霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
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「
オニドnote
」「
Onido AI研究室
」
<<< 恋盗詞
(B)
(N)
茶湯の艶 >>>
第三章
山出女
(
やまだしをんな
)
〔一七二七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻
篇:
第1篇 名花移植
よみ(新仮名遣い):
めいかいしょく
章:
第3章 山出女
よみ(新仮名遣い):
やまだしおんな
通し章番号:
1727
口述日:
1925(大正14)年01月28日(旧01月5日)
口述場所:
月光閣
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年9月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
馬鹿論:普通一般の定規で律することの出来ない馬鹿者にこそ、無限の妙味がある。小利口な人間の方が、日々目先の利を争い、自らの身を削り、かえって苦しんでいる。大才大智の者ほど、普段はその才を出さず「馬鹿者」と思われていても、いざというときに本能をあらわし、世間を驚かすものである。
さて、ハンナとタンヤはアリナが追跡していることも知らず、シャカンナの隠れ家にやってきた。シャカンナはすぐにハンナとタンヤの意図を見抜いて啖呵を切るが、多勢に無勢、タンヤとハンナに気絶させられてしまう。スバール姫も抵抗するが、ねじ伏せられてしまう。
後からやってきたアリナはスバールの悲鳴を聞いて走り来、二人の山賊を川へ放り投げてしまう。
アリナは、二人に都へ出ることを申し出る。シャカンナは辞退し、しばらく山にとどまることになるが、スバール姫はアリナに伴われて都へ上っていく。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2018-06-09 21:20:09
OBC :
rm6803
愛善世界社版:
44頁
八幡書店版:
第12輯 166頁
修補版:
校定版:
44頁
普及版:
69頁
初版:
ページ備考:
派生
[?]
この文献を底本として書かれたと思われる文献です。
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:
出口王仁三郎著作集 > 第二巻 変革と平和 > 第三部 『霊界物語』の思想 > 衡平運動
001
世人
(
せじん
)
の
相棒
(
あひぼう
)
にも
使
(
つか
)
はれず、
002
何事
(
なにごと
)
にも
茫然
(
ばうぜん
)
として
無関心
(
むくわんしん
)
な
馬鹿者
(
ばかもの
)
位
(
ぐらゐ
)
、
003
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
幸福
(
かうふく
)
にして
且
(
かつ
)
強
(
つよ
)
いものはない。
004
そこに
馬鹿者
(
ばかもの
)
の
無限
(
むげん
)
の
妙味
(
めうみ
)
が
存在
(
そんざい
)
するのである。
005
馬鹿
(
ばか
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
人間
(
にんげん
)
が
不可抗力
(
ふかかうりよく
)
を
備
(
そな
)
へた
者
(
もの
)
の
称号
(
しようがう
)
である。
006
素
(
もと
)
よりせせこましい、
007
齷齪
(
あくそく
)
たる
普通
(
ふつう
)
一般
(
いつぱん
)
の
規矩
(
きく
)
定木
(
ぢやうぎ
)
を
以
(
もつ
)
て
律
(
りつ
)
することの
出来
(
でき
)
ない
困
(
こま
)
り
者
(
もの
)
である。
008
古往
(
こわう
)
今来
(
こんらい
)
洋
(
やう
)
の
東西
(
とうざい
)
を
問
(
と
)
はず、
009
如何
(
いか
)
なる
医学
(
いがく
)
博士
(
はかせ
)
も
耆婆
(
きば
)
扁鵲
(
へんじやく
)
も、
010
サツパリ
匙
(
さぢ
)
を
投
(
な
)
げて、
011
……アーア
馬鹿
(
ばか
)
につける
薬
(
くすり
)
がない……と
歎息
(
たんそく
)
し、
012
豊臣
(
とよとみ
)
太閤
(
たいかふ
)
も、
013
馬鹿
(
ばか
)
と
暗
(
やみ
)
の
夜
(
よ
)
程
(
ほど
)
恐
(
おそ
)
ろしいものはないと
云
(
い
)
つて、
014
恐怖心
(
きようふしん
)
に
襲
(
おそ
)
はれ、
015
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
厳格
(
げんかく
)
なる
規則
(
きそく
)
の
下
(
もと
)
におかれるも、
016
「
彼奴
(
あいつ
)
は
馬鹿
(
ばか
)
だから」との
一言
(
いちごん
)
に
無限
(
むげん
)
の
責任
(
せきにん
)
を
免除
(
めんぢよ
)
され、
017
いよいよ
念
(
ねん
)
のいつた
阿呆
(
あはう
)
になると、
018
白痴
(
はくち
)
瘋癲
(
ふうてん
)
と
称号
(
しやうがう
)
を
頂
(
いただ
)
いて、
019
犯罪
(
はんざい
)
も
法律
(
はふりつ
)
も
制裁
(
せいさい
)
を
加
(
くは
)
へられず、
020
更
(
さら
)
に
馬鹿
(
ばか
)
が
重
(
かさ
)
なつて、
021
「
馬鹿
(
ばか
)
々々
(
ばか
)
しい
奴
(
やつ
)
」と
笑
(
わら
)
はれた
時
(
とき
)
は
022
人間
(
にんげん
)
の
万事
(
ばんじ
)
一切
(
いつさい
)
の
欠点
(
けつてん
)
を
公々然
(
こうこうぜん
)
許
(
ゆる
)
され、
023
却
(
かへつ
)
て
愛嬌者
(
あいけうもの
)
と
持
(
も
)
て
囃
(
はや
)
される。
024
又
(
また
)
馬鹿
(
ばか
)
を
金看板
(
きんかんばん
)
に
掲
(
かか
)
げて、
025
浮世
(
うきよ
)
の
中
(
なか
)
をヤミクモに
押
(
おし
)
渡
(
わた
)
る
時
(
とき
)
は、
026
向
(
むか
)
ふ
所
(
ところ
)
殆
(
ほと
)
んど
敵影
(
てきえい
)
なく、
027
毫末
(
がうまつ
)
の
心配
(
しんぱい
)
もいらぬ。
028
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
人間
(
にんげん
)
から
小才子
(
こざいし
)
と
呼
(
よ
)
ばれ、
029
小悧巧
(
こりかう
)
と
称
(
とな
)
へられてゐる
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
は、
030
何
(
いづ
)
れも
平常
(
へいぜい
)
、
031
屁
(
へ
)
の
様
(
やう
)
な、
032
突張
(
つつぱ
)
り
所
(
どころ
)
のない、
033
毀誉
(
きよ
)
褒貶
(
ほうへん
)
の
巷
(
ちまた
)
を
飛
(
とび
)
まはり、
034
餓鬼
(
がき
)
が
食
(
しよく
)
を
争
(
あらそ
)
ふ
如
(
ごと
)
き、
035
ホンの
