霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一七章 六樫(むつかし)問答(もんだふ)〔一八二六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻 篇:第3篇 転化退閉 よみ(新仮名遣い):てんかたいへい
章:第17章 六樫問答 よみ(新仮名遣い):むつかしもんだふ 通し章番号:1826
口述日:1926(大正15)年07月01日(旧05月22日) 口述場所:天之橋立なかや別館 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年4月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
スガの宮では、キューバーの後釜として、薬種問屋の門番をしていたアルとエスが、便所掃除をしている。
スガの宮に仕える一同が、食堂に集まって朝食を取っていると、表に高姫がやってきて、宗教問答の挑戦に来たと呼ばわる。
ヨリコ姫は、まずダリヤ、花香が最初に問答を仕掛け、かなわないようであれば最後に自分が出るようにと順番を決める。
高姫は、この世の根本の神の神名を尋ねる。
ダリヤはそれは国常立の神様であると答えるが、高姫に根本の誠の神は大弥勒、と説き負かされてしまう。
次に、花香姫が登場し、高姫は問答を仕掛けて言う。
「根本の昔に、猿が三匹飛んできて、三千世界をかき回し、この世に暗と明かりと雨降りをきたしたのは、どういう訳か」
花香はそれには答えず、高姫が自分の出す問題に答えられたら、回答しよう、と言って問う。
「根本の昔に猿が六匹飛んできて、それぞれ、雪隠、頭、恥じ、借用証文、おかゆ、そこら辺り、をかき回し、ついでにお尻をかき回した。」
高姫は、わけのわからないことを言う女と問答はできないと、ヨリコ姫を出すように騒ぎ出し、花香は奥へ引っ込んでしまう。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ:スコブツエン宗(スコブッツエン宗) データ凡例: データ最終更新日:2025-05-14 07:15:46 文字数:4986 OBC :rm7217
愛善世界社版:203頁 八幡書店版:第12輯 675頁 修補版: 校定版:209頁 普及版:79頁 初版: ページ備考:
001 懺悔(ざんげ)生活(せいくわつ)の偽君子(ぎくんし)、002スコブッツエン宗(しう)の教祖(けうそ)と名乗(なの)る妖僧(えうそう)キユーバーは003ダリヤ姫(ひめ)に対(たい)する恋衣(こひごろも)のすげなくも破(やぶ)れしより、004もとより心(こころ)の汚(きたな)い便所(はばかり)掃除(さうぢ)、005糞度胸(くそどきよう)を据(す)ゑ、006捨台詞(すてぜりふ)を残(のこ)して007問答所(もんだふどころ)より屁(へ)の如(ごと)く消(き)え去(さ)つた。008あとはヨリコ、009花香(はなか)、010ダリヤの三(さん)人(にん)、011何程(なにほど)女丈夫(をんなぢやうぶ)でも男(をとこ)の受持(うけも)つべき掃除(さうぢ)は永(なが)く続(つづ)かないとて、012薬種(やくしゆ)問屋(どひや)の主人(しゆじん)イルクに掛合(かけあ)ひ013門番(もんばん)のアル、014エスを臨時(りんじ)掃除番(さうぢばん)として、015手伝(てつだ)はしむることとなつた。016朝(あさ)も早(はや)うから、017新参者(しんざんもの)の掃除番(さうぢばん)はキユーバー、018ダリヤが奮戦(ふんせん)苦闘(くとう)の古戦場(こせんじやう)、019上雪隠(かみせつちん)の掃除(さうぢ)しながら、
