霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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鞍馬山

インフォメーション
題名:鞍馬山 著者:出口王仁三郎
ページ:225
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-10-31 06:24:00 OBC :B120900c41
小北山(こぎたやま)松にしろじろおく(しも)(はしら)するどく針にまがへり
冬さりて()べ吹く風に手も足も冷えわたりたる八木(やぎ)(まち)(あさ)
朝霧(あさぎり)の流るる小川に(くち)すすぎ手を洗ひをれば神示ありけり
今の世は鞍馬の山の大天狗(だいてんぐ)征服すべき時との()神示
()開祖に神示をのぶればうなづきて鞍馬の山にのぼらむと()(たま)
白石山(はくせきざん)と思ひゐたりし春蔵(はるざう)はことの意外に(かほ)蒼くなりぬ
福島は金光教に幾分か心ひかれてためらひてをり
()開祖の娘の婿(むこ)の福島も鞍馬の(とも)をためらひ()かず
ささやけき福島宅の神前に祝詞ををはり八木(やぎ)駅に(むか)
八木(やぎ)駅ゆ蓑笠(みのかさ)つけてわが一行花園(はなぞの)駅をさして乗りゆく
亀岡の駅に(きた)れば穴太(あなを)より斎藤与四郎(よしらう)氏乗りこみにけり
村人の噂
喜楽さん何処(どこ)へゆくかと与四郎(よしらう)氏不思議な顔に問ひかけにけり
親子づれ乞食(こじき)()づるとわれいへばふふんと笑ひ横むきにけり
与四郎(よしらう)(しん)乞食(こじき)と思ひけむ郷里に帰り人に話せり
喜楽()は綾部の養家(やうか)()ひつぶし乞食に出たと村人(むらびと)(うはさ)
わが祖母も母も弟もわが(うはさ)耳にしてより驚きしといふ
保津の渓流
(きり)こむる山本谷(やまもとだに)()せてゆく汽車の窓辺に吹く(かぜ)寒し
保津川(ほづがは)の鉄橋わたれば嵐山(あらしやま)紅葉(もみぢ)は散りて常磐木(ときはぎ)青し
大悲閣(だいひかく)嵐峡館(らんけふくわん)はさびしげに()()にみえて(かぜ)(さむ)みつつ
亀山のトンネル()づれば嵯峨(さが)の駅信徒(まめひと)四五人出迎へてをり
わが汽車は葛野(くずの)千葉野(ちばの)を走りつつ花園(はなぞの)駅に一行下車せり
老松(おいまつ)の高く茂れる妙心寺(めうしんじ)巨刹(きよさつ)左手(ゆんで)にながめつつ行く
()開祖は御足(おんあし)まめにわが先に杖つきながら進み給ひぬ
春蔵(はるざう)は気のりのせない(おも)もちにていやいやながら従ひ(きた)れり
福林(ふくばやし)千言万語をつひやして(なだ)めすかしつ春蔵(はるざう)をみちびく
舟岡の山
舟岡山(ふなをかやま)建勲(けんくん)神社の下道(したみち)辿(たど)りてゆけば社碑(しやひ)を建てをり
七年の(のち)にはこの(しや)の神職となるべき(われ)とはおもはざりけり
初冬(はつふゆ)の日あしみぢかく紫野(むらさきの)大徳寺(だいとくじ)みつつ鞍馬に(むか)
たそがるる(ころ)一行は鞍馬山(くらまやま)本堂のまへに辿りつきたり
御籤
春蔵(はるざう)はまづ第一に霊前(れいぜん)御籤箱(みくじばこ)をばとりてうらなふ
春蔵(はるざう)御籤(みくじ)をみれば大凶(だいきよう)なり生命(いのち)(あやふ)しと記しありたり
つぎつぎに御籤(みくじ)をひけば()開祖も(われ)もその()大吉(だいきち)とありぬ
鞍馬寺(くらまでら)あとに大杉(おほすぎ)天狗杉(てんぐすぎ)木下(こした)をくぐりて奥の院にゆく
奥の院に到りてみれば義経(よしつね)太刀(たち)あと残りし岩あまたあり
僧正ケ谷
鞍馬山(くらまやま)大僧正(だいそうじやう)牛若(うしわか)が剣術したりと(つた)ふる岩山(いはやま)