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
の
成敗
(
せいばい
)
や、
036
利害
(
りがい
)
に
掴
(
つか
)
み
合
(
あ
)
ひ、
037
昼夜
(
ちうや
)
煩悶
(
はんもん
)
苦悩
(
くなう
)
を
続
(
つづ
)
けて
一生
(
いつしやう
)
を
終
(
をは
)
る
者
(
もの
)
が
多
(
おほ
)
い。
038
然
(
しか
)
るに
悠々
(
いういう
)
閑々
(
かんかん
)
として、
039
此
(
この
)
面白
(
おもしろ
)
い
人間
(
にんげん
)
の
隠
(
かく
)
れ
場所
(
ばしよ
)
は、
040
馬鹿者
(
ばかもの
)
の
名称
(
めいしよう
)
たる
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
らず、
041
ワザとに
焦
(
あせ
)
り
散
(
ち
)
らして
吾
(
わが
)
一身
(
いつしん
)
を
小刀
(
こがたな
)
細工
(
ざいく
)
に
削
(
けづ
)
り
取
(
と
)
り、
042
あゝ
痛
(
いた
)
い
苦
(
くるし
)
いと
日夜
(
にちや
)
に
悲鳴
(
ひめい
)
をあげて
悶
(
もだ
)
えてゐる
憐
(
あは
)
れな
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
043
凡
(
すべ
)
て
人間
(
にんげん
)
は
平常
(
ふだん
)
から
智慧
(
ちゑ
)
を
蓄
(
た
)
めておいて、
044
一朝
(
いつてう
)
事
(
こと
)
ある
場合
(
ばあひ
)
の
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
はさむと、
045
大才
(
だいさい
)
大智
(
だいち
)
の
者
(
もの
)
は、
046
平常
(
へいぜい
)
は
妄
(
みだ
)
りに
小智
(
せうち
)
小才
(
せうさい
)
を
月賦
(
げつぷ
)
的
(
てき
)
に
小出
(
こだ
)
しをせず、
047
用
(
よう
)
のない
時
(
とき
)
は
皆
(
みな
)
馬鹿
(
ばか
)
の
二字
(
にじ
)
にかくれて、
048
のんのこ、
049
シヤあつくシヤあと、
050
馬耳
(
ばじ
)
水蛙
(
すいあ
)
に
晏如
(
あんじよ
)
として
をさ
まつてゐるものだ。
051
「あゝ
此奴
(
こいつ
)
ア
驚
(
おどろ
)
いた。
052
彼奴
(
あいつ
)
ア
余
(
あんま
)
り
馬鹿
(
ばか
)
に
出来
(
でき
)
ないぞ」と、
053
俗物
(
ぞくぶつ
)
共
(
ども
)
に
一語
(
いちご
)
を
言
(
い
)
はせるのは、
054
之
(
こ
)
れ
全
(
まつた
)
く
馬鹿
(
ばか
)
の
名
(
な
)
の
下
(
もと
)
に
久
(
ひさ
)
しく
本能
(
ほんのう
)
を
秘
(
かく
)
してゐた
奴
(
やつ
)
の
現
(
あら
)
はれる
時
(
とき
)
だ。
055
「
馬鹿
(
ばか
)
に
強
(
つよ
)
い
奴
(
やつ
)
。
056
本当
(
ほんたう
)
に
馬鹿
(
ばか
)
に
偉
(
えら
)
い
奴
(
やつ
)
。
057
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
馬鹿
(
ばか
)
にやり
出
(
だ
)
した。
058
馬鹿
(
ばか
)
に
威勢
(
ゐせい
)
が
佳
(
よ
)
いぢやないか。
059
馬鹿
(
ばか
)
に
落着
(
おちつ
)
いてゐやがる。
060
馬鹿
(
ばか
)
によく
売
(
う
)
れる。
061
馬鹿
(
ばか
)
に
美味
(
おい
)
しい。
062
馬鹿
(
ばか
)
に
奇麗
(
きれい
)
だ。
063
馬鹿
(
ばか
)
にならない」などいふ
言葉
(
ことば
)
は
何
(
いづ
)
れも
平常
(
ふだん
)
小悧巧
(
こりかう
)
な
奴
(
やつ
)
が
大才子
(
だいさいし
)
の
為
(
ため
)
に
鼻毛
(
はなげ
)
をぬかれた
時
(
とき
)
の
驚歎
(
きやうたん
)
の
言葉
(
ことば
)
である。
064
「
余
(
あんま
)
り
馬鹿気
(
ばかげ
)
て
彼奴
(
あいつ
)
にや
相手
(
あひて
)
になれない」などいふ
言葉
(
ことば
)
は、
065
大智者
(
だいちしや
)
の
最
(
もつと
)
も
深
(
ふか
)
く
馬鹿
(
ばか
)
の
奥
(
おく
)
に
潜伏
(
せんぷく
)
してゐる
時
(
とき
)
だ。
066
ハンナ、
067
タンヤの
両人
(
りやうにん
)
は
又
(
また
)
馬鹿者
(
ばかもの
)
の
選
(
せん
)
に
洩
(
も
)
れない
代物
(
しろもの
)
であつた。
068
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
二人
(
ふたり
)
は
口
(
くち
)
には
哲学
(
てつがく
)
を
囀
(
さへづ
)
り、
069
恋愛論
(
れんあいろん
)
をまくし
立
(
た
)
て、
070
たまには
政治論
(
せいぢろん
)
も
喋々
(
てふてふ
)
するが、
071
何
(
いづ
)
れも
天性
(
てんせい
)
の
智慧
(
ちゑ
)
から
出
(
で
)
たのではなく、
072
縁日
(
えんにち
)
の
夜立店
(
よだちみせ
)
に
埃
(
ほこり
)
まびれになつて、
0721
曝
(
さら
)
されてゐる
古本
(
ふるほん
)
を
073
二銭
(
にせん
)
か
三銭
(
さんせん
)
で
値切
(
ねぎ
)
り
倒
(
たふ
)
して
買
(
か
)
つて
来
(
き
)
て
読
(
よ
)
みあさつた
付
(
つ
)
け
知恵
(
ぢゑ
)
なのだから、
074
真
(
しん
)
の
徹底
(
てつてい
)
した
馬鹿者
(
ばかもの
)
である。
075
馬鹿
(
ばか
)
の
名
(
な
)
に
隠
(
かく
)
れて、
076
巧
(
うま
)
く
世
(
よ
)
を
渡
(
わた
)
ることは
知
(
し
)
らず、
077
自分
(
じぶん
)
の
馬鹿
(
ばか
)
から、
078
「
自分
(
じぶん
)
程
(
ほど
)
智者
(
ちしや
)
はない、
079
学者
(
がくしや
)
はない、
080
現代
(
げんだい
)
の
新人物
(
しんじんぶつ
)
は
俺
(
おれ
)
だ、
081
泥坊
(
どろばう
)
の、
082
仮令
(
たとへ
)
仲間
(
なかま
)
と
雖
(
いへど
)
も、
083
決
(
けつ
)
して
自分
(
じぶん
)
の
心
(
こころ
)
は
曲
(
まが
)
つてはゐない。
084
そして
誰
(
たれ
)
にも
盗
(
ぬす
)
まれてはゐない。
085
生
(
うま
)
れつき、
086
自分
(
じぶん
)
は
才子
(
さいし
)
だ、
087
智者
(
ちしや
)
だ。
088
仮令
(
たとへ
)
如何
(
いか
)
なる
人物
(
じんぶつ
)
と
雖
(
いへど
)
も、
089
自分
(
じぶん
)
の
智嚢
(
ちのう
)
を
絞
(
しぼ
)
り
出
(
だ
)
して、
090
千変
(
せんぺん
)
万化
(
ばんくわ
)
の
手術
(
しゆじゆつ
)
を
尽
(
つく
)
し
立向
(