020アル『オイ、021エス、022主人(しゆじん)の言付(いひつけ)だから是非(ぜひ)もなく、023エースと云(い)つて返事(へんじ)はしたものの、024本当(ほんたう)に糞忌々(くそいまいま)しい、025バカ臭(くさ)い目(め)に遇(あ)ふぢやないか、026エー、027これだから人(ひと)に使(つか)はれるのは辛(つら)いと云(い)ふのだ』
028エス『何(なに)程(ほど)辛(つら)いと云(い)つても仕方(しかた)がないぢやないか、029何一(なにひと)つ人(ひと)に勝(すぐ)れた芸能(げいのう)がアルと云(い)ふでもなし、030雪隠(せつちん)の虫(むし)のやうに、031ババの尻(しり)斗(ばか)り狙(ねら)つてゐるやうな事(こと)で、032気(き)の利(き)いた大役(たいやく)も勤(つと)まりさうな事(こと)がないぢやないか。033いつも雪隠(せんち)と云(い)ふやつは、034紛擾(ふんぜう)の種(たね)を蒔(ま)く奴(やつ)だ。035昨日(きのふ)もスコブッツエン宗(しう)の小便使(せうべんし)、036キユーバーとかキユーフンとか云(い)ふ糞坊主(くそばうず)が037ダリヤさまに糞糟(くそかす)にこきおろされ、038犬(いぬ)の糞(くそ)のやうに云(い)はれ、039終(しま)ひの果(はて)にや040糞然(ふんぜん)として屁(へ)つ放(ぴ)り腰(ごし)で雲(くも)を霞(かすみ)と逃(に)げ散(ち)つたりと云(い)ふ為体(ていたらく)、041その跡釜(あとがま)に据(す)ゑられた俺(おれ)達(たち)アまるつきり雪隠虫(せんちむし)だ、042然(しか)し雪隠虫(せんちむし)だつて落胆(らくたん)するにや及(およ)ばないよ、043少時(しばし)糞壺(くそつぼ)の中(なか)でウヨウヨしてる間(あひだ)に羽(はね)が生(は)え、044立派(りつぱ)な金襴(きんらん)の衣(ころも)を着(つ)けて、045金蠅(きんばへ)となり、046ヨリコ姫(ひめ)の頭(あたま)へでも止(とま)つて糞(くそ)小便(せうべん)を放(ひ)りかけるやうになるのだからのう』
047アル『門番(もんばん)も今日(けふ)はお尻(しり)の門番(もんばん)と
048成(な)り下(さが)りけり糞忌々(くそいまいま)し。
049仰(あふ)ぎ見(み)て穴恐(あなおそ)ろしと雪隠虫(せんちむし)
050泣(な)くに泣(な)かれぬ糞(くそ)を被(かぶ)りつ。
051世(よ)の中(なか)の臭(くさ)い味(あぢは)ひしりの穴(あな)
052やがて羽衣(はごろも)着(つ)くる雪隠虫(せんちむし)。
053金襴(きんらん)の衣(ころも)まとへば糞虫(くそむし)も
054人(ひと)の頭(あたま)にとまり糞(くそ)放(ひ)る』
055エス『ヨリコ姫(ひめ)ダリヤとしり(知)合(あひ)の穴(あな)なれば
056肥(こ)え(光栄)ならむと糞虫(くそむし)云(い)ふらむ。
057美(うる)はしき乙女(をとめ)の尻(しり)はよけれども
058糞婆(くそばば)の尻(しり)いと臭(くさ)きかな。
059天香(てんかう)は雪隠(せんち)空(むな)しうせぬと云(い)ふ
060日(ひ)に三回(さんくわい)の飯礼(はんれい)ありせば』
061 斯(か)く話(はな)してゐる所(ところ)へヨリコ女帝(によてい)が盲腸(まうちやう)、062結腸(けつちやう)、063直腸(ちよくちやう)辺(あた)りの大(だい)清潔法(せいけつはふ)を施行(しかう)すべく、064やつて来(き)た。065アルはこれを見(み)て、
066アル『あな尊(たふ)とひしりの君(きみ)の御(ご)降臨(かうりん)
067アルにあられぬ恥(はぢ)を見(み)しかは』
