宮の前茶店にわれを待たせおきて様子さぐると四方氏出でゆく
ややしばし待てば四方氏出で来り都合はよしとわれを案内す
出口開祖の内命をうけて四方氏はわれを迎へに来りしなりけり
金光の教師信徒に知らせじと四方はいたく気をもみてをり
裏路をたどりたどりて裏町の開祖の庵に午後三時つく
やうやくに先生迎へて帰りしと開祖の前に報告なしをり
四方さん御苦労でした神様はお喜びよと開祖はほほ笑む
再会の挨拶のれば御開祖は御苦労様とほほ笑み給へり
汗ぬぐひ砂糖水など呑みをれば駿河の師より電信来る
手つづきは全くすめり堂堂と道場開設あれとの電文
開祖の厳命
何人の密告せしか金光の足立はふためき色かへて来る
上田さんいらぬお世話といひながらろくな挨拶せずにふくれる
ふくれたる足立の面のをかしさは梟みみづく偲ばれにけり
開祖さんこの正信をだしぬいて何故に上田を招いたかとなじる
平然と出口開祖はほほゑみつ大神様の命令と宣らせり
出『香具師の様なやり方をする教会はこの神様はおきらひなさるで』
神様の御命令なら何事も私は喜び聞きますと宣らせり
出『今日からは上田先生と提携し神のお道を開きますぞえ』
出『艮の金神様をよう出さぬやうな教会はきらひですぞえ』
出『金神を表に出すとは嘘ばかり私をだしに教会開いて』
出『金光の松魚節にはなりません一力で開く大神様ぞえ』
正『お直さん時節をお待ちとあれ程に私がいふのがわかりませんか』
出『六年も私をだました教会にお世話になるのはやめにしました』
出『島原の杉田がわしをだしにしてお前をよこした腹が見えてる』
出『神界がせけるで早く世に出せと大神様の御催促きびしい』
出『亀岡の大橋福知の青木さんもこの神さんをだしにしてゐる』
出『金光の下を働くやうな神でないぞえ天地の大神様よ』
正『今日までも保護した私を水臭い上田なんかが何知りますかい』
正『この男ところに居れず山奥へうろついて来た風来者です』
足立さん神のみむねにそむくかと言はれて頭かきかきうつむく
神様が解らにや明日から教会を出て下さいと開祖の厳命
兎も角も考へますと言ひながら悄然として足立は出でゆく
協議会
本宮の金光教会は足立氏の召集により世話方あつまる
足立氏は虚実こもごもとりまぜて吾を退くる協議会開く
協議会に招かれ四方平蔵氏もその一人に加はりて居り
四方平蔵同じく与平伊左衛門村上竹村謀議をこらせり
正信は四方にむかひ無断にて風来者を招いたとせむる
平『神様の命令かしこみはるばると上田先生をお迎へしたのだ』
この様な話は聞き度くござらぬと四方氏席を蹴つて帰れり
四方氏は協議の有様つばらかに開祖の前に陳述なしをり
出『四方さん私は上田先生と一緒に神道を開きますぞえ』
開祖様御尤もですと四方氏は肩ぴりつかせ雄猛びしてをり
教会に招かれ集ひし世話方はつぎつぎ開祖の宅にあつまる
皆様は金光教会のお世話方私は一人でたてると宣らせり
開祖様の仰有る通り神様のお言葉通り従ふと誓ふ
世話係信者のこらず教会を捨てて開祖の命にしたがふ
世話方は足立を帰せほり出せと反対運動の烽火をあげる
六年も私をだました足立さんに去んでほしいと開祖のお言葉
足立氏の味方となるは竹村と塩見と四方わづかに三人
○余白に
こもりゐて天上地上のことごとをつぶさに知れる久延彦あはれ
宣り直し見直す術もつきはてて神のいでます時とはなりぬ