たちむか
)
つたならば、
091
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
易々
(
いい
)
として
成就
(
じやうじゆ
)
するものだ」と
自惚
(
うぬぼ
)
れてゐる。
092
時々
(
ときどき
)
強
(
つよ
)
くなつてみたり、
093
弱
(
よわ
)
くなつてみたり、
094
進退
(
しんたい
)
動作
(
どうさ
)
常
(
つね
)
ならざるを
見
(
み
)
て、
095
「
自分
(
じぶん
)
は
処世
(
しよせい
)
上
(
じやう
)
の
兵法
(
へいはふ
)
をよく
心得
(
こころえ
)
た
策士
(
さくし
)
だ。
096
軍師
(
ぐんし
)
だ」と
自惚
(
うぬぼ
)
れ、
097
失敗
(
しつぱい
)
をしても「
之
(
こ
)
れは
何
(
なに
)
かの
都合
(
つがふ
)
だ。
098
惟神
(
かむながら
)
的
(
てき
)
に
神
(
かみ
)
が
斯
(
か
)
うさせたのだ。
099
キツと
悪
(
わる
)
い
後
(
あと
)
は
善
(
よ
)
い。
100
善
(
よ
)
い
後
(
あと
)
は
悪
(
わる
)
いものだ。
101
失敗
(
しつぱい
)
は
成功
(
せいこう
)
の
母
(
はは
)
だ。
102
賢人
(
けんじん
)
智者
(
ちしや
)
は
凡人
(
ぼんじん
)
の
下
(
した
)
ばたらきをなし、
103
愚者
(
ぐしや
)
は
天下
(
てんか
)
をとる
者
(
もの
)
だ。
104
さうだから
自分
(
じぶん
)
は
仮令
(
たとへ
)
賢者
(
けんじや
)
でも
愚者
(
ぐしや
)
を
装
(
よそほ
)
つてをらねばならぬのだ。
105
どんな
愚者
(
ぐしや
)
々々
(
ぐしや
)
した
事
(
こと
)
でも、
106
馬鹿
(
ばか
)
の
名
(
な
)
の
下
(
もと
)
には、
107
流
(
なが
)
れ
川
(
がは
)
で
尻
(
けつ
)
を
洗
(
あら
)
つた
如
(
ごと
)
く
解決
(
かいけつ
)
がつくものだ……」などと
自分
(
じぶん
)
の
馬鹿
(
ばか
)
を
棚
(
たな
)
へ
上
(
あ
)
げ、
108
自
(
みづか
)
ら
馬鹿
(
ばか
)
を
装
(
よそほ
)
うて
世
(
よ
)
を
巧
(
うま
)
く
渡
(
わた
)
つてゐるやうな
心持
(
こころもち
)
でゐる
奴
(
やつ
)
だからたまらない。
109
此奴
(
こいつ
)
こそ
本当
(
ほんたう
)
に
箸
(
はし
)
にも
棒
(
ぼう
)
にもかからない、
110
捨場所
(
すてばしよ
)
のない
真
(
ほん
)
馬鹿者
(
ばかもの
)
である。
111
ハンナ、
112
タンヤの
二人
(
ふたり
)
は、
113
左守
(
さもり
)
の
悴
(
せがれ
)
アリナが
追跡
(
つゐせき
)
してゐる
事
(
こと
)
は
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らず、
114
慣
(
な
)
れた
足許
(
あしもと
)
にて
坂路
(
さかみち
)
をトントンと
鳥
(
とり
)
の
翔
(
た
)
つ
如
(
ごと
)
く
登
(
のぼ
)
りつめ、
115
漸
(
やうや
)
くにして
谷川
(
たにがは
)
伝
(
づた
)
ひに
浅倉谷
(
あさくらだに
)
のシャカンナが
隠家
(
かくれが
)
に
着
(
つ
)
いた、
116
シャカンナはスバール
姫
(
ひめ
)
と
共
(
とも
)
に
少
(
すこ
)
し
遅
(
おそ
)
い
乍
(
なが
)
らも
朝飯
(
あさめし
)
を
食
(
く
)
つてゐた。
117
ハンナ『ヘー、
118
親方
(
おやかた
)
、
119
御免
(
ごめん
)
なさいませ。
120
久
(
ひさ
)
しうお
目
(
め
)
にかかりませぬ。
121
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
玄真坊
(
げんしんばう
)
の
女房
(
にようばう
)
ダリヤ
姫
(
ひめ
)
が
夜
(
よ
)
に
紛
(
まぎ
)
れて
遁走
(
とんそう
)
の
節
(
せつ
)
、
122
吾々
(
われわれ
)
共
(
ども
)
は
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
に
依
(
よ
)
り、
123
其
(
その
)
所在
(
ありか
)
を
尋
(
たづ
)
ねて
山野
(
さんや
)
を
駆
(
か
)
けめぐりましたが、
124
たうとう
一
(
いち
)
も
取
(
と
)
らず
二
(
に
)
も
取
(
と
)
らず、
125
やむを
得
(
え
)
ずして、
126
タニグク
山
(
やま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
帰
(
かへ
)
つて
見
(
み
)
れば、
127
こはそもいかに、
128
豈計
(
あにはか
)
らむや、
129
弟
(
おとうと
)
計
(
はか
)
らむや、
130
建物
(
たてもの
)
は
焼払
(
やきはら
)
はれ、
131
親分
(
おやぶん
)
様
(
さま
)
始
(
はじ
)
め
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
のお
姿
(
すがた
)
は
見
(
み
)
えず、
132
もし
俄
(
にはか
)
の
火事
(
くわじ
)
で
焼死
(
やけじに
)
でも
遊
(
あそ
)
ばしたのではなからうか、
133
もしそんな
事
(
こと
)
であつたら、
134
骨
(
ほね
)
でも
拾
(
ひろ
)
つて、
135
鄭重
(
ていちよう
)
な
問
(
と
)
ひ
弔
(
とむら
)
ひをしてあげねばなりますまいと、
136
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
灰
(
はひ
)
掻
(
か
)
きをやつて
見
(
み
)
ましたが、
137
骨
(
ほね
)
らしいものは
何
(
なに
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ。
138
只
(
ただ
)
猪
(
しし
)
や
狸
(
たぬき
)
の
骨
(
ほね
)
が
残
(
のこ
)
つてゐる
許
(
ばか
)
り。
139
あゝ
之
(
これ
)
は
親分
(
おやぶん
)
様
(
さま
)
が
火事
(
くわじ
)
に
驚
(
おどろ
)
き
遊
(
あそ
)
ばしてどつかへ
一
(
いち
)
時
(
じ
)
身
(
み
)
をお
遁
(
のが
)
れ
遊
(
あそ
)
ばした
事
(
こと
)
だと
思
(
おも
)
ひ、
140
十日
(
とをか
)
許
(
ばか
)
りも
飲
(
の
)
まず
食
(
く
)
はずで、
141
チコナンと
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
りました
所
(
ところ
)
、
142
風
(
かぜ
)
の
便
(
たよ
)
りさへ
梨
(
なし
)
の
礫
(
つぶて
)
の
音沙汰
(
おとさた
)
なく、
143
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず、
144
吾々
