弥仙山たかく聳えて西北の風に走れる峰のしらくも
初冬の風に木の葉は散りはてて素裸となりし四方の山山
大江山吹きおろす風のきびしさを火鉢もたさず筆とらす開祖
御開祖は離屋に入りて戸を閉し心しづかに筆執りたまふ
ちらちらと雪をまじふる山風に懐さむしわれ筆とりつ
朝まだき雪降る庭に立ち出でて開祖は水を浴び給ひけり
ほうほうと御肌白く湯気たちて温かなりとほほ笑みたまふ
四方平蔵竹村中蔵浦上等猿の真似して水かぶりをり
寒いかとわれ言問へば四方等は暖かしとてふるへゐたりき
上下の歯のうつ音のガチガチと手足もともにふるへゐたるも
こんなこと出来ぬやうでは日の本のまことの男子でないと頑張る
しばらくは彼等の水行つづきしが風邪ひき腹を下してやめたり
庭の面にぶらぶら実る石榴の実はからからとなれども採らず
神様の果物なりと四方等は味よき石榴を梢にくさらす