妻として、夫に他の愛人ができるというようなことはしのびがたい苦痛であろうが、こうした出来事はけっして夫の本意から発するものではない。ちょっとしたはずみ、偶然の出来事からおこる過ちで、妻を捨ててまでというようなことを思っている男は一人もない。一夜妻という言語に男の心はつくされている。しかるに嫉妬深い女房は、こうした男の心を理解することができないで、すぐ真っ黒に妬きたてるから騒ぎが大きくなって、夫の方では、思いもかけぬ結果の離婚問題などももちあがるようになるのだ。妻に過ちを過ちとする寛恕の心があれば、それは一家を平和に導き、みずからの一生をほんとうに幸福にするゆえんの道である。嫉妬深い女ほど気の毒なものはない。自分で自分を地獄のどん底につき落としている。
(「神の国」昭和8年6月)