(
われわれ
)
は
解散
(
かいさん
)
と
出
(
で
)
かけました。
145
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
肝腎
(
かんじん
)
の
時
(
とき
)
になつて、
146
親分
(
おやぶん
)
様
(
さま
)
を
此
(
この
)
山奥
(
やまおく
)
に
捨
(
す
)
て、
147
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
るといふ
事
(
こと
)
は、
148
いかにも
乾児
(
こぶん
)
の
吾々
(
われわれ
)
として、
149
情
(
じやう
)
に
於
(
おい
)
て
忍
(
しの
)
びないと、
150
タンヤと
二人
(
ふたり
)
が
互
(
たがひ
)
に
抱
(
いだ
)
き
合
(
あ
)
つて
泣
(
な
)
きました。
151
本当
(
ほんたう
)
に
親分
(
おやぶん
)
乾児
(
こぶん
)
の
情合
(
じやうあひ
)
といふものは
又
(
また
)
格別
(
かくべつ
)
のもので
厶
(
ござ
)
います、
152
アンアンアン』
153
シャ『ワツハヽヽヽ、
154
汝
(
きさま
)
等
(
ら
)
も
小難
(
こむつか
)
しい
厄介
(
やつかい
)
な
爺
(
おやぢ
)
がをらなくなつて、
155
さぞ
睾丸
(
きんたま
)
の
皺伸
(
しわの
)
ばしをやつただらう。
156
俺
(
おれ
)
も
厄介者
(
やくかいもの
)
が
取払
(
とりはら
)
はれ、
157
身軽
(
みがる
)
になつて、
158
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
百夜
(
ひやくや
)
も
疼
(
うづ
)
き
通
(
とほ
)
した
腫物
(
はれもの
)
が
俄
(
にはか
)
に
跡形
(
あとかた
)
もなく
散
(
ち
)
つたやうな
気分
(
きぶん
)
になつたのだ。
159
モウ
俺
(
おれ
)
は
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
世捨人
(
よすてびと
)
となつた
以上
(
いじやう
)
は、
160
再
(
ふたた
)
び
泥坊稼
(
どろばうかせぎ
)
はやりたくない。
161
汝
(
きさま
)
も
可
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に、
162
足
(
あし
)
を
洗
(
あら
)
つて
正業
(
せいげふ
)
に
就
(
つ
)
いたが
可
(
よ
)
からう』
163
ハンナは
頭
(
あたま
)
をかき
乍
(
なが
)
ら、
164
ハ『エー、
165
親分
(
おやぶん
)
とも
覚
(
おぼ
)
えぬお
言葉
(
ことば
)
、
166
それ
程
(
ほど
)
私
(
わたし
)
に
信用
(
しんよう
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬかな。
167
私
(
わたし
)
は
真心
(
まごころ
)
より
親方
(
おやかた
)
を
愛
(
あい
)
して
居
(
を
)
ります。
168
のうタンヤ、
169
お
前
(
まへ
)
いつも
俺
(
おれ
)
の
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いてゐるだらう。
170
日
(
ひ
)
に
何十回
(
なんじつぺん
)
となく、
171
親方
(
おやかた
)
の
名
(
な
)
を
呼
(
よ
)
ばなかつた
事
(
こと
)
はなからう』
172
タ『ウン、
173
そらさうだ、
174
お
前
(
まへ
)
のいふ
通
(
とほ
)
り、
175
俺
(
おれ
)
の
聞
(
き
)
く
通
(
とほ
)
りだ。
176
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
心
(
こころ
)
が
正直
(
しやうぢき
)
なものだから、
177
メツタに
親分
(
おやぶん
)
の
前
(
まへ
)
で、
178
嘘
(
うそ
)
は
云
(
い
)
はうとも
思
(
おも
)
はず、
179
云
(
い
)
はれもせぬワ。
180
なア
親方
(
おやかた
)
、
181
どうぞハンナや
私
(
わたし
)
の
心
(
こころ
)
を
信
(
しん
)
じて
下
(
くだ
)
さい』
182
シャ『ウン、
183
お
前
(
まへ
)
の
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
迄
(
まで
)
虚
(
きよ
)
か
偽
(
ぎ
)
か、
184
善
(
ぜん
)
か
悪
(
あく
)
かよく
信
(
しん
)
じてゐる。
185
お
前
(
まへ
)
は
俺
(
おれ
)
には
用
(
よう
)
がない
筈
(
はず
)
だ。
186
スバール
姫
(
ひめ
)
に
用
(
よう
)
があるのだらうがな。
187
それについては
此
(
この
)
シャカンナは
大変
(
たいへん
)
な
邪魔者
(
じやまもの
)
だらう。
188
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
察
(
さつ
)
し
入
(
い
)
るよ、
189
アツハヽヽヽ』
190
ハ『そら
親方
(
おやかた
)
、
191
御
(
ご
)
無理
(
むり
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
192
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
はまだ
少女
(
せうぢよ
)
の
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
193
恋
(
こひ
)
でもなければ
色情
(
いろ
)
でもない。
194
又
(
また
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
は
吾々
(
われわれ
)
がお
小
(
ちひ
)
さい
時
(
とき
)
からお
育
(
そだ
)
て
申
(
まを
)
したもの、
195
イヤお
世話
(
せわ
)
をさして
頂
(
いただ
)
いたお
方
(
かた
)
ですから、
196
別
(
べつ
)
に
深
(
ふか
)
い
御恩
(
ごおん
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬが、
197
親分
(
おやぶん
)
さまには
永
(
なが
)
らく
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
になつて
居
(
ゐ
)
ますから、
198
親分
(
おやぶん
)
の
御恩
(
ごおん
)
は
決
(
けつ
)
して
忘
(
わす
)
れませぬ。
199
お
嬢様
(
ぢやうさま
)
は
何
(
なん
)
の
御恩
(
ごおん
)
もありませぬ。
200
況
(
いは
)
んや
恋愛
(
れんあい
)
などの
心
(
こころ
)
は
毛頭
(
まうとう
)
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
りませぬから、
201
どうぞ
