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堪忍(かんにん)

インフォメーション
鏡：月鏡 題名：堪忍 よみ： 著者：出口王仁三郎
神の国掲載号：1929（昭和4）年04月号 八幡書店版：178頁 愛善世界社版： 著作集：134頁 第五版：52頁 第三版：52頁 全集：485頁 初版：34頁
概要： 備考： タグ： データ凡例： データ最終更新日： OBC ：kg283
001　「堪忍(かんにん)のなる堪忍(かんにん)は誰(たれ)もする、002成(な)らぬ堪忍(かんにん)するが堪忍(かんにん)」と忍(にん)の徳(とく)を賞讃(しやうさん)したものであつた。003自分(じぶん)も幼時(えうじ)は能(よ)く、004両親(りやうしん)達(たち)から言(い)ひ聞(き)かされたものである。005併(しか)し堪忍(かんにん)と云(い)ふのは、006仏教(ぶつけう)でいふ持戒忍辱(ぢかいにんにく)の意味(いみ)をはき違(ちが)へたものであらう。007厭(いや)でも我慢(がまん)すると云(い)ふのでは、008本当(ほんたう)の戒(いましめ)を保(たも)つたものでは無(な)い。009その内心(ないしん)に苦(く)と云(い)ふものがあつては、010得度(とくど)は出来(でき)ぬと同時(どうじ)に、011心的(しんてき)衛生(ゑいせい)には叶(かな)はない。012お腹(なか)が空(す)いても飢(ひも)じう無(な)いと我慢(がまん)する、013妻君(さいくん)が姦通(かんつう)しても我慢(がまん)する、014飢死(うゑじに)にしても我慢(がまん)する、015堪忍(かんにん)するが堪忍(かんにん)だといつて、016年中(ねんぢう)苦(くる)しい腹(はら)を抱(かか)へて、017蒼(あを)い顔(かほ)をして居(ゐ)ると腹(はら)の中(なか)に不平(ふへい)の塊(かたまり)が出来(でき)る訳(わけ)だ。018陶宮(たうきう)の道歌(だうか)に「堪忍(かんにん)の和合(わがふ)はほんの上直(うはなほ)し、019真(しん)の和合(わがふ)は打(う)ち明(あ)かす腹(はら)」と云(い)ふのがある。020昔(むかし)から堪忍(かんにん)といふ事(こと)を道徳(どうとく)修養(しうやう)の一(ひと)つと、021世間(せけん)では思(おも)つて居(ゐ)るが、022是(これ)は余(あま)り感心(かんしん)した修養法(しうやうほふ)ではない。023特(とく)に古来(こらい)用(もち)ゐられた堪忍(かんにん)なる語(ご)は、024強者(きやうしや)の弱者(じやくしや)に対(たい)する教(をしへ)であつて、025弱者(じやくしや)の不満(ふまん)不平(ふへい)に対(たい)し常(つね)に此(この)筆法(ひつぱふ)を以(もつ)て、026事(こと)勿(なか)れ主義(しゆぎ)をとらしめて来(き)たものだ。027強者(きやうしや)は一向(いつこう)に堪忍(かんにん)する所(ところ)無(な)く、028弱者(じやくしや)のみ堪忍(かんにん)しろと教(をし)へて来(き)たのであつた。029人間(にんげん)を卑屈(ひくつ)に陥(おちい)らしめ、030無気力(むきりよく)ならしめたのもこの堪忍(かんにん)の二字(にじ)の中毒(ちうどく)であつた。031従来(じゆうらい)の所謂(いはゆる)道徳(どうとく)なるものには、032此(この)種(しゆ)のものが甚(はなは)だ多(おほ)いのである。033金光教祖(こんくわうけうそ)が、034頭上(づじやう)から小便(せうべん)をひりかけられて、035温(あたた)かいお湿(しめ)りさまが降(ふ)つたと云(い)つたと称(しよう)して、036その教師(けうし)等(など)は非常(ひじやう)に教祖(けうそ)の堪忍力(かんにんりよく)を崇敬(すうけい)してゐるが、037是(これ)は大変(たいへん)な誤(あやま)りで、038忍耐(にんたい)と卑屈(ひくつ)とを混同(こんどう)した、039弱者(じやくしや)の道徳(どうとく)である。040バイブルに「人(ひと)若(も)し汝(なんぢ)の左(ひだり)の頬(ほほ)を打(う)たば右(みぎ)の頬(ほほ)も亦(また)突(つ)き出(だ)して之(これ)を打(う)たしめよ」と示(しめ)して居(ゐ)るのも今日(こんにち)より見(み)れば、041否(いな)自分(じぶん)の目(め)から見(み)れば、042大変(たいへん)なる間違(まちが)ひで、043無気力(むきりよく)を凡(すべ)ての人間(にんげん)に教(をし)へたものと思(おも)ふのである。044自分(じぶん)は飽(あ)くまでも斯(かく)の如(ごと)き、045堪忍説(かんにんせつ)を採(と)らず、046力(ちから)のあらん限(かぎ)り、047抵抗(ていかう)を続(つづ)けて来(き)た。048そして祖神(そしん)の任(よ)さし玉(たま)へる神業(しんげふ)にはつはつ乍(なが)ら奉仕(ほうし)しつつ来(き)たのである。
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