風寒き朝庭に出でて御開祖は井戸水汲みて冷浴されたり
勇佑と平蔵二人も井戸端に立ち出てザアザア冷水浴びをり
先生も冷水浴を遊ばせとすすむる二人の面真面目なる
蛙さへ地中に潜めるこの寒さ水浴嫌ひとわれは否めり
足立さんさへも朝夕水浴をするのいあなたはずるいとなじる
冷水を被らねばならぬ罪穢れ持たずと言へばおどろく両人
行状の悪い先生困つたと顔をしかめる二人のをかしさ
先生はそれでよろしと御開祖の言葉に二人は顔を見合す
開『罪けがれ多き人間の朝夕に水垢離をとる神の道です』
両人は開祖の宣示にかしこまり罪深き身を神に謝しをり
厳御魂瑞の御魂の御教を絶対信従すべく誓へり
吾いまだ罪深ければ水行をなすと開祖は二人に宣らせり
先生は瑞の御魂の神柱水行要らぬと開祖の御言葉
平勇の二人は御教をかしこみて寒き朝夕を水浴かかさず
平蔵にならひてつぎつぎ信徒等蛙の行をはじめかけたり
野心の争
浜松に出張したる足立よりすぐさま帰ると急電きたる
正信のこころ綾部にいつきゐて浜松にゐる心地せぬため
神命を奉ぜず足立は聖場をわれにとらると急ぎ帰りし
久保氏より不徳の足立は使へずとこまごま書きし手紙来れり
谷口と南部はたがひに争ひつ罵りあへるさまのをかしき
谷口も南部足立も春蔵もまた竹村も野心の権化なり
正信が帰るも綾部にはおかれぬと口を極めて反対をなす
正信が帰れば一もめあるべしと四方春蔵手をうちて笑ふ
何故に笑ふと問へば春蔵は私の時節が来たとほほ笑む
年若き身ながら四方春蔵はひそかに野心を包蔵してをり
青ざめた顔した足立正信は三日月の夕べかへり来れり
南部奴が足立を外へほり出して後に坐らんたくみと怒る
この声に南部は一間ゆ馳せ来り君の心はあまんじやくといふ
汝こそあまんじやくよと正信が窪みたる目で罵りにらむ
南『神様の使も果さず帰り来し君は真のあまんじやくなり』
正『十七ケ所の金光教会荒したる君こそ悪魔よあまんじやくだよ』
谷口と春蔵この場に現れて仲裁おれにまかせよといきまく
挨拶は時の氏神若年の汝にまかすと両人はいふ
春蔵は吾事成れりと微笑みつ足立南部に退けとすすむる
足立南部谷口さんも先生も御退去あればをさまるといふ
その様な仲裁ならば頼まぬと足立南部がいきまくをかしさ
足立南部谷口とわれを逐ひ出し後をとらんとたくらむ春蔵
持参金沢山もつて出口家の養子にならんと澄子をそそのかす
春蔵に向つて開祖は不心得さとし給へばふるひをののく
私はしばらく帰つて居りますと手荷物さげて出でゆく春蔵
平蔵と勇佑二人は入り来り足立等三人に退去を勧むる
私は退去しませぬ上田さんを帰しなされといきまく足立
神界の経綸でみえた上田さんを絶対帰せぬと開祖はのたまふ
ブツブツと小言言ひつつ三人は竹村の家をさして出でゆく
筆先の真似
戸の外を見ればチラチラ雪降りつ三寸ばかり庭に積みをり
提燈をくはへ裸体で福島は上谷立ちて雪道かへれり
艮の金神様の御かへりと呼ばはりながら雨戸をたたく
福島のあとに従ふ村上は丑卯土金神といたけだかなり
出口直は上田はゐるか正信は何してをるかと呶鳴る福島
福『大望が近くなつたぞこれからはこの生神が治めてやるぞよ』
福『福島は生神艮金神だ直も上田もすつこめすつこめ』
福『こりや足立春蔵何をぐづぐつとこの大望を知らずにゐるのか』