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
202
シャ『
親分
(
おやぶん
)
には
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
になつたと
口
(
くち
)
には
云
(
い
)
つてるが、
203
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
では、
204
永
(
なが
)
らく
親分
(
おやぶん
)
の
世話
(
せわ
)
をしてやつた。
205
親分
(
おやぶん
)
は
外
(
ほか
)
へも
出
(
で
)
ず、
206
乾児
(
こぶん
)
許
(
ばつか
)
り
働
(
はたら
)
かして、
207
乾児
(
こぶん
)
の
膏
(
あぶら
)
を
舐
(
ねぶ
)
つて、
208
親分
(
おやぶん
)
は
食
(
く
)
つてたのだ。
209
つまり「
自分
(
じぶん
)
は
親分
(
おやぶん
)
の
救
(
すく
)
ひ
主
(
ぬし
)
だ。
210
保護者
(
ほごしや
)
だ。
211
親分
(
おやぶん
)
に
礼
(
れい
)
を
言
(
い
)
はすのが
当然
(
あたりまへ
)
だ」
位
(
ぐらゐ
)
の
心
(
こころ
)
で
来
(
き
)
てるだらうがな』
212
ハ『
成程
(
なるほど
)
流石
(
さすが
)
は
親方
(
おやかた
)
だ。
213
よく
吾々
(
われわれ
)
の
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
迄
(
まで
)
透見
(
とうけん
)
して
下
(
くだ
)
さいました。
214
天下
(
てんか
)
一
(
いち
)
人
(
にん
)
の
知己
(
ちき
)
を
得
(
え
)
たりといふべしだ。
215
のうタンヤ、
216
此
(
この
)
親分
(
おやぶん
)
にして
此
(
この
)
乾児
(
こぶん
)
ありだ。
217
何
(
なん
)
と
恐
(
おそ
)
ろしい
目
(
め
)
の
利
(
き
)
く
親分
(
おやぶん
)
ぢやないか』
218
タ『そらさうだ
共
(
とも
)
、
219
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
二百
(
にひやく
)
人
(
にん
)
の
泥坊
(
どろばう
)
を
腮
(
あご
)
で
使
(
つか
)
ひ、
220
そして
自分
(
じぶん
)
の
生
(
う
)
んだ
ひんだ
の
粕
(
かす
)
を
221
沢山
(
たくさん
)
の
乾児
(
こぶん
)
に
嬢様
(
ぢやうさま
)
々々
(
ぢやうさま
)
と
云
(
い
)
はして
威張
(
ゐば
)
らして
厶
(
ござ
)
つたのだもの、
222
随分
(
ずいぶん
)
凄
(
すご
)
い
腕
(
うで
)
だよ。
223
なア
親分
(
おやぶん
)
、
224
私
(
わたし
)
の
観察
(
くわんさつ
)
は
違
(
ちが
)
ひますまい』
225
シャ『タンヤの
観察
(
くわんさつ
)
もハンナの
評察
(
ひやうさつ
)
も、
226
俺
(
おれ
)
の
推察
(
すゐさつ
)
もピツタリ
会
(
あ
)
つてゐるやうだ。
227
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
俺
(
おれ
)
の
娘
(
むすめ
)
を
汝
(
きさま
)
達
(
たち
)
は
奪
(
うば
)
つて
帰
(
かへ
)
る
相談
(
さうだん
)
をやつて
来
(
き
)
たのだらう。
228
年
(
とし
)
老
(
お
)
いたりと
雖
(
いへど
)
、
229
俺
(
おれ
)
の
腕
(
うで
)
にも
骨
(
ほね
)
もあれば
力
(
ちから
)
もある。
230
汝
(
きさま
)
等
(
ら
)
のやうな、
231
青二才
(
あをにさい
)
の
挺
(
てこ
)
にはチツと
合
(
あ
)
ひかねるぞ。
232
姫
(
ひめ
)
が
欲
(
ほ
)
しければ、
233
腕
(
うで
)
づくで
持
(
も
)
つて
帰
(
かへ
)
つたが
可
(
よ
)
からう』
234
ハ『ヤア、
235
此奴
(
こいつ
)
ア
面白
(
おもしろ
)
い。
236
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
強
(
つよ
)
いと
云
(
い
)
つても、
237
タカが
老耄
(
おいぼれ
)
一人
(
ひとり
)
、
238
此
(
この
)
邪魔者
(
じやまもの
)
さへ
払
(
はら
)
へば、
239
あとは
此方
(
こつち
)
の
者
(
もの
)
だ。
240
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
は
大親分
(
おほおやぶん
)
と
云
(
い
)
ふ
名
(
な
)
に
恐
(
おそ
)
れて、
241
何
(
なん
)
だか
敵対心
(
てきたいしん
)
が
臆病風
(
おくびやうかぜ
)
を
吹
(
ふ
)
かしよつたが、
242
もう
斯
(
か
)
うなれば
五文
(
ごもん
)
と
五文
(
ごもん
)
だ。
243
こちらは
二人
(
ふたり
)
で
一銭
(
いつせん
)
だ。
244
オイ
一銭
(
いつせん
)
と
五厘
(
ごりん
)
との
力
(
ちから
)
比
(
くら
)
べだ。
245
勝敗
(
しようはい
)
の
数
(
すう
)
は
已
(
すで
)
に
定
(
き
)
まつてゐる。
246
只
(
ただ
)
一銭
(
いつせん
)
に
打亡
(
うちほろ
)
ぼされるよりも
五厘
(
ごりん
)
五常
(
ごじやう
)
の
道
(
みち
)
を
弁
(
わきま
)
へて、
247
スツパリと
娘
(
むすめ
)
を
此方
(
こつち
)
へ
渡
(
わた
)
せ。
248
拙劣
(
へた
)
にバタつくと
爺
(
おやぢ
)
の
為
(
ため
)
にならないぞ』
249
スバールは
食事
(
しよくじ
)
の
手
(
て
)
を
止
(
や
)
め、
250
二人
(
ふたり
)
の
面
(
かほ
)
を
微笑
(
びせう
)
を
泛
(
うか
)
べ
乍
(
なが
)
ら
打
(
うち
)
眺
(
なが
)
め、
251
大胆
(
だいたん
)
不敵
(
ふてき
)
な
態度
(
たいど
)
でおさまり
返
(
かへ
)
つてゐる。
252
シャ『
云
(
い
)
はしておけば、
253
旧主人
(
きうしゆじん
)
に
向
(
むか
)
つて
雑言
(
ざふごん
)
無礼
(
ぶれい
)
、
254
容赦
(
ようしや
)
は
致
(
いた
)
さぬ、
255
此
(
この
)
鉄拳
(
てつけん
)
を
喰
(
くら
)
へ』
256
と
首
(
くび
)
も
飛
(
と
)
べよと
許
(
ばか
)
り、
257
ハンナの
横面
(
よこづら
)
をなぐりつけむとする
一刹那
(
いつせつな
)
、
258
ハンナは
身
(
み
)
をすくめてシャカンナの
足
(
あし
)
を
掬
(
すく
)
つた。
259
シャカンナは
狭
(
せま
)
い
庭
(
には
)
にドツと
倒
(
たふ
)
れ、
260
庭
(
には
)
の
石
(
いし
)
に
後頭部
(
こうとうぶ
)
を
打
(
ぶつ
)
つけ
気
(
き
)
が
遠
(
とほ
)
くなつて
了
(
しま
)
つた。