068ヨリコ『雪隠(せつちん)と云(い)ふ字(じ)は雪(ゆき)に隠(かく)るなり
069白妙(しろたへ)の衣(きぬ)まとふ糞虫(くそむし)』
070エス『白妙(しろたへ)の衣(きぬ)をまとひて糞虫(くそむし)は
071黄金(こがね)の餌(ゑじき)朝夕(あさゆふ)に喰(く)ふ』
072ヨリコ『アル、エスの二人(ふたり)の君(きみ)よ心(こころ)して
073黄金仏(わうごんぶつ)にならぬやうにせよ』
074アル『アル望(のぞ)み抱(かか)へし吾(われ)は糞度胸(くそどきよう)
075すゑてかかりぬ便所(はばかり)掃除(さうぢ)に』
076エス『アル望(のぞ)みなどとしり顔(がほ)するでない
077糞奴(くそやつこ)めがいばり散(ち)らすな』
078ヨリコ『アル、エスの二人(ふたり)の君(きみ)よ今(いま)少時(しばし)
079はばかり玉(たま)へ吾(わが)帰(かへ)るまで』
080アル『はばかりの掃除(さうぢ)はすれどこの男(をとこ)
081はばかり乍(なが)ら腕(うで)に骨(ほね)あり』
082エス『えらさうにしり顔(がほ)なしてブツブツと
083口先(くちさき)過(す)ぎてババ垂(た)れるなよ』
084 両人(りやうにん)はヨリコ姫(ひめ)の用(よう)を足(た)す間(あひだ)、085便所(はばかり)遠(とほ)く庭(には)の隅(すみ)のパインの下(もと)にクルツプ砲(はう)の難(なん)を避(さ)けた。
086アル『いか程(ほど)に容姿(みめ)美(うる)はしき女帝(によてい)さへ
087下(した)から見(み)れば愛想(あいそ)やつきむ』
088エス『裏門(うらもん)を開(ひら)いて出(い)づる兵卒(へいそつ)の
089ラツパの声(こゑ)も勇(いさ)ましきかな』
090アル『バカ云(い)ふなばば垂(た)れ腰(ごし)を眺(なが)めたら
091かたい約束(やくそく)も小便(せうべん)し度(た)くならむ』
092エス『草木(くさき)もゆる谷(たに)の流(なが)れをピユーピユーと
093鵯越(ひよどりごえ)の進(すす)むよしなし。
094谷(たに)の戸(と)を開(ひら)いて出(で)るは鶯(うぐひす)の
095声(こゑ)ならずして鵯(ひよどり)の声(こゑ)』
096アル『思(おも)うたよりヨリコの姫(ひめ)の長雪隠(ながせんち)
097心(こころ)短(みじか)き俺(おれ)は堪(たま)らぬ』
098エス『こんなことヨリコの姫(ひめ)に聞(きこ)えたら
099糞腹(くそばら)立(た)てて尻(しり)や持(も)て来(こ)む。
100何事(なにごと)も皆(みな)しりの穴(あな)ヨリコ姫(ひめ)
101尻(しり)もて来(く)れば猫婆(ねこばば)きめる。
102猫婆(ねこばば)をきめる積(つも)りでキユーバーが
103便所(はばかり)掃除(さうぢ)請合(うけあひ)しならむ。
104こつぴどくこき卸(おろ)されて糞腹(くそばら)立(た)て
105糞垂(ばばた)れ腰(ごし)の糞坊主(くそばうず)去(い)ぬ』
106 ヨリコ姫(ひめ)は便所(べんじよ)から、107しとやかに出(で)て来(き)た。108アル、109エスは先(さき)を争(あらそ)うて手洗鉢(てうづばち)の前(まへ)により、110柄杓(ひしやく)の柄(え)をとり水(みづ)を無暗(むやみ)矢鱈(やたら)にかけながら、
111アル『弁天(べんてん)の化身(けしん)のやうな女帝(によてい)様(さま)の
112お手(て)洗(あら)ふさへしやくの種(たね)なる』
113エス『このやうな美人(びじん)を妻(つま)にする男(をとこ)
114面(つら)見(み)るさへも小(こ)しやくにさはる』
115ヨリコ『八(はち)尺(しやく)の二人(ふたり)の男(をとこ)が漸(やうや)くに
