蓑笠の帰りて一週間の後われは綾部に帰り見たりき
大本に帰りて見れば四方らは汗をたらして筆先読みをり
竹村の「忠言」
吾が顔を見るより四方竹村は噛みつくやうに言あげをなす
竹村『海潮さんいよいよ貴方は四ツ足ぢや神の使をうまくだまして』
かうなれば小松林をたたき出し海潮の体を動かさぬと言ふ
竹村『園部にて書いた証書は何事ぞ角文字ばかりで吾等をごまかす
神様の使をごまかす人間は四ツ足みたまに間違ひないぞや
一時も早く四ツ足を思ひきり綾部で神妙に御用をなされ
神様は追追はげしくなりなさるぐづぐづしてゐる時ぢやあるまい
艮の金神様はこの広い三千世界の親神様ぞや
四ツ足の守護神などが目的を立てても成功致しませんぞや
三千世界の誠一つの親神にもたれて御用をなさるがよろし』
四方「忠言」
私『神様の深き経綸は知つてゐる君等の考へと正反対だよ
上根のみたまならねば神界の経綸はどうして解るものかい
大本に下根の人間集まりて神の経綸を乱すがをしき
現代人の眉をひそむる行動をする大本に居りたくはなし
現代のやり方のこらず立替へて昔の神代になさるしぐみぢや』
四方『そんな事言ふのはやはり悪神の小松林が邪魔する証拠ぢや
大本のお道の邪魔をする神は小松林のハイカラ神です
これからは海潮どのの身辺を役員二人が附き添ひますぞや
一日も早く改心なさらねば三千世界がつぶれますぞや』
山里田蛙
四方平蔵竹村松原浦上ら解らぬことを言ひて困らす
如何ほどに説けど諭せど木耳の聞く由もなき哀れな役員
本宮山の秋は漸く深みつつ凩に散る木の葉淋しき
太平のみろくの御代を松虫の鳴く音淋しも秋深みつつ
朝夕に声きりぎりす文机を前に神書をひもとくガト虫
田蛙は土にもぐりて見えねども声かしましき本宮の里
竹村はふしおもしろく神書よむ声はさながら夏蝉に似し
朝夕に冷水かぶり井戸端に神言を宣る声はふるへり
身命を投げうち神に仕へむと心を一つに祈るあはれさ
わが言葉聞く者只の一人もなき草むらは淋しかりけり
外国に渡り来りし心地して蛙の群に収り巻かれをり
わが開く後より彼等は桑の葉に止まれる蚕のごと喰ひ破りゆく
時じくに山陰の秋は雨ふりて木の葉を散らす凩寒し
真心をつくして説けど論せども彼等を救ふすべなかりけり