五六七の家政のやり方については、大本神諭にしばしば教示されてあるから、いまさら喋々するの必要もあるまいと思うが、第一にわが国民の結婚に要する冗費ぐらいばからしいものはない。諺にも娘五人もてば家がたおれるというぐらいで、全世界における第二のぜいたくなやり方は日本である。まずその時に要する結婚費は、全国平均して年収入の二十割ないし二十五割を冗費しているのである。一九一五年イギリスの「ハウスキーピング」誌に載せられたる、世界各国の結婚費の比較表を、調べてみると明瞭である。しかし今日の日本は、その時の表よりももっともっと結婚費が嵩まっておって、年収入の五十割も費やしている。一世一代の嫁入りだから片肌ぬがねばならぬなどと、ますます体主霊従ぶりを発揮しているのは、まことに慨歎にたえないしだいであります。
左表はすなわち一九一五年の調査であるから、そのつもりで見てください。
国別 年収一万円の家庭 年収二千円の家庭
英国(イギリス) 八分 一割
仏国(フランス) 一割 一割
独国(ドイツ) 一割 一割
米国(アメリカ) 二割 二割
伊国(イタリア) 四割 四割
西国(スペイン) 五割 七割
露国(ロシア) 八割 八割
日本 二十割 二十五割
支那(中国) 三十割 三十割
これによってこれを見れば、わが日本は支那のつぎになっているが、現今では日本が世界で第一位になっているのである。なにゆえに結婚費がかくのごとく膨脹したかといえば、畢覚、必要以上のよけいな衣類をこしらえたり、身分不相応に盛大なる披露会をもよおしたりするから、年収の四、五十割という、世界各国にずぬけた率を示しているのである。外観外聞に要する費用を節約さえすれば、各国の結婚式は各階級とも年収の一、二割でもよいことになる。いわんや五六七の家庭のやり方においては、なおいっそうの簡単で、費用などは五分ぐらいより要らぬことになるのである。
また結婚費のなかには、嫁入りまたは婿とりのために、とくに必要を生じた新夫新婦の礼服・寝具・諸道具・装身具等の新調や、儀式や披露その他のことに要する経費の全体のことで、在来持ち合わせの衣類、その他の日用の調製に要する費用や、父母の財産の一部を分与する持参金等は、もちろん含まれておらぬのである。その結婚費は中流以下の家庭では、一時にこれを支出することが、はなはだ困難であるから、どうしてもその半額ぐらいは、本人の幼少の頃から、結婚費として積み立てている人もあるそうである。
日本の中流以上の家庭では、結婚の際にはみだりにたくさんの衣類や荷物をこしらえて、持参させる悪い習慣がある。これは一種の虚栄心からきたもので、実際あまりに必要のないたくさんの衣類を新調し、むなしく箪笥の底にねかしておくということは、はなはだ無意味で、経済上からも、これくらいつまらないことはない。上、中、下流といわず結婚の際は、さしあたり必要な衣類ひととおりだけ持たせてやり、その余りの金は、新夫新婦の社会に立って活動する時の資本金とすれば、じつに一挙両得というべきものである。
(無題録、「神霊界」大正9年12月1日)