116五勺(ごしやく)許(ばか)りの水(みづ)を呉(く)れたり。
117雪隠(せつちん)の掃除(さうぢ)も神(かみ)の御恵(みめぐ)みよ
118天香(てんかう)さまの出世(しゆつせ)見(み)給(たま)へ』
119アル『何(なに)程(ほど)に出世(しゆつせ)したとて何時(いつ)迄(まで)も
120尻掃除(しりさうぢ)とはバツとしませぬ』
121ヨリコ『左様(さやう)ならアルさまエスさま別(わか)れませう
122又(また)明日(あす)の朝(あさ)会(あ)ふを楽(たの)しみに』
123と云(い)ひ乍(なが)らヨリコ姫(ひめ)は吾(わが)居室(ゐま)に帰(かへ)つて行(ゆ)く。
124○
125 ヨリコ姫(ひめ)、126花香(はなか)、127ダリヤ、128アル、129エスの聯合(れんがふ)家族(かぞく)は130食堂(しよくだう)に集(あつま)つて四方山(よもやま)の話(はなし)に耽(ふけ)り乍(なが)ら朝飯(あさめし)を喫(きつ)してゐると、131表(おもて)の玄関(げんくわん)に向(むか)つて甲走(かんばし)つた女(をんな)の声(こゑ)が聞(きこ)えて来(き)た。
132高姫(たかひめ)『ハイ、133御免(ごめん)なさいませ、134一寸(ちよつと)物(もの)をお尋(たづ)ね申(まを)します。135ヨリコさまと云(い)ふ無冠(むくわん)の女帝(によてい)さまはお宅(たく)で御座(ござ)いますかな、136宗教(しうけう)問答(もんだふ)のためにウラナイ教(けう)の教主(けうしゆ)、1361千草(ちぐさ)の高姫(たかひめ)が参(まゐ)りました。137別(べつ)に驚(おどろ)くやうな女(をんな)ぢや御座(ござ)いませぬ、138第一(だいいち)霊国(れいごく)の身魂(みたま)、139日出(ひのでの)神(かみ)の生宮(いきみや)、140下津(したつ)岩根(いはね)の大弥勒(おほみろく)の化身(けしん)で御座(ござ)いますよ』
141と呼(よば)はつてゐる。
142ヨリコ『ホツホヽヽヽ、143朝(あさ)つぱらから、144何処(どこ)の狂人(きちがひ)か知(し)らないが、145妙(めう)な事(こと)を云(い)うて来(き)よつたものだ。146ダリヤさま、147妾(わたし)の代理(だいり)となつて少時(しばらく)相手(あひて)になつてやつて下(くだ)さいな』
148ダリヤ『女帝(によてい)様(さま)の仰(おほ)せでは御座(ござ)いますが、149狂者(きちがひ)を相手(あひて)にする事(こと)は真平(まつぴら)御免(ごめん)を蒙(かうむ)り度(た)う御座(ござ)います』
150ヨリ『第一線(だいいつせん)に貴女(あなた)出(で)て下(くだ)さい、151もしも戦況(せんきやう)危(あやふ)しと見(み)た時(とき)は第二線(だいにせん)として花香(はなか)に行(い)つて貰(もら)ひます。152その第二線(だいにせん)が破(やぶ)れました時(とき)、153殿(しんがり)として此(この)ヨリコが大(だい)獅子吼(ししく)を致(いた)しますからね』
154アル『もしもし女帝(によてい)様(さま)、155あんな狂者(きちがひ)にダリヤ姫(ひめ)さまなんか、1551出(だ)すのは勿体(もつたい)ないぢやありませぬか、156先陣(せんぢん)は私(わたくし)が勤(つと)めますから157何卒(どうぞ)此(この)役目(やくめ)をアルに譲(ゆづ)つて下(くだ)さいませ、158タカガ知(し)れた狂者(きちがひ)ぢやありませぬか』
159ヨリコ『お前(まへ)さまは決(けつ)して相手(あひて)になつちやいけませぬよ、160いくつ位(くらゐ)の女(をんな)か161一寸(ちよつと)様子(やうす)を調(しら)べて来(き)て貰(もら)ひさへすれば宜(よろ)しい』
