霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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非常手段

インフォメーション
題名:非常手段 著者:出口王仁三郎
ページ:389
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-10-31 04:40:00 OBC :B120200c38
秋あさき十月半ばのことなりき正信(まさのぶ)四方(しかた)竹村()()
上谷(うへだに)で協議の結果をもたらして面会に来たとしたり(がほ)する
三人は本宮山(ほんぐうやま)にさそひ出し綾部退却の勧告をなす
いやらしき笑みをたたへて春蔵(はるざう)はまづ一番に切り出しにけり
春『長らくのお世話になつた先生に帰国を願ふと決定しました』
春『一日も早く帰つてもらはねば金明会(きんめいくわい)が統一しません』
春『気の毒でたまりませんが一同の相談ですから是非に及ばず』
春『先生は開祖の(をしへ)の邪魔になり神に気障(きざは)りあるお方です』
春『一年ほど穴太(あなを)に帰つて下されば(あと)は立派に道が立ちます』
春『一二年(いちにねん)あなたのお()でが早かつたそれ(ゆゑ)信者が統一しません』
野心持つ(かれ)春蔵は臆面(おくめん)もなく出しやばつて勝手なこと言ふ
妙なこと言ふよとわれは春蔵の顔をみつめてほほゑみてをり
春蔵は気味悪さうに蒼白(まつさを)な顔にてしきりに首をうち振る
開祖様の命令なればいつにても帰郷するよとわれ答へけり
春蔵(はるざう)手持(てもち)不沙汰(ぶさた)面持(おももち)でわが顔もみずびりびりふるへる
正信(まさのぶ)はここよと威丈高(ゐたけだか)になり信者一統(いつとう)の代理と嘘つく
正『大神様はじめ役員一同の代表者のわれ御承知を願ふ』
正『綾部には立派な金光教会があるからあなたの必要はない』
正『お直さんが気をいら立てて平蔵があなたを呼んで来たのが間違ひ』
正『一言(ひとこと)の相談もなく()の違ふ霊学なんかを寄せたがあやまり』
正『金光は立派な公認教会よ大きな顔して布教が出来ます』
正『そのすぢの認可さへ無き金明会は偉さうに言うても到底駄目だよ』
正『お直さん平蔵ぐらゐが骨折つて何が出来るか考へなされ』
正『警察がさしとめに()ぬその(うち)に一時も早くお帰りなされ』
正『足もとの明るいうちに帰らねば狐の尻つぽがあらはれますぞや』
正『無学なる紙屑買(かみくづかひ)(ばあ)さんを開祖様とはものが言はれぬ』
正『牛乳屋くらゐがいくら気ばつても到底神の道は(ひら)けぬ』
正『花のあるうちに帰るがよろしかろお直さんは私がお世話をします』
正『一刻もはやく決心したうへで確答(かくたふ)願ふこの三人に』
正『お前さんこれだけ人に嫌はれてをつても綾部を帰るがいやかい』
正『お前さんはよくよく行くとこのない人だ腹が立つならお帰りなさい』
正『これみたかと言はんばかりに奮発して一つの教会でも建ててみなさい』
正『こんなこと言ふと済まんがお前さんの(ちから)で教会なんか建つまい』
正信(まさのぶ)罵詈(ばり)雑言(ざふごん)を聞かぬがにわれ平然と顔をみてをり
正信(まさのぶ)はさも心地よげにほほ笑みつわれを尻めにかけて腕ふる
嘲笑(てうせう)と侮辱の限りをつくしつつ得意顔(とくいがほ)なる正信(まさのぶ)あはれ
正信(まさのぶ)にかはつて竹村(たけむら)仲蔵(なかざう)はまた暴言をはき(いだ)しけり
竹『百姓の(かはず)きりやら牛乳屋(ちちや)さんが神の道とは似合ひませんぞ』
竹『草深(くさぶか)い田舎の者をだまさうとくだらぬ霊学をもつて来たのだ』
竹『神罰(しんばつ)覿面(てきめん)(しつ)ぽが見えました狐狸(こり)の霊学綾部へもてきて』
竹『草深い綾部は何程(なにほど)田舎でもまだ目のあいたものがをるぞや』
竹『百姓の(せがれ)が神道家になつて如何(どう)してろくなことが出来るか』
竹『土臭い(かはず)とばしのみみずきりまだしも牛乳屋(ちちや)(しやう)()うてる』
