二十八歳の頃
初夏を吹く松風の音にさそはれて霊のみくににふみ入りにけり
ふわりふわり風に吹かれて吾が霊は千引の岩ケ根にたちとまりけり
わがたてる岩のみならず幾千の大小の岩四辺にそばだつ
目路の限り断崖絶壁岩の山ただあきれ居るばかりなりけり
千丈の谷底見れば霧の中に何かは知らずうごめきて居り
谷底の霧は次第にふくれ上りわが身辺を取りまきにけり
深霧の幕につつまれ目路せまくただ蕭然と岩頭にたつ
岩頭ゆつめたき風の吹きあがり吾が足氷のごとく冷えたり
孤立せる幾千丈の岩頭に寒風浴びてたてるさびしさ
煙突の上に立ちたる如くなるあやふき吾身はこごえんとせし
かむながら御霊幸倍坐世と声きれぎれに太祝詞宣る
神言の功徳たちまちあらはれて寒さやはらぎ霧うすらぎぬ
たちこめし霧は次第に薄らぎて吾が目路広くなりし嬉しさ
百花園
岩上に立ちしわが身は何時の間にか百花匂ふ花園にたてり
剣刃のごとき幾多の岩ケ根はけむりのごとく消えてあとなし
そよそよと面吹く風の柔かさその楽しさはたとふ術なし
目路はるか向ふの方より紫の雲押し分けて神輿すすみ来る
ことほぎの声は天地をどよもして神輿もろとも吾に近づく
黄金のひかり四辺をてらしつつ近よる神輿の崇厳なるも
花匂ふ野辺に端坐し合掌し思はず知らず神輿ををろがむ
幾百の旗指物をかざしつつ流るるごとくすすみ来る神輿
黄金の神輿は吾がたつ目の前にいとも静かにおろされにけり
神人の影
黄金の神輿の扉押しあけておもてまばゆき神人出でたまふ
恐るおそる神人の面仰ぎ見れば国常立の神におはせり
神人は言葉静かに宣らすやうわれとともども天国に来たれと
有難し勿体なしとひれ伏せば軽くわが背を撫でたまひけり
大神の御手の吾背にふるるや否や天地ひらけし心地なしたり
感激の涙腮辺をつたひつつただ俯向きて泣くばかりなる
神人のことほぎの声きこえつつ又もや朱塗の神輿馳せ来る
わが前に朱塗の神輿をおろされて万歳の声天地をゆるがす
天国の夢ならむかとわれとわが頬つめれども痛さを覚えず
夢でなくうつつでもなしわれこそは国常立の神よと宣らす
くれなゐの神輿の扉押し開けてほほゑみながら出でます女神
姫神はさきに来ませる大神に黙礼しつつわれ見つめます
姫神は言葉しづかに宣らすやう稚姫君命はわれよと
葦原の中津神国をすくふべく天国のさま汝に見せたし
有難しもつたいなしと掌を合す折しもまたもや万歳の声
万歳の声にあなたをみはるかせば銀色なせる神輿馳せ来る
銀色の神輿はしづしづ吾前に来たりて輝きとどまりにけり
二はしら男神女神は左右よりわれを抱きて神輿に入れます
風なきに自然に神輿三台は浮けるが如く動き出したり
神輿昇空
いぶかしきことよと思ふ間もあらず三台の神輿地を離れたり
数知れぬ旗指物に守られて三つの神輿は動きそめたり
弥永久世弥長と祝言を宣るこゑ宇宙にひびきわたれり
五つ色の雲の階段つぎつぎにすすむもたのし最奥天国
三台の神輿はやうやく黄金山の十字の宮にかき入れられぬ
幾万の祝言の声一斉に高鳴りにけり黄金の山
黄金山は最奥の天国神苑と二はしら神われに告げたまふ
長生殿
十字形の珍の宮居は鶴山の長生殿よと神は宣らせり
一つ一つわれいぶかりつ喜びつ襟をただして宣言を聞く
この宮をやがて地上にうつすべし汝に授くといかめしき御声
豊葦原全地の上に神の国築くべきとき来りしと宣り給ふ
汝こそは瑞の御霊の神柱地上の光よ花よと宣らせり
長生殿にかざせる真澄の神鏡に写る姿にわれおどろきぬ
何時の間にかわれは女体となりて居り頭に輝く宝珠の光
音楽のこゑ嚠喨とひびかせつ神人たちて御庭にをどらす
二はしら神はしづしづ長生殿の御扉深くかくれたまへり
われひとり女神となりて佇めば数多の神人四方をとりまく
神人の踊るすがたの面白さわれなかに立ち歌うたひけり
ときじくの祈り
天地にとどろき渡るわが声に思はず知らずまなこさめたり
眼ざむれば高熊山の岩ケ根にうつとりとして端坐なしをり
東の空あかあかと紫の雲たなびきて朝風すずし
天津空封じてたてる常磐木のこずゑにうたふ百鳥の声
峰を吹く朝の風の清しさにわれ地の上とも思はざりけり
東の山の端明して昇ります朝陽のかげはあかかりにけり
朝露の玉を照してかがやける天津陽光をうるはしみ見つ
常磐木の松の木の間をすかし見れば朝陽に映ゆる堂建の山
四十八宝座のまへに掌をあはせ感謝の祝詞奏上なしけり
メツセージあまり多きをかしこみてときじく祈る感謝のことば
天国のありさま具さに示されてわが魂は勇み立ちたり
吾頭上に落ち来る如き岩ケ根を見つつ安けき心いぶかし
堂建の山にかがやく朝日影を見つつ楽しも宝座の上に
大岩の頭上に落ち来る危さも恐れぬまでに魂は鎮めり
霊界物語.ネット～出口王仁三郎 大図書館～