162アル『ハイ、163承知(しようち)致(いた)しました、164オイ、165エス、166お前(まへ)は俺(おれ)の副将軍(ふくしやうぐん)だ、167ソツト後(あと)から従(つ)いて来(こ)い』
168と云(い)ひ乍(なが)ら、169早(はや)くも玄関口(げんくわんぐち)に立(たち)塞(ふさ)がり、
170アル『イヨー! 何(なん)とマア チツト許(ばか)り年(とし)はよつて居(ゐ)るが、171ステキなものだなア』
172高(たか)『これ奴(やつこ)さま、173ナーンぢやいな、174失礼(しつれい)な、175お客(きやく)さまの前(まへ)で立(たち)はだかつて、176挨拶(あいさつ)一(ひと)つ知(し)らない穀潰(ごくつぶ)しだな、177僕(しもべ)のやり方(かた)を見(み)りや大抵(たいてい)主人(しゆじん)の性質(せいしつ)が分(わか)るものだ。178此(この)下駄(げた)の脱(ぬ)ぎ方(かた)と云(い)ひ、179乱離(らんり)骨灰(こつぱい)、180まるつきりなつちやゐないぢやないか。181ヘン偉(えら)相(さう)に宗教(しうけう)問答所(もんだふどころ)なんて、182まるつきり狂者(きちがひ)の沙汰(さた)だ』
183アル『オイ、184高姫(たかひめ)とか云(い)ふ中婆(ちうばば)さま、185人(ひと)の所(ところ)の宅(うち)へ出(で)て来(き)て、186履物(はきもの)の小言(こごと)まで云(い)うてくれな、187俺(おれ)方(たち)の悪口(あくこう)をつくのならまだ虫(むし)を堪(こら)へておくが、188天下(てんか)無双(むさう)の才女(さいぢよ)、189ヨリコ姫(ひめ)女帝(によてい)の悪口(あくこう)まで吐(ぬ)かすに於(おい)ては、190断(だん)じて此(この)玄関(げんくわん)は通(とほ)さない。191エー糞忌々(くそいまいま)しい、192婆(ばば)の来(く)る所(ところ)ぢやない、193屁(へ)なつと嗅(か)いで去(い)んでくれ』
194高(たか)『ホツホヽヽヽ、195お前(まへ)がさう云(い)はいでも、196此(この)高姫(たかひめ)がヨリコ姫(ひめ)の膏(あぶら)を絞(しぼ)り、197蛸(たこ)を釣(つ)り灸(きう)をすゑ、198鼬(いたち)の最後屁(さいごぺ)を放(ひ)らして往生(わうじやう)さしてやるから臭(くさ)い顔(かほ)して待(まつ)て居(ゐ)なさい、199ド奴(やつこ)の糞奴(くそやつこ)め。200こんなガラクタ男(をとこ)を使(つか)うて、201えらさうに構(かま)へ込(こ)んでゐるとは誠(まこと)に以(もつ)て噴飯(ふんぱん)の至(いた)りだ、202ホツホヽヽヽ』
203アル『エー、204とても、205こんな気違(きちがひ)婆(ばば)は俺(おれ)方(たち)の挺棒(てこぼう)に合(あ)はない、206サア第一線(だいいつせん)だ第一線(だいいつせん)だ』
207と云(い)ひ乍(なが)ら奥(おく)に飛(と)び込(こ)み、
208アル『もしもし女帝(によてい)様(さま)、209竹(たけ)に210鶯(うぐひす)、211梅(うめ)に雀(すずめ)と云(い)ふやうな婆(ばば)が来(き)ましたよ』
212ヨリコ『ホツホヽヽヽそれは木違(きちが)ひ鳥違(とりちが)ひと云(い)ふのだらう、213サア之(これ)から梅(うめ)に雀(すずめ)の婆(ばあ)さまに向(むか)つて、214戦闘(せんとう)開始(かいし)をやつて下(くだ)さい』
215ダリヤ『ハイ、216及(およ)ばず乍(なが)ら第一線(だいいつせん)に立(た)ちませう、217どうか後援(こうゑん)を頼(たの)みます』
218と云(い)ひ乍(なが)ら玄関口(げんくわんぐち)に出(で)た。