あちこちに白衣(びやくえ)をつけて修験者(しうげんじや)珠数(じゆず)つまぐりて読経(どくきやう)してをり「珠数」は一般には「数珠」と書くが「珠数」でも間違いではない。
この山は魔の山ですと修験者(しうげんじや)はさもあやしげに怪奇をかたる
大僧正(だいそうじやう)をまつりしといふあやしげな(ほこら)の前に(みの)敷きて()
御開祖(ごかいそ)(ほこら)の前に拍手(はくしゆ)して天津祝詞を()りたまひけり
腹立ち
何故(なにゆゑ)かわれ腹だちて松の(つゑ)ふりまはしつつ(ほこら)をうちたり
(ばち)あたりこら何すると春蔵(はるざう)(ふる)へながらにわが杖を()
この杖はわしの杖だと春蔵(はるざう)が執念ぶかく握りてはなさず
かかる(をり)白衣(びやくえ)をつけし修験者(しうげんじや)(まなこ)をむき出しわれを(にら)みつ
狗賓(ぐひん)さんが(あつま)りいますこの山で乱暴するのはけしからぬといふ
天狗の太鼓
()()より京都市中(しちう)家家(いへいへ)()は星のごとみえすきてをり
鞍馬寺(くらまでら)の坊主が叩く太鼓(たいこ)()を天狗の太鼓と修験者喜ぶ
あの(おと)は鞍馬の寺の太鼓よとわが(こと)()をさへぎる修験者
一行五人(ほこら)の前に(みの)しきて松風の()を聴きつつ眠れり
やうやくに()は明けそめて山烏(やまがらす)谷間(たにま)谷間(たにま)ゆ鳴きわたりたり
名もしらぬ鳥の鳴声(なきごゑ)かしましく(さる)せむるごと(きこ)()るなり
やうやくに()は明け放れずず(ぐろ)白衣(びやくえ)の修験者つぎつぎのぼり()
修験者の顔をいちいち(しら)ぶれば(たぬき)野天狗(のてんぐ)(きつね)に似たりき
大僧正
われこそは鞍馬の山の大僧正(だいそうじよう)()が高いぞとわれにかみつく
古狸(ふるだぬき)何をぬかすと云ひながら鎮魂すればひつくりかへる
この山の魔王大僧正(だいそうじよう)王様を軽蔑したりと(いか)修験者(しゆげんじや)
大僧正(だいそうじよう)も魔王もくそもあるものか改心いたせと(われ)審判(さには)せり
大阪の炭本(すみもと)といふ(かみ)がかり大僧正(だいそうじよう)とて(くち)きりはじめぬ
『炭本』われこそは大僧正(だいそうじよう)ようたがふな(なんぢ)はまことの神の御手代(みてしろ)
老人は大神(おほかみ)さまの御手代(みてしろ)よ御苦労さまと大僧正いふ
今日よりは綾の高天(たかま)円山(まるやま)にわれ鎮まると神憑(しんぴよう)がいふ
春蔵(はるざう)曲津(まがつ)の神のいれものよ改心せよとせまる僧正(そうじよう)
火の玉
()くる日もやうやく暮れて(かぜ)(さむ)春蔵(はるざう)ひとり眠らずにゐる
不思議なる火の玉一つあらはれて春蔵(はるざう)かかへ走り出したり
かたはらにいねたる福林(ふくばやし)安之助(やすのすけ)春蔵(はるざう)(あと)おつかけてゆく
福林(ふくばやし)おひつきみれば不思議にも(おほい)なる火はぱつと消えたり
春蔵(はるざう)は闇の中より声ほそくゆるせゆるせと叫びゐたりき
春蔵(はるざう)はただ黙黙(もくもく)一言(ひとこと)も発せず顔を蒼くしてをり
赤万両
三日目のあした鞍馬の山(くだ)り帰路は貴舟(きふね)の神社に詣でし
初冬(はつふゆ)の峰吹く風に常磐木(ときはぎ)の松の枯葉は笠に散り()
細谷川(ほそたにがは)(みづ)(きよ)らかに潺潺(せんせん)と流るる水音(みなおと)寒かりにけり
鞍馬山(くらまやま)(あと)ふりかへり眺むれば雲間(くもま)に高く(そび)えたりける
谿路(たにみち)のカーブいくつか(くだ)りつつあちこち人家(じんか)のある里にいづ
(みち)のべの草はおほかた枯れにつつ人家(じんか)(のき)万両(まんりやう)赤し
とぼとぼと一行五人は(つゑ)ひきつ初冬(はつふゆ)の野を京都に向ふ
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