霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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曲津の密議

インフォメーション
題名:曲津の密議 著者:出口王仁三郎
ページ:484
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-10-31 04:40:00 OBC :B120200c45
以久田(いくた)(むら)位田(ゐでん)の田中新助が家にあつまり密議を(こら)せり
福林(ふくばやし)の内報により黄昏(たそが)れてわれゆきみれば密議の最中(さいちう)
少時(しばし)()(のき)(たたず)み暗がりを幸ひ彼等(かれら)の密議を聴きたり
福島を開祖と仰ぎ出口開祖上田を退隠させんと(はか)れり
御苦労と言ひつつ家にわれ()れば案に相違の人人(ひとびと)(おも)
吾吾(われわれ)の話を立聴(たちぎ)きするといふ卑怯な上田とあざける正信(まさのぶ)
正『()うなれば露骨にいつて聞かせませう開祖とあなたを退隠さすため』
わたくしが邪魔になるなら何時(いつ)にても帰郷するよと宣れば目をむく
正『(くち)だけは帰るといつても執着の深いお前は実行出来まい』
上『認識のない人間をいつまでも相手にしたくないから帰るよ』
正『すつぱりと綾部を去つて下さらばこの悶着はすぐにをさまる』
正『金光教会が今まで支持して来た恩を忘れて開祖がえらさうに言ふ』
正『お前さん帰つてくれたらこの足立立派に神を表に出します』
上『左様ならこれから綾部へ立寄らずすぐに園部へ私は帰る』
すみ『そんなことしてもらうてはお直さんに信者の顔が立たんと思ふ』
順『ともかくも一度綾部に立寄(たちよ)つて開祖に得心(とくしん)さしてお帰り』
黒『上田さん短気は損気たつ(とり)(あと)をにごさぬたとへがあります』
()うなれば(かへ)つてあなたにお気の毒同情しますと偽善者がいふ
かうなればおもわく(どほ)りと春蔵(はるざう)がうつかり腹をさらけ出したり
上田さんが帰つた(あと)でもお前()の自由にはさせぬと足立がねめつける
品行の悪いお前が綾部にてつとまりますかと春蔵がなじる
ちよこざいなこの青二才神様の道わかるかとうそぶく足立
春『神様に一切万事聞いてゐるあなたはこれから私の弟子だよ』
春蔵は曲津(まがつ)(れい)に憑依され自分の(ちから)を買ひかぶりをり
正『お前より一段(うへ)な福島の先生を(たす)けて私がやります』
春『福島は綾部のしぐみをとりに来た曲津神(まがつかみ)です用心なされよ』
開祖さんの気が多いからこんなこと出来たと足立がしたり(がほ)する
正『何もかも一切万事正信(まさのぶ)が金光教会で(ひら)きますぞよ』
正『艮の金神様は金光の教会ならでは(ひら)けませんぞ』
正『金明会(きんめいくわい)(など)と上田さんが名をつけてごまかしてゐる(はら)がをかしい』
正『今日(けふ)からは金明会(きんめいくわい)を解散しもとの金光教会で(ひら)く』
さうなれば安心ですと塩見(しほみ)順子四方(しかた)黒田(くろだ)二女(にぢよ)は喜ぶ
吹雪の夜道
新助(しんすけ)の長女つや子は涙ぐみわが後辺(うしろべ)にしたがひ見送る
正『つや子さん上田先生の巧言(かうげん)にだまされないやう送つて来なさい』
正『開祖様に挨拶させて上田さんを明日(あす)から帰るやうにしなさい』
つや『ともかくも私は綾部の広間まで先生送りすぐ帰ります』
白瀬川(しらせがは)あやふき仮橋(かりばし)渡りつつ吹雪の野辺(のべ)小夜(さよ)()けて帰る
何人(なにびと)がさまたげすとも綾部をば帰らずいませとつや子はすすむる
上『御心配して下さるな開祖様が私を帰す気づかひは無い』
さうなれば安心ですと嬉しげにつや子は(あと)より従ひ(きた)
あまりにも吹雪はげしく寒ければ()(だう)(のき)にたちて(やす)らふ
(かぜ)(さむ)み雪は次第にふり積みて歩行になやむまでとなりたり
御心労(さつ)しますよとこの(をんな)わが手を固くにぎりて泣けり
御同情感謝しますとわれもまた雪に冷えたる手を握り泣く
(わたくし)の心も知らずに帰るといふあなたはむごいと妙なこと言ふ
帰らぬといへば絶対帰らない神のお道が大事(だいじ)ですから
先生は独身ですかとこのつや子そろそろうづの口紐(くちひも)()
ともかくもそんな話はあとにして帰りませうと()(だう)立ち()
カラカラとくだけしごとき笑ひ声(だう)の中より響き(きた)れり
上田さんもう駄目ですよ綾部には(わたし)が置かぬと飛び出す竹村
竹『田舎まで女をたらしに来るといふその凄腕(すごうで)にあきれましたよ』
この寒い雪の降る()濡衣(ぬれぎぬ)を着せるは(ひど)いとわれはなじれり
竹『おつやさん私がこれから送りますぐづぐづせずにお帰りなされ』
どうしても私は送つてまゐりますいらぬお世話とはねつけるつや子
さうですかそらその(はず)と竹村がにくらしき(ほど)あざけり笑ふ
()(だう)をあとに西町(にしまち)本町(ほんまち)と雪()む道を広間にかへる
謹言
小夜(さよ)()けて家に帰れば御開祖はどうしてゐたかと急ぎ問はせり
