前教師土田は京都にはせのぼり旧友集めて支部を開けり
金明会支部は谷口房次郎の居宅を以てこれに当てたり
会員の協議の結果谷口の伜熊吉を綾部にのぼらす
わがそばに三週間の修行して天眼通力授けられたり
天眼通得たる熊吉慢心し綾部の聖地をねらひ初めたり
かく迄もわが霊術の進みたるは霊魂に素養ありしと誇る
われこそは将来綾部大本の教主になるべきものと自称す
昔からの深い因縁あればこそ天眼通を得たりとほこる
これからは及ばずながら熊吉が神を表にあらはすとほざく
上田さんにお世話になつた御礼に金を与へて帰せと彼いふ
熊吉の言葉きくよりあきれはて開祖は顔を睨みいませり
御返答次第でわたしも考へがあると熊吉教祖にせまる
熊『熊吉が金明会をかまふたら日本国中すぐにひろまる』
熊『上田さんが綾部にゐられるやうなれば一人も寄らんと云うてゐますぞ』
熊『大本の将来をおもひ開祖様のお為を思うて申し上げます』
熊『開祖様は上田の馬鹿を買ひかぶりうつつと皆が言うてゐますぞ』
谷口は開祖の御返事待ち兼ねて如何なさるかと膝詰め寄せる
開『三日でも教へて貰うた先生を追ひ出さうとする人はいやです』
開『どこまでも私は上田さんと手を引いて神の御用をする覚悟です』
開『そんなこと言ふ人はいやだ一日も早う綾部を帰つて下さい』
反対に開祖に退却命ぜられ目算外れて谷口あをくなる
谷口は首尾悪さうな顔をしてすぐさま上谷さしてかけゆく
谷口は第二の策戦計画にかかり信者を籠絡してをり
野心家
大本の世継は澄子と筆先にあるを野心家たがひに争ふ
野心家は足立正信四方春蔵竹村仲蔵谷口熊吉
この四人互ひに鎬を削りつつ養子たらむと争ふをかしさ
確信を持てるわれには争へる四人の心をあはれとおもへり
身の程を知らぬ四人の盲ども及ばぬ望みを争ふをかしさ
根限り力かぎりに争へる四人のおもては腫れてゐたりき
八人のわが子に勝る力ぞとある筆先を知らずに騒ぐも
度し難き彼等四人は及ばざる望みいだきて互にあらそふ
谷口は四方をそしり正信はまた谷口を排斥せんとす
竹村は正信春蔵熊吉を退去させんと猛運動なす
澄子さへ自由になればわれこそは大本教主と暗闘つづくる
以心伝心彼は吾知りわれはまた彼を知りつつじつと見てをり
福島は依然と丑寅金神に成りすましつつ猛り狂へり
三人の反対組は福島は利用しますます吾をくるしむ
福島の自称丑寅金神は狂態ますます激烈となりぬ
開祖様に隠退せまりその上にわれを綾部ゆ放逐せんとす
福島を綾部の大本開祖とし四方春蔵を会長にせんと騒ぐ
四方足立谷口竹村四人とも吾が排斥に福島を利用せり
穴太から上田がきよつて大勢を発狂させたと口口に罵る
霊学の弊害を説き信徒をわれに反対させんとたくめり
その中に一人村上房之助は霊学上の諒解を持ちをり
福島の乱暴神憑鎮めんと村上審神を初めんとせり
村上が審神をすれば福島は言句に詰りて神力見よと狂ふ
福島は怒り狂ひて村上の首筋つかみ地上になげつく
この野郎神に反対いたす故見せしめなりと得意の福島
福島の乱暴ただちに鎮めんと出口澄子は馳せつけにけり
福島は出口澄子に睨まれてたちまち身体強直をなす
野心家に悪霊あつまり大本の道場あらしに余念なかりき
○余白に
地の上の人はことごと驚かむ生神あつぱれ世に生れし日を