竹『お前さんの自由になるやうな馬鹿者は綾部の田舎にもをりませんぞや』
竹『一日(いちにち)も早く穴太(あなを)で百姓をなさるがあなたの御身(おみ)のためぞや』
竹『蛙子(かはずこ)のお(たま)杓子(じやくし)(なまづ)にはならずやつぱり(かはず)になります』
竹『お(たま)杓子(じやくし)手足がはえて尻きれて先祖ゆづりの(かはず)となるぞや』
竹『御筆先(おふでさき)八年九年しらべたがまだ満足に布教が出来ぬ』
竹『去年まで(かはず)とばしのお前さん審神(さには)や布教が出来るものかい』
竹『一日も早くお道の勉強をした(うへ)綾部へ来るなら来なさい』
竹『綾部には日本一(につぽんいち)(かむ)がかり春蔵さんがあれば大丈夫』
竹『神様のお邪魔をせずにいさぎよう男の意地でお帰りなさい』
竹『生神(いきがみ)の福島先生ござる(ゆゑ)あなたは()ふさぎ邪魔になります』
竹『開祖様が何程(なにほど)をれと云はれても客と白鷺(しらさぎ)立つが見事ぢや』
竹『開祖さんは大神様(おほかみさま)一心(いつしん)であまり人物を買ひかぶつてござる』
竹『一日も早く帰つて百姓せよと穴太(あなを)の母から手紙が来ましたよ』
竹『(こころ)ようあなたが帰つて下さらば天地(てんち)の神にもお()びがかなふ』
竹『大勢の役員信者が喜んでお母さんには孝行になる』
竹『大勢の者にこれ(ほど)いやがられあなたは綾部にゐたいのですか』
竹『教祖さん一人の金明会(きんめいくわい)でない(くづ)の出ぬ(うち)お帰りなされ』
嘲笑讒誣(ざんぶ)立腹させて帰さんと非常手段に()でたる三人
大江山(みね)吹く風のかそかにて四人のおもてを(ひや)やかになめゆく
秋の色やうやく深く(しひ)の葉の落つるも淋しき本宮(ほんぐう)の山
郡是(ぐんぜ)製糸会社のサイレン(おと)高く何鹿(いかるが)平野をゆるがせてをり
山下(やました)をめぐれる和知(わち)の清流は音さへ立てずしづかなる夕べ
一刹那
堪忍袋(いま)や切れんとせし刹那(せつな)出口澄子は登りきたれり
三人は澄子の登り(きた)るみて手持(てもち)不沙汰(ぶさた)に顔そむけをり
澄『先生の御姿(おすがた)見えずと開祖様が御心配です帰つて下さい』
澄『平蔵さん勇佑さんが先生のありかをあちこちさがしてゐますよ』
澄『先生は本宮山(ほんぐうやま)に違ひないと考へひとり迎へにきました』
澄『開祖さんが一緒に御飯(ごはん)が食べたいとお待兼(まちか)ねです早くお帰り』
三人(さんにん)に軽き会釈をおくりつつ澄子と二人山(くだ)りけり
三人(さんにん)は似合ひますなど大声にわが後姿(うしろで)を見送りひやかす
無関係の中を三人(みたり)のひが目にてひやかし半分笑うてゐやがる
一時間の(のち)に以前の三人(さんにん)は顔あをざめてかへり(きた)れり
堪忍袋
一室(いつしつ)にわれ端坐してこの綾部退去せむかと思案に暮れをり
金明会(きんめいくわい)の役員及び(かむ)がかりの状態見捨てて帰りもならず
綾部をば今帰りなば何もかも(かれ)三人(さんにん)がめちやめちやにするだらう
堪忍の袋の(ひも)を強くしめて鎮定するまで待たんとおもへり
神宣
折もあれ開祖は平蔵伴ひて(ふすま)おしあけしづかに()らせり
神様の御都合なれば穴太(あなを)へは帰られませぬと開祖()らせり
開『神様の御経綸(おしぐみ)成就するまでは帰されないと神のお言葉』
開『役員や信者の反対強くとも私とあなたの二人でよろしい』
開『平蔵さんしつかりなされ神様は如何(どう)してもお離しなされませんから』
開『神様や先生の言葉を腹に()れ人の言葉に迷ひなさるな』
開『先生と私とあれば大丈夫みろくの御代(みよ)(ひら)けますぞや』
開『しつかりと性根(しやうね)をすゑて人人(ひとびと)の言葉に迷はぬやうにしなさい』
いろいろの教訓四方(しかた)に与へつつ開祖は自分の居間に帰らす
この日より四方(しかた)の態度一変しかげに日向(ひなた)にわれを保護せり
平蔵の決心したる夕べより大本の基礎かたまり()めたり
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