神々しく朱の玉垣巡らしておごそかに坐す加茂の大神
官幣大社別雷の神社に詣でて国家の祈願なしたり
鬱蒼と苔むす老樹茂りたる加茂の神社は神さびにけり
バラバラと大宮の庭に散りしける紅葉はいまだ赤かりにける
上加茂の神社をあとに紫野の総社をさして急ぎ歩めり
一行は総社のまへに端坐してまたも祈りぬ国の前途を
御開祖も澄子も京都を見むものと大宮頭に歩を進めける
京都市のうどんの味はうまからんと小さき店の暖簾くぐれり
値高くうどんの味のまづさには呆れかへりて失望なしたる
京都とはこんなとこかと一行は呆れかへりて帰路を急げり
町を越え野をこえ里をこえながら花園駅にやうやく着きたり
花園の駅に来れば上谷の四方安蔵汽車待ちてをり
安蔵は北野の天神参詣の帰り路なりと物語りをり
安蔵を加へて一行六人はまた汽車に乗り八木に下車せり
二三日開祖一行福島の宅に逗留道を説きたり
春蔵はひそかに園部に走りゆき上中田中と何かたくらむ
春蔵は開祖一行をふりすてて密かにわが家に急ぎ帰れり
春蔵は上中田中おふで等とわが家に帰りて道場開ける
二三日すれば春蔵発熱しやまひの床にうちふしにける
御開祖にしたがひ綾部に帰りをれば春蔵危篤と村人来る
春蔵は口癖のやうに恐かつたああ恐かつたと言ひつづけをり
四方安蔵病気見舞と訪ひゆけば悪は出来ぬと春蔵悔いをり
御開祖に随ひわれも訪ひゆけばもの言ひ得ねど手を合したり
御開祖はゆるすと一言のたまへば微笑みにつつこときれにける
村人や信者つぎつぎ集ひ来て野べの送りをあつくいとなむ
吾もまた奥津城の前に停立して永遠の冥福を神に祈れり
曲神の魂に憑かれ春蔵は鬼と変じて根底に落ちたり
根底より救ひ出さんと一心不乱われは数歌唄ひ続くる
一心にわが宣る天の数歌に浮き上りたる四方の精霊
若き身をもちて大なる陰謀を企みし人の末恐ろしも
上谷の人等ことごとあつまりて小さき祠を建てて慰霊せり