261
二人
(
ふたり
)
は
手早
(
てばや
)
くシャカンナを
荒縄
(
あらなは
)
を
以
(
もつ
)
て
手足
(
てあし
)
を
縛
(
しば
)
り、
262
谷川
(
たにがは
)
に
持
(
もち
)
運
(
はこ
)
んで
水葬
(
すいさう
)
せむとする。
263
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
るよりスバール
姫
(
ひめ
)
は
父
(
ちち
)
の
大事
(
だいじ
)
と、
264
死物狂
(
しにものぐるひ
)
になり、
265
鉞
(
まさかり
)
を
以
(
もつ
)
て
二人
(
ふたり
)
の
背後
(
うしろ
)
よりウンと
許
(
ばか
)
り
擲
(
なぐ
)
りつけた。
266
二人
(
ふたり
)
は
目早
(
めばや
)
く
体
(
たい
)
をかはし、
267
跳
(
をど
)
りかかつて、
268
鉞
(
まさかり
)
を
奪
(
うば
)
ひとり、
269
スバール
姫
(
ひめ
)
を
大地
(
だいち
)
にグツと
捻
(
ねぢ
)
伏
(
ふ
)
せ、
270
手足
(
てあし
)
を
括
(
くく
)
つて
動
(
うご
)
かせず。
271
スバール
姫
(
ひめ
)
は
悲鳴
(
ひめい
)
を
上
(
あ
)
げて、
272
声
(
こゑ
)
を
限
(
かぎ
)
りに
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
ぶ。
273
此
(
この
)
時
(
とき
)
一町
(
いつちやう
)
許
(
ばか
)
り
手前
(
てまへ
)
迄
(
まで
)
、
274
林
(
はやし
)
を
潜
(
くぐ
)
つて
進
(
すす
)
んで
来
(
き
)
たアリナは、
275
娘
(
むすめ
)
の
悲鳴
(
ひめい
)
を
聞
(
き
)
き、
276
吾
(
わが
)
身
(
み
)
を
忘
(
わす
)
れて、
277
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り
見
(
み
)
れば
此
(
この
)
態
(
てい
)
である。
278
……ヤア
此奴
(
こいつ
)
は
今朝
(
けさ
)
見
(
み
)
た
曲者
(
くせもの
)
、
279
懲
(
こ
)
らしめくれむ……と、
280
物
(
もの
)
をもいはず、
281
襟髪
(
えりがみ
)
を
掴
(
つか
)
んで
浅倉山
(
あさくらやま
)
の
溪流
(
けいりう
)
へ、
282
二人
(
ふたり
)
共
(
とも
)
ザンブと
許
(
ばか
)
り
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
んで
了
(
しま
)
ひ、
283
両人
(
りやうにん
)
の
縄目
(
なはめ
)
を
解
(
と
)
いた。
284
スバール
姫
(
ひめ
)
は
紅葉
(
もみぢ
)
のやうな
優
(
やさ
)
しき
手
(
て
)
を
合
(
あ
)
はして、
285
救命
(
きうめい
)
の
大恩
(
だいおん
)
を
感謝
(
かんしや
)
した。
286
父
(
ちち
)
のシャカンナは
精神
(
せいしん
)
朦朧
(
もうろう
)
として
殆
(
ほとん
)
ど
人事
(
じんじ
)
不省
(
ふせい
)
の
態
(
てい
)
である。
287
アリナとスバール
姫
(
ひめ
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
神
(
かみ
)
に
祈願
(
きぐわん
)
を
奉
(
たてまつ
)
り、
288
水
(
みづ
)
を
面部
(
めんぶ
)
に
吹
(
ふ
)
きかけなどして、
289
漸
(
やうや
)
くの
事
(
こと
)
で、
290
シャカンナの
精神
(
せいしん
)
状態
(
じやうたい
)
は
明瞭
(
めいれう
)
になつて
来
(
き
)
た。
291
シャ『あゝ
娘
(
むすめ
)
、
292
其方
(
そなた
)
は
無事
(
ぶじ
)
であつたか。
293
まあ
結構
(
けつこう
)
々々
(
けつこう
)
、
294
之
(
これ
)
も
全
(
まつた
)
く
天
(
てん
)
のお
助
(
たす
)
けだ』
295
ス『お
父
(
とう
)
様
(
さま
)
、
296
私
(
わたし
)
も
縛
(
しば
)
られてゐましたの。
297
危
(
あやふ
)
い
所
(
ところ
)
へ、
298
あとの
月太子
(
つきたいし
)
様
(
さま
)
のお
伴
(
とも
)
をしてお
出
(
いで
)
になつたアリナ
様
(
さま
)
が
現
(
あら
)
はれて、
299
私
(
わたし
)
や
貴方
(
あなた
)
を
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さつたのですよ。
300
サアお
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
して
下
(
くだ
)
さい』
301
シャカンナはスバール
姫
(
ひめ
)
の
声
(
こゑ
)
に
目
(
め
)
をさまして、
302
よくよく
見
(
み
)
れば、
303
アリナは
恭
(
うやうや
)
しげに
大地
(
だいち
)
にしやがむでゐる。
304
シャ『あゝ
其方
(
そなた
)
はアリナさま、
305
よくマア
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さいました。
306
貴方
(
あなた
)
は
吾々
(
われわれ
)
父娘
(
おやこ
)
が
再生
(
さいせい
)
の
恩人
(
おんじん
)
です。
307
サア、
308
どうぞうちへお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
309
ア『
危
(
あやふ
)
い
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
いましたが、
310
先
(
ま
)
づお
気
(
き
)
がついて
何
(
なに
)
より
頂上
(
ちようじやう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
311
左様
(
さやう
)
なれば
312
休
(
やす
)
まして
頂
(
いただ
)
きませう』
313
とシャカンナを
助
(
たす
)
け
起
(
おこ
)
し、
314
スバール
姫
(
ひめ
)
と
共
(
とも
)
に
老人
(
らうじん
)
の
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
いて
屋内
(
をくない
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
つた。
315
シャ『アリナさま、
316
どうも
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
317
そして
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
はお
変
(
かは
)
りは
厶
(
ござ
)
いませぬか』
318
ア『ハイ、
319
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
320