219ダリヤ『玉鉾(たまぼこ)の道(みち)の問答(もんだふ)せむものと
220遥々(はるばる)尋(たづ)ね来(きた)りし君(きみ)はも。
221いざさらば問答席(もんだふせき)へ通(とほ)りまし
222及(およ)ばずながら案内(あない)申(まを)さむ』
223高(たか)『むづかしき歌(うた)よみかけて高姫(たかひめ)を
224困(こま)らさむとす猾(ずる)さに呆(あき)れし。
225兎(と)も角(かく)も此(この)家(や)の奥(おく)へ踏(ふ)ん込(こ)んで
226狸(たぬき)の化(ばけ)の皮(かは)むいて見(み)む』
227と云(い)ひ乍(なが)ら、228ダリヤ姫(ひめ)に従(したが)ひ問答席(もんだふせき)についた。
229ダリ『いざさらば寛(くつろ)ぎ給(たま)へ椅子(いす)の上(へ)に
230世(よ)の悉(ことごと)はしりの穴(あな)の君(きみ)』
231高(たか)『賢(さか)しげな事(こと)を云(い)へども何処(どこ)やらに
232息(いき)のぬけたる汝(なれ)の顔(かほ)かも。
233汝(なれ)こそはヨリコの姫(ひめ)の身代(みがは)りと
234吾(わが)慧眼(けいがん)に見(み)えたり如何(いか)にや』
235ダリ『妾(わらは)こそヨリコの姫(ひめ)の妹(いもうと)よ
236ダリヤの花(はな)の名(な)を負(お)ひし姫(ひめ)。
237何(なん)なりと問答(もんだふ)遊(あそ)ばせ立板(たていた)に
238水(みづ)の流(なが)るる如(ごと)く答(こた)へむ』
239高(たか)『美(うる)はしき女(をんな)にも似(に)ず出(だ)し抜(ぬ)けに
240大法螺(おほぼら)を吹(ふ)くしりの太(ふと)さよ。
241いざさらば吾(わが)問(と)ふことに答(こた)へかし
242今日(けふ)こそ汝(なれ)が生死(いきしに)の境(さかひ)ぞ』
243ダリ『如何(いか)ならむ賢(かしこ)き人(ひと)の来(きた)るとも
244後(あと)へはひかぬ弦(つる)離(はな)れたる征矢(そや)』
245高姫(たかひめ)いかい目(め)をむいて
246ダリヤの姫(ひめ)の面上(めんじやう)を
247ハツタと睨(にら)み大口(おほぐち)を
248斜(ななめ)に開(ひら)き白歯(しろは)をば
249むき出(だ)し乍(なが)ら手(て)を振(ふ)つて
250演説(えんぜつ)口調(くてう)で語(かた)り出(だ)す
251高(たか)『お前(まへ)はヨリコの妹(いもうと)と
252名乗(なの)つたからは高姫(たかひめ)が
253宣(の)る言霊(ことたま)を一々(いちいち)に
254川瀬(かはせ)の水(みづ)の流(なが)る如(ごと)
255答(こた)へて裁(さば)くで御座(ござ)らうな
256よしよしそんなら高姫(たかひめ)が
257一(ひと)つの問題(もんだい)出(だ)しませう
258この世(よ)の中(なか)を造(つく)りたる
259誠(まこと)の神(かみ)は何神(なにがみ)か
260何卒(なにとぞ)聞(き)かして貰(もら)ひませう
261それが分(わか)らぬやうな事(こと)で
262問答所(もんだふどころ)の役員(やくゐん)と云(い)へませうか
263サアサア如何(いか)に』と詰寄(つめよ)れば
264ダリヤはニツコと打(うち)笑(わら)ひ
265ダリ『如何(いか)なる難(むつか)しいお尋(たづ)ねと
266思(おも)つてゐたのに何(なん)のこと
267この世(よ)の御(ご)先祖(せんぞ)は云(い)はいでも
268世界(せかい)に知(し)れた厳霊(いづみたま)
269国常立(くにとこたち)の神(かみ)様(さま)よ
270この神(かみ)様(さま)は泥海(どろうみ)を
271造(つく)り固(かた)めて山川(やまかは)や
