(一)元内務省警保局長並に関係書類
一、警保局長在任期間
自 昭和九年七月十日
至 同 十一年四月廿二日
二、大本教検挙其の他の時期
1 検挙の時及人員 昭和十年十二月八日乃至同十一年十二月末迄の間に計九八七名検挙
送局三一八名、起訴六一名、起訴猶予一八七名、起訴留保二名、不起訴六八名、警察限釈放五六九名
2 結社禁止の時 昭和十一年三月十三日
皇道大本、更始会、人類愛善会、明光社、昭和青年会、大日本武道宣揚会、昭和坤生会、昭和神聖会
三、杭迫部長の日記中警保局長に関係あるもの
(昭和十一年二月二十五日)大本事件に関し全国特高課長会議を京都府会議事堂に於て開催せらる、唐沢警保局長等一行入洛、
(昭和十一年七月警察協会雑誌第四三四号)
四、警保局長の地位
1、内務大臣の権限事項中警察に関する事務を掌る官吏なるも独立の機関に非ず
常に内務大臣の補佐として其の命を受け警察事務を掌理す。
2、司法警察官に非ざるを以て犯罪を捜査検挙するの権限無く其の具体的事件に関し府県警察官を指揮監督するは専ら治安保持の必要に基き行ふものにして犯罪検挙に伴ふ監督事務の如きも常に斯かる見地より行はれ居れり。
(参考)
内務省官制
第一条 内務大臣は地方行政、議員選挙、警察、土木、都市計画、防空、地理、出版、著作権及拓殖に関する事務を管理し警視総監、北海道庁長官及府県知事を監督す
第四条 内務省に左の四局を置く
地方局
警保局
国土局
防空局
第六条 警保局に於ては左の事務を掌る
一、行政警察に関する事項
二、高等警察に関する事項
三、図書出版及著作権に関する事項
五、大本検挙の法的根拠
専ら京都府警察部が所轄検事局と連絡しその指揮を受けて捜査を進めたる結果治安維持法、刑法等に触れることが明かとなり検挙するやうになつたやうに記憶する
問 王仁三郎以下多数の者の身柄を拘束せるは如何なる法令に準拠して為せるや
答 検挙は凡て検事の指揮に依り京都府警察部に於て行ひたる様に記憶す
六、其の他
問 検挙前警察官をして大本文献を研究せしめたる事ありや。
答 何も聞いて居なかつた。
問 内務省に於て大本文献等を抜萃して「テキスト」を作りそれを捜査官に配布した事はないか。
答 自分は全然記憶して居らぬから何も報告を受けて居なかつたのだと思ふ。従つて左様な事があつたか何うか判らぬ。
問 捜査班を作り、又は度々打合会、講習会等を開いて捜査官を教養し或は捜査官相互の連絡を図る等のことをさせた事があるか。
答 事件の捜査、検挙、取調等凡て検事の指揮を受けて行つたやうに記憶して居る。
問 大本事件検挙は内務大臣其の他上の方からの命令、指図に依つて手を付けたのではないか。
答 京都府警察部が検事局と連絡しその指揮を受け捜査を進めてた結果犯罪の成立することが明白となり検挙するやうになつたと覚えて居る、他の方面から之に関して私に何も話は無かつた。
問 結社禁止の命令を出すに就て関与したか。
答 結社禁止は王仁三郎以下の幹部数名が起訴せられて犯罪成立が確実となつたので斯かる結社を存続せしむることは安寧秩序の保持に害ありと認め結社禁止を命せられたのだと思つて居る。
問 大本関係の建物を取毀したのは如何なる法規に基いて為したか。
答 建物の類の中で社寺類似のものは所定の法令に基き強制処分を行つたやうに覚えて居る。
問 土地を売却させて居るが此の法的根拠は何か。
答 右述べた強制処分を行つたものの外は凡て王仁三郎その他所有者が任意に処分したやうに記憶して居る。
問 大本検挙に関し現地に出張して何か指示したる事なきや。
答 検挙後一回京都に行つた事があるやうに覚えて居る、その時は確か特高課長会議か何かあつた時で一般治安維持に関する話をしたやうな記憶があるが委しい事は覚えて居らぬ。
問 大本事件に関し何か指示したか。
答 古い事で詳しくは覚えて居ないが被疑者の取調処遇等に就て注意したやうな気がする。
問 会議の際何か印刷物を配布した事はないか。
答 記憶して居ない。
(警保局保安課宗教係「大本教事件証拠調関係書類」所収、国立公文書館所蔵)