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春の吉報

インフォメーション

題名：春の吉報著者：出口王仁三郎

ページ：13

概要：備考：タグ：データ凡例：データ最終更新日：2024-10-31 18:51:00 OBC ：B129900c04

何となく心にかかることありてひとまづ綾部に帰らむとせり

信徒(まめひと)にしばし別れをつげながら園部をあとに帰り路(ぢ)につく

粉雪(こなゆき)のふりしく観音坂(くわんのんざか)のぼり境(さかひ)にたちてふり返る園部

あこがれの園部の町は雪襖(ゆきふすま)へだてて見えず風の冷たき

とぼとぼと観音峠の西坂(にしざか)を下(くだ)れば水戸(みと)の山村(やまむら)につく［※「水戸」は現・船井郡京丹波町水戸。丹波ICの南側。「水戸村」は明治22年に隣村と合併して「竹野村」になる。昭和26年に「須知町」に編入。昭和30年に合併して「丹波町」に、平成17年（2005年）に合併して「京丹波町」になる。］

水戸(みと)須知(しゆうち)蒲生野(こもの)をこえて檜山(ひのきやま)支部の坂原(さかはら)方(かた)につきたり

檜山(ひのきやま)支部にたちより神前(しんぜん)に祝詞終(をは)りて主人(あるじ)とかたらふ

出迎へ

折もあれ四方(しかた)勇佑(ゆうすけ)綾部よりいきせききつて支部に入り来(く)る

へいごめんといひつつ四方勇佑は坂原方(かた)にたち入(い)りにけり

わが顔をみるより四方勇佑は面(おも)をふくらせ睨(にら)まへてをり

御開祖(ごかいそ)の言葉もきかず出る故にこんなことだと地団駄を踏む

わが妻は安産したかとしきり問へどえらいことだと言ひて答(いら)へず

ともかくも綾部に帰ればわかりますと息はずませて勇佑答(こた)ふる

妻のこと子のこと俄(には)かに気にかかりともかく綾部にいそがむとおもふ

幾度(いくたび)もすかしとへども勇佑は一大事とのみ言ひて答(いら)へず

雪の帰り路

六里余(よ)の山道(やまみち)さきにたちながら何も話さず帰る勇佑(ゆうすけ)

勇佑の挙動ますます気にかかり難産せしかと驚き従ふ

勇佑は榎峠(えのきたうげ)の頂上にわれふりかへり微笑うかべり

勇佑の微笑をちらとみてしより妻の安産やうやくさとりぬ

生(あ)れし子(こ)は男女(だんぢよ)何(いづ)れとたづぬれどそんな気楽なことかとて答(いら)へず

とんとんと榎峠(えのきたうげ)を下(くだ)りゆく勇佑の足は早かりにけり

われも亦(また)ふりつむ雪にすべりつつ枯木(かれき)峠(たうげ)にたどりつきたり

勇佑は枯木峠の峻坂(しゆんはん)をいとかるがるとのぼりつ下(くだ)りつ

われもまた雪の坂道あへぎあへぎやうやく大原(おほはら)の里(さと)につきたり

大原のあたらしや旅館にやすらへば勇佑もまた入(い)りてやすらふ

すみ子さんの産(さん)の安否がわからいで布教が出来るかと毒づく勇佑

この親爺(おやぢ)出産のことは一口(ひとくち)も語らずさきに雪道たどる

やうやくに須知山(すちやま)峠(たうげ)の頂上につけぱあたりは小暗(をぐら)くなれり

宵闇(よひやみ)はせまれど雪の坂道はほの明(あか)るかり闇(やみ)を封じて

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