福『その方はこころの盲目聾ぞや俺は三千世界を見透す』
福『そりや来たぞやれ来た出て来た恐ろしや足元に火が燃えてゐるぞよ』
福『足元に鳥がたつぞよ天と地がひつくり覆るぞ嘘は申さぬ』
村上は蛙の坐りしスタイルで福島の前に合掌なしをり
福『平蔵も勇佑爺もこの方の申す言葉をしつかり聞けよ』
福『三千年の経綸の岩戸が開けたぞよめまひがするぞよ吃驚するぞよ』
大の字が逆の世だこの通りと福島裸体ででんぐりかへる
福『この方が実地を見せてもわからぬか出口上田のあきめくらども』
この方が世に出るために出口直を先に出したといたける福島
福『出口直は御用が済んだこれからはこの福島が大将軍様』
福『艮の生神金神今日からは大将軍となりてはたらく』
福『やつこ神がらくた神よこれからはこの福島の申すこと聞け』
福『改心をいたさな今にふんのびる様な神罰目に見せるぞよ』
福『人力車曳こそして居たれこの方は真の因縁ある霊ぞよ』
福『何といふ立派な人よと世界中この福島を拝みに来るぞよ』
福『天と地がひつくり覆る世が参り西から日が出る月が出るぞよ』
福『この方は三千年間艮にかくれてこの世の経綸したぞよ』
福『坤の金神くらゐ何になるこの方様の尻なとふけよ』
福『三千年の神の経綸を出口直と上田と二人がとらうとして居る』
この方は善一筋の生粋のまことの神と筆先をまねる
筆先の真似ばかりして曲神が福島の身魂を自由にしてをり
何程にとけどさとせど福島は悪神呼ばはりなして聞かなく
福『この方は世に落ちて居た生神を天晴れ表に出す神ぢやぞよ』
福『この方は大和魂の生粋の元の種ぞよ見違ひするな』
福『結構な金光教会をつぶしたは出口と上田の曲津神ぞよ』
福『暫くは金光大神と現れてこの世の守護をいたして来たぞよ』
福『結構な金光大神の御教をつぶした出口は神のとが人だ』
福『目にものを見せてやらねばあき盲出口上田が改心いたさぬ』
福『この方を棕櫚箒で叩き出した出口お直にみせしめするぞよ』
福『この方は真の艮金神ぢや気障あるから目にもの見せるぞ』
福『たたり神悪神と世にはやされしこの艮神は誠の神ぞよ』
福『善人が来れば実によい神ぢや悪人来れば鬼になるぞよ』
福『皆のものこの福島の行ひをよく見て改心いたすがよいぞよ』
福『福島は大和魂の生粋だ誠ばかりをつき通したぞよ』
福『福島のやうな身魂は世界中かねの草鞋で捜すも無いぞよ』
福『世の中を好きすつぽふにしてうせた悪神これから平げるぞよ』
福『出口直と上田が改心致さねば世界は真の闇になるぞよ』
福『改心をせねばする様にしてやるぞこの金神はこはい神ぞよ』
福『肉体を見てあなどるな生神のお宮となつたこの寅之助を』
福『村上もしつかり致せ生神がこの世の御用に立ててやるぞよ』
艮の金神様と手をあはせ福島のまへにぬかづく村上
この方の神力見たか皆の者と独りよがりの福島雄猛ぶ
鎮魂
審神せんと吾立ちよれば福島は拳骨かためて撃たんと迫り来
われはただウンと一声言霊を放つや福島どつと倒るる
猪口才な俺を上田が倒したぞ容赦ならぬとますます伊猛る
生神に反対いたした上田をば目にもの見せんと目をむく曲津霊
鎮魂の神法ふたたび行へば裸体のままに逃げ出す曲津霊
黒田きよ子塩見の順子四方すみ子足立と共にわれを罵る
生神の福島先生に刃向ひし上田を逐へと信者をあつむる