272草木(くさき)の神(かみ)迄(まで)生(う)みました
273吾(われ)方(ら)の誠(まこと)の親(おや)です』と
274云(い)へば高姫(たかひめ)反(そり)かへり
275フフンと笑(わら)ふ鼻(はな)の先(さき)
276高姫『三五教(あななひけう)のトチ呆(ばう)け
277大根本(だいこんぽん)の根本(こつぽん)の
278誠(まこと)の神(かみ)は大弥勒(おほみろく)
279底津(そこつ)岩根(いはね)の神(かみ)様(さま)よ
280人間姿(にんげんすがた)の分際(ぶんざい)で
281誠(まこと)の神(かみ)は分(わか)らうまい
282そんな下(くだ)らぬ事(こと)云(い)うて
283沢山(たくさん)の人(ひと)を欺(だま)すより
284早(はや)くすつこんで居(を)りなされ
285お前(まへ)ぢや事(こと)が分(わか)らない
286肝腎要(かんじんかなめ)の当(たう)の主(ぬし)
287ヨリコの姫(ひめ)を呼(よ)んでおいで
288余(あま)りに相撲(すまう)が違(ちが)ふので
289阿呆(あはう)らしくて話(はなし)になりませぬ』
290云(い)へばダリヤはうつ向(む)いて
291顔(かほ)を真赤(まつか)に染(そ)め乍(なが)ら
292すごすご立(た)つて奥(おく)に入(い)る
293つづいて出(で)て来(く)る美婦人(びふじん)は
294天女(てんによ)に擬(まが)ふ花香姫(はなかひめ)
295千草(ちぐさ)の高姫(たかひめ)見(み)るよりも
296いと慇懃(いんぎん)に会釈(ゑしやく)して
297静(しづか)に梅花(ばいくわ)の口(くち)開(ひら)き
298声(こゑ)しとやかに『妾(わらは)こそ
299ヨリコの姫(ひめ)に仕(つか)へたる
300梅(うめ)の花香(はなか)と申(まを)します
301何卒(なにとぞ)お見知(みし)りおかれませ
302いかなる問答(もんだふ)か知(し)らねども
303即座(そくざ)にお答(こた)へ申(まを)しませう
304遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)は要(い)りませぬ
305何(なん)なとお尋(たづ)ねなさいませ』
306云(い)へば高姫(たかひめ)反(そ)りかへり
307高(たか)『妾(われ)こそ誠(まこと)の救世主(きうせいしゆ)
308高天原(たかあまはら)の霊国(れいごく)の
309第一(だいいち)天人(てんにん)の霊魂(みたま)ぞや
310下津(したつ)岩根(いはね)の大弥勒(おほみろく)
311三千(さんぜん)世界(せかい)の救世主(きうせいしゆ)
312日出(ひのでの)神(かみ)と現(あら)はれて
313トルマン国(ごく)のスガの町(まち)
314天降(あまくだ)りたるウラナイの
315教(をしへ)の道(みち)の神柱(かむばしら)
316必(かなら)ず粗相(そさう)のないやうに
317謹(つつし)み敬(うやま)ひ吾(わが)言葉(ことば)
318胸(むね)にたたんでトツクリと
319考(かんが)へなされよ花香(はなか)さま
320サアサアこれから高姫(たかひめ)が
321貴女(あなた)に質問(しつもん)致(いた)すぞや
322抑々(そもそも)天地(てんち)の根本(こんぽん)の
323大根本(だいこんぽん)の根本(こんぽん)の
324その又(また)根本(こんぽん)の根本(こんぽん)の
325まだまだ根本(こんぽん)の根本(こんぽん)の
326昔(むかし)の昔(むかし)のさる昔(むかし)
327ま一(ひと)つの昔(むかし)の又(また)昔(むかし)
328ま一(ひと)つの昔(むかし)の大昔(おほむかし)
329又(また)も昔(むかし)のその昔(むかし)