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
御
(
ご
)
壮健
(
さうけん
)
の
方
(
はう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
321
就
(
つ
)
いては
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
のお
使
(
つかひ
)
に
参
(
まゐ
)
つた
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
322
どうぞ
使
(
つかひ
)
の
趣
(
おもむき
)
を、
323
お
気
(
き
)
が
休
(
やす
)
まりましたらゆつくりと
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さいませ』
324
シャ『イヤもう
気分
(
きぶん
)
は
良
(
よ
)
くなりました。
325
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
のお
使
(
つかひ
)
とあらば
半時
(
はんとき
)
の
猶予
(
いうよ
)
もなりますまい、
326
どうか
其
(
その
)
お
旨
(
むね
)
を
伝
(
つた
)
へて
下
(
くだ
)
さい。
327
身
(
み
)
に
叶
(
かな
)
う
事
(
こと
)
なら、
328
吾々
(
われわれ
)
父娘
(
おやこ
)
が
力
(
ちから
)
のあらむ
限
(
かぎ
)
り
御
(
ご
)
奉公
(
ほうこう
)
を
致
(
いた
)
しますから』
329
ア『ヤ、
330
早速
(
さつそく
)
の
御
(
ご
)
承引
(
しよういん
)
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
331
かいつまんで
申
(
まを
)
しますれば、
332
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
は
始
(
はじ
)
めて
貴方
(
あなた
)
父娘
(
おやこ
)
にお
会
(
あ
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばし、
333
年
(
とし
)
老
(
お
)
いたりと
雖
(
いへど
)
も
気骨
(
きこつ
)
稜々
(
りやうりやう
)
たるシャカンナ
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
心
(
こころ
)
ゆき、
334
次
(
つ
)
いでは
世
(
よ
)
に
稀
(
まれ
)
なる
美貌
(
びばう
)
のスバール
様
(
さま
)
、
335
王妃
(
わうひ
)
としてお
召抱
(
めしかか
)
えになつても
恥
(
はづ
)
かしからぬ
者
(
もの
)
と
思召
(
おぼしめ
)
し、
336
今日
(
こんにち
)
の
所
(
ところ
)
は
少
(
すこ
)
し
時機
(
じき
)
が
早
(
はや
)
い
様
(
やう
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
337
それだと
云
(
い
)
つて、
338
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
には
非常
(
ひじやう
)
な
御
(
ご
)
恋慕
(
れんぼ
)
、
339
矢
(
や
)
も
楯
(
たて
)
もたまらぬ
勢
(
いきほひ
)
、
340
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
くスバール
様
(
さま
)
のお
顔
(
かほ
)
が
見
(
み
)
たいとの
御
(
お
)
思召
(
おぼしめし
)
、
341
侍臣
(
じしん
)
の
吾々
(
われわれ
)
は
其
(
その
)
御
(
ご
)
苦衷
(
くちう
)
を
察
(
さつ
)
し
奉
(
たてまつ
)
り、
342
ジツと
見
(
み
)
てゐられぬ
様
(
やう
)
になり、
343
人目
(
ひとめ
)
を
忍
(
しの
)
んで
此
(
この
)
お
館
(
やかた
)
をお
訪
(
たづ
)
ね
申
(
まを
)
したので
厶
(
ござ
)
います』
344
シャ『
何事
(
なにごと
)
の
仰
(
おほせ
)
かと
思
(
おも
)
へば、
345
スバール
姫
(
ひめ
)
を
御
(
ご
)
所望
(
しよまう
)
との
御
(
おん
)
事
(
こと
)
、
346
娘
(
むすめ
)
に
異存
(
いぞん
)
さへなくば
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
に
随
(
したが
)
ひませう。
347
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
未
(
いま
)
だ
私
(
わたくし
)
の
都
(
みやこ
)
へ
出
(
で
)
る
時機
(
じき
)
では
厶
(
ござ
)
いませぬ。
348
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
時勢
(
じせい
)
遅
(
おく
)
れの
古
(
ふる
)
ぼけた
頭
(
あたま
)
、
349
政治
(
せいぢ
)
の
衝
(
しよう
)
に
当
(
あた
)
るのは
却
(
かへつ
)
て
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をかける
様
(
やう
)
なもので
厶
(
ござ
)
いますから、
350
其
(
その
)
儀
(
ぎ
)
許
(
ばか
)
りは
御
(
お
)
断
(
ことわ
)
り
申
(
まを
)
し
度
(
た
)
う
厶
(
ござ
)
います。
351
幸
(
さいは
)
ひ
此
(
この
)
山奥
(
やまおく
)
に
潜
(
ひそ
)
んで
不幸
(
ふかう
)
を
重
(
かさ
)
ね
乍
(
なが
)
ら、
352
山
(
やま
)
の
木
(
き
)
の
枝
(
えだ
)
に
首
(
くび
)
も
吊
(
つ
)
らず、
353
川
(
かは
)
の
底
(
そこ
)
に
身
(
み
)
も
投
(
な
)
げず、
354
鉄砲腹
(
てつぱうばら
)
も
致
(
いた
)
さず、
355
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
無事
(
ぶじ
)
息災
(
そくさい
)
で
今日
(
こんにち
)
迄
(
まで
)
生
(
い
)
き
永
(
なが
)
らへて
来
(
き
)
ました
経験
(
けいけん
)
も
厶
(
ござ
)
いますれば、
356
どうか
私
(
わたくし
)
の
事
(
こと
)
はお
心
(
こころ
)
にかけさせられない
様
(
やう
)
お
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します。
357
役
(
やく
)
に
立
(
た
)
たない
私
(
わたくし
)
のやうな
者
(
もの
)
が
都
(
みやこ
)
へ
上
(
のぼ
)
つた
所
(
ところ
)
で、
358
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
