)の二尊(にそん)の故事を引出(ひきだ)していと猛烈にわれにせまれり
神様になるまで許したまはれよ諾冊(なぎなみ)二神(にしん)はまことの神様
婦人『嫌なればいやときつぱり云ひ給へ神様だしにことわらずして』
いやといへば信仰おとさむ好きといへばのつぴきならぬ吾(われ)となるべし
神様はあはれな一人のこの女(をんな)見殺さるかと吾(われ)につめよる
見殺しにする気はあらず今日(けふ)のわれを許せゆるせとひたにわびたり
痛く無い腹
両人の問答最中(もなか)に竹村(たけむら)は野良よりかへりて苦笑(にがわら)ひする
竹村『こりやおさと早く去(い)なぬか上田(うへた)さんあやしい事をしてはいけない』
この女(をんな)何といつても帰らない私は実にこまつて居(ゐ)ますよ
困つてるソリヤさうだらうと竹村はいやらしき笑(ゑみ)湛(たた)へて笑ふ
くせの悪い女なる故(ゆゑ)出戻りの恥(はぢ)知らぬ奴と竹村がいふ
上田さんとおさとの噂が村中(むらぢう)にパツとひろがりこまると怒(いか)る
会合所は今日(けふ)から断(ことわ)り申します早く帰つて下さい黒田(くろた)へ
迷惑をかけてはすまぬ今日よりは直(す)ぐに帰るときつぱり答ふる
里人(さとびと)の意見を聞いたその上で帰つてくれよと袖(そで)ひきとめる
ことわりを云はれた家には半時(はんとき)も私は居(を)らぬと無理にたち出(い)づ
里人は次(つ)ぎつぎ吾(われ)を訪ね来てなだめつすかしつ止(とど)めむとぞする
この家をたち出(い)で中井(なかゐ)忠次(ちうじ)氏の家に到りてしばしを休らふ
里(さと)びとは竹村の言(げん)を憤(いきど)ほり吾(われ)をなだめて止(とど)めむとすも
若森会合所
里人(さとびと)の頼みによりて忠次(ちうじ)氏の館(やかた)に会合所をばうつせり
里人(さとびと)にそばまれおさとはこの日より会合所へは出入(でいり)をなさず
若森(わかもり)や黒田(くろた)の里(さと)をゆきかひてわれ二十八の冬は暮れたり
あたらしき年を迎へて若森の会合所にて元旦を祝ふ
半国(はんごく)の山よりおろす雪の風にあふられ寒し若森の春は
天引峠の夜
病人の家をおとづれ帰るさを天引(あまびき)峠(たうげ)に日を暮らしけり
天引(あまびき)のたうげのかたへの辻堂(つじだう)に二人の男火(ひ)を焚(た)きて居り
この男いやらしき目をむきながらあたつてゆけとぞんざいに云ふ
音(おと)に聞く天引(あまびき)峠(たうげ)の泥棒と思へばますますこころおちゐず
こんなことでびくびくしては堪(たま)らぬと度胸を据(す)ゑて尻まくりよる
一人(いちにん)の男わが顔凝視(ぎようし)してお前は何かとあごでものいふ
われこそは穴太(あなを)の里の侠客と片肌(かたはだ)ぬいでどつかと坐(すわ)る
ちと俺(おれ)にお金を貸してくれぬかとそろそろ本音をふき出(いだ)したり
金なんか持つてゐないと答ふればにやりと笑ひ互(たがひ)にささやく
ふところに二円の金はありながら吾(われ)は嘘をばつきて終(しま)へり
埴生(はぶ)へゆきて博奕(ばくち)にまけた帰るさよ米代(こめだい)少しくれよとせまる
二両より金は持たぬとわれいへば睾丸(きんたま)なんか要らぬと笑ふ
本当に二円の金はここにあると財布はたきて渡しやりたり
両人は喜び両手にいただきて神の助けと感謝して居り
泥棒の急場(きふば)をのがれ小夜(さよ)更(ふ)けてわれ若森の里に帰れり
若森に深夜帰れば忠次(ちうじ)氏は心配したと真顔にかたる
泥棒の出るてふ天引(あまびき)たうげをば深夜にかへる大胆な師(し)よ
泥棒に二円与へて逃げ皈(かへ)りしと語れば忠次(ちうじ)氏胸(むね)撫で下(おろ)せり
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