会長は大槻とう子と醜関係ありなど各地にデマを飛ばせり
竹村は部下の信者を使役してわが醜名を各地にひろむる
わが霊魂認識不足の信徒等なきものにせんと意気まきはじむる
猛獣と同棲したる心地して欲ぼけ男とともに在りけり
勢を得れば妬まれ人気あれば人にそねまる浮世なりけり
信徒の認識不足にあきれはて吾はいふべきことを知らざり
弁解をなせばますます疑ひをかさぬる小人手をつけられず
産土の杜にわれ待つ人ありと急ぎ信徒報告をなす
一大事突発せりと京都よりひそかに人の来れるといふ
何事か知らねど一先づ会ひ見むと水無月神社の杜にわれゆく
よくみれば出雲詣での供をせし杉浦万吉といふ男なり
杉浦は声ふるはせて出雲詣でのあと立替のなかりしをなじる
建替は大本内部のことなりと答へば万吉ふふんと空むく
京都市の信者の騒ぎをしづむべく上京せよとすすむる杉浦
くだらなきことに上京われせじと答へば短刀ひきぬきて迫る
杉浦の生命をかけての権幕にわれ止むを得ず京都にのぼる
身じたくもなさずそのまま産土の杜をたち出で山路を辿る
午後の陽は須知山峠の坂道をてらして辿る身に汗にじむ
須知山の峠にたてばほほけたる蕨はここだ風にそよげり
山道を辿り辿りて大原のあたらしや旅館にたち入りにけり
何となく杉浦の様子落ちつかずただならぬことと吾感じたり
大用を足さむと吾は雪隠に入りてしあれば人の声する
しんしんと夜は更けにつつ田舎家の雪隠の中は暗かりにけり
会長は何処へかくれた逃げたかと囁く声の耳にひびかふ
いぶかしと耳をすませば京都より御牧西山谷口の面面
くらがりの山坂道におびき出し吾殺さんとたくらめるらし
刺客らの表に出でし足音を聞きて雪隠ぬけ出でにけり
この宿の裏を流るる谷川にすべるが如くおりたちにけり
闇の幕しだいしだいに深みつつ白じろ光る波の瀬がしら
玉の緒の命惜しさに闇ふかき谷川つたひ台頭に帰れり
足音をしのばせながら山路をとみかうみつつ帰路を急げり
わが姿消えしに彼らはおどろきて闇の山路行きつ戻りつ
闇深きおどろがかげに身をひそめ彼らの去るを待ちゐたりけり
わが前に彼ら四人は火を焚きて額をあつめ囁きあへり
ただ一人四人の敵を前にしておどろがかげにひそむ苦しさ
谷川を伝ひてここに来るべしと言ふ声耳に恐ろしくひびく
わがありか消えしと綾部の役員は提灯とぼしここに来れり
提灯のあるじは平蔵福林四方安蔵の三人なりけり
平蔵さん何処へおこしと杉浦はそしらぬ顔にたづねゐたりき
会長の行衛は穴太と思ふよりはるばるたづね来りしといふ
八つ足の刺客は軽くおどろきつ平蔵とともに東に向ふ
山袖に提灯の灯のかくるるを見すまし吾は走り出したり
うば玉の夜の坂道走り走り夜の明くるまへ綾部に帰れり
わが家に帰れば竹村出で迎へ改心なされと言ひつつ睨めり
『上田』京都なる信徒と君らは諜し合せ吾を○○せむとしたるよ
そんなこと知らぬ知らぬと竹村は首を左右にうちふりふくるる
これからは一人で他出ならないと開祖はしきりにいましめ給ふ
その日より一人の旅を禁じられ何日もでくの棒を従へにけり
宵闇は刻刻迫りて庭の面に立ち出づるさへあやぶみにけり
竹村の策動によりて大槻とうと関係したりと信ずる信徒
二年前に大槻とう子は警官にめとられ綾部の近くにをらず
橋上の月を恋人と言ひしより大槻とうと思ひたるらし
曲神はあとかたもなき醜言を言ひふらしつつ退けんとするも
大本にわがある限り曲神は計画ならずとさやぎまはるも
御開祖をおしこめ綾の大本を占領すると吾をののしる
大本の経綸をつぶす会長を叩き出せとさやぐ小人
『竹村』大本はいろはでひらく神の道漢字を用ふるけしからぬ会長
『竹村』会長さん角文字やめて何もかもいろはの仮名で物書きなされよ
万人が読んでわからぬ漢字書き人をあやつる会長とそしる
つぎつぎに曲津神たちあらはれて神の大路にさやる由由しさ
曲神の醜の矢弾をくぐりぬけ吾はひたすら大道に進めり