、
359
人間
(
にんげん
)
一疋
(
いつぴき
)
の
放
(
はな
)
し
飼
(
が
)
ひの
飼殺
(
かひごろ
)
しも
同然
(
どうぜん
)
、
360
今日
(
こんにち
)
の
社会
(
しやくわい
)
に
接触
(
せつしよく
)
のうすい
吾々
(
われわれ
)
が、
361
繁雑
(
はんざつ
)
な
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に、
362
どうして
立
(
た
)
つて
政治
(
せいぢ
)
が
出来
(
でき
)
ませう。
363
形
(
かたち
)
ばかりの
茅屋
(
あばらや
)
は
古
(
ふる
)
く、
364
狭
(
せま
)
く、
365
穢
(
むさくる
)
しう
厶
(
ござ
)
いまするが、
366
娘
(
むすめ
)
を
出
(
だ
)
した
後
(
あと
)
の
独身者
(
どくしんもの
)
の
自炊
(
じすゐ
)
には
余
(
あま
)
り
狭
(
せま
)
さを
感
(
かん
)
じませぬ。
367
どうぞ
此
(
この
)
儀
(
ぎ
)
許
(
ばか
)
りは
平
(
ひら
)
に
御
(
お
)
断
(
ことわ
)
りを
申
(
まをし
)
ます』
368
ア『あゝ
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は、
369
まだ
父王
(
ちちわう
)
様
(
さま
)
のお
許
(
ゆる
)
しもなく、
370
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
御
(
お
)
一人
(
ひとり
)
の
御
(
お
)
考
(
かんが
)
へで
厶
(
ござ
)
いますから、
371
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
なら、
372
モウ
一二
(
いちに
)
年
(
ねん
)
貴方
(
あなた
)
は
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
つて、
373
時節
(
じせつ
)
を
待
(
ま
)
つて
頂
(
いただ
)
く
方
(
はう
)
が、
374
双方
(
さうはう
)
に
都合
(
つがふ
)
が
可
(
い
)
いでせう。
375
そして
嬢様
(
ぢやうさま
)
は
私
(
わたし
)
がソツとお
伴
(
とも
)
を
致
(
いた
)
し、
376
茶
(
ちや
)
の
宗匠
(
そうしやう
)
タルチンの
館
(
やかた
)
にお
囲
(
かくま
)
ひ
申
(
まを
)
し、
377
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
御
(
ご
)
安泰
(
あんたい
)
を
保護
(
ほご
)
致
(
いた
)
しますれば、
378
どうか
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なく、
379
嬢様
(
ぢやうさま
)
を
私
(
わたくし
)
にお
預
(
あづ
)
け
下
(
くだ
)
さいませぬか』
380
シャ『オイ、
381
スバール、
382
お
前
(
まへ
)
は
最前
(
さいぜん
)
からのお
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いたであらう。
383
アリナさまに
伴
(
ともな
)
はれて
都
(
みやこ
)
へ
上
(
のぼ
)
る
気
(
き
)
はないか』
384
ス『ハイ、
385
お
父
(
とう
)
さまを
此
(
この
)
山奥
(
やまおく
)
に
只
(
ただ
)
お
一人
(
ひとり
)
残
(
のこ
)
して
私
(
わたし
)
が
参
(
まゐ
)
る
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きますまい。
386
なる
事
(
こと
)
なら、
387
お
父
(
とう
)
さまと
御
(
ご
)
一緒
(
いつしよ
)
にお
伴
(
とも
)
が
願
(
ねが
)
ひたいもので
厶
(
ござ
)
います』
388
シャ『ハヽヽヽ、
389
父
(
ちち
)
に
対
(
たい
)
する
孝養
(
かうやう
)
と、
390
夫
(
をつと
)
に
対
(
たい
)
する
恋愛
(
れんあい
)
とは
別問題
(
べつもんだい
)
だとお
前
(
まへ
)
も
云
(
い
)
つたでないか。
391
恋愛
(
れんあい
)
神聖論
(
しんせいろん
)
の
御
(
ご
)
本尊
(
ほんぞん
)
たるスバール
嬢
(
ぢやう
)
さま、
392
決
(
けつ
)
して、
393
父
(
ちち
)
に
遠慮
(
ゑんりよ
)
会釈
(
ゑしやく
)
はいらぬ。
394
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
愛
(
あい
)
し
奉
(
たてまつ
)
る
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
の
御前
(
ごぜん
)
に
出
(
で
)
るが
可
(
よ
)
からう。
395
併
(
しか
)
し
必
(
かなら
)
ず
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
にお
目
(
め
)
にかかつても
気儘
(
きまま
)
を
出
(
だ
)
しては
可
(
い
)
けませぬぞ』
396
ス『ハイお
父
(
とう
)
さま、
397
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
398
左様
(
さやう
)
なれば
都
(
みやこ
)
へ
上
(
のぼ
)
ります。
399
どうか
御
(
ご
)
気嫌
(
きげん
)
好
(
よ
)
うお
暮
(
くら
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
400
そして
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
くお
父
(
とう
)
さまをお
迎
(
むか
)
へに
参
(
まゐ
)
ります。
401
そしてお
父
(
とう
)
さまのお
顔
(
かほ
)
を
早
(
はや
)
く
見
(
み
)
るのを
楽
(
たのし
)
みに
私
(
わたし
)
は
暮
(
くら
)
して
居
(
を
)
りますよ』
402
と
嬉
(
うれ
)
しくもあり
悲
(
かな
)
しくもあり、
403
親
(
おや
)
の
死
(
し
)
んだ
日
(
ひ
)
に
新婿
(
にひむこ
)
を
貰
(
もら
)
うた
様
(
やう
)
な
心
(
こころ
)
に
充
(
み
)
たされてゐた。
404
此
(
この
)
翌日
(
よくじつ
)
からは
浅倉谷
(
あさくらだに
)
の
名花
(
めいくわ
)
たるスバールの
姿
(
すがた
)
は
見
(
み
)
えなくなりぬ。
405
(
大正一四・一・五
新一・二八
於月光閣
松村真澄
録)
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<<< 恋盗詞
(B)
(N)
茶湯の艶 >>>
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