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昭和10年12月13日 朝刊

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題名: 著者:
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概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :NPTYc19351213A1
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王侯凌ぐ豪奢夢殿
妖楽飽なき生活
寝込に〝御用〟顛倒した〝生神様〟
出口王仁三郎検挙秘聞
王仁三郎は奥院に一人で寝て居りその隣の部屋には細君のお澄婆さん更に別室には近侍と自称させてゐる妙齢の美女が六人一緒に寝てゐた、先づ目ざす王仁三郎の寝てゐる部屋に工藤特高課長が単身飛込んで行き高いびきで寝てゐる王仁三郎を静かに起して「出口さん京都から御迎ひに来たから用意して下さい」と云ふとびつくりした様子で蒲団の上に起上るところを、どかどかと警官がふみ込み王仁三郎のぐるりを包囲した、何しろ前日王仁が松江に着ゐた時にはわざわざ松江署長が出迎へたほどなので、それこそほんとの寝耳に水の驚きやう、王仁三郎はすぐ足袋を穿かうとするのだが手が〓へてゐて足袋のコハゼがどうしてもかからない、警官の包囲にどぎもを抜かれた彼は「逃げはしませんからどうぞ手荒な事だけはしないで下さい」と怯えた泣き声で嘆願してゐる
すつかり面喰つたお澄婆さんや女等はあわてふためゐてなすところを知らない有様で漸く警官が「教主は着物を着ることが出来なくて困つてゐるから早く手助けして身の廻りの用意をしてくれ」と穏やかに云ふと、王仁は漸く正気づゐて「何も悪いことをしたのでないから行けば判る」と女等を制止した、かうして大変な騒ぎで女総がかりで着物を着るのだが着物がきちんと着られなくて教主の姿は甚だしく滑稽に見えた、私は京都綾部本部も天恩郷も詳細に検証したが王仁は自分を絶対尊厳なものとするため外部の者の立入ることを許さぬ私室の調度類には驚くべき不敬なものが沢山あつた、例へば恐懼に堪へない次第であるが湯呑茶碗の内部に自分を歌はせた「君ケ代」になぞらえた歌を浮彫りさせてゐたり○○に類似する文書等誠に畏れ多い極みでお話申上げる訳にはゆかない様な未曾有の歴史的不敬の数々が証拠物件としてあげられてゐる
殊に王仁が常住する天恩郷の応接間など私はあんな華美なものを見たことがない、建具には巧緻な彫刻、襖は絹張り、一寸した硯箱なども時価何百円といふ高価なもの、しかも各殿堂毎に王仁の寝室があり、そこには常に寝床が敷つ放しにしてあつて、いつでも王仁の邪欲をみたせるといふ仕組、殊に天恩郷のお澄と会する部屋には王仁とお澄婆さんの全裸等身大の写真が飾つてあり、これなどはどういふつもりか常識ではまつたく判断がつかない
かうした部屋はもちろん、お澄婆さんの居間からまで怪しげな道具や何百円もする絵草紙類がふんだんに発見されて正視にたへぬものがあつた、近侍と称する女達はあらゆる階級からの入信者を網羅してその数は二、三十名、いづれも王仁を神聖化するやう教育されてゐるので王仁の衣服にふれてさへ光栄なのだから況んや人身御供など無上の光栄として、ほかに仕事がなく全く王仁の獣欲の対象として生活してゐたもので踏みこんだ吾々も只唖然としてしまつた
三千麿留置
【京都電話】満鮮地方伝道行脚中の帰途関門で山口県警察部の手に逮捕された大本教大阪分院長出口三千麿(37)は途中姫路まで迎へに来た警保局古賀属をはじめ京都府特高課田中警部補、川辺部長等に護られて十二日午後八時四十分京都駅着列車で護送直ちに七条署に留置された
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