足立()の密議の次第こまごまとわれはつぶさに開祖に語りぬ
この(をんな)われに(かは)りてこまごまと(かれ)()が陰謀つぶさに語る
開『足立さんが何程(なにほど)さまたげするとてもあなたは神が守つてゐますよ』
開『神様の御用のある身この綾部をあなたは帰ることは出来ない』
開『悪神(あくがみ)が尊き綾部のお経綸(しぐみ)を奪ひとらんとしてゐるのです』
()開祖と話すをりしも竹村は(いきほひ)たけく()(きた)りけり
表裏(へうり)反復(はんぷく)(つね)なき竹村(たけむら)仲蔵(なかざう)は開祖の前にて中傷せんとす
竹村は開祖に古くつかへたる金光教会の世話(がかり)なり
竹村の言葉は開祖も信じたまふことを知りつつわれを(さまた)
この(ごろ)の竹村仲蔵は足立()籠絡(ろうらく)されをるを開祖は知らせり
()(だう)の蔭でつや子と上田さんが(あや)しかりしと開祖に誣言(ぶげん)
両人のあひだは純粋潔白とわが言の葉をわらふ竹村
竹村の腕に矢庭にかぶりつきつや子は(ゑん)を泣きつつ訴ふ「冤」は底本では異体字の「寃」。
(たしか)なる証拠を見付けた上田さんを逐ひ出し給へと竹村息まく
竹村さんいつも私に妙なこといふ人ですよとつや子が素破抜(すぱぬ)
竹村はつや子の不意の発表に顔あからめて(もだ)しうつむく
開『わが顔の(すみ)を洗うたそのあとで他人(ひと)さんのこと言ふがよろしい』
はい左様(さやう)左様(さやう)左様(さやう)といひながら尻ひつからげ逃げ出す竹村
つや『開祖さんいつも私にあの人はいやらしいことばかり言ひます』
人間は見かけによらぬものなりと今更(いまさら)のごと開祖の驚き
開祖の不機嫌
小夜(さよ)()けの吹雪はげしき野の(みち)を田中新助あと追ひ(きた)
新助は靴ぬぎすてて神前(しんぜん)拍手(かしはで)うちて太祝詞(ふとのりと)のる
この寒い(よる)雪道(ゆきみち)御苦労と田中に対して開祖微笑(ほほゑ)ます
新『上田さんを送つて来ました(むすめ)をば案じて迎ひに来た私です』
折もあれ足立と春蔵(ゆき)かぶり庭で外套(ぐわいたう)を無雑作に払ふ
正『()信者の協議の結果お広間は福島先生にきまりましたぞ』
福島がやるなら私はこの広前出て行きますと開祖の不機嫌
開『上田さんと私と澄子と三人で金神様を表に出します』
折もあれ奥の一間(ひとま)ゆ福島は声たかだかとうなり出したり
福島は生神(いきがみ)金神(こんじん)足立殿(どの)出かしたぞよと呶鳴るをかしさ
福『上田をば一時(いちじ)も早く逐ひ出せよこの丑寅(うしとら)が広前をかまふ』
福『正信(まさのぶ)(みたま)の因縁悪いゆゑいやな御用をさせられたぞよ』
福『何事も(みたま)の因縁性来(しやうらい)の事より出来ぬ経綸(しぐみ)であるぞよ』
福『この(はう)が世に出るまでの先走(さきばし)りお(なほ)と上田を出しておいたぞよ』
福『えらさうに言ふなよお(なほ)その(はう)はこの金神(こんじん)のべべの眷族(けんぞく)
目に物を見せてくれんと福島は雪()む庭に裸体(はだか)で飛び出す
福『この(はう)が雪を降らして地を(きよ)め銀の世界にしたのであるぞよ』
五六(ごろく)(すん)(つも)もれる庭の雪の()横臥(わうぐわ)しながら呶鳴り出したり
福『生神(いきがみ)に間違ひのない証拠には雪の(うへ)に寝ても寒からぬぞよ』
福『(かぜ)一つ引いたことない福島は(まこと)生神(いきがみ)金神(こんじん)様ぞよ』
福『これだけに実地を見せても知らしてもめくら(みたま)はわかりはせんぞよ』
野天狗(のてんぐ)が福島の(たい)に憑依してくだらぬことのみしやべり散らすも
その(はう)小北(こぎた)の山の野天狗(のてんぐ)と星をさされて立上(たちあが)りけり
積む雪の庭に福島四股(しこ)をふみ世界の悪魔と角力(すまふ)とるといふ
えらさうに上田が何程(なにほど)威張つてもこの(はう)の前には歯ぶしたたぬぞ
福『新助もおつやも足立もよく聞けよ今に(そら)までかへしてみせるぞ』
福『ぐらぐらと()りこむ雪を一声(ひとこゑ)(そら)をはらして見せてやるぞよ』
福『これを見て改心いたせ生神(いきがみ)御神力(ごしんりき)には往生(わうじやう)いたすぞ』
福島のはらすと言ひし大空(おほぞら)はますます曇り鵞毛(がまう)の雪()
をかしさにわれ(ふき)出せば福島は馬鹿にするなと言ひつつ迫り()
神霊をうんと一声(いつせい)注射すれば(また)福島がでんぐりかへる
福『上になり下になるぞよ皆のもの眩暈(めまひ)が来るぞよ往生いたせよ』
福島は又もや提燈(ちやうちん)くはへつつ裸体(はだか)で庭にそり返りをり
左右(さう)の手に(こぶし)を固めてわが胸を無性(むしやう)矢鱈(やたら)に打ちつつ威張る
福『生神(いきがみ)のこの腕を見よ骨がある如何(いか)なる敵もはり飛ばすぞよ』
際限(さいげん)もなく福島はしやべり立て雪()む庭に()(あか)しけり
○余白に
昔より肉体のままの神()でて乱れたる世を治め給はむ
人の身は神の生宮(いきみや)神の御子(みこ)大天地(おほあめつち)御手代(みてしろ)なりけり
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