330ドツト張込(はりこ)んでその昔(むかし)
331猿(さる)が三匹(さんびき)飛(と)んで来(き)て
332三千(さんぜん)世界(せかい)を掻(か)きまはし
333この世(よ)に暗(やみ)と明(あか)りと雨(あめ)降(ふ)りを
334来(きた)した訳(わけ)は如何(どう)ですか
335この訳(わけ)聞(き)かして貰(もら)ひませう』
336云(い)へば花香(はなか)は噴(ふ)き出(いだ)し
337花(はな)『弥勒(みろく)の弥勒(みろく)のまだ弥勒(みろく)
338ま一(ひと)つ弥勒(みろく)のその弥勒(みろく)
339日(ひ)の出(で)の日(ひ)の出(で)のまだ日(ひ)の出(で)
340も一(ひと)つ日(ひ)の出(で)のその日(ひ)の出(で)
341昔(むかし)の昔(むかし)の大昔(おほむかし)
342猿(さる)が六匹(ろつぴき)飛(と)んで来(き)て
343一(ひと)つは雪隠(せんち)を掻(か)きまはす
344一(ひと)つは頭(あたま)をかきまはす
345一(ひと)つは恥(はぢ)をかきまはす
346一(ひと)つは借用(しやくよう)証文(しようもん)書(か)きまはす
347一(ひと)つはお粥(かゆ)をかきまはす
348一(ひと)つはそこらをかきまはす
349も一(ひと)つお尻(しり)をかきまはす
350此奴(こいつ)の謎(なぞ)がとけたなら
351お前(まへ)さまの問題(もんだい)に答(こた)へませう』
352等(など)と分(わか)らぬ予防線(よばうせん)
353鉄条網(てつでうまう)を張(は)りまはし
354用心(ようじん)堅固(けんご)に備(そな)へしは
355流石(さすが)はヨリコの妹(いもうと)と
356生(うま)れし甲斐(かひ)ぞ見(み)えにける
357高姫(たかひめ)拳(こぶし)を固(かた)めつつ
358力(ちから)限(かぎ)りに卓(たく)を打(う)ち
359高(たか)『これやこれや女(あま)つちよ痩(や)せ女郎(めらう)
360そんな事(こと)云(い)うて高姫(たかひめ)を
361煙(けむ)りに捲(ま)かうとはづうづうしい
362お前(まへ)のやうな分(わか)らない
363女(をんな)を相手(あひて)にやして居(を)れぬ
364当(たう)の主人(しゆじん)のヨリコ姫(ひめ)
365早(はや)く此(こ)の場(ば)へ引(ひき)出(だ)せよ
366この高姫(たかひめ)の弁舌(べんぜつ)で
367道場破(だうぢやうやぶ)りをして見(み)せる
368あゝ面白(おもしろ)い面白(おもしろ)い
369いよいよ之(これ)から正念場(しやうねんば)
370気(き)の毒(どく)なのはお前(まへ)達(たち)
371折角(せつかく)建(た)てた神館(かむやかた)
372城(しろ)明(あ)け渡(わた)しスゴスゴと
373逃(に)げねばならぬ断末魔(だんまつま)
374いよいよこれが悪神(あくがみ)の
375世(よ)の持(も)ち終(をは)りとなつたのだ
376あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
377ウラナイ教(けう)の御(ご)神徳(しんとく)
378今更(いまさら)感(かん)じ入(い)りました』
379 花香姫(はなかひめ)は高姫(たかひめ)のあまりの強情(がうじやう)に呆(あき)れ果(は)て、380暗(やみ)に打(う)ち出(だ)す鉄砲玉(てつぱうだま)に持(も)てあましつつ匆々(さうさう)としてヨリコの居室(ゐま)に駆(か)け込(こ)んで了(しま)つた。
381(大正一五・七・一 旧五・二二 於天之橋立文珠なかや別館 北村隆光録)
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