霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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猪ノ鼻の店

インフォメーション
題名:猪ノ鼻の店 著者:出口王仁三郎
ページ:39
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-10-31 04:40:00 OBC :B120200c08
(あし)(やま)(たうげ)を越えて()(はな)茶店(ちやみせ)にしばし腰かけてをり
茶を(すす)り休らひ居れば田舎(ゐなか)さびし四十男(しじふをとこ)立寄(たちよ)りやすらふ
この男(ちや)をのみながらぎろぎろといやらしきまでわが顔(のぞ)けり
気の悪い男とわれは顔そむけまたも一杯番茶(ばんちや)をすする
(わたくし)吉野(よしの)の者です貴方様(あなたさま)(かは)りしお(かた)とわが顔を見る
わが妻の病気のために穴太(あなを)まで参拝しますと問はず(がた)りする
穴太寺(あなをでら)観音さまへ参詣かと尋ねてみれば(いな)とくびふる
あらたかい神が穴太(あなを)(あらは)れたと聞いて参拝するのですと言ふ
(わたし)こそ穴太(あなを)で神の道ひらく喜楽(きらく)といへば手を()ち喜ぶ
わが(いへ)御入来(ごにふらい)あつてわが妻の祈念を頼むと落涙(らくるゐ)合掌す
山坂(やまさか)をたどりたどりて摂丹(せつたん)国境(くにざかひ)までのぼりやすらふ
国境(こくきやう)一本(ひともと)(ひひらぎ)古木(こぼく)あり北枝(ほくし)針あり南枝(なんし)針なし
鬼の()む丹波にむかふ(こずゑ)には痛き針あり不思議と人のいふ
津の国にむかふ南のこずゑには針一つなき丸葉(まるは)のみなる
(ひひらぎ)丸葉(まるは)の伝説じゆんじゆんと吉野の男われに話せり
この男きざみ煙草を吸ひながら妻の病状をつぶさに語れり
狸の仇
吉野(よしの)なる五平(ごへい)の家に来てみれば小さきながらも家(あた)らしき
(かど)の戸を()くれば(ねつ)()ぷんぷんと屋内こめて臭気(はな)をつく
われゆけば(とこ)()ねおきて病人は団栗眼(どんぐりまなこ)をみはりて(すわ)
病人の前に端坐し神言(かみごと)を奏上すればべろべろ(した)出す
その(はう)は何物なるかとなじり問へば正一位(しやういちゐ)稲荷と鷹揚(おうやう)に宣る
その(はう)は稲荷にあらず豆狸(まめだぬき)と急所さされて()をむき(した)出す
舌の先無闇(むやみ)にのびて顔中(かほぢう)()めまはすこそ可笑(をか)しかりけり
噴き出さんばかりの可笑(をか)しさこらへつつ(くち)をつまへて(にら)みつけたり
()の女われにならひて(くち)つまへ(にら)みかへせるスタイルをかし
おもむろに(あま)数歌(かずうた)宣りつればまたもやべろべろ舌出し()をむく
裏藪(うらやぶ)にながらく()んだ狸です(やぶ)を伐られてゆくところなし
(やぶ)()りしあとにこの(いへ)建てられて親子夫婦が迷ふと(なげ)
()むところなきためこの()の女房の腹に()りしと狸の述懐(じゆつくわい)
喜楽さましばらく待つて下されよ腹が減つたといひつつ(めし)食ふ
飯櫃(めしびつ)を土間にぶちあけ()(ばひ)になりて残らず()てしまひけり
(さん)(じよう)(めし)を一度に()ふといふ狸の()いたあはれな妻なり
この狸一族(いちぞく)残らず呼びあつめ(めし)食ふさまの(はや)きにおどろく
両眼(りやうがん)に涙たたへて五平(ごへい)氏は貧乏世帯(じよたい)が荒らされると泣く
病人に端坐させつつ鎮魂をなせばげらげらと笑ひ出したり
アハハハハ(しやう)一位稲荷大明神ぞ退(さが)退(さが)れと舌長(したなが)にいふ
この(いへ)常富(つねとみ)一族が食ひつぶすかまうてくれなと背を向けていふ
神界に奏上せんとわれいへば狸おどろき合掌して泣く
これだけは(ひら)にお許し下されと狸の妻の泣く声(かな)しき
この(いへ)にわざはひせずば裏庭に(ほこら)を建てて祀るとちかふ
神の()に私を(まつ)りて下さらばわざはひせぬと狸はあやまる
裏にはに()さき(ほこら)を急造し狸まつれば妻は()えたり
この(いへ)主人(あるじ)も妻もよろこびて(をしへ)きかんとわれをとどむる
この村に(をしへ)の道をひらかんと(われ)四五日(しごにち)とどまりてをり
神様に助けられたと夫婦()は村ことごとくふれてまはれり
野狸(のだぬき)をしづめるやつは野狸(のだぬき)大親玉(おほおやだま)と村びと非難す
野狸(のだぬき)は退散せよと村人(むらびと)はつぎつぎ(きた)りて(われ)()ひたつ
かむながら道を説けども霊界のさまをかたれど(みみ)()しの(さと)
この(いへ)にわれ道()けば()()より老若男女(いし)()げ込む
この村は法華(ほつけ)の信者ばかりなり神様なんかいらぬと()ひ出す
あはれなる村人(むらびと)救ふよしもなくわれはこの()を立ち()でにけり
(うめ)かをる五平(ごへい)(のき)に春の日の名残りをしみてたちいでにけり
きさらぎの春をかをれる白梅(しらうめ)の花(すが)しもよわが道に似て
村人の誤解
野狸(のだぬき)怨霊(おんりやう)しづめて救ひしを闇の世界はあしざまにいふ
野狸(のだぬき)に左右されをる法華宗(ほつけしう)はまことの神を嫌ふもうべなり
村人(むらびと)にいちいち(たぬき)憑依して(ちから)かぎりに神にそむけり
わが(うはさ)遠き近きに喧伝(けんでん)世人(よびと)はわれを(たぬき)とあやまる
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